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一章
祝詞奏上
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晃太がみんなに言った。
「問題はこの建物どうやって出るかだな。」
すると二実がみんなに言った。
「うーん、ちょっと試してみたい事があるんだ。」
三緒が二実に尋ねた。
「えっ?何をするの?」
二実が三緒に言った。
「ここの窓をもう一度開けてみるの?」
三緒が二実に言った。
「でももう全部の窓を試したわよ?」
二実がみんなに言った。
「食堂の一番奥側の窓をもう一度開けてみて?」
晃太が二実に言った。
「分かりました、やってみます。」
すると晃太が非常灯の一つを持って食堂の後方に移動して、食堂の一番奥にある窓を開けてみた。
すると窓ガラスはスルリと開いたのだった。
晃太が驚いて言った。
「あ、開いた?」
優斗が二実に尋ねた。
「二実さん?なんであそこの窓が開くって分かったんですか?」
二実が優斗に言った。
「お告げよ。フウキ様のお告げがあったの。」
三緒が二実に尋ねた。
「もしかしてさっきの頭痛?」
二実が三緒に言った。
「ええそうよ、三緒。あの時にフウキ様のお告げを聞いたの。」
優斗が二実に尋ねた。
「フウキ様って確かこの神社に祭られている神様でしたよね?」
二実が優斗に言った。
「ええ、そうよ、そのフウキ様からお告げがあったの。」
二実がみんなに言った。
「さあ、みんな、あそこから外に出ましょう。」
三緒がもう一つの非常灯で暗闇を照らしながら、食堂の一番奥の窓から一人ずつ順番に外に出て行った。
全員が窓の外から脱出すると、晃太は非常灯を二実に渡した。
その後で晃太が麻衣子に言った。
「外も同様に真っ暗なんだな。」
麻衣子が晃太に言った。
「夕暮れ前なのに真っ暗闇。おかしな感じね。」
二実がみんなに言った。
「みんな私たちから離れないでね。」
二実を先頭にして非常灯で前を照らしながら進んでいった。
そして二実達は西側の広場の端に止めてある二実の車の所に向かった。
二実は自分の車の前にやって来ると、ワンボックスカーのドアを開けるためにキーを操作した。
ピッピッという音と共に扉のロックが解除された。
急いでみんながワンボックスカーの中に乗り込んだ。
全員が乗ったのを確認してから二実は運転席に乗り込んだ。
二実がエンジンをかけるために車のキーを操作した。
だが車は何の反応もしなかった。
もう一度二実は車のキーを操作する。
だがやはりエンジンはかからなかった。
悪戦苦闘している二実に三緒が声をかけた。
「どうしたの?二実?」
二実が三緒に言った。
「車のエンジンがかからないわ。」
三緒が二実に言った。
「ええっ?なんで車のエンジンがかからないの?」
二実が三緒に言った。
「分からない、もう一回やってみるわ。」
その後二実は何度もエンジンをかけようと試行錯誤したが、エンジンはかからなかった。
二実が小さく呟いた。
「うーん、これは私は逃げるなって事なのかな?」
三緒が二実に尋ねた。
「ちょっと二実?どうしたの?」
二実が三緒に言った。
「あっ!ごめん、何でもないわ。車のエンジンがかからないんじゃ仕方ないわ。こうなったら歩いてこの神社を出ましょう。」
二実がみんなに言った。
「ごめんみんな、車が動きそうにないから降りてくれる?」
全員が二実の車から降りた。
二実も車から降りた。
そして二実が三緒に言った。
「三緒、みんなを連れて助けを呼びに行ってきて。」
三緒が二実に言った。
「みんなを連れてって二実はどうするの?まさかこの神社に残るつもり?」
二実が三緒に言った。
「私はここに残るわ。拝殿で祝詞奏上(のりとそうじょう)(神様へ感謝の言葉をのべる事)をしてみるつもり。」
三緒が二実に尋ねた。
「それもお告げにあったの?それで黒輪を封じられるの?」
二実が三緒に言った。
「ううん、お告げには無かった。それに黒輪が封じ込められるかは正直分からないわ。でも私がやらなきゃいけないと思うのよ?私がこの神社の神主になるんだから。」
