ポンコツな私と面倒な夫達 【R18】

象の居る

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46.問答

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With エーミール

「ユウナギが夫に求めるものはなんだ?」
「うーん・・・・・真摯さ、かな」
「私はユウナギに真摯だろうか?」
「知らない。私に対して真摯になったって、しょうがない。求められても困る」
「では?」
「自分のことは自分で。自分に真摯なら、それでいい」
「自分自身にか。それなら私は合格だ」
「あと、できれば約束は守ってほしい。それくらいかな」
「できれば、か。できることだけ約束するなら問題ないな」
「誠実だね」
「まあな、その場しのぎは足をすくう。あとから大変なことになった。実体験だ」
「ふっ、恋敵同士が争ったの?」
「まあ、そんなところだ」

口をへの字にして、笑う。

「エーミールが妻に求めるものは何?」
「私か、・・・ふむ、私の邪魔をしない、か。そんなものだ」
「じゃあ、私も大丈夫だ。エーミールと関わらないようにしてるし」
「なんだ、寂しいことを言う。もっと構ってくれ」
「邪魔をしないように構うのか。エーミールが必要なときに最低限で構えばいいかな」
「それもつまらない。たまには我儘くらい言え」
「エーミールさん、我儘じゃないですか」
「そうだが、なにか問題が?」
「なにも。自分に正直なのはとても良い」
「そうだろう、私は私に真摯なんだ」
「うまい」

すまし顔のエーミールに私は笑う。エーミールも得意げに笑う。
私を簡単に切り捨てるんだろうな、あっさりぱっきり。それに安心した。少し怖いのは、その態度に自分が傷つくと、悲しくなると思うからか?
悲しくなったっていいじゃないか、それは私の感情だ。


―――――――

With ミカ

「ねえ、ユウ、俺にしてほしいことある?俺が、夫としてできること、あるかな?」
「ミカちゃんは素直なままでいてほしいなぁ」
「すなおって?」
「自分の気持ちに正直で、物事をそのまま受けとるってことかな」
「そのまま・・・俺、ユウに、本当かどうか聞いちゃうよ」
「心配だからでしょ?心配なんだから聞いていいよ。ミカちゃんは、今のまま私のコト好きでいてねってことだよ」
「それでいいの?じゃあ、簡単。ふふっ。ねえ、他にはないの?俺、ユウのために何かしたいんだ」
「じゃあ、植林しようか」
「しょくりん?」
「森の木を切るでしょ。でも、木は育つのに何年もかかる。育つよりも切るほうが多くなると、木が減る。木が減ると、木に住む動物、木の実を食べる動物、木を食べるキノコも、なくなる。今は足りてても、これからのことはわからないでしょ」
「そうなんだ。木がなくなったら、俺、仕事なくなっちゃう」
「だから、減る前に植える。ミカちゃんの植えた木が増えたら嬉しくない?ミカちゃんの森になるね。リンゴの木も植えようよ。そして、リンゴが生ったら一緒に食べよう」
「楽しそう。一緒に植えて一緒に食べようね」
「ミカちゃんは?妻にしてほしいことある?」
「俺と一緒にいてほしい。俺と、一緒に色んなことしてほしい。ユウ、一緒にいて」
「うん。リンゴ植えようね」

頭を撫でると、楽しそうに笑ったミカちゃんは私に抱きついて顔を摺りつけた。
一緒だ。あなたは連れて行こうかな。どこへでも。リンゴが生ればいいなぁ。


―――――――

With アル

「ユウ、夫として俺にしてほしいことはあるか?」
「うーん、今のままベルと3人で仲良くしてほしい。あとは、相談事ができたら相談に乗ってよ、薬指さん」
「ああ。かわいがるのも、相談にのるのも当然だ。他には?」
「えー、他にか。あ、もしもだけど、もしも、子供ができたらかわいがって。できれば大人になるまで面倒みてほしい」
「・・・当然だ。面倒みる。ユウの子供は大変そうだな」
「また、そういう」
「大変そうで楽しそうだ」
「まったく、奇特な人だね、アルは」
「ユウの子供は全員、俺の子供になるんだ。大事にする」
「ありがとう。頼りにしてる」
「ああ」
「アルは妻として私にしてほしいことある?」
「・・・俺達を、俺を、愛してほしい。ユウが家で迎えてくれるのが、とても嬉しい」
「じゃあ、今と同じだ」
「・・・そうだな」

蕩けた顔して私の頬を掬い上げ、深く深くキスをした。
アルに頼めば大丈夫。後のことは大丈夫。私がいなくなったって、大丈夫。


―――――――

With ベル

「ユウ、俺にしてほしいコトある?ほら、夫にしてほしいコト」
「ええ、ベルにか。ベルには色々教わってるからなぁ。ベル先生は頼もしいよ」
「そう?そうかも。ユウもなかなか良い生徒だよ」
「ベル先生、怖いから」
「俺、丁寧に説明してるでしょ」
「してる。それで、裏で評価下げてそう」
「・・・ユウは俺をそんなふうに思ってるの?」
「人に対してそういうトコあるでしょ。ベルの笑顔はときどき怖いよ」
「・・・う、ユウにはしてない。ユウは大事にしてるよ、俺」
「そうだねぇ、大事にされてる。アルの次くらいに」
「アルの次なんだから十分でしょ」
「ホントにね。アルを尊敬するわ」
「ナニ?ユウは何を言いたいの?」

ジト目のベルに笑いかける。

「ベルの愛情に溺れて、ベルがいないと生きていけない体になってしまう」
「・・・何それ。ユウはもう、変だし」
「そう、妻としてベルの愛情に応えるため、ベルをどう喜ばせるか考えてるんだけど、ご希望は?」
「俺、俺は・・・たまに、齧りたい」
「どひー、それか。痛いから、たまにね」
「・・たまにならいい?許してくれる」
「妻として、許しますよ」
「言ったこと忘れないでよ」

ベルは口元をゆるめてうつむいた。
ベルは自分の欲望に正直で、羨ましく思ったりする。被害者が私じゃなけりゃもっといいんだけど。


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