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第10話 彼氏No3、禁断の愛錠骸龍グレア・クレシア
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「ん……何だここ」
バランは気が付けば真っ白な空間に立っていた。
それも、夢を見ている様な感覚で。
「ここはね、【禁術×禁術】を使った時に一瞬入れる精神世界だよ」
バランが困惑している所にギギラの声が響く。
バランが視線を声の方向へ向けると、そこには見慣れたギギラの姿があった。
そして、その後ろには知らない男の姿も。
「精神世界って、お前のか?」
「そうそう。ま、時間無いから細かい事は後ね。紹介するよ、ギギラのお兄ちゃんで~す」
ギギラはそう言いながら後ろに立っている男を指さした。
その男は静かな面持ちでバランの事をじっと観察している。
あまりの超展開に置いてきぼりのバランだったが……一旦頑張って状況を飲み込む方向へ思考をむりやり切り替えた。
「おいギギラ。精神世界とか言ってたけど、俺達戦ってた最中だろ?大丈夫なのか」
「まぁ、現実世界では3秒ぐらいしか経ってないから大丈夫だよ」
ギギラが呑気な口調でバランを眺める中、彼女の兄であるグレア・クレシアが声を上げる。
「ギギラ。俺の精神世界にわざわざ彼を呼んだという事は、何か伝えたい事があるんじゃないのか」
「あ、そうそう。今戦ってるギシン君の事なんだけどさ……二人にちょっと協力して欲しい事があるんだよね」
「お願い??なんだよ」
ギギラは甘える様な口調でそのお願いを口にする。
それを聞いた二人は少し戸惑うような顔をした。
「それ……大丈夫なのかよ」
「俺はお兄ちゃんだ。ギギラの意見を尊重する……だが、一度この手を使えば看守や禁術を縛る結界の使い手も、今以上にギギラを厳しく監視する様になるぞ。それでもいいんだな」
お兄ちゃんの忠告を聞いても、ギギラの意思は変わらなかった。
満面の笑みで提案をするギギラに押され、二人の彼氏はそのお願いにつきそう事になったのだ。
「……バラン君だったか?」
「うぉぉ!?お兄さん?!」
「妹は俺の力を使うと一定時間、碌に動けなくなる。その間のサポート、任せたぞ」
「やったねバラン君。お兄ちゃんに期待されてるよ」
「やったねじゃねーよ、まったくもう」
そして次の瞬間、3人の意識が現実に戻る。
◇
「彼氏No3、【禁断の愛錠骸龍グレア・クレシア】」
その光景を見たギシンは絶句していた。
ギギラ・クレシアが繰り出したのは確かに『鎖』と言う武器だった。
だが、目の前に現れたそれは鎖と言うにはあまりにもスケールが大きく……傍から見ればモンスター中最強とも謳われるドラゴン族そのものだ。
「あれは……スカルドラゴン……なのか?」
冒険者であったギシンは、骨の体で出来たドラゴンに関するとある事件を知っている。
まだ大国が一つにまとまっておらず、各地で人と人との戦争が繰り返されていた頃の事。
その戦争に巻き込まれ、住民のほとんどが死んだ小さな村で突如、骨の体を持つ巨大なドラゴンが生まれる事件が起こったのだ。
そのドラゴンは村を巻き込んだ兵隊を皆殺し。
そして、村の生き残りであった4歳の女の子を連れて何処かへ去ったという。
その事件を思い返す中で、ギシンの頭に嫌な仮説がよぎった。
ギシン本人は知る由もない事だが、その仮説は見事に真実を貫いている。
スカルドラゴンの正体は禁術を与えられたギギラの兄、グレア・クレシアであり、スカルドラゴンに連れ去られた4歳の女の子と言うのは……当時のまだ子供であったギギラ・クレシアである。
「……まだだ……僕は……こんな所で死んでやらないぞ、女ぁ!!」
ギシンは先ほどと同じように、アーティファクトでの攻撃を繰り出す。
その針の攻撃を、骨の鎖はいとも簡単に弾き飛ばす。
「そのアーティファクトじゃ、お兄ちゃんを支配できないでしょ?」
今だ必死の表情でアーティファクトを操るギシンに対し、十字架に張り付けられているギギラは静かにそう言った。
「ドラゴンが最強の種族とされているのは生物としてのスケールが違うから。人間や魔族に効く様な特殊な力もドラゴンには効かないってのが定石だよね」
ゆえにドラゴン化の禁術はリスクが高く、その代価として最強と名高いドラゴンの力を得る事が出来る。
【禁断の愛錠骸龍グレア・クレシア】は、その禁術のリスクを『武器化する』と言う方法で最小限に抑え、理不尽な程に強力なドラゴンの力を行使する。
この武器を出された時点でギシンは完全に詰んでいた。
「ギシン君。何度も言うけどギギラは君の事を尊敬してるよ」
ギギラがお兄ちゃん……もと言い、グレア・クレシアの力を借りるのは本当に緊急事態に陥った時だけだ。
今までギギラはこのコロシアムでいくつもの殺し合いを経てきているが、グレアの力を使ったのは今回が初めてである。
「このコロシアムには、君と同じアーティファクト使いも、ギギラと同じ禁術使いも沢山いる。でも、君はその誰よりも強かった。ただアーティファクトを使ってるだけじゃない……君はちゃんと使いこなしている側の人間だよ」
グレアの体に青色の炎が灯る。
それは次第に大きくなっていき、人体を圧倒する程の濃さを持つ魔力に変換されていく。
「だから、ギギラの持つ最大の技で君を弔うよ」
次の瞬間、鎖の先端に取り付けられた頭蓋骨からビームが放たれた。
