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28話 ノミクラーベ
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「なんだあ? もう話は終わっただろ⋯⋯」
モルダーは自分の正面にいきなり座った俺をギロリと睨みつけてくる。
嫌そうではあるが、ようやくこっちを見てくれた。
「話は始まってもいないぞ。そもそも俺たちは神殿とはなんの関係もない」
「⋯⋯じゃあなんでその名前が出てくる?」
「ティアローズさんは、わたしたちパーティの仲間なんですっ!」
ロッカの言葉を聞いて目を丸くしたモルダーは、一瞬遅れて声を上げた。
「なんだそれ、どういう意味だ?」
「彼女は俺の弟子になりたいといってリーンベルまで押しかけて来たんだ」
「弟子に⋯⋯? ああ、もしかしてお前は封術士ってやつか」
モルダーはジョッキを持ち上げようとしたが、思い直したように水を口にした。
話をしてくれる気になったということか。
「ああ。確かに俺は封術士だ」
「なるほど⋯⋯となると、確かに神殿は関係なさそうだな。だがそのお仲間さんたちがどうしてオレのとこに?」
「実は⋯⋯」
と、モルダーにおおまかな事情を伝えると、彼は頷きながらせせら笑う。
「爺め。あの子を自分の手元に置いてコンクラーベに利用しようって腹か。いつまで経っても籠の中の鳥なんて可哀想に⋯⋯」
「モルダーさんっ、その爺っていうのは誰なんですか?」
ロッカが可愛らしく小首を傾げる。
「それはな⋯⋯」
と、モルダーは口元を緩ませて、話しかけたがすぐに首を横に振る。
「いや、やっぱタダじゃ教えられないな」
モルダーは歯をむき出しにした、意地悪な顔でニヤリと笑った。
まあ金で解決出来るならそれならそれでいい。
「いくら欲しいんだ?」
「はっ、金なんざ要らないさ。腐るほどあるからな」
「じゃあ何が⋯⋯」
そうと言いかけると、モルダーがジョッキを指さす。
「これで決めようじゃないか」
「酒?」
「ああ、スバリ飲み比べ対決だ!」
「はあ? なんだそれ⋯⋯」
思わず本気で呆れた声を漏らしてしまった。
神職が昼間っから酒をかっ食らってあまつさえ、酒飲み対決って⋯⋯。
「お前たちが勝ったら知りたいことを教えてやるし、なんなら協力しってもいい」
「それは有り難いが⋯⋯でもそっちはもう飲み始めているじゃないか。だいぶ不利じゃないか?」
「はっ、これくらいハンデがないと面白くないだろ」
モルダーはそういうと、ジョッキの残りを飲み干した。
「負けてから言い訳するなよ?」
「はっ、当たり前だろ」
「それじゃ⋯⋯」
「ちょっと待ってください、ヴェインさん!」
いざ勝負を始めようとしたところで、ロッカが割り込んできた。
何故かその目が燃えている。
「ど、どうした?」
「この勝負、わたしに任せてくださいっ!」
「はっ、小さな嬢ちゃんじゃ勝負にならんだろ」
「さあ、それはどうでしょうね?」
ロッカは妙に自信がありそうだが、本当に大丈夫だろうか。
ただ俺も昨日の酒がちょっと残ってるから⋯⋯。
よし、ここはドワーフの血が騒いでそうなロッカに任せてみてもいいかもしれない。
「嬢ちゃん相手でも容赦はしないぞ。あ、あと負けたほうが支払いな」
「望むところですっ!」
ロッカは大きな胸を張ると、丸テーブルに着席した。
勝負用の酒を注文しにいくと、マスターは呆れた顔で笑う。
「彼はいつも冒険者たちに飲み比べ勝負を挑むんだ⋯⋯お前たち災難だったな」
そう言いながら、店の奥から樽を転がしてきた。
あの酒は俺が昨日、散々マスターに飲まされたやつだ。
あんな酒精が強い酒を樽ごとって⋯⋯正気かよ。
「よし、酒が用意できたみたいだな。じゃあ掛け声をかけてくれ」
「分かった。ロッカも無理するなよ」
「大丈夫です! お父さんは飲み比べ無敗の漢でしたからね!」
モルダーはロッカをじっと見つめると、にやりと笑った。
「なるほど、嬢ちゃんにはドワーフの血が入ってるのか。それなら面白い勝負になりそうだ」
「それじゃ、始め!」
二人は、もの凄いペースでジョッキを空けていく。
依頼にあぶれたのか、昼前から酒場で飲んでいた冒険者たちも集まりはじめた。
「おい、どっちが勝つか賭けようぜ」
「バカ。女の子とモルダーじゃ勝負にならねえだろ」
「ああ、あいつに勝てるやつなんていないぜ。この前だって⋯⋯」
やはりマスターの言ってたとおり、モルダーはしょっちゅう飲み比べ勝負を挑んでいるみたいだ。
受付嬢が言ってた「冒険者が避けてる」ってのも絶対これが原因だろ。
「二人とも凄いペースだな⋯⋯なんか見てるだけで気持ち悪くなってきたぜ」
「見ろ、モルダーのやつ珍しく焦ってねえか?」
「逆にあの子は顔色ひとつ変えてねえぞ⋯⋯どうなってんだ」
次々に積まれていくジョッキ、減っていく酒。
結局、樽の酒が空になるまで飲みきった頃、ついに決着がついた。
片方がいきなりテーブルに突っ伏して動かなくなったからだ。
「おい、ロッカ⋯⋯大丈夫か?」
「ふへへ。もちろん大丈夫ですよっ! わたしの勝ち⋯⋯ですね?」
