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番外編
3.雨の日に
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オリヴァに送られて帰ってきたら土砂降りで、びっくりして家に駆け込んだ。ふと振り返り、森番の家にオリヴァがいる光景にヒヤリとする。
違う、雨に濡れたから拭くだけ。異様に罪悪感が膨らむ。でも、早く拭いて。ごめん、オリヴァ。
布でオリヴァの頭を拭く。
「私はいい。ユウナギを拭こう」
「いい、すぐ着替えるから。オリヴァも帰って着替えてね」
ちゃんと笑えただろうか。
「ユウナギ?」
「大丈夫。雨で驚いただけだから」
訝しそうなオリヴァに笑い掛けると、額にキスをくれた。唇を離して挨拶をしたら、勢い良くドアが開いてアルとベルが帰って来た。
ヒュッと息が止まり、心臓が跳ねる。咄嗟に笑った。
「・・・おかえりなさい。送ってもらったら土砂降りでびっくりした」
「そうなんだ。俺達も酷い降りで止みそうにないから帰ってきたんだ」
「・・拭くものを借りた」
「うん。送ってくれてありがとう」
「・・・ユウナギ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。また明日」
「・・・邪魔したな」
そう言ってオリヴァが消えた。
「ごめんね。びっくりさせて。布持ってくる」
怖くて見れない。拭いてただけだよ。でも、家に入れちゃいけなかった?また失敗した?
怖くて、笑って布を二人に渡す。
「・・・ユウ、俺を見て」
アルに手を握られて、体が強張った。大丈夫、なんでもない。静かに息を吐いてアルを見る。
「ユウ・・・怖がらないで。大丈夫。怒らないし、何とも思わない。驚いただけだ」
「・・・ごめんね」
「ユウ、謝らなくていいんだ。濡れたら拭くぐらいする」
なんだか悲しそうなアルを見ていられなくて俯いて返事をした。胸の中がグルグルする。急に抱きしめられて、動けない。アルの腕の中で俯いたまま身を固くする。
「・・・俺が怖い?」
「・・・・・また、傷付けることを、したと思って」
「ユウ、ユウ、・・もういいんだ。ユウが居ればそれでいいんだ。泣かないで」
「でも、・・・アルは悲しい顔して・・・ごめんね」
「違う。・・俺がユウを傷付けたことに悲しくなったんだ。ユウのせいじゃない」
悲しかった。互いへの罪悪感にまみれて、悲しんでしまうことが。アルの腕の中で、歯を食いしばっても涙が止まらなくて、拭くための布は涙と鼻水で濡れた。
謝らなくていいの?じゃあ、何したらいいの?ずっと一緒にいるって言ったけど、何していいかわからない。時間が解決するのを待ってるだけで、ごめんなさい。
「アルもユウも濡れちゃったよ。風邪ひくから着替えよう?」
ベルから声がかかり、体を離して服を脱いだ。体を拭いて着替えようとしたら、ベッドまでベルに腕を引っ張られた。
「くっついて昼寝しようよ、ユウ」
両腕を広げて待ってる、ベルの腕の中に寝転ぶ。雨に濡れていたせいか体はヒンヤリした。
こうして何でもないように振る舞ってくれるベルの優しさに甘えて抱き付き、胸に顔を埋める。
「体、冷たくなっちゃったね」
「うん。ユウにくっついてあったまる」
ベッドにアルも潜り込んできて、ヒンヤリした体で後ろから私を抱きしめた。
「ユウ、一緒にいよう」
「うん」
「俺から離れないで」
「うん」
「さっきのこと、まだ気にしてる?」
「・・・うん」
「ユウ、口付けて。口付けたら許すから」
体をアルのほうに向けたら、アルは優しく微笑んで私を抱き寄せた。アルの唇にそっと唇で触れる。もう一度触れ、小さく啄んだ。
