ポンコツな私と面倒な夫達 【R18】

象の居る

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11.すれ違いと打ち明け話

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もっとしたいと強請る二人に体力の違いを言い聞かせ、体拭きだけして眠った。
キスの雨の中で目を覚ますと、嬉しそうなアルにぎゅうぎゅう抱きしめられ、愛の言葉オンパレードを聞く。
この人、こんな喋るのね。凄いなーさすが、異世界。

ベルから作った服と布を渡された。青い布地のシンプルな長いワンピース。滅茶苦茶お礼言った。布は頭に被るように言われる。

「夫以外には髪を見せちゃダメなんだ。浮かれてて渡すの忘れちゃった、ごめんね」
「いいよ、誰にも会わないし。ワンピース着ても良い?」
「うん、着て見せて」

これで、飛ばされた日から着てた服を洗えるっ!紐パンも作ったし、後はブラだーーイエイ!すぐに着替えて二人に見せた。

「似合うよ。この紐を腰に結んで・・・布はこうやって頭に・・・・なんか、俺達の妻に見える」
「こっちの人っぽい?」
「ああ。ユウ、似合う」

二人からはにかんだ笑顔で見つめられ、顔が熱くなる。
は、恥ずかし過ぎるっ。ダブルではにかまれると、もう、好きにしてってなっちゃうだろがああ。とうとう私にもデレが来たのか?お花畑で窒息するわ。

見えなくなるまで見送ってから、シーツを剥がして洗濯を開始する。
私の股間も洗濯しないと。やっぱ拭いただけじゃな。わっはっは、ガニ股じゃーゴシゴシってな。
足踏み洗濯はやっぱり大変で、歌をがなりながら頑張った。
畑も教えて貰わないと。ご飯の後は箒で掃くか。家の中、土足なのに拭き掃除とか苦行だよね。雑巾だと使い捨てになるから、デッキブラシ?いや、そんなのないし、あれか、縄を丸めたタワシか。物資の欠乏がすごい。亀の子は偉大な発明だったのだな~。

お昼を食べて掃き掃除をした。うーん、寝室だけでも土足禁止にしたい。そうすると、寝藁の交換とか靴脱いだり履いたりして大変になるな。家用のサンダルがあれば脱ぎ履きしやすいのに。
あーブラの形はどうしよう。アンダーは紐縛り固定で決定。問題はカップ部分。どうするか。立体裁断なんて知るわけないし。

頭の布もな~、どうせなら乙嫁コスしたい。刺繍してさ。どんな刺繍かは覚えてないけども。黒染は高いのかな?刺繍糸も要るよねえ。あああ、お金、お金がかかる。
つか、がんがん中出ししたけど、妊娠したら産むのかな?そりゃあ産むよね、妊娠したら。私はここで子供を育てるのか?出産死亡率高そうだな。覚悟とか何もない。流されてるだけだ。だらだら流されてなし崩し。いつものパターンじゃん。
あ、やべ、死にたくなってきた。あーあーあー。
双子、双子のこと考えよう。森番て、結局何するんだ?森にいる不審人物の保護。狩りは仕事の範疇なのかな?・・・全く不明だ。何にも知らない。あの人達のこと知らないぞ。えー、会って4日か。そりゃ知らないわ。よく結婚する気になったな。性欲の高まりで脳内麻薬ガバガバ出てガン効まりしてんじゃないか。 

あまりの知らなさに愕然としつつ、ブラジャー案を手帳に書いていく。ポールペンのインクなくなったらお終いだな。紙も買える値段かどうか。
気付いたらぼんやりしていて、ドアをノックする音に驚いた。

「おかえりなさい。お疲れ様」
「ただいま」

今朝のお花畑感が吹き飛んでしまったせいで、嬉しそうな顔の二人を見て違和感を膨らませてしまう。誤魔化したくて、笑いながら二人を迎えた。
ベルに、やけにジッと見つめられ、気まずくて目を逸らしてしまう。

「ユウ、どうしたの?何かあった?」

ベルが私の手を取り、静かに尋ねる。気持ちが萎んでしまったことへの罪悪感を隠すために俯いて答えた。

「あー、なんていうか、二人のこと何も知らないなーと思って。森番の仕事のこととかも」
「・・・・・そうだね。何も話してなかったね。じゃあ、今日はゆっくり話そうか」

ベルの少し固い声が、怖くて何も言えず、ただ頷いた。
・・・地雷?まずいこと言った?いや、でも、どんな仕事か聞くのが地雷とかないでしょ。なんか怖い。山に穴掘って死体埋めてたらどうしよう。

「ユウ、俺の手伝いを頼む」

アルが優しく手を引き、私を外に連れ出した。軒下で麻袋の中身を空ける。

「これはゴール。見つけたら採って、干してから革なめしに売る。こっちは薬草。これも、こう紐で縛って干してから薬師に売る。獣を狩ったら皮を剥いで革なめしに売る。秋になったらキノコを採って売る。ここは領主の森だから売った金は全部、領主のものになる。ただ、自分達の必要な分だけは貰える。森で見つけたものを売ること、迷子を保護すること、密猟者を排除するのも仕事だ」

アルの手がそっと頬を撫でる。

「俺達は、良い育ち方をしていない。ベルはそれを気にしてるんだ。でも、結婚するんだ。ちゃんと話す。不安にさせてすまない」

優しく抱きしめられて、額に触れるだけのキスを受ける。

気まずい。誤解が解けてめでたし、みたいな雰囲気なのが。アルが真摯なのが余計に気まずさを煽る。死体埋めじゃなくて良かったけれども。
私が気まずかったのは、恋愛的な気持ちが萎んじゃって、なんか悪いことしたなーと思っただけで。育ち方の話になるとは。特に気にしてないけど、盗んだバイクで走ったりした過去とかは聞きたくないな。真摯な対応などできない。真摯ってなんだ?自分に被害なければ良いや、なんて考えてる私が、重い過去を支えるとか。こんなこと考えてる時点でダメですよね。いっそ開き直りたい。

干し台にゴールを並べながら、夜が来るのを憂鬱に思った。

気まずい食事が終わって、お茶を入れテーブルを囲んだ。
シーン・・・気まず過ぎる。アルはベルを気遣い、ベルは真顔で目線はお茶。何か、何かを。

「あの~、アルに良い育ち方してないって聞いたから、言いたくなかったら言わなくても大丈夫よ?無理に聞きたいわけじゃないから。言いたくなったら教えてくれる感じで」
「・・・ううん、話すね」

護身発言は流された。怖い。

「俺達、領主の子供なんだ。でも双子だから、森番に送られた」

か、簡潔な説明ですな~。領主の子供って、貴族な感じ?

「ええと、双子はあまり好かれないから、人が少ない場所の仕事を任されたってこと?」
「・・・ふっ、その言い方いいね。森番て、どちらかというと嫌われるんだ」
「えっ、採取狩猟生活がなんかダメなの?」
「飢饉があるとさ、食べるのに困った人が森に入ったりするんだけど、ここは領主の森だから、追い出さなきゃいけないんだ。見逃したらどんどん入り込んで好き勝手に採り尽くされるし、見逃しを知られると俺達が罰を受ける。でも、相手も必死だから抵抗するし、それでケガさせることもある。俺達が追い出したから、子供が死んだとか言われたりする」
「・・・・・うーん、それは、辛いね。どうにもできないことを責められるのはね」
「あと、俺達双子だから、親兄弟から嫌われてて、森番にされて、縁も切られてる。こんな感じだよ」

ベルは肩を竦めて自嘲した。
あーこれは、あれか。家族関係の方が言いたくないことなのか。傷付いてるのよね。何をどうしたら慰めになるんだろう。座敷牢生活じゃなくて良かったね、とか。ないな。コーテー、肯定していくスタイルで!

「・・良かったね。双子で。一緒にいる人がいて」
「・・・・・うん、双子で良かった」
「・・・ああ」
「妻もできたし。良かったね」
「・・・うん」

ベルが抱きついてきたので頭を撫でる。

「・・・ねえ、結婚してくれる?」
「うん、する」
「ふふっ、即答した」
「するよー。ベルもアルも可愛いよ」
「そっか。そんなこと言うのユウぐらいだよ」
「希少生物じゃん。お得だね」
「何それ、ふふっ」

ベルとくっついて話をしてたら、アルもくっついてきた。なんだ、なんだ、寂しがりか。ヨシヨシしちゃうぞ。

夜は裸でくっついた。素肌が気持ちよく暖かさを運んで、優しいだけの気持ちで眠った。


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