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1話 クビって…正気かよ
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腰のポーチから補充用の魔石を取り出して、強く握る。
広範囲に敵が散らばっているこの戦況からして、ここは殲滅力の高い爆裂系統がいいだろう。
俺はそう判断して魔力を調整、魔法陣を展開した。
魔石の表面にびっしりと魔術紋を刻むと、灰色だった魔石が黄金色に輝き始める。
「おいヴェイン! できたならさっさと寄越せよ、のろま!」
魔術士のダズが引ったくるように封術したばかりの魔石を奪い取った。
「あ、それは爆裂系の魔術が封じてあるから遠くの敵に撃ち込——」
最後まで説明する前に、ダズは間近に迫りつつあった敵——オーガキングにそれをぶっ放した。
打ち出された魔術は糸を引くように敵へ着弾。一瞬で閃光が輝き、爆炎が上がる。
腹に響く音が戦場に響き渡り、近くにいた俺とダズは衝撃波で転がるように吹き飛ばされた。
「ぐう……痛ぇっ」
鼓膜がやられたのか、耳鳴りがしている。
めまいも酷いけど、なんとか頭を持ち上げて状況を確認。
もしオーガキングが生き残っていたら、命の危機だ。
「良かった、ちゃんと倒せたみたいだ」
こちらへ殺意を向けていたオーガキングは、跡形もなく消え去っていた。
さすがにあの魔術の爆心地にいたらそうなるか。
群れを統率するボスを失ったオーガたちは、転がるように森へ逃げ帰っていく。
戦士ジンガとシーフのウィン=ルゥは、討ち漏らしを掃討するべく奴らの背中を追いかけて森へ入っていった。
「おい、ヴェイン……」
地面に転がっていたダズが、逆さまになったまま低い声で俺を呼ぶ。
その目はつり上がり、こめかみには青筋を立てていて——ああ、これは嫌な予感がする。
「てめぇ俺様を殺すつもりか!? ああん?」
がばりと起き上がったダズは、未だ転がったままの俺に近づいてくると胸ぐらを掴んできた。
それから顔を近づけて、臭い息と共に罵声を浴びせてくる。
「この距離で爆裂魔法とか……てめぇイカれてんのか!?」
「いや、遠くに撃ち込んでも十分倒しきれただろ。そうすればまとめて殲滅できたし……ダズが最後まで話を聞かないからだろ」
地鳴りのような足音を響かせながら近づいてくるキングの巨体にビビって、慌てて魔石を喚起してしまったんだろう。
その結果、俺たちは爆風で吹き飛んだし、取り巻きのオーガも討ち漏らした。
あの二人が残党を追っかけていく羽目になったのもそれが原因だ。
「つまりなんだ、俺が悪ィってのか? そもそもお前がバンバン魔石を寄越さねぇからオーガキングに接近されたんだろうが!」
「そんなこと言われても俺は全力でやってるっての。状況に合わせた魔術を構築して即座に封じるのは骨が折れるんだぞ」
「封術士ごときがリーダーの俺様に口答えすんじゃねぇよ、こらぁっ!」
「ぐあっ!」
ダズがいきなり俺の鼻筋に頭突きをかましてきた。鼻がツーンとする。
そのうち液体が垂れてきて、地面にぽたりと落ちると赤い花が咲いた。
「何すんだよっ!」
「うるせぇっ! なんのために魔力を体外に放出できない出来損ないをパーティに置いてやってると思ってんだ!?」
「出来損……ッ!? だからそのぶん封術でみんなのサポートをしてるだろ!」
ああ、確かに俺は魔力を体外に放出できない。
魔力さえあれば、子供にだってできることができないんだ。
ただその代わりに体内での魔力操作に心血を、いや人生全てを注いできた。
そしてようやく活路を見出したのが、物に術式を刻みつける封術。
この技能は魔力を放出できない、なんて欠点を補って余りあったはず。
「今だって俺が封じた魔石の力があったからこそオーガキングを倒せたんだろ!」
そう反論するとダズは俺を地面に投げ捨て、見下ろしながら鼻で笑う。
「はんっ、恩着せがましいこといいやがって。お前みたいな出来損ないなんて、このパーティにはもう要らねえんだよ」
「ど、どういうことだ?」
「ああ、そういえばお前にはまだ伝えてなかったっけなあ」
ダズは口元を嫌らしく歪めながら、ニチャリと音を立てて口を開く。
「この前、たまたま封術が使える子を見つけてよ。勧誘したらA級パーティに入れるって大喜びでなぁ……来週から加入することになったんだわ。その子がまたべっぴんでよお」
「は……?」
ダズが何を言っているのか理解できなかった。
だって十六歳から五年間も一緒にやってきたんだぞ。
ようやくこの前A級に上がれて、みんなで祝賀パーティまでしたのに。
もしかして、このパーティの助けになれていると思っていたのは——勘違いだったのか。
「おい、聞いてんのか? つーことで、お前はクビだ、クビ!」
「そうか……」
なんだかもう反論する気も起きなかった。
俺と同じことができる封術士がいるなんてちょっと信じられないが、封術の恩恵を一番受けているダズがそういうならそうなんだろう。
「はぁ、わかったよ」
こうして俺は五年間一緒に過ごしてきたパーティを呆気なくクビになった。
————————————————————————
前回のファンタジー小説大賞では8位の奨励賞でした。
なので、今回はさらなる高みを目指したいです!
