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別れ
しおりを挟むホテルから脱出し、その日の夕方、半ば強制的に鈴音に会う約束を取り付けた。
浮気の事を確認したら、意外とあっさり認めた。
そして、俺たちは別れた。
大学のベンチに一人腰掛けていると、英治が近づいてきた。
「よっ!カラオケで何も言わずに消えたけど、どこ行ったんだよ?帰ったの?もしかして、もしかして、女の子と二人きりで楽しんだの?」
ニマニマと笑いながら、肘で突っついてくるか英治に、何も言い返す言葉が出てこず、真顔で見つめ返した。
そんな俺を見て、「え?マジ?」って呟きながら英治が固まってしまった。
「英治、俺・・・ 」
朝目覚めたらホテルのベッドにいた事。記憶がない事。もたらされた鈴音の情報。そして、鈴音と別れた事。
「清掃作業の時、日記見ただろ?あれも俺に見せるために置いたらしい。書いてた内容は、鈴音の事だったらしいぜ」
「マジかぁ・・・ 。あの内容、一個一個は大した内容じゃないけど、陰湿でタチの悪い内容だったよな。小さな冤罪の積み重ね。仲間はずれ。故意な情報の隠蔽。さらに彼氏を寝とるとか、ないわぁ」
「だよなぁ。でもさ、鈴音も悪いけど、その鈴音に対して俺を巻き込んで仕返ししようなんて、やめて欲しいよ。あの朝、俺、本当に生きた心地がしなかったんだぞ!もう!夢だったらいいのに!」
「・・・女って怖えな」
「・・・うん。怖いな」
あの日から、俺の人生が最悪だ。
碌なことがない。
「ま、あれだな。飲むか。久しぶりに圭太んち、泊まりに行っていいか?家飲みしようぜ」
「おぅ、明日は祝日だし、朝まで飲むぞ!」
「俺と同じ、独り身になった圭太くんを慰めてあげよう」
舌打ちしながら英治に何度も足蹴りを食らわし、酒と菓子を仕入れてアパートに帰った。
アパートのポストの中に何か包みが入ってた。開けてみると、あの日記だった。
英治が日記を捲ると、鈴音との別れについても書かれていた。
それを見て、だんだん腹が立ってきた。
「なんだよこれ!俺への嫌がらせか?鈴音とも別れたんだ!いい加減にしてくれよ!」
「おい、これ持って先に部屋に戻ってて」
買い物袋を俺に手渡しながら、
「ちょっとこれ、捨ててくるわ」
日記を軽く掲げながら、英治がどこかに行ってしまった。
部屋に入り、荷物を降ろして一人座っていると、イライラするような、虚しいような、複雑な気持ちが渦巻いてきた。胸が苦しい。ムカムカする。
完全に女同士の喧嘩に巻き込まれた。
鈴音の事は好きだった。本当に好きだったんだ。なのに、今は恨みの気持ちが強くなってくる。
はぁ・・・泣きたい。手に持ってるスマホを全力でぶん投げたい気持ちになる。何かに当たりたい。
英治が戻ってきた。日記はビリビリに割いて、ゴミ箱に捨てたらしい。
今日、英治が来てくれてて良かった。
「ありゃ、すげぇ執着心の強い女だな。気をつけろよ。何するかわかんないから」
「あぁ。ありがとう。そういや、あの女、なんて名前だったっけ?」
「それが・・・俺も思い出せないんだよな。飲み会の時もあまり話してなかったよな。ま、いいだろ。あんな女、忘れようぜ」
酒とツマミを出して、二人で飲み始めた。
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