53 / 125
惑星エルリス
1-52
しおりを挟む「ちょっと待ってくれ…おま…総帝様は家を、家族を捨てたんじゃないのか?ですか?」
動揺したのか若者は言葉がおかしくなっていた。
「捨てられたのは私ですよ?どうやら原因は私にある様ですね?何が知りたいのですか?答えられる事は答えますよ?」
「クロエ…クロエを知っていますですか?」
風帝が若者の言葉使いに今にも吹き出しそうになっている。
つられそうなので辞めて欲しいです。
「クロエは私の元母親ですよ。それがどうしたんですか?」
「クロエ…は俺の今の母さんなんだ。父さんが母さんに惚れて再婚したんだ。でも…母さんは何時までたっても俺と父さんを見てくれないんだ。母さんはずっとアンタの事しか言わない。終いには俺をアンタと勘違いし始めた。だから母さんに聞いたんだ、アンタの事を。」
まさか、ここでクロエの名が出るとは思っていなかったクロードも少なからず動揺していた。
「母は何と言っていましたか?」
「アンタは家族を捨てて出て行ったと、家族を捨てて貴族の家に取り入って上手く養子に入り総帝の座に就いたって。本当なら母さん達がエデンに呼ばれ優遇されて暮らす筈だったと、だから俺はアンタが嫌いだった。家族を捨る様な最低な奴が総帝になるなら帝なんて要らないと思った。そんな奴が民を思い助けられる筈が無いって思ったんだ。」
クロードは拳を握りしめた、ここにも母クロエの被害者が居る事に。
「馬鹿を言うんじゃねえ!!全部出鱈目だ!!お前は母に自分を見て貰えなくて拗ねてる餓鬼じゃねえか!!総帝様が簡単に今の地位に居ると思ってるのか?!総帝の地位はそんな軽いもんじゃねえんだよ!!」
ラファイは殺気も隠さず怒鳴った。
「両親に愛して貰えずに、ボロボロよ服を着て物置に閉じ込められ与えられるのは一日一度のスープだけ。お前は本当の母にも父にも愛されて育ったのだろう?お前には一生総帝様の気持ちは分からねえよ。」
初めて聞くクロードの素性に若者だけで無く、帝達も顔を顰めた。
「そうですね、それから私は人買いから逃げて森に入りました。そこで雷の精霊王であるラウと会い10歳になるまでラウと共に森で暮らしていました。その頃です今の母さんに拾われたのは。貴方は私の義理の弟になるんですかね?貴方名前は?」
「カイルだ。」
カイルは俯いたまま動かない。
他の仲間達も不安そうに事の成り行きを見守っている。
カイルがリーダーだったんでしょう。
「そうですか、カイル。私は貴方の兄として何もしてあげれる事はありません。母クロエとも縁を切っています。一つ聞いていいですか?」
「はい。」
既にカイルは戦意喪失、大人しくなった。
「総帝の執務室にどうやって手紙を置いたのですか?私の部屋には簡単には入れないのですよ、帝でも苦戦する結界が張ってありますから。侵入者が居れば直ぐに分かるんですよ。」
「えっ?手紙は…知らない男に総帝様に届けてやると言われて渡しただけ…」
「おや、また怪しい奴が出て来おったわい。」
「どんな男だったのかしら?」
「そこの人見たいに真っ黒だった。フードで顔は見えなかったけど、背は高かった。」
カイルが指を指したのは闇帝、確かに闇帝は何時も真っ黒ですからね。
自分が指を刺されると思っても見なかった闇帝はアタフタしていた。
最近の闇帝は見ていて可愛らしいです、年上ですが。
「成程のぅ。事の次第は分かった、総帝様この若者達の沙汰はどうするんじゃ?」
「そうですね、カイル達の行動は私に責任があります。よって責任は私が取ります。カイル達は早々に村へ帰るのが良いでしょう。」
まさか無罪放免になるとは思って居なかったカイルも仲間達も驚いていた。
「カイル、母クロエについて何かあれば私に手紙で知らせて下さい。対処しましょう。この印を持って行って下さい。手紙にこの印を押せば速達で私の元に手紙が届きます。」
クロードはカイルの手に印を握らせた。
「あの…兄さん…」
カイルは呟いた。
「私は貴方の兄ではありません。私には恩を返さなければならない新しい家族がいます。しかし、私の義理の弟にカイルと言う若者が居る事は覚えておきます。」
カイルは悲しそうな顔をした。
「私の情報は極秘です。村へ行っても私の事は話さない様にお願いします。話せば今度は見逃せなくなってしまいますから。」
カイルは分かりましたと言って帰って行った。
その姿を執務室の窓から見送るクロードは悲しい顔をしていた。
そんなクロードを見てほくそ笑む黒い影が一つ、夕日を背にローブを靡かせていた。
「もう少し帝達を動揺させる事が出来るとおもったのですが、今の総帝は食えない男の様ですね?帝達との絆も深い、内部から亀裂を入れるのは無理ですかね。今一度考え直しましょう。」
黒い影はフワリとローブを翻すと音もなく姿を消した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる