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第11話 だってギギラは悪い子だもん
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『お前、明日から来なくて良いから』
ギシン・イグニの脳内にこびりつく、思い出したくもない記憶。
それがこの言葉だった。
ギシンは生まれつき体が弱かった。
最初から冒険者など向いてはいなかったのだが、両親の意向や世間体など、様々な要因が原因で彼は冒険者として生きる道を選ばなければいけなかった。
『ギシンってさぁ。生きてて恥ずかしくない訳~』
上手く行かない冒険者家業。
お荷物扱いされながらパーティーをたらい回しにされる毎日。
巷ではパーティーを追い出された後で成り上がるなんて話を聞く。
でも、それはただのおとぎ話だ。
ギシンが生きてきた日々は暗い影が差し込むばかりで、まるで拷問でもされているかの様だった。
それは、ギシンが死に物狂いでアーティファクトを手に入れた後も変わらない。
【人形支配の縫い針】を手にした後、ギシンが生み出した全ての成果はアーティファクトのお陰だと言われる様になった。
それどころか、ギシンが何か失敗すれば『やっぱりアイツは駄目だ』と言われる始末。
誰も、冒険者ギシン・イグニを見ていない。
周りに居た全員が皆、ギシン・イグニは使えない弱者であるという認識のまま……ギシンの重ねた努力や強さは全てアーティファクトの特性と揶揄する。
『このあたしがアンタなんか本気で好きだとか思う訳ないじゃん』
『君の事なんか良いからさ、そのアーティファクトだけ譲ってくれない』
今の自分なら、周りの人間を全て支配出来るのに。
危ない思考がギシンの頭に何度もよぎった。
そのたびに、強い理性でそれを抑え込んでいた。
『浮気??何言ってんの??最初から彼にギシンを色仕掛けしてこいって言われてただけなんだけど……昨日の夜だって、しんどかったし』
しかし、その理性も度を越したストレスによって決壊する。
最後に残ったのは復讐と憎悪と……それを満たしてくれる支配と言う手段だけだった。
◇
「これで……僕の人生も終わり」
ギギラ・クレシアの繰り出したドラゴンのビームに撃たれながら、ギシンはそんな言葉をこぼす。
下半身はとうに焼き切れており、じきに意識も無くなっていくのだろう。
気が付けば、アーティファクトを動かす事も出来なくなっていた。
頭を駆け巡るのは走馬灯。
「あぁ、なんて酷い人生だろう」とギシンは過去を振り返る。
『何度も言うけどギギラは君の事を尊敬してるよ』
「……まぁ、最後に僕を見てくれる女に合えたのだけは……良かったの……かも」
ドラゴンに殺されるなんて、冒険者にとっては名誉な事じゃないか。
ずっと馬鹿にされて、結局犯罪者になる人生だったけど……最後の最後に自分が夢見ていた『冒険者』の片鱗に触れる事ぐらいは出来たのではなかろうか。
そう思うと、少し心が楽になる。
ギシンはそう思いながらゆっくりと目を閉じようとした。
「最後じゃ無くなるかもよ」
楽しそうな女の声がギシンにそう呼びかける。
閉じかけた視界に入り込んできたのは、先ほどまで殺し合いをしていたギギラ・クレシアの姿であった。
ギギラは倒れるギシンの上半身を抱きかかえ、その耳に囁きかける。
「この場所は特殊な結界で覆われていて、ギギラは武器化の禁術を使う事が出来ない。だから、ギギラが生き残るためには君を殺さなきゃ駄目……それがここのルールだよね」
「……何をいまさら……自分でそう言ってただろ?」
「いや~考えてよ。ギギラがそんなルールを守るいい子だったらさ、死刑囚になんかなって無いんだよ?」
ニヤリとギギラが笑みを浮かべる。
その瞬間、コロシアム全体が大きく揺れた。
「おいギギラ~~~!!!!!暴走してる!!お兄さん暴走してる!!!このままだとこの場所ごと消し飛ばされるぞ!!!聞いてんのかーーーーー!!!!!」
会場全体に響くのはバランの声だった。
そして彼の警告の通り、ギギラが繰り出した骨の鎖の龍が手あたり次第にビームを撃ち続けている。
「流石バラン君。名誉リアクション芸人~。お兄ちゃんも良い暴れっぷり」
「おい女……」
結界はジジジジと音を立て、所々変色し始めていた。
所々にヒビが入り、それを見た観客達が悲鳴を上げる。
『観衆の皆さん!!落ち着いて席から離れないでください!!このコロシアムに敷かれた結界は壊れる事は有りません。絶対にです』
諭す様な司会者の言葉を聞きながしながら、ギギラは持論を展開する。
「この施設ってさ、観衆の安全を第一に考えてると思うんだよね。もし、想定外の事態が起こったら、この施設に施されてる結界の出力は観衆を守る力に集約されると思わない?」
「何を考えて……」
「善良な一般市民の命と禁術で武器化されそうな死刑囚を天秤にかければどうなるかって話だよ」
「まさか……お前?!」
ギギラの右腕には虹色の光が集約していた。
その光は彼女が持つ武器化の禁術そのもの。
禁術を制限している結界が暴走しているドラゴンを抑える代償として解き放たれたギギラ・クレシアの持つ力の本領である。
「ねぇギシン君。良かったらこれからも、ギギラの彼氏として一緒に生きて行かない?」
「僕を武器化する為だけに……こんな大掛かりな事を?」
「うん!お兄ちゃんとバラン君には許可とったし大丈夫」
こんな騒ぎをコロシアムで起こせば、次に何が待っているか分かったものではない。
脱獄にさえ使えそうな強力な一手ですらある。
「おまえ……なんで?」
そんな切り札をどうして自分なんかに使ったのか?
