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第12話 誰が為の娯楽?
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「ねぇバラン君、ギギラの事持ち上げて~」
「まったく、いつになったら回復してくれるんだよ」
バランはギギラの体を引っ張り上げながら悪態をつく。
【禁断の愛錠骸龍グレア・クレシア】を使った例の戦いの反動でギギラの体力は底を尽きていたのだ。
それも、ここ数日ずっと。
「ねぇバラン君。今日は殺し合いあるかな?」
「あってたまるか?!こんな状態で戦ったら確実に死ぬからな!!」
バランは慣れない杖の体でギギラを介抱しながらふと思う。
ここ数日、殺し合いに駆り出されていないのは幸運だと。
「ほら、飯もちゃんと食えよ」
「わ~い。バラン君優しい~」
「勘違いすんなよ?!お前がこの調子じゃ俺の命が危ないんだからな」
まったく、とバランはため息をこぼす。
杖の体になった今では疲れなどを感じる事は無くなっているのだが……それでも後3日ほどはこうしてダラダラしたいと考えている。
「にしてもさ、不思議だよね」
「何が?」
グッタリと残飯を飲み込んだギギラは珍しく考え込むような顔をしていた。
「だってギギラは死刑囚なんだよ?普通なら疲弊してるタイミングで戦わせて容赦なく殺しに行くものじゃない?」
ギギラは知っている。
観衆が死刑囚達の殺し合いに求めているのは無様な姿とその負け様だ。
だからこそ服装はボロボロの服のまま、特定の禁術には制限を設けた上で殺し合いをする。
であるのならば、現在疲弊しているギギラを戦わせない理由が無い。
死刑囚ギギラ・クレシアがもっとも醜く罪を償うタイミングが最も近いのは今なのだから。
「ギギラはもちろん、いつ戦いに駆り出されたって負ける気は無いけどね」
「なら考えても仕方ねぇだろ。ラッキーだったと思って今日は寝ようぜ」
「う~ん……まっ、それもそっか」
バランの言葉に賛同したギギラは残飯の残りを飲み干すと、軽く口を拭いて独房に寝そべるのだった。
◇
「ギギラ・クレシアの最大戦力はこの前の戦いで確認出来ただろう?君の持つ【禁術殺しの禁術】で十分抑える事が出来ると思うよ」
ここはギギラを閉じ込めている監獄の奥深くにある部屋。
そこに立っていたのは、数多の人間に禁術を受け渡して来た『目無し』の女と鎖でグルグル巻きに拘束されている一人の男性だった。
「これは俺の予測なんだがな。一番強い武器のナンバーは1……もしくは2だと思うんだよな」
目無しの女はわざとらしい口調で男を煽る。
「へぇ、どうしてそも思ったのか聞かせて貰っても?監獄長、ジャンネ・ダルケー君」
「ただの感だから気にすんなよ」
ジャンネなる男は静かに笑いながら目無しの女を見つめていた。
監獄長、ジャンネ・ダルケー。
コロシアムによる死刑囚同志の殺し合いの制度を作った張本人にして、監獄長でありながら禁術に手を出した罪により無期懲役の監禁を罰として受けている人物だ。
「あ、ギギラ・クレシアを出すなら彼女の体調が万全の時にしてね」
「あの女はお気に入りか?」
「まぁね」
彼がこの監獄を作ってからというもの、犯罪による被害は激減。
深刻な問題であった禁術使い達の脱獄を0に抑えるなどの偉業を成し遂げた男だ。
「俺は現実が見えてる。国を挙げてもお前を潰すのは不可能だ。だったら俺達はお前の脅威に適応しながら平和を作りだすしかない」
「その適応の為に、ちゃんと私のご機嫌取りはしてくれる訳だ」
「あぁ、だからギギラ・クレシアの体調に関しては融通を聞かせてやるよ」
その言葉を聞いた瞬間、目無しの女の口角が上がる。
彼女にとってギギラ・クレシアはお気に入りだ。
なにせ、ある程度の自我を保ちながらも、『愛情を欲する』感情が暴走する禁術の副作用がばっちりと効いている珍しい個体だ。
ギギラが万全の状態から絶望に叩き落とされて死ぬか、それともこのコロシアムで無双しながら余生を過ごすのか。
どちらにせよ、そんなギギラの終末を見届けるのが、目無しの女の最終目標なのだ。
「この国の治安がほんのちっとばかしマシになったのは【禁術殺しの禁術】があるお陰だ。お前が機嫌を損ねてコイツを俺の中から消しちまったら最悪だからな」
「本当は嫌なんだけどね。アイツの信徒である君に禁術をあげるのは。君はこのコロシアムを用意してくれたから特別扱いしてあげているだけさ」
「特別たぁ、嬉しいね」
「思っても無い事を言うもんじゃ無いよ。そんな事より、君は私にうつつを抜かしてて良いのかい?愛しい愛しい女神様に嫌われてしまうよ」
「問題ないさ。俺の神様は真に世界を救える駒になる人間を求められる方だ。世界を救える成果を出せれば過程を問わない……そう言う教えなんでね」
「あっそ」
上機嫌な声色で、もうここに用は無いと言わんばかりに目無しの女は体を翻す。
監獄長であるジャンネの肩に、女神たる存在が寄りかかっている事を確認しながら。
その女神はジャンネの耳を両手で塞ぎ、あらゆる雑音の侵入を防いでいた。
その女神は目無しの女が中々に嫌いな存在。
自らと信徒を駒として扱い、世界の平穏を第一に動く異常者。
その女神の名は、『耳無し』。
「このコロシアムが誰のものなのか、ゆめゆめ忘れないようにね。耳無しの信徒、ジャンネ・ダルケー君」
「もちろん。お前への餌付けはちゃんと行うさ。それこそ、神に誓ってな」
「まったく、いつになったら回復してくれるんだよ」
バランはギギラの体を引っ張り上げながら悪態をつく。
【禁断の愛錠骸龍グレア・クレシア】を使った例の戦いの反動でギギラの体力は底を尽きていたのだ。
それも、ここ数日ずっと。
「ねぇバラン君。今日は殺し合いあるかな?」
「あってたまるか?!こんな状態で戦ったら確実に死ぬからな!!」
バランは慣れない杖の体でギギラを介抱しながらふと思う。
ここ数日、殺し合いに駆り出されていないのは幸運だと。
「ほら、飯もちゃんと食えよ」
「わ~い。バラン君優しい~」
「勘違いすんなよ?!お前がこの調子じゃ俺の命が危ないんだからな」
まったく、とバランはため息をこぼす。
杖の体になった今では疲れなどを感じる事は無くなっているのだが……それでも後3日ほどはこうしてダラダラしたいと考えている。
「にしてもさ、不思議だよね」
「何が?」
グッタリと残飯を飲み込んだギギラは珍しく考え込むような顔をしていた。
「だってギギラは死刑囚なんだよ?普通なら疲弊してるタイミングで戦わせて容赦なく殺しに行くものじゃない?」
ギギラは知っている。
観衆が死刑囚達の殺し合いに求めているのは無様な姿とその負け様だ。
だからこそ服装はボロボロの服のまま、特定の禁術には制限を設けた上で殺し合いをする。
であるのならば、現在疲弊しているギギラを戦わせない理由が無い。
死刑囚ギギラ・クレシアがもっとも醜く罪を償うタイミングが最も近いのは今なのだから。
「ギギラはもちろん、いつ戦いに駆り出されたって負ける気は無いけどね」
「なら考えても仕方ねぇだろ。ラッキーだったと思って今日は寝ようぜ」
「う~ん……まっ、それもそっか」
バランの言葉に賛同したギギラは残飯の残りを飲み干すと、軽く口を拭いて独房に寝そべるのだった。
◇
「ギギラ・クレシアの最大戦力はこの前の戦いで確認出来ただろう?君の持つ【禁術殺しの禁術】で十分抑える事が出来ると思うよ」
ここはギギラを閉じ込めている監獄の奥深くにある部屋。
そこに立っていたのは、数多の人間に禁術を受け渡して来た『目無し』の女と鎖でグルグル巻きに拘束されている一人の男性だった。
「これは俺の予測なんだがな。一番強い武器のナンバーは1……もしくは2だと思うんだよな」
目無しの女はわざとらしい口調で男を煽る。
「へぇ、どうしてそも思ったのか聞かせて貰っても?監獄長、ジャンネ・ダルケー君」
「ただの感だから気にすんなよ」
ジャンネなる男は静かに笑いながら目無しの女を見つめていた。
監獄長、ジャンネ・ダルケー。
コロシアムによる死刑囚同志の殺し合いの制度を作った張本人にして、監獄長でありながら禁術に手を出した罪により無期懲役の監禁を罰として受けている人物だ。
「あ、ギギラ・クレシアを出すなら彼女の体調が万全の時にしてね」
「あの女はお気に入りか?」
「まぁね」
彼がこの監獄を作ってからというもの、犯罪による被害は激減。
深刻な問題であった禁術使い達の脱獄を0に抑えるなどの偉業を成し遂げた男だ。
「俺は現実が見えてる。国を挙げてもお前を潰すのは不可能だ。だったら俺達はお前の脅威に適応しながら平和を作りだすしかない」
「その適応の為に、ちゃんと私のご機嫌取りはしてくれる訳だ」
「あぁ、だからギギラ・クレシアの体調に関しては融通を聞かせてやるよ」
その言葉を聞いた瞬間、目無しの女の口角が上がる。
彼女にとってギギラ・クレシアはお気に入りだ。
なにせ、ある程度の自我を保ちながらも、『愛情を欲する』感情が暴走する禁術の副作用がばっちりと効いている珍しい個体だ。
ギギラが万全の状態から絶望に叩き落とされて死ぬか、それともこのコロシアムで無双しながら余生を過ごすのか。
どちらにせよ、そんなギギラの終末を見届けるのが、目無しの女の最終目標なのだ。
「この国の治安がほんのちっとばかしマシになったのは【禁術殺しの禁術】があるお陰だ。お前が機嫌を損ねてコイツを俺の中から消しちまったら最悪だからな」
「本当は嫌なんだけどね。アイツの信徒である君に禁術をあげるのは。君はこのコロシアムを用意してくれたから特別扱いしてあげているだけさ」
「特別たぁ、嬉しいね」
「思っても無い事を言うもんじゃ無いよ。そんな事より、君は私にうつつを抜かしてて良いのかい?愛しい愛しい女神様に嫌われてしまうよ」
「問題ないさ。俺の神様は真に世界を救える駒になる人間を求められる方だ。世界を救える成果を出せれば過程を問わない……そう言う教えなんでね」
「あっそ」
上機嫌な声色で、もうここに用は無いと言わんばかりに目無しの女は体を翻す。
監獄長であるジャンネの肩に、女神たる存在が寄りかかっている事を確認しながら。
その女神はジャンネの耳を両手で塞ぎ、あらゆる雑音の侵入を防いでいた。
その女神は目無しの女が中々に嫌いな存在。
自らと信徒を駒として扱い、世界の平穏を第一に動く異常者。
その女神の名は、『耳無し』。
「このコロシアムが誰のものなのか、ゆめゆめ忘れないようにね。耳無しの信徒、ジャンネ・ダルケー君」
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