いつかまたおなじ空のしたで

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目の前に奈落を思わせる渓谷が広がる。
こんなのはアレスの仕業に違いない。
あの「一閃」を放ちまくったならこうなっちゃうだろう。
見渡すと遥か向こうに橋があった。
「あれが、、お城?」
橋を渡った辺りの奥の方、ここからだと森の奥にもやもやと赤紫の霧の中にとんがった建物の先っぽみたいなのが見える。
「ああ、酷い有様だ、、」
トリスはため息混じりに答える。
「おっきいねー!」
レヴィが身を乗り出してくる。
落っこちないようにだけは気をつけて欲しい。
私はレヴィのベルトを掴んで、ちょっと待てをする。
ジェシーは瘴気に当てられて具合悪くなっちゃったから、町に馬車ごと預けてきていた。
私達は徒歩でとぼとぼと橋にむかって歩いている。
道、、というか渓谷のこちら側には朽ち果てた動物や帯剣した旅人の亡骸がちらほらとみてとれた、見つけるたびに一応簡単にお墓を作った。お疲れ様という意味で。
ワドウも手をあわせて冥福を祈っている様子だ。
橋は見えているのに近くなってる気がしない。
まるでセレスティアナの鉄壁みたいだ、、思い出したらまた切なくなってきた、、、。
「ぎゅ」
右手を握られて、はっとなった。
レヴィが心配そうに、ちょっと身を屈めて私を見つめていた。
「ありがとう、だいじょぶだよ」
私が言うとにっこりして、たたたっとトリスの後ろにくっつく。
ワドウはしんがりを慎重に来ている。心配性だなって思うけど、、。あんな経験したら当たり前か、、、。
歩き続けて暗くなってきた頃、生きている魔族と出くわした。
「引き返してもらおう」
トラの獣人が言う。
「城に用がある」
トリスは簡潔に告げる。
「それ以外にこんな所に人族が来る理由があるか?引き返せと言っている」
トラおじさんは、なおも引き返せと言う。
?って人族?
「トリス、ブレスブレス!」
私達は変身ブレスレットを着けていたから、おじさんからは人族に見えたんだよ!
「あ、、、」
トリスは相変わらず天然だ、ふふっ!
私達はブレスレットを外してみせた。
ふわりと私達の輪郭が揺らぎ真実の姿を晒す。
「おー!!なんだよ!ふざけんなよ全く!」
おじさんは、ははっと笑うと急に柔らかな表情になった。
「ん?そいつはなんだ?」
あ!ワドウは人族っぽいんだった(汗)
「そいつは薄くてな、、」
トリスがフォローする。
「あー、、かわいそうにな、まあ気にすんな!混ざりなんてみんなそんなもんだよ!」
バンバンとワドウの肩をおじさんが叩く。
「良かった、、」
ワドウはほっとしてみせる。
「交代だぜ!」
オオカミのおじさんが林から姿を現した。
「あれ?珍しいな、、まだ避難民がいたのか」
「あー、腕輪を使って上手く逃げてきたらしい」
トラおじさんの「想像フォロー」がなかなかに上手い。
「長旅だったが、、やっと落ち着けるよ」
トリスも設定にのっかった。
「じゃあ頼んだ」
トラおじさんがオオカミおじさんにひらりと手を振って林に向かう。
「おいお前ら、疲れただろう?休む所ならある、付いて来な!」
手招きされて、私達は一応顔を見合わせてから、トラおじさんについて林に入った。
林に入ると、程なく大きめのログハウスがあった。切り開かれた林の中にちょっとした畑や、洗濯物が干されているのも生活感をうかがえる。
トラおじさんはカギもかかってないドアを開けて中に入る。
「あら、ご苦労様!」
女の人の声がする。
「珍しく客だ」
「まあ!ほんとう?!」
なんてやり取りが聞こえてくる。
「おい!なにやってる!入れ入れ!」
おじさんの声に誘われて、私達は家?に入った。
中には料理をしているねこ獣人のおばさんと、すでにテーブルについて肩肘をついているトラおじさんがいた。
「まあ!女の子!!」
ねこおばさんは両手を合わせて喜ぶ様子をみせてくれている。
「腕輪を使って上手く逃げてこられたらしい」
トラおじさんの設定がでた。
「あー、、大変だったね、、、」
おばさんはさも自分の事のように切なそうに言う。
それから「座って座って」と私達を席に座らせると、スープをよそってみんなにだしてくれた。
私は、おばさんの姿を見てから、もうづっと泣きそうになっていた、、、。
忘れもしない、私の親友。ミーシャのうちもねこ獣人だった。
笑顔を絶やさない。
元気でいないと。
そう思って、自分にいい聞かせて来た。
けど、スープを口に運んだ時ついに私のがんばりはぽきりと折れてしまった。
どうしてかって、おばさんのスープは、ミーシャのお母さんのスープとおんなし味がしたから。
「うっ、、く、、」
ぼろぼろと涙が溢れる。
スープに涙が入ったらいけない!
私は椅子が倒れるのも気にせずテーブルから離れて口をおさえた。
おばさんが駆け寄って抱きしめてくれた。
みんなスープを飲む手をとめて、黙って私が泣きじゃくるのを見守っていてくれた。


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