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98.三人で話す
しおりを挟む今日も三人でくっついて話す。裸でくっつくと安心する。すごく近くて、受け入れられてる気がする。
向かいで寝転ぶベルが頬にキスして手を握り、眉を下げた悲しそうな顔で見つめる。
「ねえ、ユウ、ごめんね」
「ん、何が?」
「何も言わないで追い出して。俺はユウのこと嫌いにならないから、ユウが嫌われたって思うなんて気付かなかった。離れてるとき、寂しくて会いたかったけど、三人だと思ってたんだ。でもユウは違って、一人だと思ったんでしょ?」
「・・・うん」
「ごめんね。俺、少しだけ怒ったけど嫌いにはならないよ。一番楽しいのも、一番気持ち良いのもユウが一緒だから、ユウがいないとダメなんだ」
「一番楽しいの?」
「うん。三人が一番楽しくて、一番気持ち良いい。ユウが俺達と一緒に笑うのが好きだよ」
抱き付いて何度も「好きだよ」と呟きながら、胸元にキスをいくつもする、ベルの頭を撫でた。
「ユウすまない。酷いことをして。俺だけを頼らせておいて、追い出した」
頭に顔を押し付けたアルが後ろからギュッと抱きしめて、ため息と一緒に絞り出したように話す。
「うん。・・・でも選択肢はあったよ。ミカと魔法使いがいたんだから。意地張って頼らなかったのは私の選択だから」
「でも、頼らなかった」
「うん。・・・アルがよかったの」
胸が痛む。そう、アルがよかったんだった。これは過去の痛みだから、棚上げしないと。
「・・・・・俺はそれを、裏切った」
「できない時とできない事って両方あるよ。仕方がないよ」
「なんで、許してくれたんだ?なんで、また愛してると・・・」
「たまに間違ったり、失敗してくれたほうがいい。あのねえ、私、アルのこと正しい人だと思ってた。優しくて、他人のことだけ考えて行動できるって」
「・・・ずっと二人だったから、ベルのことを考えて行動してた。ユウが来てからユウのことを考えてると自分で思っていた」
深く、深くため息をついて、私を抱きしめる。
「・・・でも、自分のためだった。ベルのことも、自分のためだったかもしれない」
「私はね、私のためにしか動いてないと思う」
「・・・そうか?」
「うん。だから、アルも私と同じトコあるんだって思って、安心したというか、仲間だと思った。前は、アルのこと、正しくて私と違うって、ちょっと一歩引いてた」
「・・・・・そうか」
あ、失言。まずい。フォロー、フォローを。
「前も好きだけど、今のほうがずっと好きだよ。それに私達、間違っても失敗しても、またやり直しするでしょ?」
「・・ユウ」
抱きしめるアルの腕に力が入る。
本当に。他人の失敗って安心する。自分の失敗じゃないから。
ホント、失言だらけの私を許して。
「アルも自分勝手に我儘言うといいよ。かなうかどうかわからないけど。ふふっ」
「今より?」
「そうだねぇ、言うだけ言ってみたら?我儘過ぎたら怒るから、ベルと私が」
「俺もアルに怒るの?」
キョトンとした顔して見上げるベルが子供のようで微笑ましく、額にキスをした。
「そうだよ。たまに怒るといいよ」
「怖いな」
息を吐いて、少し体から力が抜けたアルが穏やかに言った。
ベルと目を見合わせて笑い、唇を啄んで抱き合った。ベルといくつも、いくつもキスをしていると、アルの手が触れるか触れないかの距離で乳房を上下に触り始める。不意に出た声はベルの舌に絡めとられた。ベルの手が私の頬を包み、優し気な目が微笑む。
ああ、ベルはまた誓ってくれたんだ。ねえ、ベル、そんな風に見られると私、好かれてるみたい。
「私、ベルに好かれてるみたい」
「好きだよって言ってるのに」
「うん、分かってたけど、なんか実感したというか」
「ユウは鈍い。なんで?体はすぐ俺を欲しがるのに」
額をくっつけて口付けすると舌を軽く吸い、また微笑んだ。
「ねえ、ユウ、好きだよ」
「ありがとう、ベル」
私も微笑む。
アルの手を掴んでキスをし、私の頬にあてた。
「あのね、今更なんだけど、なんで魔法使いのところに住んだほうが良いって言ったの?勘違いしてすれ違いたくないから、聞きたい」
アルの手を握って言うと、抱き寄せられた肩にアルのおでこが当たる。
「ユウが、帰ってきて、綺麗だった。すごく、楽しくて幸せそうで。・・・俺が見たことない顔で・・・ユウが、ユウが、魔法使いを・・・・・愛してると・・思って、俺達よりも、愛してると思って、苦しかった」
アルが体を丸めて、私に強く抱き付く。
アルのほうを向いて抱きしめると、胸に顔を埋めた。
「苦しくて・・・ユウを傷付けたくて、・・怖くて・・・顔を見るのが辛かった」
