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29.魔法使いの家
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なんとか頭の中を結論付けて、その日も食後のお茶を三人で飲みながら話していたら、ドアがノックされ、エーミールとグラウ様がやって来た。
「そろそろ私の部屋に泊まりに来てもらおうと思ってな。明後日の昼にグラウを迎えに寄越す」
「突然だね。忙しいの?」
「まあ、なんだかんだとな。魔法除けの石もその時に渡す。これからは月に一度グラウを迎えに寄越すから、来てくれ」
「昼だと出掛けてて、いない時があるよ。事前連絡が欲しい」
「では、前日にグラウが伝える。これでいいだろう?」
「うん。わかりました」
「では、明後日に」
そう言うと、エーミールとグラウ様は消えた。なんか、つむじ風みたい。ああ、行きたくないなぁ。良く知らない、胡散臭い人と寝るの嫌だな。自分の身を守るためとはいえさ。まあ、婚姻を承諾したのは私なんだけど。
しかも、ご尊顔様に送り迎えされて。控え目に言っても最悪ですよ。
言葉少なにアルに擦り寄ると優しく抱きしめてくれた。二人はただ優しく身を寄せてくれて、暖かさの中で眠った。
迎えに来てもらう日は、なんだか落ち着かなくて外でグラウ様を待ちながら小指の指輪を眺めた。オパールの乳白色はグラウ様の髪を思い出させた。
エーミールに抱かれに行く為にグラウ様が迎えに来る、その事実にため息が出る。エーミールから預かった迎えの石を手の上にのせ眺めた。艶々した灰色はグラウ様の目の色。石を握って唇を付ける。手の温度が移った石は少し暖かった。
ぼんやりしている目の前に、グラウ様がいきなり現れた。びっくりして動けずにいると素手で私の手を握り、行くぞ、と私を睨むように見て言うと、もう森の中ではなかった。
突然、大きな部屋にいた。石畳の床に大きなテーブルと毛皮が敷かれた椅子。テーブルの上には料理が色々乗っている。ガラス窓と暖炉があり、壁の大きな棚には飾り物が沢山並んでいた。
「・・・ここは?」
「王都の神殿にある私の部屋だ」
椅子に座ったエーミールが立ち上がり、迎えてくれる。
「助かった、グラウ。もういいぞ」
「ああ」
グラウ様は消えて、私の手に気配が残った。振り払う為にエーミールに意識を向ける。
「・・・お邪魔します」
「そんなに緊張しなくて良い。さあ、昼餐を用意したから食べよう」
「すごい、量」
「ユウナギの好きなものがわからないから色々用意させた。残りは下げ渡すから気にするな」
なんすか、この御馳走。黒パンとスープ、たまに焼肉、たまにグミの生活が。私の禁欲生活に大量の欲望が垂れ流されてる!なんてこったい。
「エーミールは権力者だったんだね。ただの変わったおじさんじゃなかった」
「・・おじさんとは失礼だな。筆頭魔法使いと言っただろう?」
「筆頭魔法使いって偉そう、ぐらいしか分からない」
魔法使いは国に所属する。色付きの目で生まれた子供は、遅くても5歳までに神殿に貰われる。5歳くらいに魔力が急激に増え始め、触れ合っての事故が起こるので魔法使い同士じゃないと面倒が見れないそうだ。
大体12歳くらいで魔力量が安定して、その量によって仕事が決まる。一番多いのは、婚姻の神官のように一般人に触れても問題ないくらいの魔力量。もう少し多いと、守り石や結界を作ったりする技術者、王族、貴族の警護人。戦争にも駆り出される。大人数相手は難しいので暗殺や局地戦、後方支援。使える魔法によっても仕事は変わる。
グラウ様はカミナリ魔法の人で飛べるから情報収集や連絡、人や物資を運んだりするそうだ。エーミールは冷やせるけど戦い向きではないので、魔力紋の研究なんかしていたらしい。筆頭魔法使いは神殿のトップで、組織運営とか人事調整とか。一番面倒臭いやつ。その下に5人。各地の神殿長とか他にも色々序列がある。
グラウ様は滅茶苦茶魔力量が多いので、魔法使い同士でも触れないらしい。エーミールは神官でも触れるけど一般人は触れない。どうやって判断するのか聞いたら、魔力計なるものがあるらしい。異世界っぽい。
魔法使いは神殿に住む。成人前の魔法使いが偉い人のお世話したりするそうだ。そんで、女の魔法使いも少ないのでかなりお手付きあるらしく。
「私はまったく、大変でな。何人の男を相手したか」
「うわ、立ち回り大変。人間関係で苦労したねぇ。頑張って偉くなって良かった」
「・・まあな」
「顔面と色気なんて、取り扱いが難しい武器だよねぇ」
「顔面・・・ククッ、言い方、ハハハッ、酷いな。さあ、もう少し飲め」
ご機嫌で陶器のコップにワインを追加してくれた。度数はあまり高くないようで、飲みやすい。
「美味しいワインだね」
「私用の良いワインだからな。薬草を入れるのは好きではないからそのままなんだが、ユウナギも入れない方が好きか?料理はどうだ?」
「料理は・・・パンが柔らかくて美味しい。魚もお肉も美味しいけど、味が忙しい。スパイスが多過ぎて。味の薄いものはないの?」
「パンくらいだな。下っ端はもっと薄いスープだが、偉い奴の料理はこんなもんだ」
「わお、権力の象徴。こういう味が好きなの?胃腸疲れない?」
「多少な。私も好むわけではないから普段はあまり食べないが、ユウナギ用に揃えた」
「ありがとう。文句言ってごめん。平民の舌だから、下っ端料理で十分だよ。あ、パンは柔らかいのが嬉しい。ワインも」
「私のワインを気に入るんだから、十分贅沢な舌だろう」
「そうか。あ、桃も美味しい」
「フフッ、贅沢だな。森の食事は何を食べるんだ?」
「黒パンと野菜スープと、たまにお肉とチーズ。あと木苺とか。すごく健康的でしょ」
「健康的とは?」
「黒パンは、ビタミンミネラルが多くて、たんぱく質もあって健康に良いんだよ。硬くて疲れるけど」
「・・・ビタミンミネラル?なんか良くわからないものが入ってるんだな」
「体の必須栄養素ですよ。食べ物全部に含まれてるけど、黒パンは多くて白パンには少ない」
「聞いたことがない。ユウナギの国の知識か?多いのかどうか、どうやって調べるんだ?」
「検査方法は知らない。専門家が検査して、検査結果を公表してるから、それを参考にするの」
「ふーん、専門知識なのに公表するのか。面白いな。ユウナギはそれで覚えたのか」
「個別に覚えてるんじゃなくて、大体の傾向があるというか。まあ、食べ物全般をバランス良く食べるといいってことだよ」
「バランス良くとは?」
・・・面倒臭い。疑問をすぐ解消しようとする姿勢は素晴らしいよ、エーミールさん。ただ、私に対しては止めて欲しいかなーなんて、思うわけですよ。ええ。
それからしばらくエーミールの尋問は続き、私の喉は痛んだ。長時間の説明って疲れる!すごいなユーチューバー。私には無理だ。
「と、言うことで、まあ、基礎知識だよ。子供の時から指導されるし、学校で習う」
「随分と食事に力を入れた教育だな」
「えーと、広く浅い知識を習うの。これは広い知識の一つ」
「広く浅くか。他にはどんな知識を習うんだ?」
「・・・・・」
まだかっまだ続くのかっっ。次はお前が喋る番だ、ジョオオオオオ。
無理矢理話題を変える。
「そういえば、虫の指輪はどこにいったの?虫コレクションとかあるの?」
「ああ、見るか?」
「見る」
隣の部屋に行くと、水槽がいくつも並んでいて、中には虫がたくさんいた。
「・・・凄いね。飼ってるんだ。色んな種類がいる。・・・あ、コガネムシみたいのがいる」
「綺麗な色だろう?」
「うん、綺麗。この子は肉食なの?ご飯はどうしてるの?」
「こっちの水槽で餌用の虫を飼ってる」
「自給自足か。共食いしないの?」
「する奴もいる。餌用はたくさん用意するから共食いするな」
「肉食だとねえ。こっちは?葉っぱがあるけど、葉っぱ食べるの?」
「葉は陰に隠れる為に入れている。そいつは隠れてじっとするんだ」
エーミールを喋らせる為に質問を繰り返した・・・質問も疲れる。答えが簡潔過ぎるよ。もっとトークしてよ、某役者カマキリを見習ってくれよ。
「そろそろ私の部屋に泊まりに来てもらおうと思ってな。明後日の昼にグラウを迎えに寄越す」
「突然だね。忙しいの?」
「まあ、なんだかんだとな。魔法除けの石もその時に渡す。これからは月に一度グラウを迎えに寄越すから、来てくれ」
「昼だと出掛けてて、いない時があるよ。事前連絡が欲しい」
「では、前日にグラウが伝える。これでいいだろう?」
「うん。わかりました」
「では、明後日に」
そう言うと、エーミールとグラウ様は消えた。なんか、つむじ風みたい。ああ、行きたくないなぁ。良く知らない、胡散臭い人と寝るの嫌だな。自分の身を守るためとはいえさ。まあ、婚姻を承諾したのは私なんだけど。
しかも、ご尊顔様に送り迎えされて。控え目に言っても最悪ですよ。
言葉少なにアルに擦り寄ると優しく抱きしめてくれた。二人はただ優しく身を寄せてくれて、暖かさの中で眠った。
迎えに来てもらう日は、なんだか落ち着かなくて外でグラウ様を待ちながら小指の指輪を眺めた。オパールの乳白色はグラウ様の髪を思い出させた。
エーミールに抱かれに行く為にグラウ様が迎えに来る、その事実にため息が出る。エーミールから預かった迎えの石を手の上にのせ眺めた。艶々した灰色はグラウ様の目の色。石を握って唇を付ける。手の温度が移った石は少し暖かった。
ぼんやりしている目の前に、グラウ様がいきなり現れた。びっくりして動けずにいると素手で私の手を握り、行くぞ、と私を睨むように見て言うと、もう森の中ではなかった。
突然、大きな部屋にいた。石畳の床に大きなテーブルと毛皮が敷かれた椅子。テーブルの上には料理が色々乗っている。ガラス窓と暖炉があり、壁の大きな棚には飾り物が沢山並んでいた。
「・・・ここは?」
「王都の神殿にある私の部屋だ」
椅子に座ったエーミールが立ち上がり、迎えてくれる。
「助かった、グラウ。もういいぞ」
「ああ」
グラウ様は消えて、私の手に気配が残った。振り払う為にエーミールに意識を向ける。
「・・・お邪魔します」
「そんなに緊張しなくて良い。さあ、昼餐を用意したから食べよう」
「すごい、量」
「ユウナギの好きなものがわからないから色々用意させた。残りは下げ渡すから気にするな」
なんすか、この御馳走。黒パンとスープ、たまに焼肉、たまにグミの生活が。私の禁欲生活に大量の欲望が垂れ流されてる!なんてこったい。
「エーミールは権力者だったんだね。ただの変わったおじさんじゃなかった」
「・・おじさんとは失礼だな。筆頭魔法使いと言っただろう?」
「筆頭魔法使いって偉そう、ぐらいしか分からない」
魔法使いは国に所属する。色付きの目で生まれた子供は、遅くても5歳までに神殿に貰われる。5歳くらいに魔力が急激に増え始め、触れ合っての事故が起こるので魔法使い同士じゃないと面倒が見れないそうだ。
大体12歳くらいで魔力量が安定して、その量によって仕事が決まる。一番多いのは、婚姻の神官のように一般人に触れても問題ないくらいの魔力量。もう少し多いと、守り石や結界を作ったりする技術者、王族、貴族の警護人。戦争にも駆り出される。大人数相手は難しいので暗殺や局地戦、後方支援。使える魔法によっても仕事は変わる。
グラウ様はカミナリ魔法の人で飛べるから情報収集や連絡、人や物資を運んだりするそうだ。エーミールは冷やせるけど戦い向きではないので、魔力紋の研究なんかしていたらしい。筆頭魔法使いは神殿のトップで、組織運営とか人事調整とか。一番面倒臭いやつ。その下に5人。各地の神殿長とか他にも色々序列がある。
グラウ様は滅茶苦茶魔力量が多いので、魔法使い同士でも触れないらしい。エーミールは神官でも触れるけど一般人は触れない。どうやって判断するのか聞いたら、魔力計なるものがあるらしい。異世界っぽい。
魔法使いは神殿に住む。成人前の魔法使いが偉い人のお世話したりするそうだ。そんで、女の魔法使いも少ないのでかなりお手付きあるらしく。
「私はまったく、大変でな。何人の男を相手したか」
「うわ、立ち回り大変。人間関係で苦労したねぇ。頑張って偉くなって良かった」
「・・まあな」
「顔面と色気なんて、取り扱いが難しい武器だよねぇ」
「顔面・・・ククッ、言い方、ハハハッ、酷いな。さあ、もう少し飲め」
ご機嫌で陶器のコップにワインを追加してくれた。度数はあまり高くないようで、飲みやすい。
「美味しいワインだね」
「私用の良いワインだからな。薬草を入れるのは好きではないからそのままなんだが、ユウナギも入れない方が好きか?料理はどうだ?」
「料理は・・・パンが柔らかくて美味しい。魚もお肉も美味しいけど、味が忙しい。スパイスが多過ぎて。味の薄いものはないの?」
「パンくらいだな。下っ端はもっと薄いスープだが、偉い奴の料理はこんなもんだ」
「わお、権力の象徴。こういう味が好きなの?胃腸疲れない?」
「多少な。私も好むわけではないから普段はあまり食べないが、ユウナギ用に揃えた」
「ありがとう。文句言ってごめん。平民の舌だから、下っ端料理で十分だよ。あ、パンは柔らかいのが嬉しい。ワインも」
「私のワインを気に入るんだから、十分贅沢な舌だろう」
「そうか。あ、桃も美味しい」
「フフッ、贅沢だな。森の食事は何を食べるんだ?」
「黒パンと野菜スープと、たまにお肉とチーズ。あと木苺とか。すごく健康的でしょ」
「健康的とは?」
「黒パンは、ビタミンミネラルが多くて、たんぱく質もあって健康に良いんだよ。硬くて疲れるけど」
「・・・ビタミンミネラル?なんか良くわからないものが入ってるんだな」
「体の必須栄養素ですよ。食べ物全部に含まれてるけど、黒パンは多くて白パンには少ない」
「聞いたことがない。ユウナギの国の知識か?多いのかどうか、どうやって調べるんだ?」
「検査方法は知らない。専門家が検査して、検査結果を公表してるから、それを参考にするの」
「ふーん、専門知識なのに公表するのか。面白いな。ユウナギはそれで覚えたのか」
「個別に覚えてるんじゃなくて、大体の傾向があるというか。まあ、食べ物全般をバランス良く食べるといいってことだよ」
「バランス良くとは?」
・・・面倒臭い。疑問をすぐ解消しようとする姿勢は素晴らしいよ、エーミールさん。ただ、私に対しては止めて欲しいかなーなんて、思うわけですよ。ええ。
それからしばらくエーミールの尋問は続き、私の喉は痛んだ。長時間の説明って疲れる!すごいなユーチューバー。私には無理だ。
「と、言うことで、まあ、基礎知識だよ。子供の時から指導されるし、学校で習う」
「随分と食事に力を入れた教育だな」
「えーと、広く浅い知識を習うの。これは広い知識の一つ」
「広く浅くか。他にはどんな知識を習うんだ?」
「・・・・・」
まだかっまだ続くのかっっ。次はお前が喋る番だ、ジョオオオオオ。
無理矢理話題を変える。
「そういえば、虫の指輪はどこにいったの?虫コレクションとかあるの?」
「ああ、見るか?」
「見る」
隣の部屋に行くと、水槽がいくつも並んでいて、中には虫がたくさんいた。
「・・・凄いね。飼ってるんだ。色んな種類がいる。・・・あ、コガネムシみたいのがいる」
「綺麗な色だろう?」
「うん、綺麗。この子は肉食なの?ご飯はどうしてるの?」
「こっちの水槽で餌用の虫を飼ってる」
「自給自足か。共食いしないの?」
「する奴もいる。餌用はたくさん用意するから共食いするな」
「肉食だとねえ。こっちは?葉っぱがあるけど、葉っぱ食べるの?」
「葉は陰に隠れる為に入れている。そいつは隠れてじっとするんだ」
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