『男は全てに於いて女より優れた生き物である』というので、その証明をしてもらうことにした。

月白ヤトヒコ

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ああ、恐ろしいことよ。さすがは、『慈悲深い外道』と称される医療大国の王だ。

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「よかろう! 砂漠の、その者らの処遇。其方へ任せる。好きにせよ」

 先程の剣呑さが嘘のように、晴れやかな笑い声を響かせ上機嫌な女王陛下。

「ありがとうございます。では、帰国してすぐに実験に取り掛かりたく思うので、本日は御前を失礼します」
「ああ、存分に実験をするといい。結果を楽しみにしている」
「はい。彼らが妊夫・・となったらお報せ致します」
「ククッ、期待している。男が子を産めるのであれば、女の負担が随分と減る。出産で命を落とす女も少なくなることだろう」
「ええ、その通りですね。あぁ、愉しみだなぁ……」

 まずは、体内のどこで妊娠するのか。胎盤を形成するのか、それとも別の器官があるのか……色々と身体検査をしなくては。

 単一生殖が不可能なら、別の男の子種を注げば子を孕むのか。それとも、受精卵を着床させれば妊娠するのだろうか?

 騎士……と称するのには憚られるくらいには粗野で粗暴。短絡的だが、彼らはそれなりにいい体格をしている。まあ、丁寧に扱わなくても、早々に壊れることはないだろう。

 うちには、男女関係無く相手のできる子もいるし。なんなら、男専門にしか相手をしない子もいる。嫌がる男を組み敷き、屈服させて調教するのを趣味としている子もいる。

 まあ、あまりにも協力的でない場合は……最悪、薬を使えばいい。

「ああ、そうだ。レディ」
「え? あ、はい」

 ビクッと、縮こまる……粗暴な男の妻であるという女性。

「あなたもうちに来るかい? か弱い女性は、見掛け次第保護するのが我が国の流儀でね。ああ、無論。あの男と離縁したければ、今ここで騎士の国の王太子殿下に手続きを頼もう。あなたは、どうしたいだろうか? どうせ、あの男の家に帰ったとしても虐げられるだけだと思うよ? 待遇が気になるというのなら、侍女や女官として雇うのもいい。読み書き計算ができれば、外国語を教える仕事もできるだろう」
「ぁ……わ、わたくし、は……」
「おいっ!? 俺を助けろっ!?」

 レディが口を開こうとした矢先、夫だという男が脅すように割り込んだ。

五月蠅うるさいよ。わたしは今、彼女と話しているんだ。少し、黙っていてくれないか……いや、暴れられても面倒だ」

 チラリと部下の方へ目を向ければ、素早く動いて彼ら三名がスッと昏倒。手慣れた様子で彼らを拘束し、運んで行った。うん、仕事が早いことだ。

「相変わらず、手際がよいことよ。まるで人攫いのようだ」
「ふふっ、うちの国は老若男女、犯罪者も問わずに受け入れますからね。仮令たとえ、他国では顔を背けられるような死刑確定の重犯罪者だとしても、本人や……他国の要請があれば幾らでも受け入れますよ」

 クスクス笑うと、

「ああ、恐ろしいことよ。さすがは、『慈悲深い外道』と称される医療大国の王だ」

 揶揄うように笑う女王陛下。

「現在は、『美形好きな砂漠の好色王』の通り名の方が有名らしいですよ? まあ、わたしが面食いなのは事実。美しいものが好きな人間の方が多いでしょう? 後宮には、多種多様な人種が揃っていますからねぇ」

 我が宮殿には代々後宮ハレムがあり、多くの女性を囲って来た。所謂性病などで、奪われる命がそれなりにある。性病や、医療行為自体を暗殺の道具とする輩もいる。ならば、後宮を管理する者自身が医師となればいい、と。数代前の国王が医術を学んだ。それから、我が国の医療技術が発展し始めた。

 被検体・・・は、幾らあってもいい。重犯罪者を受け入れれば、受け入れた分だけ他国へ恩も売れる。傷病状態の経過観察や治験投薬の記録を取れば、医療の進歩にも役立つ。被検体・・・の死体だって、一切無駄にはしない。全て解剖し、保存して記録に残す。

 重犯罪者が命を長らえた分、死体ですらも、これ程に他者のために役立てる。誰も損をしない、とても素晴らしいことだろう?

 無論、罪人以外の移住、亡命希望者にはちゃんとした国民としての待遇を用意するが。

 わたしが、好色王として揶揄され始めたのは……ああ、確か、半陰陽の奴隷として売られていた子をオークションで競り落とした頃からだったかな? 半陰陽の子達は、男女両性の特性を持つ。そして、美形が多い。

 まあ、人身売買は見目のいい子が売られることが多いからね。とは言え、わたしが競り落としたのは他にもいるんだけどなぁ。そう、腕が通常の人より多い子。隻眼……というよりは、単眼の子。尻尾が生えている子もいたね。

 化け物扱いされ、見世物として売られた子は……恐れられて、傷病に罹っても満足な治療を受けられない。そういう子を、わたしは趣味と実益を兼ねてお買い上げ・・・・・している。医学的に、大変興味深い。彼らは通常の人間よりもパーツが多かったり、逆に少なかったりするだけの、人間だ。

 死んでもいい化け物……または、神話の神と同様の特徴を持って生まれたが故に、現人神として崇められていたりもする。

 まあ、神扱いをしているとしても、恐れだか畏れだかで、ろくな医療行為を受けていない子の方が多いのは事実。わたしは、そういう人間扱いされていない子達を医学で……その異形さを症状として暴き、人間にして来た。

 それが、いつしかわたしが人身売買のオークションで、男女関係無く見目のいい奴隷を買って手籠めにしていると噂が立ち始め、あっという間に好色王と呼ばれ始めたのだったかな? まあ、別に閨の相手が男女どちらでもいいのは事実だけど。

「勝手に、我が国の民の移住を決めないで頂きたい」

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