三緒が二実に言った。
「なら私も手伝うわ。」
晃太が二実に言った。
「二実さん、それなら俺も手伝います。」
優斗が二実に言った。
「なら僕も。」
二実が三緒に言った。
「ダメよ、三緒はみんなを連れてくの。三緒までここに残ったら一体誰がみんなを連れてくの?」
三緒が二実に言った。
「分かったわ、その代わり無理はしないでよ二実?」
二実が三緒に言った。
「分かってるって。」
二実が晃太と優斗に言った。
「晃太君と優斗君も三緒と一緒に逃げてちょうだい。二人を危険な目には合わせられないから。」
晃太が二実に言った。
「俺も晴南達が心配なんです。」
すると優斗が二実にこう言った。
「もし僕らが足手まといになるというのなら、三緒さんと一緒に逃げます。でももし二実さんが一人で大変なら僕達に手伝わせてもらえませんか?」
二実は少し考えてから晃太と優斗に言った。
「分かった、それじゃあお願いするわ。優斗君、晃太君。」
晃太と優斗が言った。
「はい。」
二実が三緒に言った。
「三緒、みんなを頼むわよ。」
三緒が二実に言った。
「うん。任せて。」
麻衣子と美咲と由香と七緒が三緒と一緒に外に脱出して、二実と晃太と優斗が拝殿に向かい祝詞奏上(のりとそうじょう)の準備をする事になった。
麻衣子が晃太に言った。
「晃太君、気をつけてね。」
晃太が麻衣子に言った。
「ああ、助けを呼びに行くのは任せた。」
由香が優斗に言った。
「坂倉君も気をつけて。」
優斗が由香に言った。
「うん、そっちも気をつけてね。」
三緒が麻衣子と美咲と由香と七緒に言った。
「それじゃあみんな行こう。」
三緒が先頭に立って非常灯で前を照らしながら、鳥居の方に移動していった。
その場には二実と晃太と優斗が残された。
「二実さん、俺達は何をすればいいですか?」
二実が二人に言った。
「拝殿と本殿の周りにかがり火をたくさん用意して欲しいの。」
晃太が二実に言った。
「かがり火の用意ですね、分かりました。」
一方の三緒は麻衣子と七緒と由香と美咲の四人を連れて神社の入り口へと向かった。
少しして鳥居の所までやって来た。
そして三緒達は鳥居を越えて神社の敷地の外にある道路に向かって進んでいった。
非常灯で前を照らしながら先頭を進んでいる三緒がみんなに言った。
「このまま進めば道路に出るわ。」
すると麻衣子が三緒に言った。
「あれっ?また鳥居が見えてきましたよ?鳥居って2つありましたっけ?」
三緒が麻衣子に言った。
「いや鳥居は一つしかないはずだけど?」
三緒達は再び鳥居を越えてその先を進んで行った。
三緒達が前に進んで行くとまた鳥居が見えてきた。
三緒が言った。
「また鳥居が見えてきた。」
三緒達はその鳥居をくぐり先へ進んで行った。
だが進んでいくと三緒達の目の前にまた鳥居が現れるのだった。
美咲が大きな声で言った。
「どうなってるの?」
麻衣子が美咲に言った。
「まさか同じ所をグルグル回ってるの?」
三緒がみんなに言った。
「鳥居から道路は数十メートルしかないはずよ。鳥居も一つしかないはずだし、こんなに走るなんておかしいわ。」
その後も三緒達は鳥居を抜けて前に進んでいった。
少なくとも三緒達は前に進んでいるはずだと思っていた。
だがどれだけ進んでも鳥居の場所に戻されてしまうのだった。
麻衣子がみんなに言った。
「なんで鳥居を抜けても抜けても次から次に鳥居が出てくるの?」
三緒が言った。
「どういう事?まさか神社の敷地の外には出られないの?」
美咲がみんなに言った。
「ねえっ?はやく外に出ましょうよ!」
麻衣子が美咲に言った。
「だから出られなくなってるんでしょ。」
すると三緒が何かに気づいた様子で、急にキョロキョロとしだした。
そして大きな声で言った。
「ちょっと!七緒?どこ??返事なさい!!」
麻衣子達が驚いて周囲を見渡した。
「えっ?」
麻衣子達がお互いの顔を確認した。
すると由香と麻衣子と美咲と三緒の四人しかいなかったのだ。
七緒の姿はどこにも見当たらなかった。
三緒達が大きな声で七緒を呼んだ!!