唇を離して見つめると、アルの手が後頭部にまわり顔を引き寄せられる。唇の合わせ目を舌で撫でてから、ゆっくりと温かい舌が口内に入り込む。何度も角度を変えて深く舌を絡ませ合った。
唇を離すと切なげに私を見つめ、指先で唇を撫でる。
「ユウ、ユウナギ、夫でいられるなら、なんでもする。ユウ、好きだ。どうしようもなく。ユウ、俺の妻」
そう言って薬指の婚姻の紋に口付けをする。
そんなこと急に言われて、わけが分からなくて、でもアルの真っ直ぐな目に、真剣な声に胸が突かれて、涙が零れた。
「俺は我儘なんだ。ユウが辛くても苦しくても、離れない。もう二度と離さない。ユウがいないと何の意味もない」
「・・・離れない?」
「ユウがいるから色付くんだ。ユウがいるから楽しい。もう、ユウがいない時のことは思い出せない。・・・怖かった。なんでユウが愛してくれるのか分からなくて。分からないまま、愛情が消えてしまいそうで。でもいい、俺が離さなければいいんだから」
そう言って微笑み、強く強く抱きしめられた。
なんだか、アルの心の中に入れてもらったような気がする。アルが私を必要として、心から必要とするから、だから離さないって言ってるように思えた。
そっか、本当に、本当に、私はアルに抱きしめてもらってる。アルの決意と愛情を受け取ったんだ。
何だか体が暖かくて、アルに抱き付いた。ヒンヤリしてたアルの体はもう暖かくて、心地良く響く心臓の音を、目をつむって聞いた。
背中にベルがくっついてお腹に腕がまわる。
「ユウ、俺もだよ。俺も一緒にいる」
「うん。ベル、ありがとう。アル、ありがとう」
「俺はもう一回、ちゃんと婚姻を誓ったんだからね」
「うん、覚えてる。嬉しかったよ、ベル」
拗ねたように話すベルのほうを向いて、頬を両手で挟み、良くも悪くも素直で可愛いベルを見つめる。
「ササハラ・ユウナギはベルンハルト・エリー・レハールの妻となることを誓う」
目を見て誓うと、笑顔を綻ばせたベルにキスされた。抱き合って何度も啄み舌を絡ませ合う。ベルの愛情を受け取って、幸せに笑った。笑い合いながら何度もキスをする。
いつのまにこんなに好かれてるんだろ。
「ユウ、こっちを向いて」
アルが頭に頬ずりしながら言うので振り向くと、私の両手を握って自分の頬に当て、潤んだ目で見つめられた。
「アルフレート・ライ・レハールはササハラ・ユウナギの夫となることを誓う」
「ササハラ・ユウナギはアルフレート・ライ・レハールの妻となることを誓う」
私達は見つめ合って誓った。胸がいっぱいになって私の目も潤んでしまう。
アルと唇を重ね、柔らかさを感じ合うように優しく啄む。舌先を触れ合わせると、そこから熱が広がっていく。
ベルの舌が耳の窪みをなぞる水音が頭に響き、背中にそっと肌を寄せる優しい触れ合いに肌が粟立ち声が零れた。
もっと深く繋がりたくて角度を変え、夢中になって舌を絡め合わせる。
ベルの指が乳首を優しくさすり、私の乱れた呼吸はアルの息と混じり合って、気持ちを溶かした。アルの手が足の間に入り込みそっと指が沈んで、膣壁をゆっくり押し撫でていく。
切ない顔したアルが私の名を呟きながらキスを繰り返し、指を抜いたあと、ピッタリと奥まで中に入り込んで私を抱きしめた。
ゆっくりと私のダメなトコを優しく押すように腰を動かす。アルの手を掴んで喘ぎ、何度もアルを呼んだ。アルが欲しいと伝えたくて。
その内にアルが起こす快感に飲み込まれ、腕に縋って絶頂に身を任せると、呻いたアルに押さえ込まれて奥を抉られた。私の上で息を切らしてるアルが愛しくて切なくなる。
「ユウ、好きだ、凄く凄く、ユウナギ」
「アルフレート・・・許して、離さないで」
間違う私を、謝ってしまうことを、許してほしがることを、許して。静かに息を吐くアルの、抱きしめた腕の力が強くなる。
「許す、全部許すから、ユウ、俺を受け止めて」
「うん、私はアルの獲物だから。・・・血が必要?」
「ああ、ユウ、そう、そうなんだ。ユウナギ、俺だけに与えて。あれだけは俺のものにして。ユウナギ、お願いだ」
息を荒げて顔を擦りつけ、腰を動かしながら、切なそうに言い募るアルを強く抱きしめた。
「アルと私の秘密にする」
「ユウ、ああ、俺のユウ、俺のユウナギ」
感極まったように大きく揺れ、名を呼びながら口付けるアルに応えて、口付けを交わす。うわ言のように名を呼びながら達したアルを抱きしめた。
「ねえ、アル、俺は血の片付けするの嫌だよ」
私の肩を甘噛みしながらベルが拗ねたように話す。
アルとキスを交わしてから唇を離し、ベルを抱きしめた。
「ベルも片付けてくれたの?ありがとう」
「うん。でも血が多いの好きじゃない」
「ごめんね。好きじゃないことさせちゃって」
「すまない。今度から自分で片付ける」
「アルに任せたらユウが風邪引いちゃうよ。アルってばユウのコト離さないんだもの」
面倒見の良いベルは心配してくれる。優しいな。
抱きしめたベルのふわふわした髪を撫でる。なんだか、愛しくて堪らない。顔中にキスをして頬ずりをする。
「ねえ、ベル、お願い、私の中にきて」
「ユウ・・怖い目じゃないのに俺を食べるの?」
「怖い目が良いの?」
「怖い目も良いけど、俺のこと凄く欲しそうな顔してるのも良い」
「うん、凄く欲しい。ベル、ベルンハルト、お願い」
「ユウ、可愛い」
楽しそうに笑いながら足を掬い上げられ、ベルが入りこむ。ベルの頬を挟み、私が映る目を覗いてキスをした。
「ねえ、ユウ、俺のこと凄く好きな顔してるよ」
「そうだよ、ベル」
「嬉しい。俺も、最初からずっと、今も凄くユウが好きだよ」
ベルが笑って口付けて、舌に吸い付きながら腰を動かし始める。
ベルの声が零れる。私の声も零れる。アルの手は優しく背骨を辿って、私の髪を撫でた。
ああ、ベル、可愛い人。抱きしめたい。ベルの柔らかな髪を撫でて、温かな舌を吸う。ベルの声が私を呼ぶ。ここにいるよ。好きになってくれてありがとう。
ベルの動きが止まって、中でビクつきながら私を強く抱きしめた。
ベルの頬を撫でて笑う。息を整えたベルが私を見て笑う。私達は幸せに笑う。
「好きになってくれてありがとう、ベル」
「俺も。ありがとう、ユウ」
雨音が響く家の中、三人でくっついて一日過ごした。何度もキスして何度も笑って。
違う、雨に濡れたから拭くだけ。異様に罪悪感が膨らむ。でも、早く拭いて。ごめん、オリヴァ。
布でオリヴァの頭を拭く。
「私はいい。ユウナギを拭こう」
「いい、すぐ着替えるから。オリヴァも帰って着替えてね」
ちゃんと笑えただろうか。
「ユウナギ?」
「大丈夫。雨で驚いただけだから」
訝しそうなオリヴァに笑い掛けると、額にキスをくれた。唇を離して挨拶をしたら、勢い良くドアが開いてアルとベルが帰って来た。
ヒュッと息が止まり、心臓が跳ねる。咄嗟に笑った。
「・・・おかえりなさい。送ってもらったら土砂降りでびっくりした」
「そうなんだ。俺達も酷い降りで止みそうにないから帰ってきたんだ」
「・・拭くものを借りた」
「うん。送ってくれてありがとう」
「・・・ユウナギ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。また明日」
「・・・邪魔したな」
そう言ってオリヴァが消えた。
「ごめんね。びっくりさせて。布持ってくる」
怖くて見れない。拭いてただけだよ。でも、家に入れちゃいけなかった?また失敗した?
