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第一章 マグメル編 マグメルのダンジョン経営
戦利品
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第一階層、連絡通路の入り口がある巨岩の前。マグメルとアプロディーテは蛇女ラミアを待っていた。
「さすがラミアちゃんね、簡単に侵入者を片付けてくれたわ」
「ラミアさんをあの通路に配置したのは大正解でしたね」
「『福音』でラミアちゃんを仲間にできたことは大きいわ。500魔素を使った甲斐があったわね」
暗い通路から美しい女性が音もなく現れた。透き通るような色白の肌、美しく光を反射する青白い鱗。闇の世界の住人のオーラを強烈に放つその女性は蛇女ラミア。
ラミアはマグメルとアプロディーテと目が合うと、その冷厳な表情を崩し笑みをこぼす。
「マグメル様、侵入者めを血祭りにあげておきました。アプロディーテ様の罠にかかった連中も回収して参りました」
ラミアはそう言うと、三叉槍に串刺しにしていた侵入者たちを草原に降ろした。
「お疲れ様、ラミアさん。侵入者の相手を押し付けてしまってすみません」
「滅相もありません。私めも狩りを楽しめて大変満足しておりますゆえ……」
ラミアは草原に転がっている侵入者にちらりと目をやった。ラミアの瞳孔が針状に細くなっていく。
「あっもしかして、こいつらを食べたいとか?」
「え! いえ、そのぉ……」
ラミアはしおらしくうつむき加減になる。紺碧のウェーブの髪から覗くその顔は紅潮していた。
「マグメルちゃん! 女性にその言い方は失礼でしょ。デリカシーのない男はサイテー」
「あ、失礼しました! すいません、ラミアさん!」
深々と頭を下げるマグメル。ラミアはそんなマグメルを見て申し訳なさそうに答える。
「あ、そんな! マグメル様、お気になさらず……」
そんな二人のやりとりに肩をすくめるアプロディーテ。
「あ、そうだ。女神様、通路に仕掛けた罠ってどんなものだったのですか?」
「ああ、〈赤薔薇の監獄〉と〈黒薔薇の幽香〉のことね」
「赤薔薇と黒薔薇ですか」
「そう。そこに干からびている侵入者いるでしょ。そいつが赤薔薇の餌食になったのね。この魔法の罠にかかった獲物は鋭い棘のついた蔓で締めあげられて、血を吸い尽くされる。その血を養分にしてとても綺麗な薔薇を咲かすのよ」
「確かに、この侵入者に似合わない美しい薔薇の花が咲いておりましたわ」
「でしょう! ラミアちゃん、趣味が合いそうだわ」
アプロディーテとラミアは顔を見合わせて笑った。
「……女神様もラミアさんも怖い」
マグメルは二人に聞こえないよう小さな声で言った。
「なぁに? 何か言ったマグメルちゃん?」
「い、いえ。怖い魔法だなと言っただけです。ところで、もう一つの黒薔薇の方はどういったものですか?」
マグメルは慌てて取り繕った。
「黒薔薇の罠の方はとてもシンプルよ。黒薔薇が芳香を放って、それを吸うと即死。そこの傷の少ない侵入者かな、罠にかかったのは。その子は自分が死んだことにも気づかなかったでしょうね。ある意味、幸せ者だわ」
「へぇ、色によって様々な効果があるのですね。今度、他の色の効果も教えてくださいね」
アプロディーテは「喜んで」と言うと、侵入者の方に手をかざした。侵入者の死骸に赤い薔薇の花弁が降り積もっていく。
「ところでラミアちゃん、その手に持っているのは何かしら?」
「あ、それ。僕も気になってました」
二人はラミアが左手に持つ血まみれのナイフのような武器を見つめる。
「これは侵入者の人間が持っていたナイフです。マジックアイテムと思われますが」
ラミアは血のついた鞘から静かにそのナイフの刀身を抜いた。
「鞘から抜くと、このように赤黒い炎が刀身の周りに現れます」
「うわ……見るからに禍々しいですね」
「先ほど、試しに人間の手をこのナイフで切って見ました。すると、黒い炎が傷口から立ち上り、骨も残さず消し炭となるまで燃え続けました」
マグメルはラミアからそのナイフを受け取って自分のクリスタルで調べてみた。
【黒炎ナイフ】
切った対象を地獄の黒い炎で焼き尽くす。その炎は対象を焼き尽くすまで決して消えることはない。引火した対象も同様。
