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【04 ショタヌキの初仕事】
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・【04 ショタヌキの初仕事】
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カフェに着いたところで、ショタヌキは何だか顔が虚ろ虚ろになっていた。
もしやコイツ、朝からいろんなことがあってハイになっていただけで、今めっちゃ眠いのでは?
一応昨日の閉店後にもテーブルは拭いたけども、L字になっているカウンターとテーブル席を拭いていく。
カウンターの端には花瓶に入れたナツハゼが優しく佇んでいる。六個消しモードのぷよぷよのように白い花が連なっている。いや七個あっても消えていないけども。
ショタヌキには床のモップ掛けを任しているわけだけども、何かモップを杖にして自分の体重を支えて、立ち寝に洒落込もうとしている。
会議中に仕込み杖で立ち寝している長老剣豪のポジションかよ。まあいいや、今は自分の仕事に集中だ。
テーブル拭き終わったところで、昨日から仕込んでいたカレーの鍋の味見をしてから、火にかける。
今日はカレーをぎょうさん作ったので、カレーフェア開始! だ。
カレーフェアって”開始!”って感じがするんだよな、一味(いちあじ)しかないけども、量がいっぱいあればそれはもうフェア。安ければフェア。そういうつもりでやっています。
後は、と思いつつ、冷蔵庫を見ると、近くに住んでいる山梨さんから大量の長ネギをもらったので、これをめった使い(めったづかい)しよう。私は自分造語が好きなので、脳内はいつもこんな感じ。
カフェのフェア、略してカフェアかましてよかですか。いいだろう、私のカフェだもんな。焼いた長ネギをめっちゃカレーにトッピングしちゃおうっと。
そんなノリノリ脳内(ノリノリまさのりばりのノリノリ)で料理の準備をしていっている時に気付いた、ショタヌキが普通にテーブルに着いて寝ているって。
おいおい初日から大物ムーヴですなぁ、と思いながら、私は長ネギを千切りと一口大にそれぞれ切り分けていく。
千切りは私のお好きですな料理に使うとして、一口大のほうは焼きトッピングー(エド・はるみ)用だ。
「グーググーググーググー、コォーーーーーー!」
うん、寝てるからいつものテンションが普通にできていいなぁ、じゃぁないんだよ。
起こして仕事させないといけない上に、本来こんなテンションいらないんだよ。
まあいいけどね、別に仕事しなくても。どうせ何もできないだろうし。私は他人に期待することは止めたから。
ただの他人ならまだしも、ショタヌキだもんな、ショタヌキなんて男風呂と女風呂間違えて入っちゃって、岩に変化したら、そのままのぼせちゃって、キンタマが湯船に浮いてキャー、だもんな。
ショタヌキのあるある一個だけあります、ってヤツだ。ショタヌキのあるある早く言いたいってヤツだ。言いたさ過ぎて、もう心の中で言っちゃったけども。
まったりと時間は経過していったその時だった。
「はい! やってます!」
と急にデカい声が聞こえてきてビックリした。
声のほうを見ると、ショタヌキが目を覚ました声だった。目覚ましボイスだった(焦り叫びのほうに言う単語じゃないけども、そもそも元々のほうに対して何なんだよその単語という気持ちもある)。
ショタヌキのほうを見ると、テーブルにヨダレたっぷりで、口元緩いなぁ、と思った。
ショタヌキは自分の服の袖でヨダレを拭こうとしたので、
「ストップ! いけません!」
と警察ポスターのようなレタリングを叫んでしまった。
「ちゃんとティッシュで拭いて、その後に水拭き布巾で、最後にアルコール消毒ね」
と言いながらティッシュの箱を渡すと、ショタヌキは何だか反省したような表情で、
「すみません……」
と言いながらティッシュの箱ではなくて、白い、抜き身の部分を二枚サッサと取って、拭いた。
