ポンコツな私と面倒な夫達 【R18】

象の居る

文字の大きさ
18 / 139

17.喜びと嫉妬

しおりを挟む
怒涛のように語り切ったミカちゃんは、輝いた目で頬を上気させこちらを振り返った。

お、おう。パンチが重過ぎるぜ。実録グリム童話育ちのミカちゃんよ、グミをくれたのは君だ。ベッドを無茶苦茶にするエピソードはピリッとしたインパクトだね。私の胸は潰れそうだよ。ピュアピュアかと思ったら暴走系でしたわ。お茶を飲んでほのぼのしようと思ってたら、テキーラショット出てきたみたいな。まいったね。

対応を迷ってたら、ミカちゃんがみるみる泣きそうな顔になって、慌てて頭を抱きしめた。

「・・・・・嫌になった?やっぱりダメ?」
「嫌じゃないし、ダメじゃないよ。ミカちゃん、寂しかったんだなーと思ってただけ」
「本当に本当にホント?・・・俺のこと・・嫌じゃない?」
「嫌じゃない。ミカちゃんは可愛い」
「本当に?」
「本当」

拳を握って震えるミカちゃんの腕を取ってベッドに連れて行き、靴を脱がして寝かせる。隣に横になって涙に濡れたミカちゃんの顔にキスしながら、抱きしめて、と囁くと、ミカちゃんは思い切り私を抱きしめ、涙をこぼした。

「ミカちゃん、苦しいから少し緩めて」
「・・・ごめん」
「うん。ミカちゃん、昨日寝てないんでしょ?寝ようか」
「・・・やだ。せっかく会えたのに」
「これからはいつでも会えるよ。泊りにも来れるだろうし」
「!!!本当に?泊まりに来る?本当に?」
「うん、本当」

君はホントウ星人か。ほうとうを食べるホントウ星人、ナンチャッテ。
髪を弄りながら何度もキスをしてると、ミカちゃんがくすぐったそうに笑った。

「嬉しい。俺、ユウと結婚できるんだね。嬉しい」
「可愛い夫ができて私も嬉しいよ」
「!!本当?俺と結婚出来てユウも嬉しいの?」
「うん」
「あー俺、嬉しくて変になりそう」

嬉しくて堪らなさそうに笑い、抱きつきながら身をよじってるミカちゃんが可愛くて、こうやっていつも笑ってくれるといいなあ、なんて思った。

いつの間にか眠ってしまって、迎えに来たアルに起こされた。隣にいるミカちゃんを起こす。

「ごめん、寝てた。ミカちゃん、ミカちゃん、起きて」
「ん・・あ、・・寝ちゃった!」
「おはよう。アルが来てくれたから帰るね」
「・・・わかった」

ミカちゃんは外まで見送ってくれた。はしゃぎ出しそうで微笑ましくて、私が笑うとミカちゃんも笑った。

「明日も会いに行くから!」
「うん、また明日ねー」

振り返って手を振る。ミカちゃんはいつまでも手を振ってた。

アルが私の手を握って早足で歩くので息が切れる。ゆっくり歩いてとお願いすると、立ち止まり振り向いて、私をギュッと抱きしめた。

「・・・ユウ、ミカと・・・・ユウ、好きだ。ユウ」
「うん、私も好きだよ、アル」
「わかっていても、苦しい」

うん、嫉妬は苦しいよね。複数夫の弊害だ。何もしてないけどさ、ベッドで一緒に寝てるのを見ちゃったらね。ごめんよ、視覚情報の暴力だったわ。何か、何か埋め合わせを用意せねば。

「アル、私に出来ることある?して欲しいことある?二人っきりで交尾するとか」
「・・・それが良い。二人だけでする」
「ベルが許してくれたらそうしようか」
「ああ。早く帰ろう」

現金即決ですな。立ち直り早ぁ。だから、歩くの早いんですよ。段々と早足になるアルに文句を言いつつ、帰り道を急いだ。


しおりを挟む
感想 83

あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...