71 / 136
大進行⑳
しおりを挟む
「慈悲なき神は 漆黒に誘う 」
''黒き罪神の誘惑''
突如現れた黒いオーラを放つ漆黒の煙は、キウンを包み込むように迫る。
「なっ! 」
キウンはそれを咄嗟に後方に飛び退くことで避けた。
「よく反応出来ましたねぇ。お褒め致します」
「ふむ、そうか。苦しゅうないぞ」
謎の人物の嫌味の篭もった言葉に、キウンは被せて返す。
キウンに迫ってきていた黒い霧は、ある一定を過ぎると止まり、謎の人物の元へと帰って行く。
どうやら、範囲の制限があるよだ。
「彼が、貴方を殺そうとしているのは想定外なのですよ。 」
その者は、唐突に言う。ロッツを冷たい目で見下げ、垂れている頭を掴む。
「おい! 何をする! 」
キウンが言うと、その者はニヤリと気味の悪い笑顔を浮かべて謎の液体を彼に飲ませた。
「これを使うつもりは無かったのですが……仕方ありませんねぇ。
ここで彼に死なれるのは、ふつごうですし」
試験管のようなものに入っていた薬をロッツが全て飲むと、数秒して直ぐに異変が起きた。
「うぅっ! 」
口をパクパクと開かせ、尾を地面にうちつけ、足をもがくように動かす。
「ロ……ロッツ、ロッツどうした! 」
キウンはロッツに駆け寄る。
その時既に、謎の者はその場を離れ、少し離れた辺りでこちらを見ていた。
「ロッツ! 」
そして、ロッツの近くにまできたキウンが体に触れようとすると、何かに弾かれた。
「な……なんだこれは? 」
「ハァハハッ! それは私達が作った強化剤です。罪神の魔力を取り込み、更に強くなる」
空になった試験管を眺めながら笑う者に、キウンは怒りの篭もった目で睨みつけた。
「貴様! 我が弟子にふざけた真似をしてくれる」
「お弟子さんでしたか。どうですか? 強くなりましたよ? 」
「貴様ァ! 」
目にも止まらぬ速さで謎の人物の目の前まで来ると、鋭い爪を持つ前足で斬り掛かる。
「ガルゥ! 」
「グハッ! 」
だが、その攻撃はロッツからのタックルによる妨害により届かなかった。
「貴方の相手は彼です。では、私はこれで」
「おい、待て!」
消えかかる謎の者に、攻撃をと思うが、ロッツが放った攻撃が邪魔になり思うように動けない。
「ギザマハ……ゴロズ……」
目を真っ真っ赤に染め、舌をだらりと垂らし唾液をまき散らすその姿は、完全に正常ではない。
突如、フラフラと歩いていたロッツはキウンの前に現れる。
紫に変色した鋭い爪で、ロッツはキウンを切りつける。
「グッ! 」
そのスピードは凄まじく、キウンですら反応が遅れ右足に傷を作った。
だが、それだけでは終わらない。
右、左と、交互に連続して続く攻撃に、キウンは対処が間に合わずかすり傷程度だった傷は、段々と深い切り傷に変わり行く。
「おい、ロッツ! 目を覚ませ! 」
だが、そんな事ではロッツに声は届かない。
あの薬を飲む前から、キウンに恨みを持っていたロッツだ。更に薬を飲み、狂気に満ちている彼に声など届くはずが無いことなど、キウンは理解していた。
それと同時に、自分がロッツに勝てない事も、容易に認識できていた。
それに……
キウンは自らの右足を見る。
「この傷が開きおった」
キウンの右足は真っ赤に染まっていた。
だが、その血の量は先程の攻撃だけではありえない程だ。
可能性が考えられるのは、血管が酷く損傷したか……或いは、古傷が開いたか。
答えは後者である。
この傷は他でもない、ロッツの弟、あの時見殺しにしたとされる弟に付けられた傷だ。
あの時、ロッツの弟はロッツに較べて幾分か劣っていた。
キウンの弟子に着いてからも、キウンや周りのものから比べられ、時に蔑まれていた。
そんな中でも、ロッツは弟を愛していた。いつもと変わることなく、蔑むものが入れば庇い……。
その行為が、逆に弟である彼の心を傷つけた。惨めになり、そして……彼はロッツを殺そうとした。
それを知らないロッツは、彼がしくんだ襲撃事件の中で人間に裏切られ、彼が死んだこと。
その時の傷で、狙われているロッツを守りながら、彼を救うことが出来なかったこと。
全てを知らない。
彼のことを考えると、易々とロッツに打ち明けられない。
キウンは、長年頭を悩ませていたのだ。
だが、そんなこともいざ知らず、ロッツはキウンに猛攻を仕掛ける。
迫り来る爪、飛び交う魔法。
薬により増幅された力に、キウンがなす術はなかった。
''黒き罪神の誘惑''