私はティッシュの箱をテーブルに置いて、水で濡らして軽く絞った布巾を持っていってあげると、ショタヌキが、
「ありがとうございます」
と言いながら、イスからおりて、壁に立てかけていたモップを手に取って、また床の掃除をし始めた。
……いや、最後まで自分で拭けよ、一体何なんだよ。まあいいや、もうここまできたら私が拭こう。またイスに座らせるのもメンドイし。
テーブルのアルコール消毒が終わったところで、またキッチンのほうへ行き、今日の準備をし始めた。
そうだ、もうさすがにモップ掛けはいいので、
「一旦休んでいいよ」
と声を掛けると、ショタヌキは、
「でもっ」
と反論しようとしてきやがったので、
「いや本当に。あんまハッスルモップしちゃって埃が舞うのも嫌だし」
と淡々と述べると、ショタヌキは聞こえるかどうかギリギリの小さな声で「はい」と答えた。
ついに午前八時五十分になったところで、開店ボードを入り口に出しに行くと、もう常連さんが立っていて、本当は九時からだけども、田舎のカフェなんてその辺だるだるなので、もう中へ招き入れることにした。
「カレーの良い香りねー」
と常連さんが言ってくださって、
「今日はフェアなので安いですよー」
「じゃあ早速頂こうかしら」
と午前九時からのカレーって朝ご飯なのかな、昼ご飯なのかな、と思いながら、早速おあがりよをすることにした。
さて、トッピングの焼きネギを用意しなければ。焼きネギは縦に焼くことがポイント。そうすると中からとろとろしてくるのだ。
最後に横に倒して横にも焦げ目をつけたら完成。カレーに焼きネギをトッピングして、めっちゃおあがりよ!
「あらら、焼きネギまで乗っていて豪華ねぇー」
常連さんの黄色い声にまんざらでもない笑顔をかます私。やっぱこうでぃねぇと(コーディネートは)。
このカレーを皮切りに、どんどん常連さんが入ってくる。普通にあやかしの常連さんもカレーを注文する。
カレーフェアの日は本当にコーヒーの割合が如実に少なくなる。みんなカレーになる。カレーの香りの前には皆、無力なのかもしれない。カレーフェアで世界征服しようかな。世界征服初のフェアでやろうかな。
忙しく、かつ、いつも通りカフェで青春を感じていると、何か、違和感を抱き始めた。違和感のシックスナイン。
何か……いつも通り過ぎる……と気付いたその時だった。なんとショタヌキがいないのだ。8番出口なら引き返さないといけない。
いやこれこそいつも通りだから、そのまま突っ走ったほうがいいのか? 8番出口はまあいいや、有吉eeeeeでしか見ないし。
ショタヌキ、どこに行ったんだろう、もしかしたらいつの間にそのまま帰ったのかもしれない。無言帰宅使いやがったのかもしれない。
その場合はどこの家? 実家? それとも私の家? まあニンテンドースイッチに執着しているようだったし、まずニンテンドースイッチを手に入れてからの実家だろうな。一万円賭けます。これが私の一人オフラインカジノ。
オンラインカジノはそもそも海外での口座作りの方法が分からないので、できません。無能が正義の時代、きてます。
うちのカフェは別に昼だからって忙しくなるわけでもなくて、まあ確かにお昼休みの時間には若干人が増えるけども、基本は常連さんがくっちゃべりつつ食うだけなので、忙しさは一定だったりする。
なのでいつでもショタヌキの面影を探すことはできて。面影を探すて。幼馴染がいなくなった街の海、じゃぁないんだよ。
でも心の中はいくらでもエモくていいじゃないか、エロよりマシ。エロも自己完結ならアリだけども。いや違和感のシックスナインは、仕事中はダメだろ。違和感の寝バックはどうかな、全然ダメだろうな、仕事中に違和感の寝バックはダメだろうな。
いや違和感のエロい抱き方シリーズはどうでも良くて。マジでショタヌキどこに行ったんだろう、と思いながら店内をキョロキョロしていると、私はある違和感に気付いた。
何だ、こんな置き物、あったっけ……。
このカフェには祖父が残した統一性の無い置き物があった。大体全部がガチャガチャの景品みたいな、そのくらいのサイズと出来。
まあ最近のガチャガチャはマジで出来が良いので、出来というのは褒め言葉なんだけども、こんな置き物、マジであったっけ、と思ったその時だった。
もしかするとあのショタヌキの父親が隠しカメラ設置していったんでは、と思い、何かそういう勝手なことされるの腹立つなと思って、その置き物(昔の怪獣アニメのキャラクターみたいなヤツ)を軽く叩くと、
「はい! よろこんで!」
という声がしたと思ったら、その置き物はみるみるショタヌキの形状になっていき、前のめりに、床にズザーっと倒れ込むようにショタヌキが出現したのだ。床にうつ伏せで倒れ込んだショタヌキ。
私は訳が分からず、そのまま絶句していると、L字のテーブルにいた一人の和装のお客さん(こういう恰好のヤツは大体あやかし)が、
「おや、タヌキが隠れていましたねっ、どこから入ってきたのかな?」
と言って、タヌキが隠れていたって、えっ、ショタヌキの変化(へんげ)だったってこと? と私が目を見開いた。
いや何かあやかしが種族別に何か特殊能力を持っていたことは話として、知識として知っていたけども、いざこう目の前で見たのは初めてで。
私は振り返りながらその和装のお客さんへ、
「タヌキって誰でも変化できるんですか?」
と聞くと、
「まあどんなタヌキでもできますね。ちなみにわたしはキツネのあやかしなので、風や匂いを操れますよ」
と言うと、その和装のお客さんからラベンダーの香りがする冷風が吹いてきた。本当に、本当になんというか、人間界でも使えるんだ。
「ラベンダー冷風ありがとうございます」
と和装のお客さんへ一礼すると、和装のお客さんも一礼して、また和装のお客さんはカレーを食べ始めた、と思ったら、ふと和装のお客さんがこっちを見て、こう言った。
「ちょっとした世間話というか、忠告でもあるんですけども、いやもう言われていたらあれですけども」
何か前置き長いな、前置き長友だな(すぐにクロスをあげないサイドバックのこと)、それよりもまだ床にうつ伏せで倒れているショタヌキの処理をしたいんだよ、と思いながら聞いていると、
「こういう風にあやかしと人間が仲良くしていることを疎ましく思っているあやかしの層というのがいるので、お気を付けてくださいね」
と笑顔で、しゃんなりとそう言って、またカレーを食べ始めた和装のお客さん。
いやいや、いやいやいや、別にショタヌキと仲良くしていないし、むしろその場合はカレー食べに来ているオマエが原因になるだろ、と思った。
お気を付けてくださいって、多分どうにもできないだろ、いやそんな話は一旦いいとして、未だに床で寝転んでいるショタヌキへ、
「祥太くん、変化して寝ていたわけだね」
と処理の一声を掛けると、
「ゴメンなさい……バレないと思って……」
「寝たいなら寝ていていいから」
「ゴメンなさい……」
と言いながらゆっくり立ち上がったショタヌキ。
まだふらふらしていて、何だかすごく眠そうだ。
「そこのL字の角で、寝てていいよ」
「でもぉ……」
「というかもう一旦家に帰る?」
「……」
ショタヌキは黙って俯いた。
周りの視線全てが私とショタヌキに向けられていることに気付いた。
当たり前だ、状況がよく分からないだろうから。
タヌキが化けてでてきた割には店主があんまりビックリしていない上に、処理する前に和装のお客さんと会話していたんだから。
ここはもうハッキリ説明したほうがいいかもな、と、
「こちらの祥太くんは今日からカフェで働くことになったタヌキのあやかしなんです」
と私が言った刹那、さっきの和装のお客さんが笑いながら、
「全然働いていないじゃないですか!」
と言うと、ショタヌキはバッと近くの入り口から外へ走って出て行ってしまった。
私はちょっとぉという思いを含みながら、和装のお客さんのほうを見ると、和装のお客さんは少し困惑した面持ちをしながら、
「いや、事実じゃない、ですか……っ」
と言ってから俯いた。この人、事実なら何を喋ってもいいと思っている?
祥太くんのことは気になるけども、さすがに店を開けるわけにはいかない、と思っていると、常連さんグループが、
「僕がとりあえず今いる人分のレジするんで、行っちゃって行っちゃって」
すぐさま同じ常連さんグループの一人が、
「レジ触れずにやるから! 俺は小銭いっぱい持ってるし!」
と言ってくださったので、私は、
「ありがとうございます!」
と頭をさげてから、ショタヌキを追いかけることにした。
入口から外に出るとすぐに信楽焼のタヌキがあって、もうショタヌキがいた。
あの勢いでどっかへ行くと思っていたら、もういて助かった。
「祥太くん、これから一生懸命頑張っていけばいいよ」
と優しく声を掛けたつもりだったんだけども、うんともすんとも言わない。
何だろうと思って、その信楽焼に顔を近付けると、寝息が聞こえて、寝ていることが分かった。
じゃあもういいや、コイツはこれでいい、と思って、すぐに店内に戻ってきて、
「何か信楽焼になって寝ているので、そのままにしておいてください」
と店内のお客さんにお伝えして、またいつも通り、切り盛り。
段々夕暮れが近付き、閉店の時間に。
祖父の時から午後六時には閉めるので、心の健康第一だなぁ、と思いながら、入り口のボードを取りに戻ると、まだショタヌキが寝ていたので、まあ起こすことにした。
「もう終わったよ、祥太くん」
そう言いながら信楽焼の顔を触ると、
「ふぁ! よろこんで!」
と叫んで、何で三回に二回が居酒屋なんだよ、ここはカフェなんだよと思いながら、
「ちょっと中へ」
と言うと、信楽焼はいつものショタヌキにモーフィングしていき、戻ったところで一緒に中へ入った。
「私はさ、夕ご飯は基本カフェで食べていくんだよね」
と話し掛けたところでショタヌキが、
「ゴメンなさい……」
「それは何に対して。別にいいんだよ、寝ていても」
「いやでもゴメンなさい……」
「思考停止でゴメンなさいと言うマシーンになってるわけじゃないよね?」
「ゴメンなさい……」
いやなってるのかよ、と少し吹き出しそうになりながらも、
「今日は長ネギのグラタンでも食べようか」
「長ネギのグラタン?」
「そう、カレーは全部無くなっちゃったからね」
私はテーブルに長ネギのグラタンを二個置いて、私はそのまま席に着き、ショタヌキも私と対面になるように座った。
「米粉と牛乳だけで作ったホワイトソースだからあっさりだよ、味も塩胡椒だけ、あれでしょ、そもそも辛いカレーとか苦手でしょ?」
「はい、そうです……」
「長ネギとピーラーで薄くした人参だけで充分甘さが出るヘルシーなグラタンだよ、まあチーズ乗っけてオーブンで焼いているから最後の最後でカロリー追加しているけどね」
「でも、チーズ大好きです」
「それなら良かったぁ」
と私が言ったところで、ショタヌキが言いづらそうに、
「怒らないんですか……」
「別に。急にカフェで仕事しなさいみたいに言われたんでしょ、で、不安で夜眠れなくて。そんな急いで全てを完璧にする必要無いんだよ」
「でも……」
「雇い主である私がそう言っているんだから間違いない。まあゆっくりやっていけばいいんじゃないかなぁ」
「早く一人前にならないといけなくて……」
「それお母さんの言葉?」
と私が矢継ぎ早にそう聞くと、ショタヌキはコクンと頷いた。
私は呼吸を整えてから、
「早さなんていらないよ、大切なのは確実性、確実に一歩一歩積み上げていくことが重要だから」
「そう、ですかね……」
「そうそう、まっ、家帰ったら一緒にニンテンドースイッチでもしよっか、まずは私と親睦深めなきゃっ」
「すみません……」
と申し訳無さそうに言ったショタヌキ。
いやいや、
「そういう謝る癖とかいらないから、楽しむ癖付けようかっ」
「ありがとうございます……」
「いやまあそんな話はどうでもいいから、長ネギのグラタン食べてよっ」
「はい……美味しい……」
と滋味深く呟いたショタヌキ。
たいした食レポもしてくれないけども、まあこっちも一歩ずつだなぁ。
良いこと言えたかどうか正直全然分かんないけども、こっちも確実にやっていくしかない。
その日の夜、二人でスーパー野田ゲーmakerをして、ルールの分からないゲームにゲラゲラ笑っていた。
仲良くなれたっぽいのは合格かなぁ。笑い疲れたらしく、夜も寝れたみたいだ。
でも仲良くなっちゃダメなのかもしれない、と思うところもあって。
いやあの”お気を付けてください”がめっちゃ気になる! 何か! ビートたけしばりに襲撃とかされるのかなぁ!(ビートたけしはする側だけども)
・【04 ショタヌキの初仕事】
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カフェに着いたところで、ショタヌキは何だか顔が虚ろ虚ろになっていた。
もしやコイツ、朝からいろんなことがあってハイになっていただけで、今めっちゃ眠いのでは?
