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惑星エルリス
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しおりを挟む「ちょっと待ってくれ…おま…総帝様は家を、家族を捨てたんじゃないのか?ですか?」
動揺したのか若者は言葉がおかしくなっていた。
「捨てられたのは私ですよ?どうやら原因は私にある様ですね?何が知りたいのですか?答えられる事は答えますよ?」
「クロエ…クロエを知っていますですか?」
風帝が若者の言葉使いに今にも吹き出しそうになっている。
つられそうなので辞めて欲しいです。
「クロエは私の元母親ですよ。それがどうしたんですか?」
「クロエ…は俺の今の母さんなんだ。父さんが母さんに惚れて再婚したんだ。でも…母さんは何時までたっても俺と父さんを見てくれないんだ。母さんはずっとアンタの事しか言わない。終いには俺をアンタと勘違いし始めた。だから母さんに聞いたんだ、アンタの事を。」
まさか、ここでクロエの名が出るとは思っていなかったクロードも少なからず動揺していた。
「母は何と言っていましたか?」
「アンタは家族を捨てて出て行ったと、家族を捨てて貴族の家に取り入って上手く養子に入り総帝の座に就いたって。本当なら母さん達がエデンに呼ばれ優遇されて暮らす筈だったと、だから俺はアンタが嫌いだった。家族を捨る様な最低な奴が総帝になるなら帝なんて要らないと思った。そんな奴が民を思い助けられる筈が無いって思ったんだ。」
クロードは拳を握りしめた、ここにも母クロエの被害者が居る事に。
「馬鹿を言うんじゃねえ!!全部出鱈目だ!!お前は母に自分を見て貰えなくて拗ねてる餓鬼じゃねえか!!総帝様が簡単に今の地位に居ると思ってるのか?!総帝の地位はそんな軽いもんじゃねえんだよ!!」
ラファイは殺気も隠さず怒鳴った。
「両親に愛して貰えずに、ボロボロよ服を着て物置に閉じ込められ与えられるのは一日一度のスープだけ。お前は本当の母にも父にも愛されて育ったのだろう?お前には一生総帝様の気持ちは分からねえよ。」
初めて聞くクロードの素性に若者だけで無く、帝達も顔を顰めた。
「そうですね、それから私は人買いから逃げて森に入りました。そこで雷の精霊王であるラウと会い10歳になるまでラウと共に森で暮らしていました。その頃です今の母さんに拾われたのは。貴方は私の義理の弟になるんですかね?貴方名前は?」
「カイルだ。」
カイルは俯いたまま動かない。
他の仲間達も不安そうに事の成り行きを見守っている。
カイルがリーダーだったんでしょう。
「そうですか、カイル。私は貴方の兄として何もしてあげれる事はありません。母クロエとも縁を切っています。一つ聞いていいですか?」
「はい。」
既にカイルは戦意喪失、大人しくなった。
「総帝の執務室にどうやって手紙を置いたのですか?私の部屋には簡単には入れないのですよ、帝でも苦戦する結界が張ってありますから。侵入者が居れば直ぐに分かるんですよ。」
「えっ?手紙は…知らない男に総帝様に届けてやると言われて渡しただけ…」
「おや、また怪しい奴が出て来おったわい。」
「どんな男だったのかしら?」
「そこの人見たいに真っ黒だった。フードで顔は見えなかったけど、背は高かった。」
カイルが指を指したのは闇帝、確かに闇帝は何時も真っ黒ですからね。
自分が指を刺されると思っても見なかった闇帝はアタフタしていた。
最近の闇帝は見ていて可愛らしいです、年上ですが。
「成程のぅ。事の次第は分かった、総帝様この若者達の沙汰はどうするんじゃ?」
「そうですね、カイル達の行動は私に責任があります。よって責任は私が取ります。カイル達は早々に村へ帰るのが良いでしょう。」
まさか無罪放免になるとは思って居なかったカイルも仲間達も驚いていた。
「カイル、母クロエについて何かあれば私に手紙で知らせて下さい。対処しましょう。この印を持って行って下さい。手紙にこの印を押せば速達で私の元に手紙が届きます。」
クロードはカイルの手に印を握らせた。
「あの…兄さん…」
カイルは呟いた。
「私は貴方の兄ではありません。私には恩を返さなければならない新しい家族がいます。しかし、私の義理の弟にカイルと言う若者が居る事は覚えておきます。」
カイルは悲しそうな顔をした。
「私の情報は極秘です。村へ行っても私の事は話さない様にお願いします。話せば今度は見逃せなくなってしまいますから。」
カイルは分かりましたと言って帰って行った。
その姿を執務室の窓から見送るクロードは悲しい顔をしていた。
そんなクロードを見てほくそ笑む黒い影が一つ、夕日を背にローブを靡かせていた。
「もう少し帝達を動揺させる事が出来るとおもったのですが、今の総帝は食えない男の様ですね?帝達との絆も深い、内部から亀裂を入れるのは無理ですかね。今一度考え直しましょう。」
黒い影はフワリとローブを翻すと音もなく姿を消した。
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