VRMMOで知り合った彼女がネカマのギルドマスターに寝取られていた

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#24 ギルド周回

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次の日。ログインするとアリサはまだ来ていなかった。いつも俺がログインする前には来ていたはずなんだけどな。何か生活スタイルが変化するような出来事でもあったのかしらん。

 その代わりと言っては何だが、ギルド内のチャットが賑わっていた。

 昨日と俺が居ない間に何があったのか知らないが、ギルドチャットはさくらひめを中心に盛り上がり……盛り上がると言うか、ほとんどのメンバーがさくらひめの取り巻きのような状態だな。これがギルドの姫ってやつなのかもしれない。

 そういやギルドメンバー欄からたいきが消えている。ギルドから自ら脱退したのか? いや、それとも……。


さくらひめ
「今日はギルドマスターと私からみんなに大事なお話があります。ウェスタンベルの噴水広場に集まってください(*´▽`*)」

ひでキング
「え、なになに?」

ターボ
「みんな! ひめさまの大事なお話だぞー! 急いで向かえーー!」


 ……あんな大人しかったギルドメンバーがここまで変わるとは思っていなかったな……。これが人間の持つカリスマ性ってやつなのか。アリサが来るまですることもないので俺も噴水広場に行ってみることにする。


≪王都ウェスタンベル・噴水広場≫

 俺が着いた頃には、既に多くのギルドメンバーが集まり、ベンチに腰かけていた。こうやってみるとギルドメンバーは男キャラが多い気がする。そんな中に突如現れた姫キャラ……刺激が強すぎてメロメロ状態になってしまうのも少しだけわかる気もするね。

 空いているベンチを探していると、ユリアが俺に向かって手を振っているのが見えた。どうやら隣の席を空けておいてくれたらしい。

「サンキュー」

「いえいえ」

 俺が座ったのを確認すると、タツヤはさくらひめと一緒にみんなが見える場所まで移動した。

 さくらひめは金髪でキャバ嬢のような盛り髪の人間のアバターだった。いかにも男が寄ってきそうな、男に慣れていそうなそんな雰囲気を漂わせている。

「みなさん、本日は忙しい中お集まりいただきありがとうございます。順調に光の冒険団のギルドメンバーも増えてきました! そこで、本日はこれからのギルドとしての方針を決めておきたいと思います」

 タツヤが大きな声でそう言うと、ギルドメンバーからざわざわと声が上がった。

「このギルド、光の冒険団をDOMで一番の強豪ギルドにします!」

 周りからは当然「え?」と困惑の声が上がる。

 俺も目玉が飛び出そうになった。この初心者の集まりを強豪ギルドにするだと……?

「ギルドにはCランクからSSSランクまであります。強豪ギルドというのは一般的に、Sランク以上を言って、まずは、Sランクを目指していきます!」

 どうしてそんな突然……。

 不思議に思っていると、タツヤの横でさくらひめがニヤリと笑ったのが見えた。

 これはさくらひめ、お前が企んだことなのか……?

「ギルドのランクを上げる方法は2つあります! 1つは、ギルド同士で争う『ギルド戦』を行い、相手ギルドに勝利することです!」

「そして2つ目は、ギルド依頼を少しずつこなしていくことです。ギルド依頼は、メニューコマンドを開いてギルド欄を選択すると見られると思います。確認してみてください」

「見てにゃ♪」

――――――――――――――――――――
【ギルド依頼】

・スライム150匹の討伐
・解毒草30個の納品
・プルプルドッグ10匹の討伐
・野鳥の卵5個納品
・ゴブリン80体の討伐
・鉄鉱石30個の納品
・バスターソード3本の納品
…………
――――――――――――――――――――

 言われた通り確認してみる。モンスターの討伐や、指定されたアイテムの納品などがつらつらと出てくる。どれも面倒なものばかりだ。


「今、僕たちが力を入れていきたいのは、このギルド依頼です! みなさん、ギルド依頼に表示されている依頼をメンバー同士誘い合って1日に1つ以上、達成するようにしてください!」

「ノルマ制にゃ♪」

 ざわざわとギルドメンバーからどよめきの声が上がる。

「ランクを上げると様々な特典を受け取ることが出来ます。例えば、みなさんが持っているワープリングの1日の使用回数の上限が増えたり、ギルドメンバー同士で使える共同の倉庫が使えるようになるのです。また、ギルドオリジナルの制服なんてのも作ることが出来るんですよ!」