一応昨日の閉店後にもテーブルは拭いたけども、L字になっているカウンターとテーブル席を拭いていく。
カウンターの端には花瓶に入れたナツハゼが優しく佇んでいる。六個消しモードのぷよぷよのように白い花が連なっている。いや七個あっても消えていないけども。
ショタヌキには床のモップ掛けを任しているわけだけども、何かモップを杖にして自分の体重を支えて、立ち寝に洒落込もうとしている。
会議中に仕込み杖で立ち寝している長老剣豪のポジションかよ。まあいいや、今は自分の仕事に集中だ。
テーブル拭き終わったところで、昨日から仕込んでいたカレーの鍋の味見をしてから、火にかける。
今日はカレーをぎょうさん作ったので、カレーフェア開始! だ。
カレーフェアって”開始!”って感じがするんだよな、一味(いちあじ)しかないけども、量がいっぱいあればそれはもうフェア。安ければフェア。そういうつもりでやっています。
後は、と思いつつ、冷蔵庫を見ると、近くに住んでいる山梨さんから大量の長ネギをもらったので、これをめった使い(めったづかい)しよう。私は自分造語が好きなので、脳内はいつもこんな感じ。
カフェのフェア、略してカフェアかましてよかですか。いいだろう、私のカフェだもんな。焼いた長ネギをめっちゃカレーにトッピングしちゃおうっと。
そんなノリノリ脳内(ノリノリまさのりばりのノリノリ)で料理の準備をしていっている時に気付いた、ショタヌキが普通にテーブルに着いて寝ているって。
おいおい初日から大物ムーヴですなぁ、と思いながら、私は長ネギを千切りと一口大にそれぞれ切り分けていく。
千切りは私のお好きですな料理に使うとして、一口大のほうは焼きトッピングー(エド・はるみ)用だ。
「グーググーググーググー、コォーーーーーー!」
うん、寝てるからいつものテンションが普通にできていいなぁ、じゃぁないんだよ。
起こして仕事させないといけない上に、本来こんなテンションいらないんだよ。
まあいいけどね、別に仕事しなくても。どうせ何もできないだろうし。私は他人に期待することは止めたから。
ただの他人ならまだしも、ショタヌキだもんな、ショタヌキなんて男風呂と女風呂間違えて入っちゃって、岩に変化したら、そのままのぼせちゃって、キンタマが湯船に浮いてキャー、だもんな。
ショタヌキのあるある一個だけあります、ってヤツだ。ショタヌキのあるある早く言いたいってヤツだ。言いたさ過ぎて、もう心の中で言っちゃったけども。
まったりと時間は経過していったその時だった。
「はい! やってます!」
と急にデカい声が聞こえてきてビックリした。
声のほうを見ると、ショタヌキが目を覚ました声だった。目覚ましボイスだった(焦り叫びのほうに言う単語じゃないけども、そもそも元々のほうに対して何なんだよその単語という気持ちもある)。
ショタヌキのほうを見ると、テーブルにヨダレたっぷりで、口元緩いなぁ、と思った。
ショタヌキは自分の服の袖でヨダレを拭こうとしたので、
「ストップ! いけません!」
と警察ポスターのようなレタリングを叫んでしまった。
「ちゃんとティッシュで拭いて、その後に水拭き布巾で、最後にアルコール消毒ね」
と言いながらティッシュの箱を渡すと、ショタヌキは何だか反省したような表情で、
「すみません……」
と言いながらティッシュの箱ではなくて、白い、抜き身の部分を二枚サッサと取って、拭いた。
私はティッシュの箱をテーブルに置いて、水で濡らして軽く絞った布巾を持っていってあげると、ショタヌキが、
「ありがとうございます」
と言いながら、イスからおりて、壁に立てかけていたモップを手に取って、また床の掃除をし始めた。
……いや、最後まで自分で拭けよ、一体何なんだよ。まあいいや、もうここまできたら私が拭こう。またイスに座らせるのもメンドイし。