怖くて、笑って布を二人に渡す。
「・・・ユウ、俺を見て」
アルに手を握られて、体が強張った。大丈夫、なんでもない。静かに息を吐いてアルを見る。
「ユウ・・・怖がらないで。大丈夫。怒らないし、何とも思わない。驚いただけだ」
「・・・ごめんね」
「ユウ、謝らなくていいんだ。濡れたら拭くぐらいする」
なんだか悲しそうなアルを見ていられなくて俯いて返事をした。胸の中がグルグルする。急に抱きしめられて、動けない。アルの腕の中で俯いたまま身を固くする。
「・・・俺が怖い?」
「・・・・・また、傷付けることを、したと思って」
「ユウ、ユウ、・・もういいんだ。ユウが居ればそれでいいんだ。泣かないで」
「でも、・・・アルは悲しい顔して・・・ごめんね」
「違う。・・俺がユウを傷付けたことに悲しくなったんだ。ユウのせいじゃない」
悲しかった。互いへの罪悪感にまみれて、悲しんでしまうことが。アルの腕の中で、歯を食いしばっても涙が止まらなくて、拭くための布は涙と鼻水で濡れた。
謝らなくていいの?じゃあ、何したらいいの?ずっと一緒にいるって言ったけど、何していいかわからない。時間が解決するのを待ってるだけで、ごめんなさい。
「アルもユウも濡れちゃったよ。風邪ひくから着替えよう?」
ベルから声がかかり、体を離して服を脱いだ。体を拭いて着替えようとしたら、ベッドまでベルに腕を引っ張られた。
「くっついて昼寝しようよ、ユウ」
両腕を広げて待ってる、ベルの腕の中に寝転ぶ。雨に濡れていたせいか体はヒンヤリした。
こうして何でもないように振る舞ってくれるベルの優しさに甘えて抱き付き、胸に顔を埋める。
「体、冷たくなっちゃったね」
「うん。ユウにくっついてあったまる」
ベッドにアルも潜り込んできて、ヒンヤリした体で後ろから私を抱きしめた。
「ユウ、一緒にいよう」
「うん」
「俺から離れないで」
「うん」
「さっきのこと、まだ気にしてる?」
「・・・うん」
「ユウ、口付けて。口付けたら許すから」
体をアルのほうに向けたら、アルは優しく微笑んで私を抱き寄せた。アルの唇にそっと唇で触れる。もう一度触れ、小さく啄んだ。
唇を離して見つめると、アルの手が後頭部にまわり顔を引き寄せられる。唇の合わせ目を舌で撫でてから、ゆっくりと温かい舌が口内に入り込む。何度も角度を変えて深く舌を絡ませ合った。
唇を離すと切なげに私を見つめ、指先で唇を撫でる。
「ユウ、ユウナギ、夫でいられるなら、なんでもする。ユウ、好きだ。どうしようもなく。ユウ、俺の妻」
そう言って薬指の婚姻の紋に口付けをする。
そんなこと急に言われて、わけが分からなくて、でもアルの真っ直ぐな目に、真剣な声に胸が突かれて、涙が零れた。
「俺は我儘なんだ。ユウが辛くても苦しくても、離れない。もう二度と離さない。ユウがいないと何の意味もない」
「・・・離れない?」
「ユウがいるから色付くんだ。ユウがいるから楽しい。もう、ユウがいない時のことは思い出せない。・・・怖かった。なんでユウが愛してくれるのか分からなくて。分からないまま、愛情が消えてしまいそうで。でもいい、俺が離さなければいいんだから」
そう言って微笑み、強く強く抱きしめられた。
なんだか、アルの心の中に入れてもらったような気がする。アルが私を必要として、心から必要とするから、だから離さないって言ってるように思えた。
そっか、本当に、本当に、私はアルに抱きしめてもらってる。アルの決意と愛情を受け取ったんだ。
何だか体が暖かくて、アルに抱き付いた。ヒンヤリしてたアルの体はもう暖かくて、心地良く響く心臓の音を、目をつむって聞いた。
背中にベルがくっついてお腹に腕がまわる。
「ユウ、俺もだよ。俺も一緒にいる」
「うん。ベル、ありがとう。アル、ありがとう」
「俺はもう一回、ちゃんと婚姻を誓ったんだからね」
「うん、覚えてる。嬉しかったよ、ベル」
拗ねたように話すベルのほうを向いて、頬を両手で挟み、良くも悪くも素直で可愛いベルを見つめる。
「ササハラ・ユウナギはベルンハルト・エリー・レハールの妻となることを誓う」
目を見て誓うと、笑顔を綻ばせたベルにキスされた。抱き合って何度も啄み舌を絡ませ合う。ベルの愛情を受け取って、幸せに笑った。笑い合いながら何度もキスをする。