「七緒!!どこにいるの!!」
「七緒!!早く出てきてよ!!」
だがどれだけ叫んでも七緒が姿を現す事は無かった。
三緒がショックのあまりその場に座り込んでしまった。
「そんな!!!七緒!!七緒!!」
三緒は目に涙を浮かべて大声で七緒を呼び続けた。
「七緒!!七緒!!七緒!!七緒!!七緒!!」
すると麻衣子が三緒に言った。
「三緒さん、大丈夫ですか。」
三緒は七緒がいなくなった事で一時的に動揺してしまったが、麻衣子と美咲と由香を見つめて自分がしっかりしなければならないと自分を奮い立たせた。
そして三緒はすぐに立ち上がり麻衣子達に言った。
「ごめんね、もう大丈夫だから。先に進みましょう。」
三緒は再び鳥居を抜けて外の道に出ようとした。
だが三緒達の前に何度も何度も鳥居が現れて同じ場所をグルグル回るだけであった。
三緒がみんなに言った。
「外に出るのは無理みたいね。」
麻衣子が三緒に尋ねた。
「それじゃあどうするんですか?」
三緒が麻衣子に言った。
「二実達の所に行きましょう。もうそれしかなさそう。」
すると美咲が三緒に尋ねた。
「えっ三緒さん?また戻るんですか?」
三緒が美咲に言った。
「うん、どうも神社の外には出られそうにないからね。」
美咲が三緒に言った。
「戻るのは嫌よ!!」
麻衣子が美咲に言った。
「いい美咲?外に出れないんだから、ここにいてもしょうがないでしょ?私も神社の外に出られない以上二実さん達と合流した方がいいと思うわ。」
美咲が麻衣子に言った。
「でもまた変な事が起こるんじゃない?」
麻衣子が美咲に言った。
「二実さんは黒輪(こくりん)ってお化けを何とかしようとしてるのよ?だったらそれを手伝った方がここで立ち尽くしてるよりもずっといいはずよ。それに二美さん達と一緒にいた方が美咲も安心できるでしょ?」
美咲が麻衣子に言った。
「分かったわ、ごめん麻衣子。」
お互いが顔を見ながら頷いた。
そして三緒がみんなに言った。
「それじゃあ拝殿に行きましょう。」
三緒達は方向を変えて拝殿へと向かって進み始めた。
するとさきほどまで起こっていた、同じ場所に戻される事はなくなった。
三緒達は拝殿の前にやって来た。
拝殿の中には二実の姿があった。
二実の姿を見つけた三緒が二実に言った。
「二実?」
二実は三緒達の姿を見つけると三緒に尋ねた。
「あれ三緒?なんでここに来たの?もう助けを呼びに行ってくれたの?」
三緒が二実に言った。
「それがさ、外に出れなかったの。」
二実が三緒に言った。
「外に出れないって?」
三緒が二実に言った。
「鳥居の所から何度も外に出ようとしたんだけど、鳥居の所まで戻されちゃうのよ?」
二実が三緒に尋ねた。
「鳥居の所まで戻される?外に向かって進んで行っても?」
三緒が二実に言った。
「そう?訳わかんないと思うんだけど、とにかく外には出られなかったわ。だから二実を手伝いに来たの?ところで晃太君と優斗君は?」
二実が三緒に言った。
「ごめん、かがり火の準備をしてもらってたんだけど、目を離した間にいなくなっちゃった。」
二実が三緒に尋ねた。
「いなくなったってまさか?」
二実が三緒に言った。
「うん、たぶん晴南ちゃん達みたいに消えちゃったんだと思う。」
麻衣子が二実に尋ねた。
「嘘、晃太君達も?」
二実が麻衣子に言った。
「うん、ごめんね。」
二実が三緒に尋ねた。
「ところで七緒ちゃんは?」
三緒は哀しそうに首を横にふった。
二実は三緒のつらそうな顔を見て七緒がいなくなった事を察した。
すると二実が三緒に言った。
「今はやれる事をやりましょう。」
「問題はこの建物どうやって出るかだな。」
すると二実がみんなに言った。
「うーん、ちょっと試してみたい事があるんだ。」
三緒が二実に尋ねた。
「えっ?何をするの?」
二実が三緒に言った。
「ここの窓をもう一度開けてみるの?」
三緒が二実に言った。
「でももう全部の窓を試したわよ?」
二実がみんなに言った。
「食堂の一番奥側の窓をもう一度開けてみて?」
晃太が二実に言った。
「分かりました、やってみます。」
すると晃太が非常灯の一つを持って食堂の後方に移動して、食堂の一番奥にある窓を開けてみた。
すると窓ガラスはスルリと開いたのだった。
晃太が驚いて言った。
「あ、開いた?」
優斗が二実に尋ねた。
「二実さん?なんであそこの窓が開くって分かったんですか?」
二実が優斗に言った。
「お告げよ。フウキ様のお告げがあったの。」
三緒が二実に尋ねた。
「もしかしてさっきの頭痛?」
二実が三緒に言った。
「ええそうよ、三緒。あの時にフウキ様のお告げを聞いたの。」
優斗が二実に尋ねた。
「フウキ様って確かこの神社に祭られている神様でしたよね?」
二実が優斗に言った。
「ええ、そうよ、そのフウキ様からお告げがあったの。」
二実がみんなに言った。
「さあ、みんな、あそこから外に出ましょう。」
三緒がもう一つの非常灯で暗闇を照らしながら、食堂の一番奥の窓から一人ずつ順番に外に出て行った。
全員が窓の外から脱出すると、晃太は非常灯を二実に渡した。
その後で晃太が麻衣子に言った。
「外も同様に真っ暗なんだな。」
麻衣子が晃太に言った。
「夕暮れ前なのに真っ暗闇。おかしな感じね。」
二実がみんなに言った。
「みんな私たちから離れないでね。」
二実を先頭にして非常灯で前を照らしながら進んでいった。
そして二実達は西側の広場の端に止めてある二実の車の所に向かった。
二実は自分の車の前にやって来ると、ワンボックスカーのドアを開けるためにキーを操作した。
ピッピッという音と共に扉のロックが解除された。
急いでみんながワンボックスカーの中に乗り込んだ。
全員が乗ったのを確認してから二実は運転席に乗り込んだ。
二実がエンジンをかけるために車のキーを操作した。
だが車は何の反応もしなかった。
もう一度二実は車のキーを操作する。
だがやはりエンジンはかからなかった。
悪戦苦闘している二実に三緒が声をかけた。
「どうしたの?二実?」
二実が三緒に言った。
「車のエンジンがかからないわ。」
三緒が二実に言った。
「ええっ?なんで車のエンジンがかからないの?」
二実が三緒に言った。
「分からない、もう一回やってみるわ。」
その後二実は何度もエンジンをかけようと試行錯誤したが、エンジンはかからなかった。
二実が小さく呟いた。
「うーん、これは私は逃げるなって事なのかな?」
三緒が二実に尋ねた。
「ちょっと二実?どうしたの?」
二実が三緒に言った。
「あっ!ごめん、何でもないわ。車のエンジンがかからないんじゃ仕方ないわ。こうなったら歩いてこの神社を出ましょう。」
二実がみんなに言った。
「ごめんみんな、車が動きそうにないから降りてくれる?」
全員が二実の車から降りた。
二実も車から降りた。
そして二実が三緒に言った。
「三緒、みんなを連れて助けを呼びに行ってきて。」
三緒が二実に言った。
「みんなを連れてって二実はどうするの?まさかこの神社に残るつもり?」
二実が三緒に言った。
「私はここに残るわ。拝殿で祝詞奏上(のりとそうじょう)(神様へ感謝の言葉をのべる事)をしてみるつもり。」
三緒が二実に尋ねた。
「それもお告げにあったの?それで黒輪を封じられるの?」
二実が三緒に言った。
「ううん、お告げには無かった。それに黒輪が封じ込められるかは正直分からないわ。でも私がやらなきゃいけないと思うのよ?私がこの神社の神主になるんだから。」
三緒が二実に言った。
「なら私も手伝うわ。」
晃太が二実に言った。
「二実さん、それなら俺も手伝います。」
優斗が二実に言った。
「なら僕も。」
二実が三緒に言った。
