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【第4世:五等爵とは】
重度の病に侵されて(社長視点)
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「社長、しかしお願いがあります」
「なに?」
鈴木は王の前に伏す騎士のように私の前に跪き、私の手を自分の両手で包み込んだ。
堅く、ぎゅっと、何か強い気持ちを込めながら。
「私はずっと貴方に、"貴方のまま"でいてほしい」
「どういう意味だ…?」
「これから先、貴方は何を知っても、何を思い出しても、"今のままの貴方"でいてほしいのです」
「どうしてそんなに心配するの?私は私だよ」
「昔の貴方は、今の貴方とは程遠い男でした。手の施しようのない……病気だったんです」
病気。
自分がそこまで重度の患者だったなんて全然知らなかった。
心も身体も、こんなに快調なのに一体どんな病気を抱えていたのだろう、昔の私は。
そして、何故その"病気"のことを私は思い出せないのだろう。その病気は今はどうなってしまったのだろう。完治したのだろうか?
「…その病気はどうなったの?」
「今は貴方の奥深くに抑えこみました。でも、消えたわけではないので、いつまた発病するかわかりません。だから、私たちは貴方にそのことを黙っていました」
「そうなんだ…」
「とにかく、それと五等爵との関係はまた後でお話します。今はこんなところで話を続けるわけにはいきません。続きは場所を移してからにしましょう」
「そうだね」
「私は兄貴と一緒に綾小路の安否確認をしてきます。社長はモチーフと赤木と一緒に、先にブラッド博士の処へ避難しててください。いつまた次の五等爵が来るかわかりませんから」
「ブラッド博士って?」
「きっと私たちを助けてくれる方です。モチーフ、社長を頼んだぞ」
そう告げて社長とモチーフを部屋に残し、足早に兄貴と部屋を出た俺。
その後ろで蛇のような兄貴の顔は、その顔をさらに歪めてクツクツと喉で不気味に笑っていた。その笑っている理由を俺はわかっていた。
「"病気"、やなんて上手い言い回ししはったなぁ…。ボク、一瞬ほんまに一哉がベラベラとバラすんやないかてヒヤヒヤしたわ~」
「…しゃべっていたら、どうしていた?」
「殺してたに決まってるやろ」
「………」
「冗談やて♪大好きな一哉にそんなことするはずないやろ~♪」
兄貴は飄々ととぼけていたが、一瞬感じ取った殺意は本物だった。
きっと兄貴は俺が社長に本当のことを話していたら、恐らく俺を殺していただろう。その後は俺の傍らで飄々と嘘八百を並べ立てて、社長を上手く丸め込むに違いない。
この男はそれができる男だ。
同僚でも、友達でも、子供でも女でも…弟でも、何の躊躇いもなく殺せる男だ。
それが初代五等爵・第一位『公爵』の爵位に着いていた、東大寺神一郎という男だ。
社長を病気と例えたのはあながち間違いではないだろう。今のヴァイカウントたち二代目・五等爵なんかとは比べ物にならない。
初代・五等爵たちは重度の"病気"に侵された者たちばかりだったから。
「なに?」
鈴木は王の前に伏す騎士のように私の前に跪き、私の手を自分の両手で包み込んだ。
堅く、ぎゅっと、何か強い気持ちを込めながら。
「私はずっと貴方に、"貴方のまま"でいてほしい」
「どういう意味だ…?」
「これから先、貴方は何を知っても、何を思い出しても、"今のままの貴方"でいてほしいのです」
「どうしてそんなに心配するの?私は私だよ」
「昔の貴方は、今の貴方とは程遠い男でした。手の施しようのない……病気だったんです」
病気。
自分がそこまで重度の患者だったなんて全然知らなかった。
心も身体も、こんなに快調なのに一体どんな病気を抱えていたのだろう、昔の私は。
そして、何故その"病気"のことを私は思い出せないのだろう。その病気は今はどうなってしまったのだろう。完治したのだろうか?
「…その病気はどうなったの?」
「今は貴方の奥深くに抑えこみました。でも、消えたわけではないので、いつまた発病するかわかりません。だから、私たちは貴方にそのことを黙っていました」
「そうなんだ…」
「とにかく、それと五等爵との関係はまた後でお話します。今はこんなところで話を続けるわけにはいきません。続きは場所を移してからにしましょう」
「そうだね」
「私は兄貴と一緒に綾小路の安否確認をしてきます。社長はモチーフと赤木と一緒に、先にブラッド博士の処へ避難しててください。いつまた次の五等爵が来るかわかりませんから」
「ブラッド博士って?」
「きっと私たちを助けてくれる方です。モチーフ、社長を頼んだぞ」
そう告げて社長とモチーフを部屋に残し、足早に兄貴と部屋を出た俺。
その後ろで蛇のような兄貴の顔は、その顔をさらに歪めてクツクツと喉で不気味に笑っていた。その笑っている理由を俺はわかっていた。
「"病気"、やなんて上手い言い回ししはったなぁ…。ボク、一瞬ほんまに一哉がベラベラとバラすんやないかてヒヤヒヤしたわ~」
「…しゃべっていたら、どうしていた?」
「殺してたに決まってるやろ」
「………」
「冗談やて♪大好きな一哉にそんなことするはずないやろ~♪」
兄貴は飄々ととぼけていたが、一瞬感じ取った殺意は本物だった。
きっと兄貴は俺が社長に本当のことを話していたら、恐らく俺を殺していただろう。その後は俺の傍らで飄々と嘘八百を並べ立てて、社長を上手く丸め込むに違いない。
この男はそれができる男だ。
同僚でも、友達でも、子供でも女でも…弟でも、何の躊躇いもなく殺せる男だ。
それが初代五等爵・第一位『公爵』の爵位に着いていた、東大寺神一郎という男だ。
社長を病気と例えたのはあながち間違いではないだろう。今のヴァイカウントたち二代目・五等爵なんかとは比べ物にならない。
初代・五等爵たちは重度の"病気"に侵された者たちばかりだったから。
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