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幕末の章
看板娘③
しおりを挟む今日は酒屋の若様と孝之助さんの団子リベンジです。
奈緒さんに許可を貰って、また街に出る事にした。
前に貰ったお金があるのに、また奈緒さんにお小遣いを貰ってしまった。
この時代のお金の価値は今一分からないんだけど、私の巾着にはじゃらじゃらと銀色のお金が沢山入ってる。
こんなに貰って本当にいいんだろうか?
だから、今日は酒屋の若様にお団子をご馳走する事に決めていた。
この前の御詫びを兼ねて。
そんな事を考えているうちにもうお団子屋さんの暖簾が見えてきた。
「いらっしゃい!」
暖簾を潜れば時さんの元気な声が聞こえた。
「こんちは、この前はすみませんでした。」
ペコリと頭を下げた。
「あらあら、雛妃ちゃん!この前は心配したのよ?でも元気そうで良かった!さぁさぁ、座って。」
時さんに促されて若様と向かい合って座った。
直ぐに時さんがお茶を持ってきてくれて、一息つく。
「今日も団子で良いのかい?そうだ!雛妃ちゃん、餡蜜食べるかい?うちは餡蜜も出せるよ?」
何?餡蜜‼それは是非とも食べたい!
でも……お団子も捨てがたい………2つ?いやっ食べれないよね。
「うぅ………どっちも食べたい。」
「時さん、団子と餡蜜をくれ。」
「はいよ!」
「雛妃ちゃん、半分こしよう。それならどっちも食べれるだろう?」
「えっ?いいんですか?」
「いいよ。」と言って若様は穏やかに微笑んだ。
やった!2つとも食べれ………ちょっと待て、それって間接………‼
一瞬で私の顔が真っ赤になるのが分かった。
顔が熱いよ!
「どうした?顔が真っ赤に、大丈夫?熱でもあるのかい?」
私のおでこに手を当てて熱を計ってくれてる笑うとだけど、逆効果だよ!若様の顔が近くて………
「わっ若様!大丈夫です!熱なんてありませんよ。」
「そうかい?具合が悪くなったら直ぐに言うんだよ?」
「はい。」若様の優しさは心臓に悪いよ!
「はい、お待ちどうさま!団子に餡蜜だよ!」
「ありがとうございます!わぁ、美味しそう!」
私には餡蜜がキラキラして見えた。
「さぁ、食べよう。」
「いただきます!」
餡蜜を一口食べると、甘くて口一杯に幸せが広がった。
「美味しい~!幸せ~!」
「それは良かった、ほら団子もお食べ。」
若様はお団子を一つ分けてくれた。
「じゃあ、若様もはいっ!」
餡蜜を掬うと若様に差し出した。
でも若様は差し出された餡蜜を見て固まってしまった。
どうしたのかと首を傾げると、若様は今度は真っ赤になった。
「おやおや若いねぇ~!」と時さんが此方を見てニヤニヤしている。
そこでやっと気付いた!
私は何て大胆な事を………これはあ~んってやつじゃないか!
「あっ、若様ごめんなさ………」
慌てて手を戻そうとすると、若様に腕を掴まれてしまった。
「若様?」
「いや、頂こう………」
えっ?
若様はゆっくりと餡蜜を口に運んだ………
目が離せなかった、若様は顔を真っ赤にさせているのにずっと私の目を見詰めていて………私の心臓は爆発寸前。
「うん、旨い!」
「わわわわ若様!かかかかか………」
「か?」
間接キスーーーーーーーー!
顔を両手で押さえて思わず俯いた。
待って!これでまた食べたら私も間接キスしちゃうじゃない‼
「お礼に私も雛妃ちゃんに食べさせてあげよう。」
「えっ?」
顔を上げるとすでに若様が餡蜜を掬っているところだった。
えぇぇーーーーーー!
待って!そんなの私にはハードルが高すぎるよ!
まだ蓮達以外と手をツナイダ事もないのに、いきなり男の人にあ~んして貰うなんて!
「はいっ雛妃ちゃん。」
若様は笑顔で私の口元に餡蜜を持っていく。
やるしかないわっ雛妃!女は度胸よ!
一思いに餡蜜を頬張る………残念な事に緊張しすぎて美味しい筈の餡蜜の味が全く分からなかった。
「ちょっと若、うちの店でイチャイチャしないでくれよ。」
そこへまたニヤニヤ顔の孝之助さんが現れた。
「イチャ………!」
「邪魔をするな、孝之助!折角雛妃ちゃんに食べさせていたのに!」
いや若様、折角の餡蜜………味わいたいので自分で食べさせて下さい!
「二人で真っ赤になっちゃって、視てるこっちが恥ずかしいよ。」
「あっ!あの、私厠に行ってきますね!」
「厠なら裏に回ればあるからね。」
私は赤い顔を押さえて、厠に急いだ。
恥ずかしくて居られないよ!
「トイレに来たものの………水洗じゃないのよね。」
この時代の一番の衝撃は、何と言ってもトイレだった。
トイレの事を厠と言うなれば事も知らなかったし、何よりこのトイレ臭いが………
はぁ………溜め息をついて厠から出ると、急に視界が真っ暗になった!
「えっ!何?」
暴れようとすると手を後ろで拘束されてしまった。
「大人しくしな、お嬢さん。」
「だ誰?」
「雛妃ちゃん‼」
「若様?」
「チッ人が来やがったか?仕方ねぇ、嬢ちゃん悪いな。」
ードスッ!
鳩尾に衝撃を受けると私の心臓は意識は遠退いた。
意識を手放すまでずっと若様が私を呼んでいた気がする。
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