「ダメよ、三緒はみんなを連れてくの。三緒までここに残ったら一体誰がみんなを連れてくの?」
三緒が二実に言った。
「分かったわ、その代わり無理はしないでよ二実?」
二実が三緒に言った。
「分かってるって。」
二実が晃太と優斗に言った。
「晃太君と優斗君も三緒と一緒に逃げてちょうだい。二人を危険な目には合わせられないから。」
晃太が二実に言った。
「俺も晴南達が心配なんです。」
すると優斗が二実にこう言った。
「もし僕らが足手まといになるというのなら、三緒さんと一緒に逃げます。でももし二実さんが一人で大変なら僕達に手伝わせてもらえませんか?」
二実は少し考えてから晃太と優斗に言った。
「分かった、それじゃあお願いするわ。優斗君、晃太君。」
晃太と優斗が言った。
「はい。」
二実が三緒に言った。
「三緒、みんなを頼むわよ。」
三緒が二実に言った。
「うん。任せて。」
麻衣子と美咲と由香と七緒が三緒と一緒に外に脱出して、二実と晃太と優斗が拝殿に向かい祝詞奏上(のりとそうじょう)の準備をする事になった。
麻衣子が晃太に言った。
「晃太君、気をつけてね。」
晃太が麻衣子に言った。
「ああ、助けを呼びに行くのは任せた。」
由香が優斗に言った。
「坂倉君も気をつけて。」
優斗が由香に言った。
「うん、そっちも気をつけてね。」
三緒が麻衣子と美咲と由香と七緒に言った。
「それじゃあみんな行こう。」
三緒が先頭に立って非常灯で前を照らしながら、鳥居の方に移動していった。
その場には二実と晃太と優斗が残された。
「二実さん、俺達は何をすればいいですか?」
二実が二人に言った。
「拝殿と本殿の周りにかがり火をたくさん用意して欲しいの。」
晃太が二実に言った。
「かがり火の用意ですね、分かりました。」
一方の三緒は麻衣子と七緒と由香と美咲の四人を連れて神社の入り口へと向かった。
少しして鳥居の所までやって来た。
そして三緒達は鳥居を越えて神社の敷地の外にある道路に向かって進んでいった。
非常灯で前を照らしながら先頭を進んでいる三緒がみんなに言った。
「このまま進めば道路に出るわ。」
すると麻衣子が三緒に言った。
「あれっ?また鳥居が見えてきましたよ?鳥居って2つありましたっけ?」
三緒が麻衣子に言った。
「いや鳥居は一つしかないはずだけど?」
三緒達は再び鳥居を越えてその先を進んで行った。
三緒達が前に進んで行くとまた鳥居が見えてきた。
三緒が言った。
「また鳥居が見えてきた。」
三緒達はその鳥居をくぐり先へ進んで行った。
だが進んでいくと三緒達の目の前にまた鳥居が現れるのだった。
美咲が大きな声で言った。
「どうなってるの?」
麻衣子が美咲に言った。
「まさか同じ所をグルグル回ってるの?」
三緒がみんなに言った。
「鳥居から道路は数十メートルしかないはずよ。鳥居も一つしかないはずだし、こんなに走るなんておかしいわ。」
その後も三緒達は鳥居を抜けて前に進んでいった。
少なくとも三緒達は前に進んでいるはずだと思っていた。
だがどれだけ進んでも鳥居の場所に戻されてしまうのだった。
麻衣子がみんなに言った。
「なんで鳥居を抜けても抜けても次から次に鳥居が出てくるの?」
三緒が言った。
「どういう事?まさか神社の敷地の外には出られないの?」
美咲がみんなに言った。
「ねえっ?はやく外に出ましょうよ!」
麻衣子が美咲に言った。
「だから出られなくなってるんでしょ。」
すると三緒が何かに気づいた様子で、急にキョロキョロとしだした。
そして大きな声で言った。
「ちょっと!七緒?どこ??返事なさい!!」
麻衣子達が驚いて周囲を見渡した。
「えっ?」
麻衣子達がお互いの顔を確認した。
すると由香と麻衣子と美咲と三緒の四人しかいなかったのだ。
七緒の姿はどこにも見当たらなかった。
三緒達が大きな声で七緒を呼んだ!!
