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現代の章

神社と桜②

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 夢を見た………またあの夢だ。
綺麗な桜………本当に綺麗。
この桜はどうしてこんなに綺麗なんだろう?
淡く光る花弁がヒラヒラと舞い散る。
私は何時も誰かを待ってる、誰かは分からないけどとても優しい声の持ち主。
いつも私を愛しそうに呼んでくれる。

『雛妃………』

そう呼んで貰えるだけで私の心は満たされる。

『雛妃………思………だ………て………』

何?聞こえない。

『雛妃………』

「雛妃‼」ハッと目が覚める。

「蓮………知世ちゃんも………」

私は自分のベットに寝ていた。
心配そうな蓮と泣いている知世ちゃんが居た。

「うっ………頭痛い………」
起き上がるとまた頭痛がした。

「大丈夫か?お前近所の神社で倒れたんだ。」

「神社………?」
あぁそうか、神社に行って急に頭痛がしてそのまま………

「雛妃‼心配したんですよ?急に倒れるから………私………」

また知世ちゃんは泣き出してしまった。

「ごめんね、知世ちゃん心配かけて。もう大丈夫だよ、頭痛がしただけだから。」

「今母さん呼んでくるから。」蓮は部屋を出て行った。

「雛妃、神社に着いて様子がおかしかったですわ。何かあったのですか?」

「ううん、何も………無かったよ。」

「そんな筈ありませんわ!雛妃必死に社に向かって手を伸ばしていたではありませんか!それに誰かを呼んでいました。」

誰か呼んでた?私が?

「分からない………覚えてないんだ。」

嘘………本当は覚えてる。
私に手を差し伸べるあの人が頭から離れない。

「そうですか………でも、何かあったら私に話して下さい。私………雛妃が消えてしまいそうで怖いんです!」

「知世ちゃん………」

「雛妃、目は覚めた?」
ママがドアから顔を出した。

「うん、もう大丈夫だよ。」

「雛妃、あの神社にはもう近付かないで。」
ママが真剣な顔で私の肩を掴んだ。

「何で?私あんな近所に神社があるの知らなかった。」
生まれてからずっと此処に住んでるのに知らなかったなんて………

「いいえ、貴女は知っているわ。貴女はあの神社が大好きだった。」

「えっ?私行ったことないよ?」

「雛妃も知世ちゃんも小さい頃良くあの神社で遊んでいたわよ?」

「えっ?私もですか?」

「そうよ。貴女達は神社の事を忘れてしまっただけ。」

「ママ、忘れたってどういう事?」

「それはね、まだ貴女達が五歳の頃一時期行方不明になったのよ。神社に行って来るって二人で出て行ったきり、三日も帰って来なかった。」

「三日も………」全然覚えてない。

「知世ちゃん覚えてる?」

「いいえ、私も覚えてませんわ。」

「警察に捜索願いを出したり大変だったわ。蓮達もパパも近所を必死に探したわ、でも二人は見つからなかった。三日目になってもうダメかと知夏も私も泣き崩れた。でもね、三日目の夕方ひょっこり帰って来たのよ。二人で手を繋いでお腹すいたーって言って。本当に拍子抜け、私も知夏も涙が引っ込んじゃったわよ。」

「そんな事があったの?」

「知らなかったですわ。」

「そう、でもね帰ってきた貴女達は神社の事を忘れていた。あんなに大好きだったのにね。警察の人は三日も帰れなかった恐怖から忘れたんだろうって。三日もどうしてたのって聞いても二人とも楽しかったってニコニコしてた。知夏と話し合って二人が神社を忘れたなら近づけない様にしようって決めたわ。またあんな思いはしたくないもの、それからあんなに好きだった神社の前を何度通っても二人は目もくれなかった。不思議だったわ。」

不思議なくらい覚えてない………
神社に気付いたのは本当に今日が初めてだし。

「だからあの神社にはもう行かないで。」

「うん、分かった。」

「分かりましたわ。」

こう言うしかなかった、ママがあまりに悲しそうな顔をするから。
でも私はまたあの神社に行きたい、あの男の人が誰なのか知りたい。
神社に行って分かるかは別として、小さい頃大好きだった神社だから懐かしく思ったのかもしれない。




神社に行ってから三日、まだ神社に行けないでいた。
毎日の様にあの夢を見るけど、最近はあの神社が夢に出る様になった。
私が何時も見惚れていた桜はあの神社の桜だったんだ。
今とは少し見た目が違う気がするけど、きっとそうだ。
五歳の私と知世ちゃんは三日も何をしてたんだろう?
あの神社に何かヒントがある気がする。
知世ちゃんとも話したけど、私達は空白の三日を思い出したい。
思い出さなきゃいけない気がする。


 今日の放課後またあの神社に知世ちゃんと行く事にした。
私の夢の事も全部話した、でも夢を見るのは私だけみたいで知世ちゃんは何も見ていないと言った。

「雛妃、いきましょう。神社に行くのでしょう?」

「うん、早く行こう。ママ達に内緒だから暗くなる前に帰らないと。」

鞄に教科書を放り込むと急いで席を立った。
すると手首を誰かに掴まれた。

「えっ?松居君?」
松居君が真剣な眼差しで私を見ていた。

「あ、あの………どうかした?」

「米原………一緒に帰らない?」

えっ?

「駄目ですわ!雛妃は私と約束があるんです。」

知世ちゃんは私の手を掴むとズンズン教室を出た。
慌てて松居君に「じゃあね、また明日。」と言って教室を出た。
そんな私達をずっと見ていた人物が居たとは知らずに。























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