13 / 93
幕末の章
再会②
しおりを挟む知世が眠れね夜を過ごしている頃、斎藤と平助は夜の街を見下ろしながら空を飛んでいた。
「斎藤さんは雛妃と会った事あるんだろ?なら斎藤さんが
噂の看板娘を見れば分かるよな?」
確かに会った、しかしそれはあくまで雛妃が幼い頃の話だ。
今でも幼い雛妃の事を鮮明に思い出せる。
“はぁちゃん!”と言って俺に駆け寄る雛妃は本当に可愛かった。
確か、近藤さんはいっちゃん、土方さんはひぃちゃん、総司はそうちゃんだった。
「あぁ………」
「そっか!なら安心だな?」
二人は飛ぶスピードを上げた。
その頃雛妃は………まだ気を失っていた。
街外れにあるボロ屋に雛妃は寝かされている。
そんな雛妃を厭らしい目で見詰める男が四人居た。
「しかし、噂に違わぬ上玉だったな?」
頬に傷のある男が酒を煽りながら言った。
「なぁ、ちょっとくらい味見しちゃ駄目なのか?」
「駄目に決まってんだろ、馬鹿!生娘じゃねぇと値が落ちるだろうが!」
味見をしたいと言った男を浪人風な男が諌めた。
「でもよ~、この足見て見ろよ?たまんねぇな!」
もう一人の泣き黒子が目立つ男が雛妃の足を持ち上げてペロリと舐めた。
「あぁ、滑らかだなぁ。触るくらいいいだろ?」
泣き黒子が言うと、酒を煽っていた男はふんっと鼻を鳴らした。
「好きにしろ。」
それを合図に、泣き黒子はまた足を舐め始め、味見をしたい男は雛妃に近付くと迷わず着物の合わせに手を伸ばした。
力任せに合わせを開くと………
「………………小せぇな………………。」
ガッカリした男の声がボロ屋に響いた。
その瞬間、雛妃の足を掴んでいた男ががぶっ飛び、壁にぶつかると苦しそうに呻いた。
突然の事で外の三人の男は呆然とぶっ飛んだ男を見ていた。
雛妃はゆっくり立ち上がると、足元で呆然としている男を見下ろした。
「小さいって言ったの………貴方?」
呆然としていた男達はハッとして、雛妃を警戒した。
足元の男はビビッたのか、俺じゃねぇ俺じゃねぇと後ずさった。
「貴方の声で間違いないわ………」
言い終わるか言い終わらないうちに雛妃は足元の男を蹴り飛ばした。
そして、俯いて動かなくなった雛妃を見て浪人風の男は刀に手を掛けた。
酒を煽っていた男は、雛妃の目隠しを外したのを後悔し始めていた。
か弱い娘一人、手を縛っておけば大丈夫だと思ったが、今はどうだ?
大の男をこんな小さな娘が二人も蹴り飛ばしたのだ。
浪人風の男は刀に手を掛けたまま、ゆっくりと雛妃に近付いて行った。どうやら震えている様だ。
「お嬢ちゃん、震えてるのか?大人しくしてれば悪いようにはしない。」
「し………」
「し?」
俯いていた顔を上げると雛妃は叫んだ。
「信じられない‼私を拐っておいて………胸が小さいですって?!どんだけ巨乳の女しかしらないのよ‼」
雛妃の剣幕に男達はキョトンッとするしかない。
てっきり怖がっているものだと思っていたが、実は雛妃は怒りに震えていたのだ。
「私これでもCカップよ?!それにまだまだ成長期なんだから‼本当に信じられない‼」
「しーかっ?」
「勝手に人の胸見たくせに!この時代の男にはデリカシーはないの?!」
「でり………?」
「女の敵は私がここで、お仕置きしてやるわ‼」
大きな目に涙を一杯に溜めて、雛妃は肩で息をした。
浪人風の男に狙いを定めるとゆっくりと近付く。
「お嬢ちゃん‼落ち着け!胸の事は悪かった!」
「謝られると………!余計………!惨めになるの………!よっ‼」
浪人風の男にも蹴りをお見舞いした。
この小さな娘から放たれたとは思えない重たい蹴りに膝をつく。
酒を煽っていた男はそんな雛妃に見惚れてしまっていた。
はだけた着物から除く白い足、動く度にキラキラと絹が舞う様に散る美しい髪、露になってしまった胸を気にする事無く晒していて………その胸も白く形がいい。
大き過ぎず小さ過ぎず、触ってみたいとすら思ってしまう。
動いたからか、上気した頬は桃色になり、ぷっくりとした唇からは熱い息を吐く。
なんとも妖艶に男の目には映った。
「貴方も私の胸を小さいって言いたいの?」
「違う………俺は………」
「女の子はデリケートなのよ?簡単に胸やスタイルの事を言っちゃ駄目なの!」
「でり………?すたい?お前はさっきから分からない言葉を使うな?お前は異人なのか?」
「はっ?そんなの貴方に関係ないでしょ?」
「いや、お前を売るのは止める………俺の女にならないか?」
えっ?この人何言ってんの?
「貴方、頭打ち可笑しいの?何で私が自分を拐った貴方の女になるのよ!絶対にお断りよ!」
「まぁな、そうなるよな。でも良いのか?」
「何がよ?」
「前………」
「前?」
自分の胸元を見て、目を見開いた。
すっかり忘れてたわ!
「丸見えだぞ?」
「いやぁぁぁぁあ!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
162
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる