6 / 13
パーティ会場にて。王子様の思い。
しおりを挟む王城のガーデンパーティ会場。
現在、第三王子はパーティ会場である庭園を一望できる休憩所に居ます。その休憩所は、庭園でのパーティの際、王族、もしくは王族が良しとした者しか入れない場所となっており、階段を上がった高い場所に作られています。だからこそ、そこから客達の動きが丸分かりです。
「彼女が来てくれると良いのだが……」
第三王子は初恋を拗らせていました。10歳の頃に商人と一緒にいた可愛い女の子。礼儀作法をしっかりと躾けられていたであろうその動作は整った容姿と相まって美しかった。しかし、少女に注目していて商人の名前を忘れてしまったのです。
その日は王城勤務の者達への解放日として、商人を沢山招いており、王城敷地内で買い物ができるようになっていました。
その後、家族に聞くも少女を連れた商人に覚えがないと言われ、第三王子の初恋の君は不明となってしまったのです。
王子はその初恋相手を探すため、このパーティを開いたのですが……。
家族には反対されました。王族は伯爵以上の身分の者との婚姻しか認められていないのです。それを無視して恋に暴走する第三王子を家族は諫めていたのですが、本人がまったく納得しなかったのです。諦めの境地から、国王である父親は『一般市民にも門戸の広い王族』とアピールする機会にしようと頭を切り替え、このパーティを許可したのです。
ーーー当然、貴族でない者と結婚するならば臣籍を外れてもらうと約束を交わして。
現在、第三王子ジョシュアはパーティを開く庭園を一望できる休憩所に居ます。家族である他の王族は、今回のパーティには参加せず、もう一つある隣の休憩所で様子を伺っています。
休憩所は、高い場所に作られており、そこから客達の動きが丸分かりなのですが。
(やはり、いないか)
上から庭園を一望しているのだから、招待客の大半が集まってきている事も把握済み。その中に、あの時の金に近いミルクティー色の髪を持つ美しい少女は見つけられませんでした。
「ジョシュア様、そろそろお時間です」
「わかった」
従者がパーティの開始時刻を伝えてきます。やはり、ダメだったか。諦めの溜息を吐きながら休憩所を後にしようとした時、最後の参加者であろう少女が一人の老婆とともに入室しました。
階上からもわかる美しいミルクティー色の髪を片側サイドでアップにしており、明るい赤色のドレスは生地が何重にも重ねられ華やかな印象です。腰には花とリボンが飾られ、若さ溢れるその姿は、会場に咲く一輪の薔薇と言えます。
(やっと見つけた!)
思わず手に力が入る。第三王子ジョシュアは歓喜の雄叫びをあげそうになる自らの口を無意識のうちに震える手で覆っていました。
今回のパーティは大人数であること、また、未成年者が参加が多いため、昼の庭園でのパーティとなりました。人数の関係上、保護者は参加できません。入り口に来るのも通常できないのですが……。見ていると老婆と少女は入り口付近で別々にわかれ、目的の少女は会場の奥へと足を向けるのが確認できました。
「ジョシュア殿下、お時間です」
再び従者が声をかけてきます。
「……わかった」
やっと見つけた!期待に胸を膨らませ、ジョシュアはパーティ会場である庭園へと向かいました。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる