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18話 たまたまはそんなに続かない
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「女の命が惜しければ——この部屋を出ていけ」
レーナーという男は青白い顔に、下卑た笑みを貼り付けながらそう言った。
他に何だって命令できる状況だったのにも関わらず、要求はこの部屋を出ることだけ。
僅かに首を傾げつつロッカに目配せをすると、その言葉に従った。
「大丈夫か?」
「は、はい……すみません」
俺たちが部屋を出るとすぐにティアは解放された。
それと同時に部屋の扉が閉まってしまったので、もう中の様子をうかがい知ることはできない。
「仕方ない……ダンジョンを出よう」
俺たちは肩を落としながらダンジョンの外へと向かう。
その道中で、奴らの目的が何なのかを考えながら足元の魔石を踏み砕いた。
「なんでヴェインさんはさっきから道標の魔石を踏み潰しながら歩いているんですか?」
「あいつらは恐らくこれを辿ってきたんだろう。ならこうして砕いておけば……」
またも転がっていた光る魔石に足を伸ばす。
「帰り道で迷子になるんじゃないかと思ってな。要するにただの嫌がらせだ」
ロッカはその答えに激しく頷くと、俺の代わりに転がっていた魔石を踏みつけた。
「それにしても、さっきの人たちは何が目的だったんでしょうね?」
「さあな。さっぱり分からん」
「はぁ、エコーライト……あの奥にあったのかな」
ロッカはそう呟くと、俯いて顔を曇らせた。
ずっと黙って歩いていたティアもついに立ち止まって声を震わせる。
「ごめんね、ロッカちゃん。私が捕まってしまったせいで……」
泣き腫らした目で見上げられると、こちらまで胸が痛くなる。
ロッカは即座に首を振った。
「ううん、ティアローズさんは悪くないって。仮にもパーティなんだからそんなことは言いっこなしっ! ティアローズさんが無事でなによりです」
そう言って笑うロッカに、ティアは顔をぐしょぐしょにしながら抱きつく。
「ちょ、ちょっとティアさん……ばっちぃです」
ロッカは大きな胸に顔をうずめたティアを引きはがすと、湿った自分の胸元に目をやって嫌そうな顔をした。
そんな二人を見て、俺の頬は自然にほころんだ。
「そういやロッカにエコーライトの情報を売ったのは本当にあいつだったのか?」
「はい、間違いありません」
とすると、タイミング的に情報を売ってからずっと尾行てたか、もしくはダンジョン付近で待ち伏せしていたかだろう。
何のために……って決まってる。
ダンジョンの封印が解かれるのを待っていたんだ。
「いや、それは時系列がおかしい……」
「何がですか?」
どうやら声に出てしまっていたらしい。
気づかぬうちに険しい顔をしてしまっていたか、心配そうに覗き込んでくるロッカ。
「なあ、俺とロッカが出会ったのは偶然……だよな?」
「え……っと、いきなりどうしたんですか? 魔物に襲われていたわたしをたまたま見つけて助けてくれたんですから、幸福な偶然だったと思ってますけど」
「やっぱりそうだよな……」
でもそうなると、やっぱり妙だ。
たまたまこの辺にはいない魔物に襲われてた少女が、たまたまダンジョンの地図を持っていて、たまたま入り口の封印を解ける封術士の俺と出会ったことになる。
そしてレーナーとかいう野郎の動きは、それを見越していないとできないものだ。
「……どうなってやがるんだ」
俺がロッカに会ったのだってパーティをクビになったからだし、そもそもダズがティアに会ってなければ俺はクビになっていなかったはず。
ただそんなことをいいはじめたらあの時に村を出てなければ、魔力の放出を封じられていなければ……ってなるか。
いや、あの事件がなければそもそも俺は冒険者になんかなってないだろうが。
本当に全て偶然なのか、もし仕組まれていたならどこからなのか。
見えない蜘蛛の糸と、何かの意図が絡みついているようで気持ちが悪い。
「ちなみにティアがこっちに来たのは偶然か?」
「えっと……王都でA級パーティの噂を聞いて、その中にすごい封術士がいると知ったからです。来ると決めたのは自分の意思なので偶然かと聞かれると……どうなんでしょう?」
自分の意志ということは、誰かに唆されたわけじゃなさそうだ。
「ヴェインさん、出口が見えてきましたよ!」
帰り道は魔物との戦闘もなく、あっという間だった。
考えごとをしていたせいかもしれない。
ダンジョンの出口から外に出ると、夜風が頬を撫でていった。
冷たさよりも、全員が無事に生きて戻った安堵の方が勝る。
「外の空気って、こんなに美味しかったんですね……」
ロッカが深呼吸して目を細める。
「ほんと……私、二人がいなかったら、今頃どうなってたか」
ティアはまだ涙の跡を残しながらも、必死に笑おうとしている。
そもそも俺たちと一緒でなければここに来ることもなかっただろう、と口にしかけたけど無粋だからやめた。
