あなた達を異世界の勇者として召喚してあげますよ?

しまうま弁当

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一章

黒輪

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5号室の扉を開けたまま少しの間沈黙が続いていた。

第一声をあげたのは美咲だった。

「もういやよ!!!こんな所さっさと出ましょうよ!!」

晃太が美咲に言った。

「そうだな。これ以上ここにいるのは危険かもしれないな。」

すると麻衣子が晃太に尋ねた。

「ちょっと晃太君?晴南達を探さないの?」

晃太が麻衣子に言った。

「もう6人も行方不明になってるんだ。俺達だけでどうこうできる問題じゃなくなってる。」

麻衣子が晃太に言った。

「そっか、町のみんなに助けを呼びにいくって事ね。」

晃太が麻衣子に言った。

「ああもう俺達だけで手に負える事態じゃないからな。助けを呼びに行こう。」

優斗が晃太に言った。

「警察にも通報しといた方が良いんじゃないかな?」

晃太が優斗に言った。

「そうだな。」

晃太が二実に尋ねた。

「二実さん?確かロビーに固定電話がありましたよね?」

二実が晃太に言った。

「うーん、それがさ昨日から壊れてて使えないのよね。」

晃太が二実に言った。

「えっ?固定電話も繋がらないんですか?」

二実が晃太に言った。

「うん、ごめんね。」

晃太がみんなに言った。

「まさか、固定電話まで故障してるなんてな。」

優斗が晃太に言った。

「となると直接助けを呼びに行くしかないね。」

美咲がみんなに言った。

「ねえ!こんな所はやく出ましょうよ!!」

二実が美咲に言った。

「うんそうだね。すぐにここから出ましょう。」

三緒が二実に言った。

「でも警察への連絡はどうするの?」

二実が三緒に言った。

「車で交番まで行けばいいわ。」

三緒が二実に言った。

「そうだね、分かった。」

二実がみんなに言った。

「という訳でみんなここから出ましょう。」

全員が頷くと5号室を出て玄関口へと向かった。

全員が玄関までやって来た。

二実がポケットからマスターキーを取り出して玄関口のロックを解除させた。

玄関口の引き戸は木製の枠の中にガラスがはめ込まれているタイプのものだった。

そして三緒が玄関口の引き戸を開けようとしたが、全く動かなかった。

三緒が二実に言った。

「まだ鍵がかかってわよ?二実?」

二実が三緒に尋ねた。

「えっ?空いてなかった?」

二実が再び玄関口の引き戸の鍵をマスターキーを使って開けようとした。

だがガチャという音と共に逆に施錠されてしまった。

二実は不思議に思いながらもう一度引き戸のロックを解除した。

二実がみんなに言った。

「ロックを解除したわ!」

二実の言葉を聞いて、晃太と三緒が玄関の引き戸を力一杯で引っ張った。

だが玄関の引き戸が全く動かなかった。

今度は優斗も加わって三人で玄関の引き戸を開けようとした。

だが結果は同じだった。

簡単に開くはずの引き戸が微動だにしないのだ。

晃太がみんなに言った。

「なんで開かないんだ?」

晃太が二実に尋ねた。

「二実さん、ロックの解除はしてるんですよね?」

二実が晃太に言った。

「うん、鍵はかかってないわ。」

美咲が二実に言った。

「それじゃあなんで開かないの?!!!」

その後も何度も玄関口の引き戸を開けようとしたが、まるで玄関口が壁のようになっており一ミリも動かす事ができなかった。

三緒が大きな声で言った。

「ロックは解除してるのに引き戸が開かないなんて!!」

麻衣子が晃太に言った。

「まるで引き戸が壁みたいになってる。」

すると周囲に美咲の悲鳴が響いた。

「キャーーー!!」

美咲が怯えた声で言った。

「あの子よ!!!幽霊の男の子!!!」

美咲が叫び声をあげて南側の廊下の端を指さしていた。

そこには10歳くらいの坊っちゃん刈りで紺色のセーターを着た少年がいた。

蒼白い顔の少年が笑顔でこちらを見つめていた。

だが彼が生者でない事は一目瞭然であった。

その少年の体は上半身より上があるだけで下半身がないのだ。

下半身が床の下に沈みこんでおり、上半身だけを床の上に出していたのだ。

しかも廊下の床に穴が空いている訳でもなかった。

その少年が床から上半身だけを出して笑顔で美咲達を見つめていた。

その少年の満面の笑みには不気味さも感じられた。

すると美咲が大きな声で叫んだ。

「きゃー!!もう嫌!!」

