女神様、ダンジョンはお好きですか?

Yupafa

文字の大きさ
13 / 21
第一章 マグメル編 マグメルのダンジョン経営

女神の思惑

しおりを挟む
「──そのクユンシーラというダークエルフ、気になるわ」

 アプロディーテは極上キノコステーキが刺さったフォークをくるくると廻しながら言った。

「僕の槍にエンチャントされている女神様の魔法に気づいたことですか?」
「それもそうだけど、彼女が冥府の鎖というのに繋がれていることと、魔素を消耗しながら生きててるってことに引っかかるの」

 マグメルは首を傾げる。

「魔素を消耗しながら生きているということは誰かに召喚された存在ってことでしょ。でもその子が『生を受けた時から繋がれている』とか『創造主である神からの試練』て言ってる。それって召喚された側のセリフとも思えないの。そこに矛盾がある」
「なるほど、そんなことまったく気づけませんでした。それなのに僕は彼女と女神様を会わせるような約束を勝手にしてしまって……すみません」
「ううん、それはいいの。私もその子に興味が出てきたし」

 極上キノコステーキを口に運んだアプロディーテの顔がほころぶ。

「クユンシーラの鎖を断ち切るには、エルフを五人殺してその血で彼女が囚われている台座を汚さなくてはならないそうです」
「生贄……ダークエルフとエルフの因縁でもあるのかしら?」
「僕にはよくわかりませんが、女神様の言っていた強大なダンジョンの手がかりと引き換えであれば、手伝う価値があると考えたのですが……」

 マグメルはアプロディーテの様子を上目遣いで確認する。アプロディーテはそんなマグメルを瞬き一つせずじっと見つめている。マグメルは慌てて言葉をつなぐ。

「ノームたちもエルフ狩りに協力してくれます。直接手を下すわけではないのですが、罠を張ってくれます」
「罠?」
「はい。ノームたちはこれを使います」

 マグメルはズボンのポケットから緑色の苔の生えた小さな鈴を取り出して、アプロディーテに見せた。

「これは【霧の鈴】というノームたちの使うマジックアイテムです。この鈴を三回振ると特別な霧を発生させることができるそうです」
「特別な霧って?」
「神隠しの霧と言えばいいのかな。鈴が発生させた霧の中に入ると、もうひとつの鈴のある場所に瞬時に移動できるみたいです。これを持っていれば広大な森の中で迷子になっても、彼らの里に一瞬で帰ることができるので役に立つと言っていました」

 マグメルはアプロディーテがエルフ狩りについて苦言を呈さないことに安堵したのか、饒舌じょうぜつになっていた。

「へぇ、とても便利なマジックアイテムね。で、これを使ってどういう罠を張るつもりなの?」
「森で僕が囮になってエルフたちを引きつけ、鈴を持って隠れているノームのところに連れて行きます。ノームはそこで鈴を鳴らし、エルフたちを霧の中に迷い込ませるわけです」
「もう一つの鈴は?」
「ラミアさんか、守護者ガーディアンに渡しておこうかと」
「私が持っておくわ」

 アプロディーテはそう答えると、にっこりと満面の笑みを見せた。
 
「えっ女神様、どういうことでしょう?」
ってことよ」
「女神様……」
「マグメルちゃんが頑張って掴んだせっかくのチャンスだもの、私も頑張らなきゃ。それにちょっと試してみたいこともあるし」
「ありがとうございます! 僕も頑張ってこの囮作戦を成功させます」

 テーブルに頭をつけて感謝するマグメル。
 アプロディーテは赤ワインを美味しそうに飲みながら、そんなマグメルのおでこを人差し指で優しく弾く。

「ところで、マグメルちゃん。この作戦を考えたのはクユンシーラでしょ?」
「あ、は、はい。その通りです」
「ふぅん。だったら、私が霧の先で待ち受けることになるだろうと考えていたのでしょうね」

 アプロディーテは肩肘で頬杖をついて何かを考え出した。マグメルは少しバツが悪くなったのか、

「さあ、せっかくノームたちにもらった激レアなキノコなんですから、冷めないうちに食べちゃいましょう!」

 と言って、一気に極上キノコステーキを頬張るのであった。



            ▫️



 ──マグメルの洞窟ダンジョン、第一階層の無限草原エリア。

「いい? 鈴を鳴らすわよ」

 アプロディーテは【霧の鈴】を一度ずつゆっくりと鳴らす。くぐもった鈴の音が草原をこだまするように広がっていく。

 鈴の音が聞こえなくなると、二人の前にどこからともなく白い霧が現れた。

「では女神様、行ってきます!」
「気をつけて。あなたの命が第一だということ絶対に忘れないで」
「はい!」

 マグメルはそう言うと白い霧の中に駆けて入っていった。

 アプロディーテはマグメルが見えなくなると【霧の鈴】を二度鳴らした。すると、たちまち白い霧は空気中に溶けるように消えてしまうのであった。


 アプロディーテの紺碧の瞳が血のように赤い瞳に変わっていく。
 マグメルはまだのこの時、知るよしもなかった。アプロディーテは愛と美を司るだけではなく、ということを。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...