「まぁなんだかんだあったが……全員無事で良かったな!」
「ですねっ! 一応の戦利品もありますし!」
ロッカはそういって、魔鉄鋼が詰まった自分のバッグを軽く持ち上げた。
レーナーという男は青白い顔に、下卑た笑みを貼り付けながらそう言った。
他に何だって命令できる状況だったのにも関わらず、要求はこの部屋を出ることだけ。
僅かに首を傾げつつロッカに目配せをすると、その言葉に従った。
「大丈夫か?」
「は、はい……すみません」
俺たちが部屋を出るとすぐにティアは解放された。
それと同時に部屋の扉が閉まってしまったので、もう中の様子をうかがい知ることはできない。
「仕方ない……ダンジョンを出よう」
俺たちは肩を落としながらダンジョンの外へと向かう。
その道中で、奴らの目的が何なのかを考えながら足元の魔石を踏み砕いた。
「なんでヴェインさんはさっきから道標の魔石を踏み潰しながら歩いているんですか?」
「あいつらは恐らくこれを辿ってきたんだろう。ならこうして砕いておけば……」
またも転がっていた光る魔石に足を伸ばす。
「帰り道で迷子になるんじゃないかと思ってな。要するにただの嫌がらせだ」
ロッカはその答えに激しく頷くと、俺の代わりに転がっていた魔石を踏みつけた。
「それにしても、さっきの人たちは何が目的だったんでしょうね?」
「さあな。さっぱり分からん」
「はぁ、エコーライト……あの奥にあったのかな」
ロッカはそう呟くと、俯いて顔を曇らせた。
ずっと黙って歩いていたティアもついに立ち止まって声を震わせる。
「ごめんね、ロッカちゃん。私が捕まってしまったせいで……」
泣き腫らした目で見上げられると、こちらまで胸が痛くなる。
ロッカは即座に首を振った。
「ううん、ティアローズさんは悪くないって。仮にもパーティなんだからそんなことは言いっこなしっ! ティアローズさんが無事でなによりです」
そう言って笑うロッカに、ティアは顔をぐしょぐしょにしながら抱きつく。
「ちょ、ちょっとティアさん……ばっちぃです」
ロッカは大きな胸に顔をうずめたティアを引きはがすと、湿った自分の胸元に目をやって嫌そうな顔をした。
そんな二人を見て、俺の頬は自然にほころんだ。
「そういやロッカにエコーライトの情報を売ったのは本当にあいつだったのか?」
「はい、間違いありません」
とすると、タイミング的に情報を売ってからずっと尾行てたか、もしくはダンジョン付近で待ち伏せしていたかだろう。
何のために……って決まってる。
ダンジョンの封印が解かれるのを待っていたんだ。
「いや、それは時系列がおかしい……」
「何がですか?」
どうやら声に出てしまっていたらしい。
気づかぬうちに険しい顔をしてしまっていたか、心配そうに覗き込んでくるロッカ。
「なあ、俺とロッカが出会ったのは偶然……だよな?」
「え……っと、いきなりどうしたんですか? 魔物に襲われていたわたしをたまたま見つけて助けてくれたんですから、幸福な偶然だったと思ってますけど」
「やっぱりそうだよな……」
でもそうなると、やっぱり妙だ。
たまたまこの辺にはいない魔物に襲われてた少女が、たまたまダンジョンの地図を持っていて、たまたま入り口の封印を解ける封術士の俺と出会ったことになる。
そしてレーナーとかいう野郎の動きは、それを見越していないとできないものだ。
「……どうなってやがるんだ」
俺がロッカに会ったのだってパーティをクビになったからだし、そもそもダズがティアに会ってなければ俺はクビになっていなかったはず。
ただそんなことをいいはじめたらあの時に村を出てなければ、魔力の放出を封じられていなければ……ってなるか。
いや、あの事件がなければそもそも俺は冒険者になんかなってないだろうが。
本当に全て偶然なのか、もし仕組まれていたならどこからなのか。
見えない蜘蛛の糸と、何かの意図が絡みついているようで気持ちが悪い。
「ちなみにティアがこっちに来たのは偶然か?」
「えっと……王都でA級パーティの噂を聞いて、その中にすごい封術士がいると知ったからです。来ると決めたのは自分の意思なので偶然かと聞かれると……どうなんでしょう?」
自分の意志ということは、誰かに唆されたわけじゃなさそうだ。
「ヴェインさん、出口が見えてきましたよ!」
帰り道は魔物との戦闘もなく、あっという間だった。
考えごとをしていたせいかもしれない。
ダンジョンの出口から外に出ると、夜風が頬を撫でていった。
冷たさよりも、全員が無事に生きて戻った安堵の方が勝る。
「外の空気って、こんなに美味しかったんですね……」
ロッカが深呼吸して目を細める。
「ほんと……私、二人がいなかったら、今頃どうなってたか」
ティアはまだ涙の跡を残しながらも、必死に笑おうとしている。
そもそも俺たちと一緒でなければここに来ることもなかっただろう、と口にしかけたけど無粋だからやめた。
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