突如現れた黒いオーラを放つ漆黒の煙は、キウンを包み込むように迫る。
「なっ! 」
キウンはそれを咄嗟に後方に飛び退くことで避けた。
「よく反応出来ましたねぇ。お褒め致します」
「ふむ、そうか。苦しゅうないぞ」
謎の人物の嫌味の篭もった言葉に、キウンは被せて返す。
キウンに迫ってきていた黒い霧は、ある一定を過ぎると止まり、謎の人物の元へと帰って行く。
どうやら、範囲の制限があるよだ。
「彼が、貴方を殺そうとしているのは想定外なのですよ。 」
その者は、唐突に言う。ロッツを冷たい目で見下げ、垂れている頭を掴む。
「おい! 何をする! 」
キウンが言うと、その者はニヤリと気味の悪い笑顔を浮かべて謎の液体を彼に飲ませた。
「これを使うつもりは無かったのですが……仕方ありませんねぇ。
ここで彼に死なれるのは、ふつごうですし」
試験管のようなものに入っていた薬をロッツが全て飲むと、数秒して直ぐに異変が起きた。
「うぅっ! 」
口をパクパクと開かせ、尾を地面にうちつけ、足をもがくように動かす。
「ロ……ロッツ、ロッツどうした! 」
キウンはロッツに駆け寄る。
その時既に、謎の者はその場を離れ、少し離れた辺りでこちらを見ていた。
「ロッツ! 」
そして、ロッツの近くにまできたキウンが体に触れようとすると、何かに弾かれた。
「な……なんだこれは? 」
「ハァハハッ! それは私達が作った強化剤です。罪神の魔力を取り込み、更に強くなる」
空になった試験管を眺めながら笑う者に、キウンは怒りの篭もった目で睨みつけた。
「貴様! 我が弟子にふざけた真似をしてくれる」
「お弟子さんでしたか。どうですか? 強くなりましたよ? 」
「貴様ァ! 」
目にも止まらぬ速さで謎の人物の目の前まで来ると、鋭い爪を持つ前足で斬り掛かる。
「ガルゥ! 」
「グハッ! 」
だが、その攻撃はロッツからのタックルによる妨害により届かなかった。
「貴方の相手は彼です。では、私はこれで」
「おい、待て!」
消えかかる謎の者に、攻撃をと思うが、ロッツが放った攻撃が邪魔になり思うように動けない。
「ギザマハ……ゴロズ……」
目を真っ真っ赤に染め、舌をだらりと垂らし唾液をまき散らすその姿は、完全に正常ではない。
突如、フラフラと歩いていたロッツはキウンの前に現れる。
紫に変色した鋭い爪で、ロッツはキウンを切りつける。
「グッ! 」
そのスピードは凄まじく、キウンですら反応が遅れ右足に傷を作った。
だが、それだけでは終わらない。
右、左と、交互に連続して続く攻撃に、キウンは対処が間に合わずかすり傷程度だった傷は、段々と深い切り傷に変わり行く。
「おい、ロッツ! 目を覚ませ! 」
だが、そんな事ではロッツに声は届かない。
あの薬を飲む前から、キウンに恨みを持っていたロッツだ。更に薬を飲み、狂気に満ちている彼に声など届くはずが無いことなど、キウンは理解していた。
それと同時に、自分がロッツに勝てない事も、容易に認識できていた。
それに……
キウンは自らの右足を見る。
「この傷が開きおった」
キウンの右足は真っ赤に染まっていた。
だが、その血の量は先程の攻撃だけではありえない程だ。
可能性が考えられるのは、血管が酷く損傷したか……或いは、古傷が開いたか。
答えは後者である。
この傷は他でもない、ロッツの弟、あの時見殺しにしたとされる弟に付けられた傷だ。
あの時、ロッツの弟はロッツに較べて幾分か劣っていた。
キウンの弟子に着いてからも、キウンや周りのものから比べられ、時に蔑まれていた。
そんな中でも、ロッツは弟を愛していた。いつもと変わることなく、蔑むものが入れば庇い……。
その行為が、逆に弟である彼の心を傷つけた。惨めになり、そして……彼はロッツを殺そうとした。
それを知らないロッツは、彼がしくんだ襲撃事件の中で人間に裏切られ、彼が死んだこと。
その時の傷で、狙われているロッツを守りながら、彼を救うことが出来なかったこと。
全てを知らない。
彼のことを考えると、易々とロッツに打ち明けられない。
キウンは、長年頭を悩ませていたのだ。
だが、そんなこともいざ知らず、ロッツはキウンに猛攻を仕掛ける。
迫り来る爪、飛び交う魔法。
薬により増幅された力に、キウンがなす術はなかった。
22
あなたにおすすめの小説
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる