かみかかり

しまうま弁当

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26話 青い守護霊

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そして粗木田は悔しそうに地面を叩いていた。

「ええい!!クソ!!なぜだ!!絶対にバレるはずなかったのに!!バレるはずなかったのに!!なぜなんだ!!」

粗木田は悔しそうに地面を叩いていた。

「誰にも気づかれないはずだったのに!!!」

「私は拝み屋だろうが、ピザ屋だろうが、清掃員だろうがそれに関してとやかく言うつもりは全くない。だがな!!法律を犯した犯罪者は誰であろうが許さん。それだけだ!!」

「さあ粗木田お前の負けだ、なぜ当夜さんを殺した、自分の教え子だろうが!!それに粗木田、お前は守護霊達を使って何かをやろうとしているだろう。何を企んでいる?」

「なぜ当夜を殺したかだと、別に当夜じゃなくても良かったんだよ!!ただ最終実験のサンプルは当夜みたいな霊感ゼロの人間じゃなきゃダメだったんだ。霊感ゼロの人間を守護霊を使って完璧に操れるか確認する必要があった。俺の研究の総仕上げなんだからな。」

「研究の総仕上げだと?」

「ふん、まあいい。凡人の貴様にも分かるようにちゃんと話してやろう。」

「深出神社は代々アキツモという神を奉る神社でな。それで深手神社の継承者する人間には代々強力な守護霊が憑いていてな。この守護霊というのがなかなか便利なんだよ。遠くまで見張りに行かせたり、知りたい事を調べさせる事もできる。まあでも一番すごいのは人を操る能力だろうな。」

「深出神社の継承者は人を操る事ができたのか?」

「ああ、アキツモの守護霊を使えば人を操るなんざ造作もない事だ。だがな俺の馬鹿親父も含めて俺の先祖共はアホの極みと言わざるおえなかった。こんな素晴らしい能力があるというのに一族の掟として守護霊で人を操るのを禁止してやがったのさ。俺の馬鹿親父にしても守護霊を使ってやった事と言えば、体の悪い所を教えたり、探し物を手伝ったりするぐらいだった。それを世の人々の為に使えといつもほざいてやがったからな。」

深出神社の神主達は至極真っ当な判断をしていたという事か。

だが粗木田はそれが気に入らなかったわけか。

「なるほどそれで深出神社を追放されたわけか。」

「ああ、そうだ。あの馬鹿親父は事もあろうに守護霊の力を有効活用しようとしていた俺を深出神社から追放しやがったからな。こんな事を許せるわけがなかった。」

「確か深手神社の神主は焼身自殺をしているが、まさか。」

「そうさ、あの時すでに俺に守護霊は移っていたからな。あの段階で俺を追い出した馬鹿親父を守護霊を使って焼身自殺させてやったのさ。」

「自分の神社を燃やしたのか、父親もろとも。」

「ああそうだ、俺が欲しかったのは守護霊だけさ、あんな古臭い神社は必要なかった。馬鹿親父が消えてくれて清々したぜ。それ以降、俺はずっと守護霊で人を操る研究を続けたのさ。まあ表の顔として民俗学の研究もしていたがな。だが研究を進めるに当たり大きな問題にぶつかった。それは守護霊の数と霊感ゼロの人間さ。」

「守護霊の数、霊感ゼロの人間?」

「守護霊で人を操る事に関しては問題なかったんだが、全員同じように操れるわけじゃなかった。霊感の高い人間と霊感ゼロの人間とでは操る難易度が相当に変わってくるんだ。霊感のある人間はすごく操りやすいんだが、霊感ゼロの人間は割と難易度が上がるのさ。それに俺の傍にいる守護霊の数は4体だけだった。当然ながら操れる人の数も限られていた。だからこの二つの問題を解決するために守護霊の力を強化しさらに守護霊じたいの数を増やす必要があったんだ。だが俺はその二つの問題を見事解決してみせた。そして俺は画期的な方法で守護霊の力を増やしかつ増殖する方法を編み出したのさ。」