「・・うん、・・教えてくれてありがとう」
アルの頭にキスして髪を撫でる。
確かに幸せで浮かれていた。やっぱりバレるものなんだ。
背中からベルが抱きついて喋る。
「ねえ、ユウ、なんで俺達と違う顔になるの?魔法使いと何が違うの?」
「・・ええと、うーん・・私、アルとベルに拾われて、この家に住んでたでしょ?で、自分の家みたいに思ってて、たぶん、アルとベルのこと、保護者というか親のように感じてたんだと思う。」
「親?俺達が?」
「だって拾って養ってお世話もしてくれて、頼れて守ってくれる、優しい夫で親。アルがお父さんでベルがお母さん、年下だから可愛い弟でもある。私の家族とは違う、理想の家族」
「ふーん、今は?」
「今はよく分からない。大事な夫なのは変わらないけど。・・・ベルは?」
ベルは私の耳をペロリと舐めって太腿を触りだした。
「アルが薬指の夫だから、俺あんまり考えてなかったんだ。けど、ユウの話聞いたら、俺もユウのこと妻だけど母親みたいに思ってたかもしれない。俺を見てくれる、俺を許してくれる理想の妻と母親」
アルの頭を撫でながら優しく聞く。
「アルは?」
「・・俺は、ユウは妻だ。もっとユウが我儘を言って俺を困らせて、俺はそれを叶えたい。ユウが俺の名を呼ぶ声を聞きたい。俺を許して愛してほしい。俺をいつでも受け入れてほしい。これは妻だから?母親を求めてる?」
「・・・そう言われると、境界線はどこなんだろうね?」
「俺だってよく分かんないよ」
ユウ、と呟きながら、アルが胸にいくつも口付け乳房を揉む。乳首を夢中で吸う姿は幼く見えた。アルの頭を撫でていると、ベルの息が耳にかかる。耳や頬にいくつもキスをするベルに顔を向けると、唇を食べられた。お互いに啄み舌を絡ませ合う。
アルの頭が下腹に移動し、双丘を割って動く舌に腰が揺れ、息が零れた。ベルの指に乳首を摘ままれて何度も弾かれ、アルの舌が蠢く花芯の刺激と混ざり、体が快感を追い掛け始める。
私達はまた三人で睦み合った。好きだと何度も言いながら。
アルは私を背中から抱き込み、頭の上に頬ずりをして静かになった。静かな部屋に二人の寝息が聞こえる。しばらく待ってから体を起こしてベッドから出た。水を飲み、ついでに布と葉っぱを持って外へ出て、トイレを済まし葉っぱの水で下半身を洗う。
今夜も青い月が煌々と輝く。ここの月は何で無慈悲な感じがするんだろう。色のせい?池のほとりで、一人見た月は悲しいとしか覚えてないな。
ぼんやり月を見ているとドアが開き、表情が抜け落ちたような顔でアルが立っていた。小さな声が届く。
「ユウ?」
「トイレに行って月を見てた」
痛々しい姿に胸がえぐられ、どうしようもなくて、首をかしげ笑いかけた。アルの側へ行くと腕を広げて抱きしめられる。冷やりと汗ばんで鳥肌が立ったアルの体から、早い鼓動が聞こえた。
「・・・・・夢かと。・・・どこにもいないかと」
「アルから離れないよ」
「・・・ユウ」
震える息を吐き、抱き合った。
「・・・忘れてないよ。アルを傷付けたこと。・・傷付けていいって言ったこと、償うって言ったことも。・・・アルが望むものを」
「・・ユウっ」
アルは小さく叫び、抱きしめてる腕の力が増した。
「分からない。ユウ、どうしていいか分からないんだ。忘れられなくて、苦しい」
「うん・・・苦しいね・・苦しかったんだもん、簡単に忘れられないよ」
「・・・俺だけ、忘れられないのかと」
消え入りそうな声で呟く。
「ううん、忘れない。アル、吐き出して欲しい。何でもいいから。・・アルがそのときに望むことをするから。何回でも、アルの気が済むまで」
「・・償いを?望んでも?」
「うん。アルが私に酷いことしたとしても、私のしたことは消えないし、アルの悲しいことは悲しいままだから」
「・・・ユウへの償いは?ユウの望みは?」
「・・まだわからない。・・・私達の気が済むまで、時間はかかるかもしれない」
アルを抱きしめる腕に力を込めて、ぎゅっとくっつく。
「でも、ずっと一緒にいて。アルがいないと嫌だ」
「ああ、ユウ、俺も、俺もユウがいないと耐えられない」
アルの体に鳥肌が立ち、小さく震えた。見上げると、眉を強く寄せて歯を食いしばり、一人で耐えている。頬を挟んで引き寄せ、そっと口付けた。
「大丈夫、一緒にいようね。・・・さあ、もう寝よう」
ベッドに入り、アルを真ん中にして腕枕で背中から抱きしめた。少し冷えた体をぴったりくっつけて、アルの頭にキスをする。
「おやすみ、アル。また明日」
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