ポンコツな私と面倒な夫達 【R18】

象の居る

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28.一目惚れ疑惑

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私は何日か毎に森番の家と炭焼きの家を行ったり来たりする。洗濯の動きにはまだ慣れず、掃除は掃き掃除の他に縄たわしでの拭き掃除も加わった。
ミカちゃんとはたまに一緒に歩き回り、色んな場所でお昼を食べて運動をした。
ベルと並んで料理を作っていると、たまに二人いっぺんにアルが抱きしめてくる。その度にベルがはにかんで、夜に張り切った。

なんだかんだと穏やかに過ごしている。私の頭の中を除けば。

私はグラウ様のことを何度も思い出す。
私を撫でた柔らかな指を、焼ける痛みを、私の手を取る時の優しい動きを、お礼を言った時のしかつめらしい顔を、名を尋ねた時の迷惑そうな顔を。
本当の名を隠しているんだから、尋ねること自体が失礼だったんだろう。あーやらかしたんだ。もう既にやらかし。
手は優しかった、のは、痛みを心配してくれたんだろう、きっと。指を撫でたのは治癒してくれようとしたんだろう。そう、別に、私に特別優しいとかではない。ただの親切で心配。

なんで、エーミールは『性交しよう』とか言っちゃうかな。誤解を、いや、そのうちヤルんだから誤解じゃないのか。でも、目の前で言わなくたって。なんで、グラウ様じゃなくてエーミールなんだ。それは、グラウ様は私のことなんぞ何とも思ってない、というか話も別にしてない。名を尋ねるという、失礼しかしてない。

困ったな。エーミールと会うときはグラウ様も居るんだろうか。グラウ様の前でまた『性交』なんぞ言われたら、なんか泣きそう。それだけは止めて欲しい。
でも、エーミールと会う時は性交前提なんだよな。会いたくない、けど会いたい。エーミール抜きで。それは無理、緊張し過ぎて無理。あああああ嫌だ。

エーミールはなー、ちょっと悪いかと思うけど、向こうだってハムスター程度にしか思ってないだろう。私とコガネムシ指輪だったら、指輪を選びそうだし。
なんで、結婚してんだ。今更ながら。

アルとベルとミカちゃんには内緒だ。絶対に。四人と結婚しておいて、他の男のこと考えてんだもん、酷いな。酷い。でも、こっちじゃ五人と結婚しなきゃいけないんだし、これがスタンダードかも、じゃねーよ。ねーよ。そりゃないわー。ミカちゃんとイチャイチャした後に、こんなこと考えてるとか無いわ。アルだってミカちゃんに嫉妬してたもん、五人必要だからって平気なわけじゃない。でもな、三人ともちゃんと好きなんだけどな。
決まりだ、完全に浮気者の言うことだわ、これ。そう、わかった、はっきりさせよう。確かに、グラウ様が気になる。好きかもしれない。いや、好きだわ。めちゃくそ好みの顔だわ。一日顔だけ見てられるわ。すまん。本当、すみません。

大丈夫、片思いだから。顔が超絶好みなだけだから。秘密だから。アルとベルとミカちゃんにはこれからも優しくするから。
うわー浮気したら優しくなるパターン!これだわ、後ろめたさから優しくするんだわ。
あーもうやだ。自分が嫌だ。

よし、グラウ様のご尊顔は直視しない方向で行こう。うん、これしかない。そうすればいつか思い出に。
あれ、待てよ。これ、ただのファンじゃない?恋なんか?推しに惚れるのと、恋に落ちるのとどう違うんだ?ファンでキャーキャー言うなら別に浮気じゃなくない?よし、ファンということで。ご尊顔を拝むファンだ。そっか、恋じゃない、こーいーじゃなああああいぃぃぃ。

・・・そうだと良いんだけど。そうするしかない。なぜなら?関係無い人だからだよ!私なんぞ、そこら辺の塵芥だよ!
もう、いいや。その内なんとも思わなくなる、かもしれない。それに期待。他の異世界に期待。


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