「マグメルちゃん、戦利品としてもらっておきなさいよ。役に立つかもしれない」
「……はい、使えるようにがんばって練習してみます。誤って自分の体を切らないようにしないとですね」
マグメルは【黒炎ナイフ】を鞘に恐る恐る収めた。アプロディーテがその鞘にそっと人差し指を乗せる。
「〈泡沫浄化〉」
アプロディーテの触れた部分からキラキラと輝く小さな泡が発生して鞘を包み込んでいく。すると、見事に血の汚れが消えていくでのあった。
「ありがとうございます、女神様」
「不潔なのはこの洞窟から撲滅よ」
アプロディーテはマグメルの鼻先をその指先で優しく弾いた。
「もう一つ、男が持っていたマジックアイテムと思しきものがあります」
ラミアはマグメルに【圧搾の指輪】を渡した。マグメルは緑の宝石の指輪をしげしげと見つめる。
「これ魔素をつかもうとしている悪魔の手みたいですね……」
【圧搾の指輪】
死体や壊れた物体から魔素を搾り取る効果がある。魔素を搾り取られた対象はこの世から完全に消失してしまう。
「ふぅん、魔素集めにいいじゃない。それも貴方が持ってなさい」
「え、いいのですか? これは女性のラミアさんがいいのでは」
侵入者の死体をチラチラと横目で見ていたラミアは、マグメルの突然の提案にうろたえる。
「マ、マグメル様、お気持ちは大変ありがたいのですが、私めは結構でございます」
「マグメルちゃん、おとなしくもらっておきなさい」
「え、そうですか……わかりました。それなら僕がいただいておきますが、なんかいいのかな……」
ブツブツと独り言を言いながらマグメルは左手の薬指にはめた。
「えっ」
アプロディーテとラミアが声を揃えて驚く。
「マグメルちゃん、貴方……」
「はい?」
「……まぁいいわ。ラミアちゃん、侵入者の後片付け頼むわね」
アプロディーテはラミアに目配せをした。ラミアの瞳に獣の色が宿る。
マグメルはなぜ二人が驚いたのかまだわかっていないようで、キョトンとした顔をしていた。
▫️
マグメルが今回入手した戦利品リスト
【黒炎ナイフ】
【圧搾の指輪】
ボーンナイフ五本
ランプなどの備品数種
「さすがラミアちゃんね、簡単に侵入者を片付けてくれたわ」
「ラミアさんをあの通路に配置したのは大正解でしたね」
「『福音』でラミアちゃんを仲間にできたことは大きいわ。500魔素を使った甲斐があったわね」
暗い通路から美しい女性が音もなく現れた。透き通るような色白の肌、美しく光を反射する青白い鱗。闇の世界の住人のオーラを強烈に放つその女性は蛇女ラミア。
ラミアはマグメルとアプロディーテと目が合うと、その冷厳な表情を崩し笑みをこぼす。
「マグメル様、侵入者めを血祭りにあげておきました。アプロディーテ様の罠にかかった連中も回収して参りました」
ラミアはそう言うと、三叉槍に串刺しにしていた侵入者たちを草原に降ろした。
「お疲れ様、ラミアさん。侵入者の相手を押し付けてしまってすみません」
「滅相もありません。私めも狩りを楽しめて大変満足しておりますゆえ……」
ラミアは草原に転がっている侵入者にちらりと目をやった。ラミアの瞳孔が針状に細くなっていく。
「あっもしかして、こいつらを食べたいとか?」
「え! いえ、そのぉ……」
ラミアはしおらしくうつむき加減になる。紺碧のウェーブの髪から覗くその顔は紅潮していた。
「マグメルちゃん! 女性にその言い方は失礼でしょ。デリカシーのない男はサイテー」
「あ、失礼しました! すいません、ラミアさん!」
深々と頭を下げるマグメル。ラミアはそんなマグメルを見て申し訳なさそうに答える。
「あ、そんな! マグメル様、お気になさらず……」
そんな二人のやりとりに肩をすくめるアプロディーテ。
「あ、そうだ。女神様、通路に仕掛けた罠ってどんなものだったのですか?」
「ああ、〈赤薔薇の監獄〉と〈黒薔薇の幽香〉のことね」
「赤薔薇と黒薔薇ですか」
「そう。そこに干からびている侵入者いるでしょ。そいつが赤薔薇の餌食になったのね。この魔法の罠にかかった獲物は鋭い棘のついた蔓で締めあげられて、血を吸い尽くされる。その血を養分にしてとても綺麗な薔薇を咲かすのよ」
「確かに、この侵入者に似合わない美しい薔薇の花が咲いておりましたわ」