いつのまにこんなに好かれてるんだろ。
「ユウ、こっちを向いて」
アルが頭に頬ずりしながら言うので振り向くと、私の両手を握って自分の頬に当て、潤んだ目で見つめられた。
「アルフレート・ライ・レハールはササハラ・ユウナギの夫となることを誓う」
「ササハラ・ユウナギはアルフレート・ライ・レハールの妻となることを誓う」
私達は見つめ合って誓った。胸がいっぱいになって私の目も潤んでしまう。
アルと唇を重ね、柔らかさを感じ合うように優しく啄む。舌先を触れ合わせると、そこから熱が広がっていく。
ベルの舌が耳の窪みをなぞる水音が頭に響き、背中にそっと肌を寄せる優しい触れ合いに肌が粟立ち声が零れた。
もっと深く繋がりたくて角度を変え、夢中になって舌を絡め合わせる。
ベルの指が乳首を優しくさすり、私の乱れた呼吸はアルの息と混じり合って、気持ちを溶かした。アルの手が足の間に入り込みそっと指が沈んで、膣壁をゆっくり押し撫でていく。
切ない顔したアルが私の名を呟きながらキスを繰り返し、指を抜いたあと、ピッタリと奥まで中に入り込んで私を抱きしめた。
ゆっくりと私のダメなトコを優しく押すように腰を動かす。アルの手を掴んで喘ぎ、何度もアルを呼んだ。アルが欲しいと伝えたくて。
その内にアルが起こす快感に飲み込まれ、腕に縋って絶頂に身を任せると、呻いたアルに押さえ込まれて奥を抉られた。私の上で息を切らしてるアルが愛しくて切なくなる。
「ユウ、好きだ、凄く凄く、ユウナギ」
「アルフレート・・・許して、離さないで」
間違う私を、謝ってしまうことを、許してほしがることを、許して。静かに息を吐くアルの、抱きしめた腕の力が強くなる。
「許す、全部許すから、ユウ、俺を受け止めて」
「うん、私はアルの獲物だから。・・・血が必要?」
「ああ、ユウ、そう、そうなんだ。ユウナギ、俺だけに与えて。あれだけは俺のものにして。ユウナギ、お願いだ」
息を荒げて顔を擦りつけ、腰を動かしながら、切なそうに言い募るアルを強く抱きしめた。
「アルと私の秘密にする」
「ユウ、ああ、俺のユウ、俺のユウナギ」
感極まったように大きく揺れ、名を呼びながら口付けるアルに応えて、口付けを交わす。うわ言のように名を呼びながら達したアルを抱きしめた。
「ねえ、アル、俺は血の片付けするの嫌だよ」
私の肩を甘噛みしながらベルが拗ねたように話す。
アルとキスを交わしてから唇を離し、ベルを抱きしめた。
「ベルも片付けてくれたの?ありがとう」
「うん。でも血が多いの好きじゃない」
「ごめんね。好きじゃないことさせちゃって」
「すまない。今度から自分で片付ける」
「アルに任せたらユウが風邪引いちゃうよ。アルってばユウのコト離さないんだもの」
面倒見の良いベルは心配してくれる。優しいな。
抱きしめたベルのふわふわした髪を撫でる。なんだか、愛しくて堪らない。顔中にキスをして頬ずりをする。
「ねえ、ベル、お願い、私の中にきて」
「ユウ・・怖い目じゃないのに俺を食べるの?」
「怖い目が良いの?」
「怖い目も良いけど、俺のこと凄く欲しそうな顔してるのも良い」
「うん、凄く欲しい。ベル、ベルンハルト、お願い」
「ユウ、可愛い」
楽しそうに笑いながら足を掬い上げられ、ベルが入りこむ。ベルの頬を挟み、私が映る目を覗いてキスをした。
「ねえ、ユウ、俺のこと凄く好きな顔してるよ」
「そうだよ、ベル」
「嬉しい。俺も、最初からずっと、今も凄くユウが好きだよ」
ベルが笑って口付けて、舌に吸い付きながら腰を動かし始める。
ベルの声が零れる。私の声も零れる。アルの手は優しく背骨を辿って、私の髪を撫でた。
ああ、ベル、可愛い人。抱きしめたい。ベルの柔らかな髪を撫でて、温かな舌を吸う。ベルの声が私を呼ぶ。ここにいるよ。好きになってくれてありがとう。
ベルの動きが止まって、中でビクつきながら私を強く抱きしめた。
ベルの頬を撫でて笑う。息を整えたベルが私を見て笑う。私達は幸せに笑う。
「好きになってくれてありがとう、ベル」
「俺も。ありがとう、ユウ」
雨音が響く家の中、三人でくっついて一日過ごした。何度もキスして何度も笑って。
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