「何をしたんだ?」

「そこら辺の一般人に俺の守護霊を取り憑かせたのさ。霊媒体質の人間っていうのはそれなりの数がいるからな。まずはそいつらに守護霊を取り憑かせてそいつの魂を攻撃させた。さらに周囲の霊達にもけしかけて徹底的にその霊媒体質の人間の魂を攻撃させる。その上でそいつの魂を守護霊に体から引きはがさせるんだ。そうしたらな、できたのさ。俺の守護霊の強化版のコーピーがな。このやり方で俺は守護霊の数を増やしていった。こうして俺は強力な守護霊をたくさん生産していったんだ。最初は霊媒体質の人間にしか取り憑かせてはいなかったんだが、強化版の守護霊ならば霊感ゼロの人間共にも取り憑いて、魂を引きはがして守護霊のコピーを簡単に作れるようにもなった。だから研究の総仕上げとして、当夜にはそれを最終確認するために犠牲になってもらったという訳さ。」

「つまり笠歌公園の3人と笠歌線の267人の被害者達は俺のコピー守護霊達が霊感ゼロの人間達をちゃんと漏れなく操る事ができるかどうかを確認するための最終チェックだったのさ。それが二つの事件を起こした動機さ。」

「そんな事をして少しも後ろめたさを感じないのか?」

「そうだな、唯一残念だったのは、操る人間の能力以上の事はさせられないという
事だ。拳銃を触った事もない人間に上手な射撃をさせる事はできないという点と、しっかり操ろうとすると守護霊のパワーを大きく消耗させてしまう点だろうな。」

「違う俺が言いたいのはそういう事じゃない!!そんな事のために自分の教え子を殺してしまって後ろめたさは感じないのかと聞いているんだ?」

「後ろめたさ?そんなもの感じる訳がないだろう。」

「なんの罪もない笠歌線に乗っただけの人々を殺して何も思わないのか?」

「いや思う事はあるさ。なかなかいい実験結果になって俺は満足している。100点とまではいかなくても90点ぐらいの出来であると思っているからな。」

「そういう事を言いたいんじゃない。」

俺は怒りを感じつつも質問を続けた。

「ぞれじゃあなぜ10代20代の子達ばかりを狙ったんだ?」

「何について聞いている?」

「九是山病院では10代20代ばかりが死因不明でたくさん死んでいた。」

「ああ、それか、いいか霊能力っていうのはな。生まれた時と死ぬ前に一番力が大きくなるのさ。聞いた事があるだろう。子供の頃は霊能力があるが大人になると消えてしまうと。あれは生まれて年を重ねる事によって死からどんどん遠ざかっているから霊能力が消えていってるのさ。老人を狙うという手もあるが死が迫らなければ霊能力っていうのは上がらない。老人だから70歳になったからといって全員が70歳で死ぬ訳じゃない、80歳で死ぬ奴もいるし100歳まで生きるやつもいる。だったら若年層の魂を利用する方が効率的だろうと思ってな。職業柄その世代に接する機会も多かったしな。」

「その子達には何の罪もないだろう。」

「そんな事をそこまで気にする必要ないだろうが。世間では毎年交通事故で数千人が死んでいる。俺が殺した数千人もそれと一緒だ。いやむしろそのままではなんの役にも立たずに消えていくだけの人生を、守護霊として俺の研究の役に立てたんだから、むしろ意味ある犠牲と言えるだろう。」

なんなんだ、こいつは。

「どうだすごいだろう!!俺はすばらしい技術を開発したのさ。まさに巧の技とでもいうべきしろものの技術だ。」

「ふざけるな、そんなものがすばらしいわけないだろうが!!」

ダメだ、こいつはイカれている。

「あのなあ、今ある様々な技術だってたくさんの犠牲の上に発展してきたんだ。たくさんの人間の屍の上に、今の快適な社会があるんだ。だからこれは必要な犠牲だったのさ。俺の守護霊になれたんだぞ!!尊い犠牲だよ。俺の計画の礎となれるんだ。俺の守護霊になれるなんてとても喜ばしい事じゃないか。」

「計画だと、その計画とはなんだ?」

「うむ、遂にこの大いなる神の粗木田様の計画を発表する時が来た。ジャジャーン!!神を超える力を手に入れたこの粗木田様がこの世界に君臨する、どうだすばらしい計画だろう。」

「この世界を征服しようというのか?」

「世界の征服などという低俗なものではない、大いなる神としてこの世界を統べるんだよ!!」

「同じ事だろうが!!」

「全然違う!!いいか世界征服なんてものは低俗な人間の考える事なんだ!!この大いなる神となったこの粗木田様にはこの世界を統べる権利があるのだ。いいか人間の支配者として君臨するつもりはないんだ!!人間よりもはるか上の上位の存在の神として価値のない人間達の世界を統べてやろうと考えているんだよ!!価値のない愚か者共がのさばるこの世界を正真正銘の神であるこの粗木田様が統べるのは当然の流れだろうが。」