「でしょう! ラミアちゃん、趣味が合いそうだわ」
アプロディーテとラミアは顔を見合わせて笑った。
「……女神様もラミアさんも怖い」
マグメルは二人に聞こえないよう小さな声で言った。
「なぁに? 何か言ったマグメルちゃん?」
「い、いえ。怖い魔法だなと言っただけです。ところで、もう一つの黒薔薇の方はどういったものですか?」
マグメルは慌てて取り繕った。
「黒薔薇の罠の方はとてもシンプルよ。黒薔薇が芳香を放って、それを吸うと即死。そこの傷の少ない侵入者かな、罠にかかったのは。その子は自分が死んだことにも気づかなかったでしょうね。ある意味、幸せ者だわ」
「へぇ、色によって様々な効果があるのですね。今度、他の色の効果も教えてくださいね」
アプロディーテは「喜んで」と言うと、侵入者の方に手をかざした。侵入者の死骸に赤い薔薇の花弁が降り積もっていく。
「ところでラミアちゃん、その手に持っているのは何かしら?」
「あ、それ。僕も気になってました」
二人はラミアが左手に持つ血まみれのナイフのような武器を見つめる。
「これは侵入者の人間が持っていたナイフです。マジックアイテムと思われますが」
ラミアは血のついた鞘から静かにそのナイフの刀身を抜いた。
「鞘から抜くと、このように赤黒い炎が刀身の周りに現れます」
「うわ……見るからに禍々しいですね」
「先ほど、試しに人間の手をこのナイフで切って見ました。すると、黒い炎が傷口から立ち上り、骨も残さず消し炭となるまで燃え続けました」
マグメルはラミアからそのナイフを受け取って自分のクリスタルで調べてみた。
【黒炎ナイフ】
切った対象を地獄の黒い炎で焼き尽くす。その炎は対象を焼き尽くすまで決して消えることはない。引火した対象も同様。
「マグメルちゃん、戦利品としてもらっておきなさいよ。役に立つかもしれない」
「……はい、使えるようにがんばって練習してみます。誤って自分の体を切らないようにしないとですね」
マグメルは【黒炎ナイフ】を鞘に恐る恐る収めた。アプロディーテがその鞘にそっと人差し指を乗せる。
「〈泡沫浄化〉」
アプロディーテの触れた部分からキラキラと輝く小さな泡が発生して鞘を包み込んでいく。すると、見事に血の汚れが消えていくでのあった。
「ありがとうございます、女神様」
「不潔なのはこの洞窟から撲滅よ」
アプロディーテはマグメルの鼻先をその指先で優しく弾いた。
「もう一つ、男が持っていたマジックアイテムと思しきものがあります」
ラミアはマグメルに【圧搾の指輪】を渡した。マグメルは緑の宝石の指輪をしげしげと見つめる。
「これ魔素をつかもうとしている悪魔の手みたいですね……」
【圧搾の指輪】
死体や壊れた物体から魔素を搾り取る効果がある。魔素を搾り取られた対象はこの世から完全に消失してしまう。
「ふぅん、魔素集めにいいじゃない。それも貴方が持ってなさい」
「え、いいのですか? これは女性のラミアさんがいいのでは」
侵入者の死体をチラチラと横目で見ていたラミアは、マグメルの突然の提案にうろたえる。
「マ、マグメル様、お気持ちは大変ありがたいのですが、私めは結構でございます」
「マグメルちゃん、おとなしくもらっておきなさい」
「え、そうですか……わかりました。それなら僕がいただいておきますが、なんかいいのかな……」
ブツブツと独り言を言いながらマグメルは左手の薬指にはめた。
「えっ」
アプロディーテとラミアが声を揃えて驚く。
「マグメルちゃん、貴方……」
「はい?」
「……まぁいいわ。ラミアちゃん、侵入者の後片付け頼むわね」
アプロディーテはラミアに目配せをした。ラミアの瞳に獣の色が宿る。
マグメルはなぜ二人が驚いたのかまだわかっていないようで、キョトンとした顔をしていた。
▫️
マグメルが今回入手した戦利品リスト
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【圧搾の指輪】
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ランプなどの備品数種
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