四人の魔族とおいしい私

片茹で卵

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吸血鬼6

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 そろそろ日付が変わるという時刻になっても、私は全然寝付けなかった。ベッドの中で何度も寝返りを打ったり、クッションに顔を押し付けたりしたけれど、目を閉じるとヤケイさんとしたことが瞼裏に浮かんでしまって。

(……まだ身体が熱い感じがする……)

 あの後、吸血の副作用が抜けるまで何度もイッた。ヤケイさんと、自分の手で。身体中くまなく触れられて、弄り過ぎて赤くなってしまった乳首を優しく吸われて。しこりだけでなく、中で気持ち良くなる触り方も教えられて。

  嫌じゃなかった。今も、一時的な症状に流された後悔よりも、目が眩むような快感の記憶の方が大きい。ここに住み始めてから自分がどんどん変わっていくようで、怖いのに、無理だって思うのに、欲しいと思う気持ちがどんどん膨らんでいくのがわかる。
 
(吸血で力を抑えられるって言っても、血を吸われるたびにああなったら、どうしようもないんじゃないかな……頻度も高いし)

 ヤケイさんの説明によると、吸血だけで抽出できる魂は量が多くないから、日常生活を送るには一日一回、できれば二回吸うことが望ましいらしい。朝は学業に支障が出るから、帰宅してから二回。その度に副作用に耐えて、自分で慰めて、きっとそれだけじゃ足りなくて誰かに静めてもらう。

 そんなの。
 それなら。

 私は細く息を吸って、吐き出した。


「……セ、セックスしても、変わらないよね」


 口にすると、自分がとんでもないことを考えていると自覚する。頭の隅を過ぎるたびに、絶対に駄目だと否定してきた方法。でも、他に何ができるだろう? この体質である限り、決して指輪を外さないよう気をつけて、それでも溢れてしまう力は調整するしない。見ず知らずの人とっていうわけじゃないし、何かあれば相談できる相手もいる、だから――

『人間の魂って魔族の力と惹かれ合うんだよ。それは強大であればあるほど顕著で、魔族がきみの魂に惹かれるようにきみも本能的に強い魔力を求めている』

 イスラさんの声が不意に耳元によみがえって、咄嗟に身を震わせた。
 もしかしたら、私は自分でも気が付かないところで本能に支配されて、他の方法を探すことを放棄しているのかもしれない。これじゃないといけないのだと自分を納得させようとしているのかもしれない。何度も頭の芯が蕩けて、正解がわからなくなっている。

 でも。

「……ぁ」

 服の上からそっと胸に触れると、少し硬くなった乳首が指に当たった。それだけで、今日のことを思い出してしまう。性感の波に晒されながら、何を求めていたか。ヤケイさんに深いところを探られるたびに、何を思い描いたか。

「わた、し……」

 これ以上、我慢できないと思った。だって、今も奥が熱くて、切ないように疼いて、誰かに埋めてほしくて。だから、必要に迫られているか本能に侵食されているかなんて、関係なかった。どちらであっても同じなのだから。

 ただ、私は。
 どうしようもなく。
 苦しいほど。


「……もっと、いっぱい欲しい……」


 掠れきった囁きが夜のしじまに溶けていく。熱い呼吸を耳元で聞きながら、私はゆっくりパジャマのボタンに手をかけた。
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