テーブルのアルコール消毒が終わったところで、またキッチンのほうへ行き、今日の準備をし始めた。
そうだ、もうさすがにモップ掛けはいいので、
「一旦休んでいいよ」
と声を掛けると、ショタヌキは、
「でもっ」
と反論しようとしてきやがったので、
「いや本当に。あんまハッスルモップしちゃって埃が舞うのも嫌だし」
と淡々と述べると、ショタヌキは聞こえるかどうかギリギリの小さな声で「はい」と答えた。
ついに午前八時五十分になったところで、開店ボードを入り口に出しに行くと、もう常連さんが立っていて、本当は九時からだけども、田舎のカフェなんてその辺だるだるなので、もう中へ招き入れることにした。
「カレーの良い香りねー」
と常連さんが言ってくださって、
「今日はフェアなので安いですよー」
「じゃあ早速頂こうかしら」
と午前九時からのカレーって朝ご飯なのかな、昼ご飯なのかな、と思いながら、早速おあがりよをすることにした。
さて、トッピングの焼きネギを用意しなければ。焼きネギは縦に焼くことがポイント。そうすると中からとろとろしてくるのだ。
最後に横に倒して横にも焦げ目をつけたら完成。カレーに焼きネギをトッピングして、めっちゃおあがりよ!
「あらら、焼きネギまで乗っていて豪華ねぇー」
常連さんの黄色い声にまんざらでもない笑顔をかます私。やっぱこうでぃねぇと(コーディネートは)。
このカレーを皮切りに、どんどん常連さんが入ってくる。普通にあやかしの常連さんもカレーを注文する。
カレーフェアの日は本当にコーヒーの割合が如実に少なくなる。みんなカレーになる。カレーの香りの前には皆、無力なのかもしれない。カレーフェアで世界征服しようかな。世界征服初のフェアでやろうかな。
忙しく、かつ、いつも通りカフェで青春を感じていると、何か、違和感を抱き始めた。違和感のシックスナイン。
何か……いつも通り過ぎる……と気付いたその時だった。なんとショタヌキがいないのだ。8番出口なら引き返さないといけない。
いやこれこそいつも通りだから、そのまま突っ走ったほうがいいのか? 8番出口はまあいいや、有吉eeeeeでしか見ないし。
ショタヌキ、どこに行ったんだろう、もしかしたらいつの間にそのまま帰ったのかもしれない。無言帰宅使いやがったのかもしれない。
その場合はどこの家? 実家? それとも私の家? まあニンテンドースイッチに執着しているようだったし、まずニンテンドースイッチを手に入れてからの実家だろうな。一万円賭けます。これが私の一人オフラインカジノ。
オンラインカジノはそもそも海外での口座作りの方法が分からないので、できません。無能が正義の時代、きてます。
うちのカフェは別に昼だからって忙しくなるわけでもなくて、まあ確かにお昼休みの時間には若干人が増えるけども、基本は常連さんがくっちゃべりつつ食うだけなので、忙しさは一定だったりする。
なのでいつでもショタヌキの面影を探すことはできて。面影を探すて。幼馴染がいなくなった街の海、じゃぁないんだよ。
でも心の中はいくらでもエモくていいじゃないか、エロよりマシ。エロも自己完結ならアリだけども。いや違和感のシックスナインは、仕事中はダメだろ。違和感の寝バックはどうかな、全然ダメだろうな、仕事中に違和感の寝バックはダメだろうな。
いや違和感のエロい抱き方シリーズはどうでも良くて。マジでショタヌキどこに行ったんだろう、と思いながら店内をキョロキョロしていると、私はある違和感に気付いた。
何だ、こんな置き物、あったっけ……。
このカフェには祖父が残した統一性の無い置き物があった。大体全部がガチャガチャの景品みたいな、そのくらいのサイズと出来。
まあ最近のガチャガチャはマジで出来が良いので、出来というのは褒め言葉なんだけども、こんな置き物、マジであったっけ、と思ったその時だった。
