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青西瓜(伊藤テル)

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【ヘビを作る方法】

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・【ヘビを作る方法】


 舞衣子さんはやけに元気に笑いながら、
「肉体労働はあのお姉さんの役目って感じねっ! 私たちは頭脳労働だ!」
 と言ったところで師匠は、
「いや舞衣子、こっちもバリバリの肉体労働になるからな」
「えっ、そうなのっ?」
「まずはこの樫の木を出した時に作れた竹を使うか」
 師匠はそう言いながら、竹を持っていたナイフで切り始めた。
 僕は気になっていることを聞いた。
「竹という漢字でヘビという漢字を作るんですか?」
 師匠は首を横に振って、
「いや、ヘビの漢字は【蛇】だから、直接的に作るわけではない」
 とメモ帳を使いながら、僕に説明をしてくれた。
 いやでも、
「竹から蛇に……一体どうするんですか?」
「まずカゴを作る」
 その言葉に舞衣子さんは面倒臭そうに、
「竹からカゴを一から編むのっ? うわっ! 大変そう!」
「いや一から編むわけではない、おーい! 龍太!」
 師匠は龍の龍太を呼んだ。
 僕たちを背中に乗せて運んでくれる龍だ。
「悪い、龍太、少し漢字をもらうぞ」
 師匠は龍太から”龍”の漢字を出し、竹と合わせて、籠(かご)という字を作った。
 すると、竹で編まれた籠が出現した。
「もう一個、今度は蛇を入れて置く用の籠を、と」
 そしてもう一個籠を作り出した師匠。
 漢字を出された龍太は眠くなったのか、その場で目を瞑って動かなくなった。
 師匠は言う。
「じゃあここから肉体労働だ、この籠を持って川辺に行くぞ」
 川辺に着いた僕たち。
 これから一体何をするんだろうか。
 師匠は気合いを入れてから、
「よしっ、この籠に石を入れていってくれ」
「一個?」
 と舞衣子さんが言うと、
「いやいやたくさんの石だ。護岸、つまり、川の波などから川辺を守れるくらいに石を入れてくれ」
「そうすると、蛇が作れるんですか?」
 と僕が聞くと師匠は頷きながら、
「そうだ。そうやって石をたくさん入れた籠のことを【蛇籠】と言うんだ。こういう字だぞ」
 メモに字を書いて見せてくれると、
「蛇だ!」
「蛇がでてきましたね!」
 と舞衣子さんと僕は叫んだ。
 師匠は続ける。
「蛇籠を作って蛇と籠に分けるからな。蛇の漢字は事前に作っておいたもう一つの籠の中に入れるから。まあ籠が新しく出現して一個余るが、それは何かに使おう」
 そして僕たちは籠の中に石をたくさん入れ、蛇籠を作り、師匠が語変換の術で蛇を出現させたのであった。
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