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幕末妖怪の章

樟葉の嫁候補達

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「お前達は…」
そこには若い娘の鴉天狗達が20人は居るだろうか?
雛妃を睨んでいた。

「樟葉様、真葛様失礼致します。しかし、私達は納得しておりません。私達は樟葉様の妻と成る可く教育され、そうなるものだと思い今まで生きて参りました。それを何処の骨とも分からない女に渡す訳には参りませんわ!!」
代表格の娘が声を張り上げた。

「はぁちゃん、私は何処の骨とも分からない女なの?!」

「雛妃驚くのはそこじゃない。」
斎藤はそれでも可愛い雛妃の頭を撫でた。

「貴様ら誰にそんな口を聞いているか分かっているのか?!」
真葛が怒りを露にした。

「分かっております。無礼は承知で私達は此処に来たのです。」

「雛妃…」
斎藤は雛妃に何やら耳打ちした。

「えっ?」

「雛妃なら出来る。」
そんな二人を娘達も樟葉と真葛も不思議そうに見ていた。

「幾ら美しいとは言え、認め…」

「黙りなさい!」
雛妃は娘達の前に浮き上がるも声を上げた。

「お前達は誰に口を聞いている!!私は虹龍、おいそれとお前達が口を聞いていい者では無い!弁えなさい!」
雛妃は妖気を解放した。

「ひぃ!!」

「まだ樟葉を苦しめようとする者は前に出なさい。私が相手にはなります。」
長を拳骨一つで倒した雛妃だ、誰一人前にでる娘は居なかった。

「私と戦う勇気も無いのに樟葉の妻になれると思ってるの?!笑わせないで!これ以上私の友達を苦しめないで!」
娘達は誰も口を開けなかった。
それは樟葉と真葛も同じだった。
雛妃の強い妖気に当てられて身体が硬直して動かない。

「う…でも貴女には番が居るのでしょう?なら…樟葉様は…」
やっと口を開いた娘は少し震えていた。
虹色の光を放つ雛妃は神々しく雛妃に見蕩れている娘までいる。

「樟葉は私の友達、それは変わらないわ。後は樟葉が決める事よ。貴女達の中には樟葉の心を動かす者は居なかっただけの事よ。何時か樟葉もきっと出会うわ、唯一の番に。貴女達だってまだ若いもの、男は樟葉だけじゃないわ。本当に愛する人と一生になって。」
娘達は顔を見合わせ、微妙な顔をしている娘も居たが納得したようだった。

「これで一応解決ね。樟葉、吉爺が凄く心配してたよ?私を此処に案内してくれたのも吉爺なの。」

「そうだったんのか、吉爺も雪の里に連れて行くよ。吉爺は僕の世話役だからね。」
樟葉は笑った。

「それにしても、真葛の番が雪女だったなんてね。」
樟葉が真葛に言うと、真葛は頬を染めて頭を掻いた。

「前に遠出をした時に霙と出会ったんです。その時に…」

「恋に落ちちゃったのね?!」
ワクワクしながら聞く雛妃に真葛は苦笑いを漏らした。

「まぁ、そうなりますね。」

「僕も頭を冷やすよ。雛妃を好きなのは変わらないけど雛妃には嫌われたくないからね?雛妃僕とずっと友で居てくれる?」

「うん!!勿論!!」
笑い合う雛妃と樟葉に斎藤は微妙な顔をしていた。

「兄上、雪の里に急ぎましょう。父上が復活してしまう前に…」

「俺が案内する。その方が早いだろう?」

「はぁちゃん!お願い出来る?」

「俺も行きます。霙には遣い烏を放ってありますから。」

「分かった。」
こうして雛妃達は雪の里へ樟葉を送って行く事となった。
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