PatchyX-パッチークロス-

磯部ショーヤ

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【第3世:もうひとりの自分】

個性的な人間たち(社長視点)

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    会議室に着くと、すでに席についている四人の男たちがいた。

 皆、それぞれ紫や金、黒やピンクなど、一人として同じ髪色をしていないうえに、髪型も服装もこれまた個性的な人間ばかりで、外見からしても社会的に論外な人ばかりが座っていた。

 一人目はヘラヘラと笑いながら立て肘をついてこちらを見ている糸目の男。
    薄紫色の髪を左半分だけかき上げてヘアピンで止めたようなチャラチャラした髪型で、キラキラしたアクセサリーを首や腰元につけている見た目も中身もチャラそうな男。

 二人目は不気味にニコニコと笑顔を貼り付けて、カフェの店員のような格好をした金髪マッシュヘアーの礼儀正しく座る男。

 三人目は手入れされていないボサボサの天然パーマにダラダラと着崩したジャージ。机に上げた両足には便所サンダルが履かせられていて、その風貌からイマイチ清潔感が見られない男。

 四人目は薄い桃色の髪をセンター分けにして、毛先を後ろから前へと斜めに真っ直ぐ切り揃えているヴィジュアル系の男。
    何故ヴィジュアル系だと思ったのかは、偏見かもしれないが全身黒のレザー衣装に首周りにはファーを巻きつけ、目元を真っ黒に塗りたくった化粧…、ファッションもメイクもどこかヴィジュアル系を連想させる見た目だったからだ。



 一言だけ言わせてもらうと、どいつもこいつも『社会人』には程遠い格好ばかり。



 そういう私自身も改めて自分を見直すと、袖の伸びきったどう見てもサイズの合ってないTシャツには継ぎ接ぎ模様があしらわれており、下は黒のレギンスに軍が履くようないかついブーツ……。
    人の事をとやかく言う権利はどこにも見当たらない。

 この中で唯一『社会人』に近い格好をしてるのは、私の傍らに立つスーツ姿で眼鏡の鈴木ぐらいかもしれないと思うと、一体なんなんだこの団体はと心底不安に駆られた。



 「集合はやっぱり社長がビリやなぁ~。なあ?ボクの言うたとおりやろ~?」と自慢気な糸目の男。

 「やはり僕は賭け事に弱いですね…」とそれでもニコニコと笑顔を貼り付ける男。

 「オレは鈴木さんが一緒にいるからビリはありえねえと思ってけど甘かったか~」と気の抜けるような呑気な口調のジャージの男。

 「ボクはキミが最後に来ると思ってたけどねえ…神一郎しんいちろう?」と糸目の男を見てクスクスと笑うビジュアル系の男。

 そして、ビジュアル系の男にそう言われた糸目の男はむっと顔をしかめ、言い返すように言葉を紡ぐ。



 「照光てるみつさぁ、…まず居候って会議に参加する必要ないやろ。去ねや」



 「むきになるなんて可愛いねぇ。キミのそういうところ、好きだねぇ。クックック…」



 「白目で笑うな。気持ち悪いわ」



 次々に飛び交う漫談のような会話に私がどう話に折り目をつければいいかわからなくなっているのを察したのか、傍らに立っていた鈴木さんが神一郎しんいちろうと呼ばれた糸目の男に近づいていった。

 鶴の一声でも出るのかと期待しながら私は鈴木の後ろ姿を見ていたが、鈴木は神一郎の目の前に立つと自分の長い脚を大きく振り上げた。
 私は手で支えなくても高々と天に伸びるその柔軟な脚に感心して目を奪われていたが、その脚が次にどうなるかまでは予想していなかった。

 重力に逆らって高々と上げられた脚は、今度はその重力に従うように真っ逆さまに振りおろされ、その速度は重力の力を借りてさらに速度と威力を上げながら落ちた。



 神一郎の、頭の上に。



 それは殺人級の踵落としと言っても過言ではないだろう。

 鈴木の踵と神一郎の頭蓋が接触した部分からベキベキと鈍い音が鳴り、接触して静止するかと思っていたその恐ろしい踵落としは、さらにベキベキと蹴り進んでいき、ついに神一郎の額を机に叩きつけた。

 これで終わりだろうと安堵したのも束の間。蹴り進んだ踵はさらにそのまま机を真っ二つに蹴破ってしまったのだった。



 真っ二つに裂けた机だった物の瓦礫に埋もれてしまった神一郎は全く動かない。あの垂直に下ろされた踵落としを食らって意識があるどころか、生きているのかさえも怪しい。

 死んだな…、と悟った瞬間。「何すんねーーーーん!!!」と飄々とした声でツッコミを入れながら、瓦礫の中から飛び起きる神一郎の叫声が会議室に響き渡った。

 その声が響き渡ると同時に、神一郎に驚いた私は反応が出なくなっていた。

 それは「生きていた」という驚きよりも、問題はそこではなく「机が叩き割れる威力の踵落とし」を食らいながら、「傷ひとつない」神一郎に対しての驚きだった。



 まるで手品のようなその光景に私はふたりの間から必死にタネ探しをしたが、驚いているのはどうやら私だけのようで、この行動が少し恥ずかしいと気づいた。

 他の三人は興味なさそうにスマホをいじったり、爪の手入れをしたり、外を見つめたり、あまりの関心の無さにそこにも驚きだ。



 「お兄ちゃんに向かって脚を上げるとは何事やねん!!」
 


 「黙らねえとそろそろ本気で黙らせるぞ、兄貴」



 私と話す時とはまるで別人と化した冷徹な表情を見せる鈴木の変化。

 もう驚いてばかりで、私の心臓が次々に迫る状況に対応が追いついてくれない。あと数時間もすれば衝撃に耐えられなくなってこの心臓はいつか停まる、と私は己の余命を悟った気がした。



 一体なんなんだこの人間たちは…。
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