粗木田は本当にイカレている俺は心からそう感じた。

「粗木田!!お前本当にイカレているな。」

「イカレているのはまがいものの神を本物だと信じて凡人共だろうが。今までの人類史には1度だって本物の神が現れた事などない!!これまで神を自称してきた奴は歴史上にくさるほどいる。だがそいつらは全て自分が奇跡がさも起こせるかのように振る舞っていただけだ。そいつらは所詮神を自称している王に過ぎなかった。そんなまがいものの神を愚かな凡人共は神だと崇めてきたのだろうが!!」

「だが今この粗木田様は神をも凌駕する力を手に入れたのだ。だから俺は根本的に奴らとは違うのさ。俺は守護霊を研究しつづけ遂に本当の奇跡を起こせるまでに至った!!神をも超える力を手に入れたんだ!!俺はとても偉大な本物の神となったんだ!だから大いなるこの神の粗木田様がこの世界を支配するのはしごく当然なのだ。奇跡を起こす事ができなかった自称神の連中はマインドコントロールや自身の神格化を行う事で自分が神である事を取り繕おうとしてきたが、この大いなる神の粗木田様はそんな事をする必要はない。だってすでに奇跡を自分の意思によって起こせるのだからな。いいかそんなエセ物の神を自称していただけの王ですらちゃんと愚民共に受け入れられていきたんだぞ。本物の神であるこの粗木田様が世界を統べられないわけないだろう。」

こいつの話を聞いていると頭がおかしくなりそうだ。

「イカレタ事を言うのはもうその辺にしておいてくれ!!聞くに堪えん。」

粗木田は何も気にしていない様子だった。

「忠告しておいてやる、大いなる神の言葉にはちゃんと耳を傾けるべきだぞ!!」

俺は粗木田に大声で言ってやった。

「粗木田お前は大いなる神ではなく、ただの犯罪者だ。それ以外の何物でもない。」

「やはりお前とは意見が合わないようだな、せっかく神託を授けてやっているというのに。」

俺は笑いながら粗木田に言ってやった。

「神託?笑わせないでくれ、薄汚い犯罪者の妄言の間違いだろう!!」

粗木田の顔がひきつっていった。

「今、なんと言った。」

「薄汚い犯罪者の妄言と言ったのさ。」

「大いなる神であるこの粗木田様への不敬である事が分からんようだな!!」

「粗木田お前がどれだけ自分を美化しようが、お前が薄汚い犯罪者である事に変わりない!!」

粗木田が俺を睨みつけてくる。

「テメエはどうしても神であるこの粗木田様を愚弄したいようだな?」

「愚弄する気はない。ただ事実を言っているだけだ。」

するとまた粗木田は笑みをこぼしてきたのだった。

「ふん、まあいい。所詮そこらの愚民には大いなる神の御心なんぞ理解できなくても仕方がない。春山警部、この大いなる神の御業を見抜いた事は褒めてやろう。」

「なんださっきは大きく動揺していたのに、また余裕が出てきたな。」

「ふん、当然だろうが。」

「今までの会話は全て録音させてもらった。粗木田もう私は何も知りませんでは通らないぞ。」

俺はそう言うと懐から録音中のスマホを取り出したのだった。

粗木田が大きく笑い出す。

「はっはっは、あのなあ警部さん、全く分かってないな。まあ確かにその録音テープがあれば俺を逮捕して立件できるかもな。」

「分かっているなら、素直にお縄につけ。」

「だからその考えが浅はかだというのだ。証拠を突きつければおとなしく犯人がお縄につくというその考えがな。忘れていないか警部さん、この大いなる神の粗木田様は人を簡単に操る事ができるんだ。あんたに非業の最後を遂げてもらうことなんざ造作もないんだぞ。」

「この俺を殺そうという事か?」

「そういう事だ、警部さんあんたを始末すればいいんだからな。」

すると粗木田は考え込んでいた。

「さてどうやって死んでもらうかな。ここはあの刑事と同じように入水自殺をしてもらうとするか。ちょうど近くに池もあるし。よしそうしよう。」

そして粗木田は笑みをこぼしながら俺に言った。

「それじゃあな、マヌケな警部さん!!」

恐らく粗木田は守護霊を俺に取り憑かせようとしているのだろう。

だが。

すると粗木田が急に慌てだした。

「なに!!!どういう事だ!!なんで取り憑けない!!」
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