ブックマーク、応援よろしくお願いします!
広範囲に敵が散らばっているこの戦況からして、ここは殲滅力の高い爆裂系統がいいだろう。
俺はそう判断して魔力を調整、魔法陣を展開した。
魔石の表面にびっしりと魔術紋を刻むと、灰色だった魔石が黄金色に輝き始める。
「おいヴェイン! できたならさっさと寄越せよ、のろま!」
魔術士のダズが引ったくるように封術したばかりの魔石を奪い取った。
「あ、それは爆裂系の魔術が封じてあるから遠くの敵に撃ち込——」
最後まで説明する前に、ダズは間近に迫りつつあった敵——オーガキングにそれをぶっ放した。
打ち出された魔術は糸を引くように敵へ着弾。一瞬で閃光が輝き、爆炎が上がる。
腹に響く音が戦場に響き渡り、近くにいた俺とダズは衝撃波で転がるように吹き飛ばされた。
「ぐう……痛ぇっ」
鼓膜がやられたのか、耳鳴りがしている。
めまいも酷いけど、なんとか頭を持ち上げて状況を確認。
もしオーガキングが生き残っていたら、命の危機だ。
「良かった、ちゃんと倒せたみたいだ」
こちらへ殺意を向けていたオーガキングは、跡形もなく消え去っていた。
さすがにあの魔術の爆心地にいたらそうなるか。
群れを統率するボスを失ったオーガたちは、転がるように森へ逃げ帰っていく。
戦士ジンガとシーフのウィン=ルゥは、討ち漏らしを掃討するべく奴らの背中を追いかけて森へ入っていった。
「おい、ヴェイン……」
地面に転がっていたダズが、逆さまになったまま低い声で俺を呼ぶ。
その目はつり上がり、こめかみには青筋を立てていて——ああ、これは嫌な予感がする。
「てめぇ俺様を殺すつもりか!? ああん?」
がばりと起き上がったダズは、未だ転がったままの俺に近づいてくると胸ぐらを掴んできた。
それから顔を近づけて、臭い息と共に罵声を浴びせてくる。
「この距離で爆裂魔法とか……てめぇイカれてんのか!?」
「いや、遠くに撃ち込んでも十分倒しきれただろ。そうすればまとめて殲滅できたし……ダズが最後まで話を聞かないからだろ」
地鳴りのような足音を響かせながら近づいてくるキングの巨体にビビって、慌てて魔石を喚起してしまったんだろう。
その結果、俺たちは爆風で吹き飛んだし、取り巻きのオーガも討ち漏らした。
あの二人が残党を追っかけていく羽目になったのもそれが原因だ。
「つまりなんだ、俺が悪ィってのか? そもそもお前がバンバン魔石を寄越さねぇからオーガキングに接近されたんだろうが!」
「そんなこと言われても俺は全力でやってるっての。状況に合わせた魔術を構築して即座に封じるのは骨が折れるんだぞ」
「封術士ごときがリーダーの俺様に口答えすんじゃねぇよ、こらぁっ!」
「ぐあっ!」
ダズがいきなり俺の鼻筋に頭突きをかましてきた。鼻がツーンとする。
そのうち液体が垂れてきて、地面にぽたりと落ちると赤い花が咲いた。
「何すんだよっ!」
「うるせぇっ! なんのために魔力を体外に放出できない出来損ないをパーティに置いてやってると思ってんだ!?」
「出来損……ッ!? だからそのぶん封術でみんなのサポートをしてるだろ!」
ああ、確かに俺は魔力を体外に放出できない。
魔力さえあれば、子供にだってできることができないんだ。
ただその代わりに体内での魔力操作に心血を、いや人生全てを注いできた。
そしてようやく活路を見出したのが、物に術式を刻みつける封術。
この技能は魔力を放出できない、なんて欠点を補って余りあったはず。
「今だって俺が封じた魔石の力があったからこそオーガキングを倒せたんだろ!」
そう反論するとダズは俺を地面に投げ捨て、見下ろしながら鼻で笑う。
「はんっ、恩着せがましいこといいやがって。お前みたいな出来損ないなんて、このパーティにはもう要らねえんだよ」
「ど、どういうことだ?」
「ああ、そういえばお前にはまだ伝えてなかったっけなあ」
ダズは口元を嫌らしく歪めながら、ニチャリと音を立てて口を開く。
「この前、たまたま封術が使える子を見つけてよ。勧誘したらA級パーティに入れるって大喜びでなぁ……来週から加入することになったんだわ。その子がまたべっぴんでよお」
「は……?」
ダズが何を言っているのか理解できなかった。
だって十六歳から五年間も一緒にやってきたんだぞ。
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もしかして、このパーティの助けになれていると思っていたのは——勘違いだったのか。
「おい、聞いてんのか? つーことで、お前はクビだ、クビ!」
「そうか……」
なんだかもう反論する気も起きなかった。
俺と同じことができる封術士がいるなんてちょっと信じられないが、封術の恩恵を一番受けているダズがそういうならそうなんだろう。
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