そして恐怖に耐えかねて奥の食堂の方へと走り出してしまった。

慌てて二実が美咲を呼んだ。

「美咲ちゃーん!!」

だが美咲は二実の言葉を聞かずに、全力で駆け出すと食堂へと逃げ込んでしまった。

晃太がみんなに言った。

「美咲を追いかけるぞ。」

晃太達が慌てて美咲を追いかけた。

全員が食堂に向かって走っていった。

すると二実が食堂に向かう途中で少年の幽霊がいた所を振り返った。

するとその少年の幽霊は消えていた。

二実も晃太達の後から食堂へと入っていった。

美咲は食堂の中で下を向いて震えていた。

二実が食堂に入った瞬間、食堂の中が暗闇に包まれたのだった。

突然周囲が暗闇に包まれて全員が驚いた。

麻衣子が言った。

「今度は何よ?」

二実が言った。

「真っ暗?停電かしら?」

三緒が二実に言った。

「いくら停電したからって真っ暗になる訳ないでしょ?まだ午後3時、昼間なのよ?こんなに真っ暗になる訳ないじゃない?」

七緒が三緒に言った。

「お姉ちゃん?雲でお日さまが隠れたんじゃない?」

三緒がスマホの時計を確認しながら七緒に言った。

「いやいや、確かに太陽が雲に隠れたら薄暗くはなるけど、これはそんなレベルじゃないでしょ?ほぼ真っ暗闇でしょ。こんなに真夜中みたいに暗くなる訳ないでしょ?」

美咲は真っ黒闇の中でひたすら震えていた。

三緒がみんなに言った。

「とにかく電気をつけましょう。真っ暗じゃ何もできないわ。」

三緒は出入口付近にある食堂の照明のスイッチを押した。

だが食堂の照明が照らされる事は無かった。

二実が三緒に言った。

「どうしたの?」

三緒が二実に言った。

「本当に停電してるみたい。」

何度もスイッチを押したがやはり食堂の明かりはつかなかった。

すると二実が自分のスマホを取り出すと、スマホのライトをつけてその明かりを頼りに厨房の中に入っていった。

「確かここに置いてなかったかな?」

そう言うと床から何かを持ち上げた。

すると厨房の所に大きな明かりが二つ現れた。

二実が二つの非常灯を照らしたのだった。

二実が二つの非常灯を持ってきて食堂の前方の座席に置いた。

特に集まってと言われた訳ではなかったが、全員が非常灯の所に集まった。

美咲も非常灯の前にやって来た。

麻衣子がみんなに言った。

「見て!外も真っ暗よ。」

優斗が言った。

「本当に何がどうなってるんだろう?」

晃太がみんなに言った。

「窓ガラスは空くか?空くなら、窓から外に出てみよう。」

すぐに晃太は窓を開けようとした。

だが窓ガラスはピクリとも動かなかった。

「窓ガラスも開かないのか。ロックは解錠してるのに。なんで、窓ガラスが少しも動かないんだ?」

晃太が優斗に尋ねた。

「そっちの窓はどうだ?」

優斗が晃太に言った。

「だめこっちの窓もピクリとも動かせないのよ。まるで固まってるみたいに。」

美咲は怖がり非常灯の場所から離れようとしなかったので、美咲以外のメンバーで食堂の窓を確認したが開けられる窓は一つもなかった。

三緒がみんなに言った。

「まさかこの建物中の全部の窓がこんな風になってるんじゃないでしょうね?」

二実が三緒に言った。

「そうなると窓からも外に出られないって事よ。」

すると三緒がみんなに言った。

「みんなとにかく落ち着こう。あたふたしても仕方ないから。」

三緒はみんなを落ち着かせようとこの言葉を言った。

信じられないような現象が立て続けに起こってみんな精神的にまいっていた。

この落ち着こうという言葉はありふれた言葉だったが三緒の想像以上にこの食堂にいるメンバーの冷静さを取り戻させる事ができた。

少し時間が経って、状況を整理する事になった。

晃太がみんなに言った。

「それじゃあ状況を整理してみよう。」

麻衣子が優斗に言った。

「よくもこれだけ怪奇現象が立て続けに起こるもんね?」

優斗が麻衣子に言った。

「うん、確かにそうだね。」

晃太がみんなに言った。

「まず今日の出来事からだ。最初の異変は晴南が朝食の時に廊下を通っていく少年の幽霊を見た事からだ。その後で拓也、慎吾、長孝の三人が二階から忽然と消えてしまった。それで二階を手分けして探していたら、今度は少年の幽霊が5号室の天井に現れた。」

晃太が続けて言った。

「それで5号室の中で幽霊について話をしている間に、今度は晴南、冬湖、亜美が5号室の中で忽然と消えてしまった。すぐに5号室の中を探したが三人の姿はなかった。そして俺達が外に出ようとしたらいきなりドアノブがガタガタと震え出して勝手に5号室の扉が開いた。だが誰も入ってこなかった。」