ギシンにはそれが分からなかった。
「言ったでしょ。ギギラは君の事が好きなの」
ニッと笑ったギギラの顔がギシンの心を貫く。
相手はすでに69人の彼氏を侍らせている女だ。
傍から見ればどう考えたっていい相手とは言えない。
それでもー
「……良いだろう……その提案を僕が許可する」
ギシンは彼女の言葉に、今までの人生で感じた事の無かった愛を見出していたのだ。
ゆえに彼は堕ちる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
ギシンの武器化が完全に終わったその瞬間、バランが悲鳴を上げて落下する。
気が付けば、ギギラの為に暴れ回っていたお兄ちゃんも結界の影響をもろに受けて鎮静している。
「お兄ちゃん、バラン君、ありがとう」
「お、おう……それで?!間に合ったか?」
「うん!何とかギリギリセーフ」
ギギラはそう言いながら、先ほどまでギシン・イグニであったそれを掲げる。
そこにあったのは波打つ刃を持つ剣だった。
本来は存在などするはずの無かった70人目の彼氏。
彼を象徴するアーティファクトの力をそのまま受け継ぎ、彼の人生と内面を表した姿を持つ新たな武器をギギラはこう名付けた。
「君の名前は今日から【復讐の支配剣ギシン】だよ。私の寿命が来るまでの間、ず~っと一緒に居ようね」
ギシン・イグニの脳内にこびりつく、思い出したくもない記憶。
それがこの言葉だった。
ギシンは生まれつき体が弱かった。
最初から冒険者など向いてはいなかったのだが、両親の意向や世間体など、様々な要因が原因で彼は冒険者として生きる道を選ばなければいけなかった。
『ギシンってさぁ。生きてて恥ずかしくない訳~』
上手く行かない冒険者家業。
お荷物扱いされながらパーティーをたらい回しにされる毎日。
巷ではパーティーを追い出された後で成り上がるなんて話を聞く。
でも、それはただのおとぎ話だ。
ギシンが生きてきた日々は暗い影が差し込むばかりで、まるで拷問でもされているかの様だった。
それは、ギシンが死に物狂いでアーティファクトを手に入れた後も変わらない。
【人形支配の縫い針】を手にした後、ギシンが生み出した全ての成果はアーティファクトのお陰だと言われる様になった。
それどころか、ギシンが何か失敗すれば『やっぱりアイツは駄目だ』と言われる始末。
誰も、冒険者ギシン・イグニを見ていない。
周りに居た全員が皆、ギシン・イグニは使えない弱者であるという認識のまま……ギシンの重ねた努力や強さは全てアーティファクトの特性と揶揄する。
『このあたしがアンタなんか本気で好きだとか思う訳ないじゃん』
『君の事なんか良いからさ、そのアーティファクトだけ譲ってくれない』
今の自分なら、周りの人間を全て支配出来るのに。
危ない思考がギシンの頭に何度もよぎった。
そのたびに、強い理性でそれを抑え込んでいた。
『浮気??何言ってんの??最初から彼にギシンを色仕掛けしてこいって言われてただけなんだけど……昨日の夜だって、しんどかったし』
しかし、その理性も度を越したストレスによって決壊する。
最後に残ったのは復讐と憎悪と……それを満たしてくれる支配と言う手段だけだった。
◇
「これで……僕の人生も終わり」
ギギラ・クレシアの繰り出したドラゴンのビームに撃たれながら、ギシンはそんな言葉をこぼす。
下半身はとうに焼き切れており、じきに意識も無くなっていくのだろう。
気が付けば、アーティファクトを動かす事も出来なくなっていた。
頭を駆け巡るのは走馬灯。
「あぁ、なんて酷い人生だろう」とギシンは過去を振り返る。
『何度も言うけどギギラは君の事を尊敬してるよ』
「……まぁ、最後に僕を見てくれる女に合えたのだけは……良かったの……かも」
ドラゴンに殺されるなんて、冒険者にとっては名誉な事じゃないか。
ずっと馬鹿にされて、結局犯罪者になる人生だったけど……最後の最後に自分が夢見ていた『冒険者』の片鱗に触れる事ぐらいは出来たのではなかろうか。
