シンデレラは落とせない

流風

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義母と義姉と義姉と

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今日もキーキーと騒がしいお家がありました。



「シンデレラ!まだ掃除終わってないの?!さっさとしなさい!次は洗濯よ!……何よ、その目は!誰のおかげで生きてられると思ってるの!」

 分厚い化粧でシワ・シミを誤魔化し、最近ついてきた腹肉を似合いもしない大きなリボンで必死に誤魔化した女が命令しています。見下した目と態度、まさに『横暴で独裁的』な女性です。
 この女性の名は継母のイライザと言います。


「シンデレラ!紅茶とお菓子を持ってきてって言ってたでしょ?!まだなの?このグズ!!」

 カウチソファにふくよかな体を横たえ、お菓子を食べながら叫んでいる姿はまさに『怠惰の化身』。
 イライザの連れ子で長女のデブラです。


「シンデレラ~、ドレスを買うからお金を出して。やっぱりドレスは最新の流行のもの………なんなのよ、その目は?!本当に可愛くない子ね!」

 レースまみれのドレスに身を包み、雑誌から目を離す事なく金を請求する女性は『ぶりっ子の極み』とも言える痛い性格をしています。
 イライザの連れ子で次女のカーミラです。


 今は亡き父の再婚相手である継母と連れ子の姉2人。その女性3人から今も厳しい叱責を受けるのは『灰被り』の意を持つ、まだ13歳のシンデレラ。
 本名は別にあるのですが、継母の2人の連れ子である姉らがそう呼ぶ為に家庭内では『シンデレラ』と呼ばれていました。



 シンデレラが物心ついた頃には母は病で亡くなっていました。唯一の家族は、商人として大成功した父。その父は2年前に事故により他界しました。盗賊に襲われ逃げているうちに谷底へ……という話ですが、本当のところはわかりません。



 シンデレラは父が再婚してからというもの家での居場所が無く、また、唯一の味方である父が他界すると、継母や姉達はシンデレラをこき使うようになりました。
 嫌悪や侮蔑の目。シンデレラに対する愛情のカケラも見られない3人ですが、それでもシンデレラを未だに家に置いている理由は、それは亡き父が巨額の財産の受取人をシンデレラ1人にしていたからでした。

 父は自分に何かあった時、未成年で稼ぐ手段もなく継母達からも蔑ろにされているシンデレラの事を案じていました。また、商売の関係上仕方なく結婚した、まだ日の浅い継母達へ財産を残すよりはと、唯一血を引くシンデレラを想って財産を残していましたが、そこで面白くないのは継母たち。

 この国では成人した時に『誰に財産を残すか』登録するようになっています。基本的には皆が家族に残しますが、時には問題のある家庭もあります。問題ある者に財産が渡らないようにと、法が整備されたのです。
 ここで問題となるのが、未成年者が財産を持った場合です。未成年者に残された財産は、成人するまで司法が管理します。未成年者に万が一の事があった場合は、残された財産は国の物となります。そうして、悪意ある大人が未成年者に害を成すことがないようにしたのです。

 それを知らなかった愚かな継母達。父親が死んだと同時に財産を自分の物にしようとしましたが、失敗したうえ、司法に目をつけられるという事態になりました。
 そのため、今すぐに財産を奪うことは諦め、妻だから、子だからとシンデレラ宛ての財産を何とかしてもぎ取ろうと、表向きはシンデレラを成人するまで庇護下に置く養育費として、実際は使用人以下の奴隷のような扱いをさせておりました。


「シンデレラ!お気に入りのワンピースの縫い目がほどけてるから、今夜までに繕っておきなさい」

「あ、私のもよろしくね」

 投げ捨てられたワンピース。シンデレラはそれを手に部屋へと戻ります。
 裁縫道具を取り出し、綻んだ場所を探します。

「あ、本当に縫い目がほどけてる。でもこれ、ほどけたというより、ちぎれたって表現が正しいような……。太り過ぎて服が裂けたんだな。まったく……面倒くさい。どうせまた裂けるんだから、テキトーに縫っときゃいいか」

 シンデレラは、虐げられた生活を送っていましたが、委縮したという様子は全く無く、むしろ反抗心をしっかりと育まれており、強かで逞しい子に育っていました。
 ワンピースの修繕も、縫い目の荒い雑な縫製で済ませ、買い物へ行くと叫びながら、さっさと外へと出かけて行きます。
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