万象無双の魔銃士《マギガンナー》 〜出来損ないはいらないとパーティを追い出されたら【ユニークジョブ】を授かりました。今更泣きつかれても、エロ

しがわか

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30話 潜入

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 夜の帳が下りた頃、俺とロッカは宿を出た。

「なあ、やっぱり⋯⋯」
「嫌ですって! なんでわたしを置いていこうとするんですかっ!?」
「そりゃ危ないからに決まっているだろ」

 さっきから何度もそう言っているのに、全然聞き入れてくれない。
 
「いざとなったらヴェインさんが助けてくれるから大丈夫ですよ」
「なんだその無駄な信頼感は。プレッシャーで俺の胃に穴が開いちまうよ」

 そんな心の叫びを、ロッカは「ははっ」という乾いた笑いで流した。

「それにしても動きづらい服ですね」
「話を逸らしやがったな⋯⋯まあ確かに動きづらくはあるが」

 俺とロッカはモルダーが懇意にしている洗濯屋から借りた服を着ている。
 これはどうやら神殿衣というらしく、上下真っ白なものだ。
 どうも袖や裾がヒラヒラとしていて落ち着かないが、モルダー曰く、神殿内ではこの格好が一番目立たないらしい。

 大神殿の近くまできたところで、正面入り口を二人の男が監視しているのが見えた。
 
「やっぱり警備が薄いといっても全くいないということはなさそうですね」
「ああ、そうだな」

 二人の男は出入りする信者に対してしっかりと目を光らせている。

「あの感じだとやっぱり信者のフリして正面突破するのは無理そうだな」
「じゃあプランBですねっ!」
「なんでちょっと楽しそうなんだよ⋯⋯」

 少し呆れつつも、目立たないようにロッカの袖を軽く引いた。
 建物の裏側に回ると、俺の頭よりも少し高い柵がある。
 目隠しのためか植物が植えられているので中を覗くことができない。

「ロッカ、誰か居ないか確認してくれ」

 俺はその場にしゃがみ込むと、ロッカはすぐに意図を察して頷く。

「よいしょっと⋯⋯」

 ロッカが俺の肩にまたがったのを確認したのでゆっくりと立ち上がる。
 肩車をすればちょうど柵の上から中を確認できるはずだ。

「どうだ?」
「うーんと⋯⋯大丈夫です、誰もいませんね」
「よし、予定通りだ」

 ロッカを降ろすと、靴に風魔術を封じる。
 ウィン=ルゥほどの精密な動きはできないが、ただ飛びあがるくらいならなんとかなる。

「ほら、掴まれ」

 手を伸ばすと、ロッカを両腕で抱きかかえる。
 腕に力を込めると苦しいのかちょっと顔を赤らめているが、我慢してくれ。

「よっと!」

 足に力を込めて飛び上がると、俺たちの体は風に押し上げられる。
 そのまま一足飛びに柵を飛び越えると、屋根に着地した。

「ひゃぁ⋯⋯高いですね」
「ああ、落ちないように気を付けろよ」

 ロッカの手を握ったまま屋根伝いに進み、ちょうど下にバルコニーが見える位置で身を屈める。

「先に降ろすぞ」

 彼女を静かに下ろすと、続いて自分も足音を殺して着地する。

「モルダーさんのお知り合いが開けてくれているのはここの窓ですよね?」
「そのはずだ⋯⋯ああ、ちゃんと開けておいてくれたみたいだ」

 そっと室内に入ると、そこは倉庫のような場所だった。
 隅には木箱が置かれていて、使用用途のわからない器具や調度品が転がっている。

「なんだか埃っぽいですね」
「あまり使われていない部屋なんだろうな。つまり人が来る心配も少ないはずだ」

 とは言いながらも、胸の奥にかすかな緊張が残る。
 
「ちょっとドキドキしますねっ!」
「おいおい遊びじゃないんだぞ。とにかく見つかる前に行くぞ」
 
 薄く扉を開けて外の状況を確認する。
 
「どうやら誰も居なさそうだ」
「やっぱり建物内はほとんど警戒されてないみたいですね」
 
 部屋を出ると、静かに扉を閉める。
 床に敷かれた赤く厚い絨毯が、俺たちの足音を吸い込んでいく。
  
「やけに豪華ですね」
「確かにな⋯⋯」

 廊下は広く、扉と扉の間には骨董品のような花瓶に生花が活けてある。

「ディアロという人の部屋はこっちでしたよねっ!」

 と、歩き出したロッカの手を掴むと、ぐいと引き寄せる。
 
「待て、そっちは真逆だ」

 そういえばこの子は地図を読めない系女子だったな。
 なるべく手を繋いでいた方が良さそうだ。

 俺たちは廊下を進んでいく。
 聞こえてくるのは衣擦れと心臓の鼓動だけだ。

「なんだか……静かすぎませんか?」
「まあ、ありがたいけどな」

 警備兵の気配はなく、すれ違う人影すらない。
 本当にここが権力の中枢なのかと疑いたくなるほどだ。
 ただ、その不自然さが逆に落ち着かない。

 廊下の角を曲がると⋯⋯あそこが目的の部屋だ。

「ここだな」
「なんだか緊張してきました」

 ロッカの指先が小さく震えているのが分かる。
 だから宿で待っていれば良かったのに――そう思いかけて首を振る。
 ロッカだってティアを助けたいに決まってるよな。
 俺だって待っていろと言われても我慢できないだろう。
 
「あっ⋯⋯」
「大丈夫、何があっても守るからな」
 
 俺が小さな手を握ると、ぎゅっと握り返してくる。
 その指はもう震えていなかった。

「――よし、行くぞ」

 ゆっくりと、音を立てぬよう扉を押し開いた。
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