もしかするとあのショタヌキの父親が隠しカメラ設置していったんでは、と思い、何かそういう勝手なことされるの腹立つなと思って、その置き物(昔の怪獣アニメのキャラクターみたいなヤツ)を軽く叩くと、
「はい! よろこんで!」
という声がしたと思ったら、その置き物はみるみるショタヌキの形状になっていき、前のめりに、床にズザーっと倒れ込むようにショタヌキが出現したのだ。床にうつ伏せで倒れ込んだショタヌキ。
私は訳が分からず、そのまま絶句していると、L字のテーブルにいた一人の和装のお客さん(こういう恰好のヤツは大体あやかし)が、
「おや、タヌキが隠れていましたねっ、どこから入ってきたのかな?」
と言って、タヌキが隠れていたって、えっ、ショタヌキの変化(へんげ)だったってこと? と私が目を見開いた。
いや何かあやかしが種族別に何か特殊能力を持っていたことは話として、知識として知っていたけども、いざこう目の前で見たのは初めてで。
私は振り返りながらその和装のお客さんへ、
「タヌキって誰でも変化できるんですか?」
と聞くと、
「まあどんなタヌキでもできますね。ちなみにわたしはキツネのあやかしなので、風や匂いを操れますよ」
と言うと、その和装のお客さんからラベンダーの香りがする冷風が吹いてきた。本当に、本当になんというか、人間界でも使えるんだ。
「ラベンダー冷風ありがとうございます」
と和装のお客さんへ一礼すると、和装のお客さんも一礼して、また和装のお客さんはカレーを食べ始めた、と思ったら、ふと和装のお客さんがこっちを見て、こう言った。
「ちょっとした世間話というか、忠告でもあるんですけども、いやもう言われていたらあれですけども」
何か前置き長いな、前置き長友だな(すぐにクロスをあげないサイドバックのこと)、それよりもまだ床にうつ伏せで倒れているショタヌキの処理をしたいんだよ、と思いながら聞いていると、
「こういう風にあやかしと人間が仲良くしていることを疎ましく思っているあやかしの層というのがいるので、お気を付けてくださいね」
と笑顔で、しゃんなりとそう言って、またカレーを食べ始めた和装のお客さん。
いやいや、いやいやいや、別にショタヌキと仲良くしていないし、むしろその場合はカレー食べに来ているオマエが原因になるだろ、と思った。
お気を付けてくださいって、多分どうにもできないだろ、いやそんな話は一旦いいとして、未だに床で寝転んでいるショタヌキへ、
「祥太くん、変化して寝ていたわけだね」
と処理の一声を掛けると、
「ゴメンなさい……バレないと思って……」
「寝たいなら寝ていていいから」
「ゴメンなさい……」
と言いながらゆっくり立ち上がったショタヌキ。
まだふらふらしていて、何だかすごく眠そうだ。
「そこのL字の角で、寝てていいよ」
「でもぉ……」
「というかもう一旦家に帰る?」
「……」
ショタヌキは黙って俯いた。
周りの視線全てが私とショタヌキに向けられていることに気付いた。
当たり前だ、状況がよく分からないだろうから。
タヌキが化けてでてきた割には店主があんまりビックリしていない上に、処理する前に和装のお客さんと会話していたんだから。
ここはもうハッキリ説明したほうがいいかもな、と、
「こちらの祥太くんは今日からカフェで働くことになったタヌキのあやかしなんです」
と私が言った刹那、さっきの和装のお客さんが笑いながら、
「全然働いていないじゃないですか!」
と言うと、ショタヌキはバッと近くの入り口から外へ走って出て行ってしまった。
私はちょっとぉという思いを含みながら、和装のお客さんのほうを見ると、和装のお客さんは少し困惑した面持ちをしながら、
「いや、事実じゃない、ですか……っ」
と言ってから俯いた。この人、事実なら何を喋ってもいいと思っている?