晃太が続けて言った。

「そして玄関口から脱出しようとしたが、ロックを解除しても玄関の引き戸がなぜか開かなかった。」

麻衣子が晃太に言った。

「うん、まるで壁みたいだった。」

晃太が続けて言った。

「その後で廊下の端の所に少年の幽霊が現れた。それを俺達が目撃した。俺達は逃げるように食堂までやって来た。すると突然真っ暗闇になって、まだ真っ昼間なのに真夜中みたいになってる。」

晃太がみんなに言った。

「これが今日起こった出来事だ。」

晃太がみんなに言った。

「状況を整理しようと言った俺が言うのもなんだが、本当に訳がわかんないな。」

麻衣子が晃太に言った。

「全然頭が追いつかないわ。」

優斗が二実に尋ねた。

「二実さんでもこういう体験ってそんなにないですよね?」

二実が優斗に言った。

「私でもこんなにヤバいのは初めてよ。こんな怪奇現象のフルコースなんて体験した事ないって。」

晃太が二実に言った。

「問題なのは拓也と慎吾と長孝、晴南と冬湖と亜美が行方不明になってる事だ。」

麻衣子が晃太に言った。

「本当よね?晴南達や拓也君達どこに行っちゃったんだろう?晴南達なんて同じ部屋の中にいたのに?突然消えちゃっうなんて?」

七緒が麻衣子に言った。

「さっきの男の子の幽霊が晴南達をあの世に連れてっちゃったんじゃない?」

麻衣子が七緒に言った。

「幽霊が実在するならありそうな話ね。男の子の幽霊が出てきてから色々とおかしな事が起こっているし。」

すると三緒が七緒と麻衣子に言った。

「たぶんあの子の仕業じゃないわ?」

麻衣子が三緒に尋ねた。

「えっ?どういう事ですか?」

三緒が麻衣子に言った。

「あの子からは悪い気配を感じなかったの。」

三緒が二実に尋ねた。

「ねえ二実も何も感じなかったでしょ?」

二実が三緒に言った。

「うん、あの子からは邪気は感じなかった。たぶん原因は他にあるんじゃないかな?」

二実が麻衣子に尋ねた。

「ねえ?麻衣子ちゃん?さっき昨日の話を聞かせてくれたよね?実はさっきからその真っ黒な奴の事が気になっててさ?真っ黒な奴が現れた時の事を詳しく教えてくれないかな?」

麻衣子は二実に昨日の夕方の出来事を詳しく話した。

二実は真剣な様子で麻衣子の話を聞いていた。

「なるほど、上社の社務所の中を調べて自分達が封木山の頂上にいると分かって下山したのね。」

麻衣子が二実に言った。

「はい、それでその後二実さん達と合流したんです。すいません、なんかうまく説明できなくて。」

二実が麻衣子に言った。

「ううん、そんな事ないわ。教えてくれてありがとう。麻衣子ちゃんの話から、おおよその事態は見えてきたわ。」

優斗が二実に尋ねた。

「えっ?この怪奇現象の原因が分かったんですか?」

二実が優斗に言った。

「昨日の夕方から怪奇現象が始まっているわ。そして麻衣子ちゃん達が山頂のしめ縄が燃えるのを目撃してるわ。実はさ、封木神社の上社にある御神木に封じ込められたと言われているお化けがいるのよ?」

優斗が二実に尋ねた。

「封じ込められたお化けですか?」

二実が優斗に言った。

「黒輪(こくりん)ってお化けよ。」

二実が麻衣子に言った。

「麻衣子ちゃん達が見た真っ黒な奴ってたぶん黒輪(こくりん)っていうお化けよ。」

優斗が二実に尋ねた。

「その封じ込められていた黒輪(こくりん)が復活して悪さをしてるって事ですか?今のこの状況はその黒輪(こくりん)によって引き起こされていると?」

二実が優斗に言った。

「うん、たぶんそうだと思う。」

優斗が二実に尋ねた。

「それならあの男の子の幽霊は?」

二実が優斗に言った。

「詳しくは分かんないけど、今回の事とは関係ないんじゃないかな?」

晃太が二実に尋ねた。

「そうするとその黒輪(こくりん)っていうお化けが晴南達や拓也達を消したっていう事になりますよね?仮にその黒輪が復活して今のこの状況を引き起こしているんだとして、その黒輪は残った俺達をどうしようとしてるんですか?」

すると二実は口ごもってしまった。

代わりに優斗が晃太に言った。

「やっぱり僕たちも消そうとしてるんじゃない?」

晃太が優斗に言った。

「やっぱりそうなるよな。」

すると二実が頭に手をやって痛そうにしていた。

二実がうなり声をあげた。

「うっ?」

隣に座っていた麻衣子が二実に尋ねた。

「二実さん?大丈夫ですか?」

三緒も心配そうに二実に尋ねた。

「ちょっと大丈夫?二実?」

すると二実が手をテーブルに置いて三緒と麻衣子に言った。

「ごめん、ちょっと頭痛がしただけ。」
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