そのビームはギシンを穿ち、コロシアム全体を大きく揺れ動かした。
バランは気が付けば真っ白な空間に立っていた。
それも、夢を見ている様な感覚で。
「ここはね、【禁術×禁術】を使った時に一瞬入れる精神世界だよ」
バランが困惑している所にギギラの声が響く。
バランが視線を声の方向へ向けると、そこには見慣れたギギラの姿があった。
そして、その後ろには知らない男の姿も。
「精神世界って、お前のか?」
「そうそう。ま、時間無いから細かい事は後ね。紹介するよ、ギギラのお兄ちゃんで~す」
ギギラはそう言いながら後ろに立っている男を指さした。
その男は静かな面持ちでバランの事をじっと観察している。
あまりの超展開に置いてきぼりのバランだったが……一旦頑張って状況を飲み込む方向へ思考をむりやり切り替えた。
「おいギギラ。精神世界とか言ってたけど、俺達戦ってた最中だろ?大丈夫なのか」
「まぁ、現実世界では3秒ぐらいしか経ってないから大丈夫だよ」
ギギラが呑気な口調でバランを眺める中、彼女の兄であるグレア・クレシアが声を上げる。
「ギギラ。俺の精神世界にわざわざ彼を呼んだという事は、何か伝えたい事があるんじゃないのか」
「あ、そうそう。今戦ってるギシン君の事なんだけどさ……二人にちょっと協力して欲しい事があるんだよね」
「お願い??なんだよ」
ギギラは甘える様な口調でそのお願いを口にする。
それを聞いた二人は少し戸惑うような顔をした。
「それ……大丈夫なのかよ」
「俺はお兄ちゃんだ。ギギラの意見を尊重する……だが、一度この手を使えば看守や禁術を縛る結界の使い手も、今以上にギギラを厳しく監視する様になるぞ。それでもいいんだな」
お兄ちゃんの忠告を聞いても、ギギラの意思は変わらなかった。
満面の笑みで提案をするギギラに押され、二人の彼氏はそのお願いにつきそう事になったのだ。
「……バラン君だったか?」
「うぉぉ!?お兄さん?!」
「妹は俺の力を使うと一定時間、碌に動けなくなる。その間のサポート、任せたぞ」
「やったねバラン君。お兄ちゃんに期待されてるよ」
「やったねじゃねーよ、まったくもう」
そして次の瞬間、3人の意識が現実に戻る。
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「彼氏No3、【禁断の愛錠骸龍グレア・クレシア】」
その光景を見たギシンは絶句していた。
ギギラ・クレシアが繰り出したのは確かに『鎖』と言う武器だった。
だが、目の前に現れたそれは鎖と言うにはあまりにもスケールが大きく……傍から見ればモンスター中最強とも謳われるドラゴン族そのものだ。
「あれは……スカルドラゴン……なのか?」
冒険者であったギシンは、骨の体で出来たドラゴンに関するとある事件を知っている。
まだ大国が一つにまとまっておらず、各地で人と人との戦争が繰り返されていた頃の事。
その戦争に巻き込まれ、住民のほとんどが死んだ小さな村で突如、骨の体を持つ巨大なドラゴンが生まれる事件が起こったのだ。
そのドラゴンは村を巻き込んだ兵隊を皆殺し。
そして、村の生き残りであった4歳の女の子を連れて何処かへ去ったという。
その事件を思い返す中で、ギシンの頭に嫌な仮説がよぎった。
ギシン本人は知る由もない事だが、その仮説は見事に真実を貫いている。
スカルドラゴンの正体は禁術を与えられたギギラの兄、グレア・クレシアであり、スカルドラゴンに連れ去られた4歳の女の子と言うのは……当時のまだ子供であったギギラ・クレシアである。
「……まだだ……僕は……こんな所で死んでやらないぞ、女ぁ!!」
ギシンは先ほどと同じように、アーティファクトでの攻撃を繰り出す。
その針の攻撃を、骨の鎖はいとも簡単に弾き飛ばす。
「そのアーティファクトじゃ、お兄ちゃんを支配できないでしょ?」
今だ必死の表情でアーティファクトを操るギシンに対し、十字架に張り付けられているギギラは静かにそう言った。
「ドラゴンが最強の種族とされているのは生物としてのスケールが違うから。人間や魔族に効く様な特殊な力もドラゴンには効かないってのが定石だよね」
ゆえにドラゴン化の禁術はリスクが高く、その代価として最強と名高いドラゴンの力を得る事が出来る。
【禁断の愛錠骸龍グレア・クレシア】は、その禁術のリスクを『武器化する』と言う方法で最小限に抑え、理不尽な程に強力なドラゴンの力を行使する。
この武器を出された時点でギシンは完全に詰んでいた。
「ギシン君。何度も言うけどギギラは君の事を尊敬してるよ」
ギギラがお兄ちゃん……もと言い、グレア・クレシアの力を借りるのは本当に緊急事態に陥った時だけだ。
今までギギラはこのコロシアムでいくつもの殺し合いを経てきているが、グレアの力を使ったのは今回が初めてである。
「このコロシアムには、君と同じアーティファクト使いも、ギギラと同じ禁術使いも沢山いる。でも、君はその誰よりも強かった。ただアーティファクトを使ってるだけじゃない……君はちゃんと使いこなしている側の人間だよ」
グレアの体に青色の炎が灯る。
それは次第に大きくなっていき、人体を圧倒する程の濃さを持つ魔力に変換されていく。
「だから、ギギラの持つ最大の技で君を弔うよ」
次の瞬間、鎖の先端に取り付けられた頭蓋骨からビームが放たれた。
そのビームはギシンを穿ち、コロシアム全体を大きく揺れ動かした。
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