「姫とお揃いの服着たいよね? ちなみに協力しない人はギルドから排除していくから、みんなで頑張っていくにゃ~!」

 さくらひめが一瞬とんでも無いことを口にしたが、周りのギルドメンバーは「うおおおおー!!」なんて声を上げて盛り上がっていた。なるほど、なるほどね。それで勝手な行動をとるたいきをギルドから排除したってわけか。

 こんな初心者の集まりを強豪ギルドにするってどれくらいの時間がかかるのだろう。厭だ。やる気が起こらねえ。なんて思っていたら話はまだ終わっていなかったです。

「もう一つ、私から大事な話があるから聞いてください」

 今度はさくらひめが話し始めた。タツヤが話す時よりもみんな、真剣な顔付きになっている。

「実はぁ~~! ギルドハウスを建てたいと思っていま~~す! あ、ちなみにギルドハウスは私の家に設定しますにゃ♪」

「うおおおおお! 姫様万歳!」

「ありがてぇ……!」


 ギルドハウスとか言っているけど、実際には1プレイヤーの家であり、勝手にそう呼んでいるだけで特別な機能とかがあるわけではない。結局のところ自分の家をギルドメンバーのたまり場にします、と言っているだけのことである。

 家を買うことが出来るのは1プレイヤーにつき一軒のみ。そして家の値段は最低でも20万ヴィルと高額だ。始めたばかりの初心者が持っているような金額ではない。


「そ・れ・で……お家を買うためにみんなから1万ヴィルずつお金を集めたいと思いま~す!」


 ……そう来たか。思わず鼻で笑ってしまった。

 いよいよ本性が現れ始めたな。

 さくらひめはギルドハウスなんて聞こえの良いことを言っているが、実際には自分の家が欲しいか、金が欲しいだけに違いない。その為にギルドメンバーの良心を利用してお金を巻き上げる。俺はそんな汚いプレイヤーがいるのを見てきた。そしてコイツもそのうちの一人に違いない。

 だが、さくらひめよ、このギルドに居るのは初心者の集まりだ。自分の装備を揃えるだけで精一杯で、お金を渡すようなやつがいるはずが……。


「クエストクリアで手に入れた、国王記念金貨渡すよ!」

「俺も俺も!」

「じゃあ僕、全財産渡すわ」

 …………

「みんな、ありがとう……」


 そう言ってさくらひめは両手で顔を隠し、嬉し泣きをするような仕草を始めた。ギルドメンバー達はお金を渡すために、さくらひめの元にずらずらと列を作り始めた。

 馬鹿な。
 なぜこんな知り合って間もないプレイヤーをここまで信用出来るんだ。DOMにおける金は命よりも重いはずなのに……!

 俺にはよく分からないが、さくらひめにはそこまでの魅力があるらしい。みんながさくらひめの取り巻きというわけではないのだろうけど、雰囲気に流されてなんとなくお金を渡す人もいるはずだ。まるで催眠商法。

 だが、忘れてはならない。さくらひめがネカマって可能性があるということを。お前たちはおっさんに貢いでいるのかもしれないんだぞ。それでもいいのか?


「お金はまだまだ受け付けていま~す! ギルドハウスが完成したらお手紙でお知らせするね♪」

 誰がお前に金なんか渡すものか。ギルドハウスなんか糞食らえ。さくらひめなんて糞食らえだ。

『シエルさん、さくらひめさんにお金って渡しましたか?』

 ユリアからこっそりフレンドチャットで声が掛かってくる。

『渡すわけないじゃん。自分の家くらい自分で買えって話よ』

『私もそう思ったのですが、メンバーのみなさんは渡しているみたいで……』

『群集心理に流されちゃダメだよ。自分の意思をハッキリと持たなきゃ』

『そ、そうですよね……自分の意思を持たないと』

 とか言って簡単に意見を変えてしまうユリアが自分の意思を持っているとは思えないが。他のギルドメンバー達は既にお金を渡し終えたようで、何故か俺たちの方を見ている。

「今ログインしている人の中で、シエル君とユリアちゃんからお金をまだ貰っていないですね」

 さくらひめがみんなに聞こえるように、しかも名指しでわざわざ嫌味ったらしく言いやがった。
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