周囲の冒険者たちがどよめく中、ロッカは頬を少し赤らめながらもしっかりとした足取りで立ち上がった。
「やっぱりお父さんの血は伊達じゃありませんでしたねっ!」
モルダーは自分の正面にいきなり座った俺をギロリと睨みつけてくる。
嫌そうではあるが、ようやくこっちを見てくれた。
「話は始まってもいないぞ。そもそも俺たちは神殿とはなんの関係もない」
「⋯⋯じゃあなんでその名前が出てくる?」
「ティアローズさんは、わたしたちパーティの仲間なんですっ!」
ロッカの言葉を聞いて目を丸くしたモルダーは、一瞬遅れて声を上げた。
「なんだそれ、どういう意味だ?」
「彼女は俺の弟子になりたいといってリーンベルまで押しかけて来たんだ」
「弟子に⋯⋯? ああ、もしかしてお前は封術士ってやつか」
モルダーはジョッキを持ち上げようとしたが、思い直したように水を口にした。
話をしてくれる気になったということか。
「ああ。確かに俺は封術士だ」
「なるほど⋯⋯となると、確かに神殿は関係なさそうだな。だがそのお仲間さんたちがどうしてオレのとこに?」
「実は⋯⋯」
と、モルダーにおおまかな事情を伝えると、彼は頷きながらせせら笑う。
「爺め。あの子を自分の手元に置いてコンクラーベに利用しようって腹か。いつまで経っても籠の中の鳥なんて可哀想に⋯⋯」
「モルダーさんっ、その爺っていうのは誰なんですか?」
ロッカが可愛らしく小首を傾げる。
「それはな⋯⋯」
と、モルダーは口元を緩ませて、話しかけたがすぐに首を横に振る。
「いや、やっぱタダじゃ教えられないな」
モルダーは歯をむき出しにした、意地悪な顔でニヤリと笑った。
まあ金で解決出来るならそれならそれでいい。
「いくら欲しいんだ?」
「はっ、金なんざ要らないさ。腐るほどあるからな」
「じゃあ何が⋯⋯」
そうと言いかけると、モルダーがジョッキを指さす。
「これで決めようじゃないか」
「酒?」
「ああ、スバリ飲み比べ対決だ!」
「はあ? なんだそれ⋯⋯」
思わず本気で呆れた声を漏らしてしまった。
神職が昼間っから酒をかっ食らってあまつさえ、酒飲み対決って⋯⋯。
「お前たちが勝ったら知りたいことを教えてやるし、なんなら協力しってもいい」
「それは有り難いが⋯⋯でもそっちはもう飲み始めているじゃないか。だいぶ不利じゃないか?」
「はっ、これくらいハンデがないと面白くないだろ」
モルダーはそういうと、ジョッキの残りを飲み干した。
「負けてから言い訳するなよ?」
「はっ、当たり前だろ」
「それじゃ⋯⋯」
「ちょっと待ってください、ヴェインさん!」
いざ勝負を始めようとしたところで、ロッカが割り込んできた。
何故かその目が燃えている。
「ど、どうした?」
「この勝負、わたしに任せてくださいっ!」
「はっ、小さな嬢ちゃんじゃ勝負にならんだろ」
「さあ、それはどうでしょうね?」
ロッカは妙に自信がありそうだが、本当に大丈夫だろうか。
ただ俺も昨日の酒がちょっと残ってるから⋯⋯。
よし、ここはドワーフの血が騒いでそうなロッカに任せてみてもいいかもしれない。
「嬢ちゃん相手でも容赦はしないぞ。あ、あと負けたほうが支払いな」
「望むところですっ!」
ロッカは大きな胸を張ると、丸テーブルに着席した。
勝負用の酒を注文しにいくと、マスターは呆れた顔で笑う。
「彼はいつも冒険者たちに飲み比べ勝負を挑むんだ⋯⋯お前たち災難だったな」
そう言いながら、店の奥から樽を転がしてきた。
あの酒は俺が昨日、散々マスターに飲まされたやつだ。
あんな酒精が強い酒を樽ごとって⋯⋯正気かよ。
「よし、酒が用意できたみたいだな。じゃあ掛け声をかけてくれ」
「分かった。ロッカも無理するなよ」
「大丈夫です! お父さんは飲み比べ無敗の漢でしたからね!」
モルダーはロッカをじっと見つめると、にやりと笑った。
「なるほど、嬢ちゃんにはドワーフの血が入ってるのか。それなら面白い勝負になりそうだ」
「それじゃ、始め!」
二人は、もの凄いペースでジョッキを空けていく。
依頼にあぶれたのか、昼前から酒場で飲んでいた冒険者たちも集まりはじめた。
「おい、どっちが勝つか賭けようぜ」
「バカ。女の子とモルダーじゃ勝負にならねえだろ」
「ああ、あいつに勝てるやつなんていないぜ。この前だって⋯⋯」
やはりマスターの言ってたとおり、モルダーはしょっちゅう飲み比べ勝負を挑んでいるみたいだ。
受付嬢が言ってた「冒険者が避けてる」ってのも絶対これが原因だろ。
「二人とも凄いペースだな⋯⋯なんか見てるだけで気持ち悪くなってきたぜ」
「見ろ、モルダーのやつ珍しく焦ってねえか?」
「逆にあの子は顔色ひとつ変えてねえぞ⋯⋯どうなってんだ」
次々に積まれていくジョッキ、減っていく酒。
結局、樽の酒が空になるまで飲みきった頃、ついに決着がついた。
片方がいきなりテーブルに突っ伏して動かなくなったからだ。
「おい、ロッカ⋯⋯大丈夫か?」
「ふへへ。もちろん大丈夫ですよっ! わたしの勝ち⋯⋯ですね?」
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