ポンコツな私と面倒な夫達 【R18】

象の居る

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16.独白 Side ミカ

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Side ミカ

ベルがいきなり訪ねて来た時、とうとう、会うなって言われると思って辛かった。夫のいない時に訪ねて行って話をするなんて、やっちゃいけないことだったから。
でも、止められなかった。俺を見て話をしてくれる、俺を見て笑ってくれる。だって、水を手に汲んでくれて、グミもくれた。
ずっと一人で平気だったのに、一人で家にいるとユウのことを考えてた。俺を見て欲しくて、でも何度も会いに行って迷惑だと思われたくなくて、用事を無理に見つけて会いに行った。だって、森番でも気にしないって言った。それなら俺のことも気にしないでくれるかもって思って。

でも、本当にダメだったんだ。ベルの言葉を待つ間、胸が痛くて潰れそうだった。
それなのにベルが、求婚する気があるか聞いた!求婚を!許されるなら、許されなくても、したかったけど、でも、怖くて。俺は森に捨てられた子供だから。

何日も食べ物がなくて、お腹が空いて泣く俺を父親が森に置いて行った。茂みに潜り込んで何でも食べた。たまにお腹を壊したけど、グミもグスベリも美味しかった。俺は体が大きくて木登りも得意だったから、夜は木の上でオオカミから逃げることができた。シカに付いて行って水も飲んだ。それで何日もしたら炭焼きのじいさんが家に連れ帰ってくれた。

拾ってくれた炭焼きのじいさんはあまり喋らなかったけど、俺を育てて炭焼きの仕事を教えてくれた。じいさんは婚姻の紋が小指にあって、酔うと妻だった人のことを話した。幼馴染だったこと、炭焼きに売られた後も優しくしてもらったこと、婚姻して、滅多に会えないけど幸せだったこと、若いうちに死んでしまったこと。
婚姻に憧れたけど、幼馴染はいなかったし、酷い病が流行った時に女の人がたくさん死んで、街に出てもあまり見かけなくなった。婚姻の紋があるパン屋でパンを買った時に、俺も結婚したいから誰かいないか聞いたら笑われた。炭焼きと結婚させるような親はいないって。指輪も用意できないだろって。

お金を少しでも貯めたくて、籠を編み始めた。籠の編み方は俺を捨てた母親に教えて貰った。少しだけど売れるようになって嬉しかった。
ユウに会ってから、編む量を増やした。もっと売って指輪を用意出来るように。

一昨日の夜、ユウのことを思い出して、堪らなくなって、森番の家が見える場所まで走った。ユウの姿を少しでも見たくて。月の下に家はあるけどユウは見えなくて、家の中にユウがいて三人で笑ってるかもしれないと思ったら、羨ましくて羨ましくて悲しかった。
森番は二人なのに!二人でいるのに、ユウも一緒にいる。俺は、俺は一人で、じいさんみたく、じいさんになるまで一人なのかと思うと、胸が詰まって苦しくて苦しくて、痛かった。俺は一人で眠るのに、森番は三人なんだ。敷き藁を滅茶苦茶にして、ベッドを殴って殴って殴った。

次の日、ベルが来て求婚するか聞いてきた。指輪を買えないと俯いたら、ユウは気にしないと言った。ユウの国は指輪が必要ではないと。
ユウが俺の求婚を受け入れたら、明日三人で来るから家を片付けて、体を洗っておけと言って帰った。

掃除してる間中、不安だった。求婚を受け入れてくれるかもしれない、でも断られたら?もう話もできないかもしれない。明日は来てくれる?それとも二度と会うなって言われるかも。
体は擦り過ぎてヒリヒリした。ベッドに入っても眠れなくて、じっとしてられなくて、ずっと起きてた。朝になって、三人は来なくて、でももう少し後で来るかもしれないと思って、でも来なくて、でも、来たんだ!三人で来た!受け入れてくれるって!


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