祥太くんのことは気になるけども、さすがに店を開けるわけにはいかない、と思っていると、常連さんグループが、
「僕がとりあえず今いる人分のレジするんで、行っちゃって行っちゃって」
すぐさま同じ常連さんグループの一人が、
「レジ触れずにやるから! 俺は小銭いっぱい持ってるし!」
と言ってくださったので、私は、
「ありがとうございます!」
と頭をさげてから、ショタヌキを追いかけることにした。
入口から外に出るとすぐに信楽焼のタヌキがあって、もうショタヌキがいた。
あの勢いでどっかへ行くと思っていたら、もういて助かった。
「祥太くん、これから一生懸命頑張っていけばいいよ」
と優しく声を掛けたつもりだったんだけども、うんともすんとも言わない。
何だろうと思って、その信楽焼に顔を近付けると、寝息が聞こえて、寝ていることが分かった。
じゃあもういいや、コイツはこれでいい、と思って、すぐに店内に戻ってきて、
「何か信楽焼になって寝ているので、そのままにしておいてください」
と店内のお客さんにお伝えして、またいつも通り、切り盛り。
段々夕暮れが近付き、閉店の時間に。
祖父の時から午後六時には閉めるので、心の健康第一だなぁ、と思いながら、入り口のボードを取りに戻ると、まだショタヌキが寝ていたので、まあ起こすことにした。
「もう終わったよ、祥太くん」
そう言いながら信楽焼の顔を触ると、
「ふぁ! よろこんで!」
と叫んで、何で三回に二回が居酒屋なんだよ、ここはカフェなんだよと思いながら、
「ちょっと中へ」
と言うと、信楽焼はいつものショタヌキにモーフィングしていき、戻ったところで一緒に中へ入った。
「私はさ、夕ご飯は基本カフェで食べていくんだよね」
と話し掛けたところでショタヌキが、
「ゴメンなさい……」
「それは何に対して。別にいいんだよ、寝ていても」
「いやでもゴメンなさい……」
「思考停止でゴメンなさいと言うマシーンになってるわけじゃないよね?」
「ゴメンなさい……」
いやなってるのかよ、と少し吹き出しそうになりながらも、
「今日は長ネギのグラタンでも食べようか」
「長ネギのグラタン?」
「そう、カレーは全部無くなっちゃったからね」
私はテーブルに長ネギのグラタンを二個置いて、私はそのまま席に着き、ショタヌキも私と対面になるように座った。
「米粉と牛乳だけで作ったホワイトソースだからあっさりだよ、味も塩胡椒だけ、あれでしょ、そもそも辛いカレーとか苦手でしょ?」
「はい、そうです……」
「長ネギとピーラーで薄くした人参だけで充分甘さが出るヘルシーなグラタンだよ、まあチーズ乗っけてオーブンで焼いているから最後の最後でカロリー追加しているけどね」
「でも、チーズ大好きです」
「それなら良かったぁ」
と私が言ったところで、ショタヌキが言いづらそうに、
「怒らないんですか……」
「別に。急にカフェで仕事しなさいみたいに言われたんでしょ、で、不安で夜眠れなくて。そんな急いで全てを完璧にする必要無いんだよ」
「でも……」
「雇い主である私がそう言っているんだから間違いない。まあゆっくりやっていけばいいんじゃないかなぁ」
「早く一人前にならないといけなくて……」
「それお母さんの言葉?」
と私が矢継ぎ早にそう聞くと、ショタヌキはコクンと頷いた。
私は呼吸を整えてから、
「早さなんていらないよ、大切なのは確実性、確実に一歩一歩積み上げていくことが重要だから」
「そう、ですかね……」
「そうそう、まっ、家帰ったら一緒にニンテンドースイッチでもしよっか、まずは私と親睦深めなきゃっ」
「すみません……」
と申し訳無さそうに言ったショタヌキ。
いやいや、
「そういう謝る癖とかいらないから、楽しむ癖付けようかっ」
「ありがとうございます……」
「いやまあそんな話はどうでもいいから、長ネギのグラタン食べてよっ」
「はい……美味しい……」
と滋味深く呟いたショタヌキ。
たいした食レポもしてくれないけども、まあこっちも一歩ずつだなぁ。
良いこと言えたかどうか正直全然分かんないけども、こっちも確実にやっていくしかない。
その日の夜、二人でスーパー野田ゲーmakerをして、ルールの分からないゲームにゲラゲラ笑っていた。
仲良くなれたっぽいのは合格かなぁ。笑い疲れたらしく、夜も寝れたみたいだ。
でも仲良くなっちゃダメなのかもしれない、と思うところもあって。
いやあの”お気を付けてください”がめっちゃ気になる! 何か! ビートたけしばりに襲撃とかされるのかなぁ!(ビートたけしはする側だけども)
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