「七緒!!どこにいるの!!」
「七緒!!早く出てきてよ!!」
だがどれだけ叫んでも七緒が姿を現す事は無かった。
三緒がショックのあまりその場に座り込んでしまった。
「そんな!!!七緒!!七緒!!」
三緒は目に涙を浮かべて大声で七緒を呼び続けた。
「七緒!!七緒!!七緒!!七緒!!七緒!!」
すると麻衣子が三緒に言った。
「三緒さん、大丈夫ですか。」
三緒は七緒がいなくなった事で一時的に動揺してしまったが、麻衣子と美咲と由香を見つめて自分がしっかりしなければならないと自分を奮い立たせた。
そして三緒はすぐに立ち上がり麻衣子達に言った。
「ごめんね、もう大丈夫だから。先に進みましょう。」
三緒は再び鳥居を抜けて外の道に出ようとした。
だが三緒達の前に何度も何度も鳥居が現れて同じ場所をグルグル回るだけであった。
三緒がみんなに言った。
「外に出るのは無理みたいね。」
麻衣子が三緒に尋ねた。
「それじゃあどうするんですか?」
三緒が麻衣子に言った。
「二実達の所に行きましょう。もうそれしかなさそう。」
すると美咲が三緒に尋ねた。
「えっ三緒さん?また戻るんですか?」
三緒が美咲に言った。
「うん、どうも神社の外には出られそうにないからね。」
美咲が三緒に言った。
「戻るのは嫌よ!!」
麻衣子が美咲に言った。
「いい美咲?外に出れないんだから、ここにいてもしょうがないでしょ?私も神社の外に出られない以上二実さん達と合流した方がいいと思うわ。」
美咲が麻衣子に言った。
「でもまた変な事が起こるんじゃない?」
麻衣子が美咲に言った。
「二実さんは黒輪(こくりん)ってお化けを何とかしようとしてるのよ?だったらそれを手伝った方がここで立ち尽くしてるよりもずっといいはずよ。それに二美さん達と一緒にいた方が美咲も安心できるでしょ?」
美咲が麻衣子に言った。
「分かったわ、ごめん麻衣子。」
お互いが顔を見ながら頷いた。
そして三緒がみんなに言った。
「それじゃあ拝殿に行きましょう。」
三緒達は方向を変えて拝殿へと向かって進み始めた。
するとさきほどまで起こっていた、同じ場所に戻される事はなくなった。
三緒達は拝殿の前にやって来た。
拝殿の中には二実の姿があった。
二実の姿を見つけた三緒が二実に言った。
「二実?」
二実は三緒達の姿を見つけると三緒に尋ねた。
「あれ三緒?なんでここに来たの?もう助けを呼びに行ってくれたの?」
三緒が二実に言った。
「それがさ、外に出れなかったの。」
二実が三緒に言った。
「外に出れないって?」
三緒が二実に言った。
「鳥居の所から何度も外に出ようとしたんだけど、鳥居の所まで戻されちゃうのよ?」
二実が三緒に尋ねた。
「鳥居の所まで戻される?外に向かって進んで行っても?」
三緒が二実に言った。
「そう?訳わかんないと思うんだけど、とにかく外には出られなかったわ。だから二実を手伝いに来たの?ところで晃太君と優斗君は?」
二実が三緒に言った。
「ごめん、かがり火の準備をしてもらってたんだけど、目を離した間にいなくなっちゃった。」
二実が三緒に尋ねた。
「いなくなったってまさか?」
二実が三緒に言った。
「うん、たぶん晴南ちゃん達みたいに消えちゃったんだと思う。」
麻衣子が二実に尋ねた。
「嘘、晃太君達も?」
二実が麻衣子に言った。
「うん、ごめんね。」
二実が三緒に尋ねた。
「ところで七緒ちゃんは?」
三緒は哀しそうに首を横にふった。
二実は三緒のつらそうな顔を見て七緒がいなくなった事を察した。
すると二実が三緒に言った。
「今はやれる事をやりましょう。」
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ファンタジー
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偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
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