そう思うと、少し心が楽になる。
ギシンはそう思いながらゆっくりと目を閉じようとした。
「最後じゃ無くなるかもよ」
楽しそうな女の声がギシンにそう呼びかける。
閉じかけた視界に入り込んできたのは、先ほどまで殺し合いをしていたギギラ・クレシアの姿であった。
ギギラは倒れるギシンの上半身を抱きかかえ、その耳に囁きかける。
「この場所は特殊な結界で覆われていて、ギギラは武器化の禁術を使う事が出来ない。だから、ギギラが生き残るためには君を殺さなきゃ駄目……それがここのルールだよね」
「……何をいまさら……自分でそう言ってただろ?」
「いや~考えてよ。ギギラがそんなルールを守るいい子だったらさ、死刑囚になんかなって無いんだよ?」
ニヤリとギギラが笑みを浮かべる。
その瞬間、コロシアム全体が大きく揺れた。
「おいギギラ~~~!!!!!暴走してる!!お兄さん暴走してる!!!このままだとこの場所ごと消し飛ばされるぞ!!!聞いてんのかーーーーー!!!!!」
会場全体に響くのはバランの声だった。
そして彼の警告の通り、ギギラが繰り出した骨の鎖の龍が手あたり次第にビームを撃ち続けている。
「流石バラン君。名誉リアクション芸人~。お兄ちゃんも良い暴れっぷり」
「おい女……」
結界はジジジジと音を立て、所々変色し始めていた。
所々にヒビが入り、それを見た観客達が悲鳴を上げる。
『観衆の皆さん!!落ち着いて席から離れないでください!!このコロシアムに敷かれた結界は壊れる事は有りません。絶対にです』
諭す様な司会者の言葉を聞きながしながら、ギギラは持論を展開する。
「この施設ってさ、観衆の安全を第一に考えてると思うんだよね。もし、想定外の事態が起こったら、この施設に施されてる結界の出力は観衆を守る力に集約されると思わない?」
「何を考えて……」
「善良な一般市民の命と禁術で武器化されそうな死刑囚を天秤にかければどうなるかって話だよ」
「まさか……お前?!」
ギギラの右腕には虹色の光が集約していた。
その光は彼女が持つ武器化の禁術そのもの。
禁術を制限している結界が暴走しているドラゴンを抑える代償として解き放たれたギギラ・クレシアの持つ力の本領である。
「ねぇギシン君。良かったらこれからも、ギギラの彼氏として一緒に生きて行かない?」
「僕を武器化する為だけに……こんな大掛かりな事を?」
「うん!お兄ちゃんとバラン君には許可とったし大丈夫」
こんな騒ぎをコロシアムで起こせば、次に何が待っているか分かったものではない。
脱獄にさえ使えそうな強力な一手ですらある。
「おまえ……なんで?」
そんな切り札をどうして自分なんかに使ったのか?
ギシンにはそれが分からなかった。
「言ったでしょ。ギギラは君の事が好きなの」
ニッと笑ったギギラの顔がギシンの心を貫く。
相手はすでに69人の彼氏を侍らせている女だ。
傍から見ればどう考えたっていい相手とは言えない。
それでもー
「……良いだろう……その提案を僕が許可する」
ギシンは彼女の言葉に、今までの人生で感じた事の無かった愛を見出していたのだ。
ゆえに彼は堕ちる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
ギシンの武器化が完全に終わったその瞬間、バランが悲鳴を上げて落下する。
気が付けば、ギギラの為に暴れ回っていたお兄ちゃんも結界の影響をもろに受けて鎮静している。
「お兄ちゃん、バラン君、ありがとう」
「お、おう……それで?!間に合ったか?」
「うん!何とかギリギリセーフ」
ギギラはそう言いながら、先ほどまでギシン・イグニであったそれを掲げる。
そこにあったのは波打つ刃を持つ剣だった。
本来は存在などするはずの無かった70人目の彼氏。
彼を象徴するアーティファクトの力をそのまま受け継ぎ、彼の人生と内面を表した姿を持つ新たな武器をギギラはこう名付けた。
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