社会科漫才師

青西瓜

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ついに明日

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 それから僕と豪太くん、そして麻衣ちゃんの三人で放課後はいつもネタ作りをするようになった。
 僕にとっては、それはそれは大きな変化で、いつも学校が終わると、すぐに家へ帰っていった僕とは思えない人生になった。
 しかも明日には、ついにクラスのみんなの前で漫才をすることになるなんて。
 麻衣ちゃんの前で漫才をした時は、ネタも忘れずに、アドリブのボケにもしっかりツッコんで、完璧にこなすことができたので、少し自信はある。
 でも果たして、大勢の人の前で漫才ができるかどうか、それは試してみないと分からないというヤツだ。
 今日の午後の自由授業で、漫才をさせてもらえることになった。
 実は、麻衣ちゃんの前だけではなくて、担任の先生の前でも漫才をして、ちゃんと許可を得ている。
 つまり人前では既に二回も漫才をしているのだ。
 だから大丈夫、だから大丈夫なはず、と思っているんだけども……。
「琢磨くん、顔色悪いよっ、大丈夫?」
 麻衣ちゃんが僕を心配して話し掛けてくれたのは、給食の時間だった。
 給食は机を合わせて食べるので、麻衣ちゃんと僕は対面する。
「気分悪い? 大丈夫? 保健室行こうか?」
「いや大丈夫、ご飯食べて、元気になるから」
 まさか自分がここまで緊張するとは。まだ給食なのに。
 給食を食べて、昼休みに練習して、午後の授業で漫才という流れ。
 今日の朝のホームルームで、僕と豪太くんが漫才するという発表をした。
 その時に『何で琢磨と?』みたいなことをいっぱい聞かれて、その対応も正直疲れた。
 クラスメイトが豪太くんへ『何でオレとじゃないの?』とかはいいとして『オレのほうが琢磨より絶対面白いのに』みたいな人がめちゃくちゃ多くて、それが聞こえてくるだけでも、それなりにつらかったけども、さらにそれを直接僕に言ってくる人もいて、正直すごく困った。
 やっぱり僕はクラスメイトから面白くないと思われているんだ、と改めて痛感して。
 でも当たり前だ。僕は自分を出そうとなんて今までしてこなかったから。
 こうやって急に出すことになったけども、なったけども、あぁ、ダメだ、つらいかもしれない。
 でも何故か麻衣ちゃんのほうがつらそうな顔をしながらこう言った。
「……琢磨くん、一回教室から出ようよ。また、ほら、琢磨くんの、その……」
「悪口ね、飛んでくるよね、ずっと」
「……琢磨くん、そんな顔しないで……」
 そう言って泣きそうな顔をする麻衣ちゃん。
 いや何で麻衣ちゃんがそんな僕に感情移入して。
 豪太くんは今どうかというと、いつもより友達に囲まれて『オレとコンビを組めよ』みたいな話をみんなからされて、その対応をしている。
 たまに豪太くんと目が合うが、その目は他のクラスメイトが邪魔な壁となり、物理的に遮られる。
 朝のホームルームから全然豪太くんと話せていない。
「別にうちのクラスはご飯残しても何も言われないからさ、一旦、保健室行こうっ」
 そう言って麻衣ちゃんは立ち上がり、僕の腕を引っ張った。
 どうしようと思ったけども、僕は給食を残すことにして、給食の後片付けをしてから麻衣ちゃんと保健室へ行った。
 保健室に入るなり、麻衣ちゃんは叫んだ。
「酷いよね! あんなまるで琢磨くんが面白くないみたいに言って! こんなに面白いのに!」
 麻衣ちゃんは保健室でこう大声を出したので、今、まさに保健室の先生から少し叱られている。
 いやでも実際僕は面白くないからなぁ……と気分が落ち込んでしまう。
 本当にどうしようと思っていると、保健室の扉が勢いよく開いて、そこには豪太くんが立っていた。
 その勢いよく開けたことに、保健室の先生から叱られて、そして叱られ終えてから豪太くんは僕に近付いてこう言った。
「琢磨は面白い! 絶対面白い! 俺が保証する!」
 また大声だったから、保健室の先生から叱られるのではと思ったけども、そこは保健室の先生は見ているだけだった。
「まだ誰も琢磨が面白いって分からないだけだ! 分からせてやろうぜ! 絶対俺たちの漫才は面白い!」
 それに呼応するかのように麻衣ちゃんも叫んだ。
「そう! 豪太くんは勿論、琢磨くんもすごく面白いから大丈夫だよ!」
 手をグーにして力説してくれる麻衣ちゃん。
 でも、麻衣ちゃんは急にトーンダウンし、手をパーにして、そのパーの手で僕の手を柔らかく包み込みながら、こう言った。
「……でも、つらかったら止めよう? 琢磨くんのそんな顔見たくないから……」
 僕は、どうしよう、でも、でも、ここまできたら、やっぱり。
「麻衣ちゃん、豪太くん、僕、漫才やるよ……見返してやるよ!」
 その僕の言葉をすごく喜んでくれるのが、やっぱり豪太くんだ。
「よっしゃ! やってやろう! じゃあ校庭で漫才の練習だ!」
 そして僕と豪太くん、麻衣ちゃんは校庭に行って最後の漫才の練習をした。
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