愛していなければ耐える必要は無いということですね!

月白ヤトヒコ

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愛していなければ、耐える必要は無いのですね!

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 ほら? 王族へ嫁ぐとなれば、暗殺は日常茶飯事だとお聞きしましたの。

 え? 陰惨な歴史に嫌気が差したから辞退を申し出たのか、ですか?

 いえ……ああ、でも、ある意味では、はいとなるのでしょうか?

 煮え切らない返事? 申し訳ございません。

 ですが……毒薬の授業は、暗殺を防ぐために。毒に耐性を付けるために、服毒せねばなりませんの。無論、最初は軽い毒薬から、と講師の方に言われて毒を飲んだのですけれど――――

 それは、高位貴族・・・・令嬢仕様の軽い・・毒薬だったのですわ。彼女達は、元々国内外の王侯貴族へ嫁ぐことを視野へ入れて、お家の意向で幼少期からそのような教育・・を受けていらっしゃるのでしょう?

 ほら? 皆様ご存知の通り、わたくしの実家はそんなに裕福ではありませんし。わたくし自身も高位貴族に嫁ぐ予定の教育・・は受けておりませんでしたもので。

 お陰でわたくし、最初の授業の後に軽く死に掛けましたの。全く、これっぽっちも軽い症状では済まなかったのですわ。

 それで、講師の方も慌てて……宮廷医をお呼びして頂いて、事無きを得ましたの。

 死の危険を感じたから、王太子殿下の婚約者を辞退したのか、と?

 ええ、それも一因ではありますわね。

 他にも原因があるなら教えてほしい、ですか?

 はあ、わかりました。

 わたくしが毒で死に掛けた後、講師の方に言われたのです。「この程度の毒薬で死にそうになっていては困ります。王太子殿下のことを愛していらっしゃるのでしたら、これくらいのことには耐えてください。王太子殿下を愛しているのでしたら、耐えられるでしょう?」と。

 他の高位貴族令嬢方が、十数年掛けて得た毒に対する耐性を、わたくしは最長でも三年以内に身に付けなければいけないのですって。

 そのために、最初の授業で躓いていてはスケジュールが崩れてしまう、と。

 更に言えば、短期間で毒への耐性を身に付ける過程の副作用として。身体を壊して、子ができなくなってしまう可能性もあるのですって。けれど、「王太子殿下のことを愛しているのなら、全て耐えられるでしょう?」と、そう言われましたわ。

 王太子妃教育を担う方が、『愛があれば全て耐えられるでしょう?』だなんて、随分とロマンチックなことを仰るのねぇ……? と、酷く驚きましたわ。

 そして、わたくしはその夢溢れるお言葉を頂いて、気付いたのです。『愛していなければ、耐える必要は無いのですね!』と。それで、その場で講師の方へ告げましたの。

 「わたくし、王太子殿下のことは愛していないので耐えられませんわ」と。

 講師の方は目を丸くして、「あなたは、毒の影響で正常な判断ができないのです。授業は、体調が戻るまでしばらくの間お休みにしますので、よくよく考えてください」と仰られて……

 わたくし、その日から一週間程お休みを頂きましたの。

 それで、よくよく考えましたわ。

 わたくし、やっぱり王太子殿下を愛しておりませんの。死ぬように苦しい毒薬を飲んで、何度も何度も繰り返し飲んで耐性を得て、また別の毒薬を飲んで、耐え抜いて。子ができなくなってしまう体質になってまで……? いつか産むかもしれない我が子を抱けなくなってまでも……?

 そんなに苦しみ抜いてまで、王太子殿下の婚約者に収まりたいとは思っていませんもの。

 そもそも、わたくしは気付いておりましたの。王太子殿下の婚約者候補にわたくしが残ったのは、わたくしが優秀であることも、理由の一つではあるでしょうけど。主な理由は、高位貴族令嬢方へ発破を掛けるためなのでしょう? 身分の低い者に負けることは、あまり宜しくないですものね。

 そのために、当て馬として下位の貧乏伯爵家からわたくしが選ばれた。

 なので、わたくしは正しく当て馬の役目を……王太子殿下の婚約者候補となる際に頂いた仕度金の分、義務は十分に果たしたと思いますわ。

 え? 本当に、王太子殿下のことを愛していないのか、ですか? あんなに仲睦まじくしていたのに?

 王太子殿下……次代の国王陛下となられるお方に、無愛想に接することは失礼になりましょう? 政治についてのお話などは弾みましたけど、笑顔で対応するのは当然かと。

 王太子殿下に、ここまでお気に掛けて頂いたこと、光栄に思います。ですが、下位の伯爵家の娘のことなど捨て置いてくださいませ。

 どうしても決意は変わらないのか、ですか?

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