最強勇者の物語2

しまうま弁当

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第4章 ホルムス共和国

最期の時

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勇者(影橋陸夜)の最期の時が近づいていた。

ジール大公は勇者を秘技で攻撃した後、今度は直接剣で勇者を斬りつけ体力を削っていった。

みるみる勇者のHPは減っていき残り100ポイントを切った。

勇者は全身の激痛に顔を歪ませながら、すでに満身創痍で大きな声は出せなかった。

勇者は声を振り絞りジール大公に懇願した。

「頼む、‥助けてくれ!死にたくない。」

だがジール大公は何も答えなかった。

ジール大公は勇者に剣を突き刺してとどめを刺した。

剣は勇者の体を貫通し、床にまで達した。

勇者はうがああー!という断末魔の後に息絶えた。

ジール大公は息絶えた勇者に言った。

「おいおい、貴様を始末するためにこれだけの手間をかけておるのだ?助ける訳なかろうが!」

この様子を見ていたアミラが隣にいたターキル子爵に言った。

「お父様終わりましたね。結果は大公様の圧勝でしたね。」

するとターキル子爵がアミラに言った。

「そうだな、ではアミラはここにいなさい。」

そういうとターキル子爵はどこかに行こうとした。

アミラはターキル子爵に尋ねた。

「お父様どちらに?」

するとターキル子爵がアミラに答えた。

「勇者(影橋陸夜)の死亡確認をしてくる。死んだふりをしている可能性もあるからな。」

するとジール大公がアミラとターキル子爵のもとにやってきて言った。

「その必要はない、勇者はもう死んでいる。」

ジール大公がやってきたので、アミラとターキル子爵は慌てて一礼をした。

するとジール大公がターキル子爵に尋ねた。

「ターキル子爵、これより勇者の葬儀をここで執り行いたい、良いか?」

ターキル子爵はジール大公に答えた。

「はっ、もちろん構いませんが?」

するとジール大公が皆に伝えた。

「これよりこの勇者の葬儀を執り行う。すぐに取りかかれ!」

この場にいた者達は全員ジール大公に答えた。

「はっ!承知致しました。」

すぐに準備が始まり、準備が整うとすぐに葬儀が執り行なわれた。

しめやかに葬儀が執り行われ勇者は丁重に弔われた。

葬儀が終わり全員が大広間へと戻った時にはすでに夕刻になっていた。

大広間の奥にある玉座にジール大公が座り、他の者達は玉座の前で整列していた。

するとターキル子爵が皆の前に出てジール大公に尋ねた。

「大公様、なぜ勇者が死んでいると確信できたのですか?勇者が死んだふりをしていた可能性もゼロではなかったと思いますが?」

するとジール大公がターキル子爵に答えた。

「それは光の鍵盤が消えておったからだ。光の鍵盤は勇者が死んでしまうとその効果を失うからな。」

ターキル子爵が再度ジール大公に尋ねた。

「大公様もう一つ伺いたいのですが、なぜ葬儀を急がれたのですか?」

ジール大公がターキル子爵に答えた。

「葬儀をせねば、ポーションで蘇生できてしまうからな。その阻止の為だ。」

するとターキル子爵がジール大公に言った。

「なるほど、得心致しました。」

するとジール大公がアミラとターキル子爵に言った。

「アミラそしてターキル子爵、此度はよくやってくれた。勇者狩りが上手くいったのも、そちらのおかげだ。」

するとアミラがジール大公に言った。

「大公様、もったいない御言葉でございます。」

するとジール大公がアミラに尋ねた。

「アミラ、勇者の敗因は何であったか分かるか?」

するとアミラがジール大公に答えた。

「ろくに情報収集もせずに、自分に都合のいい情報ばかり信用したせいでございましょう。」

するとジール大公がアミラに尋ねた。

「では逆にどうすれば勇者は勝てたと思う?」

アミラは少し考えた後ジール大公に答えた。

「そもそも勇者は私達に勝つ必要がございません。私達には勇者を討つ必要があります。ですがこの世界にやってきたばかりの勇者には、私達を打倒する必要性がありません。逃げて身を隠すだけでこちらは勇者を討つという目的を達成できなくなります。つまり勇者は最優先で逃げるべきだったと思います。」

するとジール大公がアミラに言った。

「その通りだアミラ、よく見通しておるな。勇者に逃走されたら気の遠くなるような大規模捜索を続けるしかなくなる。では逃走するという選択肢は除外して、それ以外の手は有るか?」

するとアミラは返答に窮して考えて込み始めた。
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