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第一章 巫女ってなんなんですか
1.プロローグ 異世界転移
しおりを挟むザワザワした雰囲気と、まぶたの向こうに感じた明るさで意識が覚醒する。目を開けたら随分と天井の高い白い空間が見えた。まったく見覚えがなくて頭がついていかない。硬い地面に寝ている自分に気付き、倒れたのかもしれないとぼんやり思った。
でも、ここは? 何してたっけ? 頭が重くて思い出せない。
体に布地が掛けられる感触のあと覗き込む影が顔にかかった。ぼんやりした人影は、焦点が合うと銀髪のサラサラした髪に縁取られた細面の顔に、金色に似た目をキラキラ光らせて微笑む青年になった。なんという美形。毛穴が見当たらない綺麗な白い肌が眩しい。作り物みたい。
「ようこそ、精霊の巫女」
は?
「精霊神殿一同、心よりお仕えいたします」
は?
あっけに取られたままの私に美形が布を手際よく着せる。布地が肌の上を滑り自分が裸だとわかった。
どういうこと?
着せられた布地を慌てて掻き合わせた私の目の前に、白くてたおやかな手が差し出された。
「巫女、お手を」
差し出された手を無視するのも悪い気がするので手をのせたら案外強めに握られた。とりあえず立ち上がり、熱っぽいような目と力の緩まない手から視線を外す。私を取り囲むように人と人じゃない人が、え、オオカミ? あれ、トカゲ? え、小人?
混乱して周りを見渡すと私は少し高い場所にいるらしく、遠巻きにしてる大勢の人がよく見えた。色素の薄い美形たちがお揃いのゆったりした白いチュニックを着てる。近くの人は色違いの水色、年取った顔して豪華な刺繍が入った服を着てるのはお偉いさんかな。白い大きな空間に同じ服を着た大勢の人って何かの施設? 宗教? 巫女って言ってたし。
ひとしきりキョロキョロしたあとで、刺繍入りのじいちゃんを見ると待ってたかのように微笑んだ。じいちゃんも美形。美形率高過ぎる。
「初めまして巫女。私はここ『精霊大神殿』の神殿長を務めております」
「……初めまして」
「巫女、初めまして」
隣に立っていた美形がいきなりひざまずいて私を見上げた。
ヒエッ、この人なんなの?
「巫女の『光の夫』を務めさせていただきます、リーリエ・ルグランと申します」
は?
「……ひかりのおっと?」
「はい。巫女の夫に選ばれることができて光栄です」
は?
聞きたいことがありすぎて、口をパクパクしている私に神殿長が優しく声をかけてくれた。
「巫女は精霊王から話をお聞きになりましたか?」
「ぜ、ぜんぜん、なんにも、まったく」
「では、部屋に移動してからご説明しましょう」
そう言ってから振り返り、遠巻きにしている人たちに向かって声を掛けた。
「精霊王が遣わされた精霊の父母が揃い、精霊の母に卵が、精霊の父に種が宿りました。これで精霊宿りの儀式が完了です。これから一年間、精霊産みの儀式がつつがなく執り行われるよう、各自の務めをしっかり果たすことを精霊王に誓います」
「精霊王に誓います」
大勢の人が唱和する姿に圧倒されて呆けてしまう。遠巻きの人たちが順次退室していき、高い場所にいた私たちも神殿長の案内で移動する。
大きな部屋を出て、これまた天井の高い列柱回廊を通り外へ出た。暖かく柔らかい陽射しの下、白くて小さな花が鈴なりに咲いてる木が沢山生えている。石畳の歩道に緑の芝生のコントラストが綺麗だ。リーリエ・ルグランと名乗った美形が振り向いて少し離れた場所に建っている、屋根にドーム状になった天窓がある白い石造りの建物を差した。
「あちらの『産屋棟』が巫女と私たち、6属性の夫が一年間暮らす場所になります」
「……どういうことでしょう?」
「詳しいことは部屋で話しましょう」
私も一年暮らすの? なにそれ。
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新連載です。
今日明日で10話程度、その先は月、水、金曜に更新の予定です。
感想、ブクマ、評価の応援よろしくお願いいたします!!!
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