元・愛玩奴隷は愛されとろけて甘く鳴き~二代目ご主人様は三兄弟~

唯月漣

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87)毎日コツコツ

「おう、日和。お前、今日はこれで上がりか?」


 ひと仕事を終えた私にそう声を掛けて下さったのは、出勤してきたばかりの佐倉さんだ。

 
「いえ、夜皆さんがお帰りになる時間にまた戻ります。今日はこれから一度部屋に帰って、詩月様に出して頂いた宿題をやってしまおうと思いまして」
「あー、また詩月様の宿題か。お前マジでコツコツ宿題やるタイプなんだな」


 『宿題』という言葉に嫌そうな顔をした佐倉さんは、「俺には絶対真似出来んな……」と小声で呟いた。
 そんな佐倉さんの言葉に、私はクスリと笑う。
 
 
「コツコツを心掛けてはいますが、私の場合深夜から朝方にかかるお勤めもありますから、流石に毎日は……。そういう佐倉さんは?」
「あー……俺は夏休みの宿題は最後にまとめてやるタイプだったな。本当に日和は、真面目っちゅーか……素直っちゅーか……」


 『深夜から明け方にかかるお勤め』というワードに何故か少し赤い顔をしながら、佐倉さんは視線を逸らす。

 
「真面目というか……。詩月様が、『宿題っていうのはコツコツやらないと、後で自分が後悔するんだよ』と」
「うう……耳が痛いぜ」


 そう答えながら苦笑する佐倉さんに、私は曖昧に微笑みながら肩を竦めた。

 
「――実を言うと、私も少々耳が痛いです」
「は?」
「実は最近、何かと忙しかったもので……。なかなか手を付けられなかった宿題が、一つありまして」
「へぇ、そうなのか。それで休憩時間にまで、宿題を……。お前も大変だな」

 宿題の中身を知らない佐倉さんはそう言ってくださるけれど、本当は『忙しかった』だなんて言い訳だ。

  
「いえ……詩月様が、私を想って出して下さった宿題ですから」


 私はそう答えて、自室へ続く廊下を進む。

  
「ではまた、後ほど」 
「おう。頑張れよ」
「はい、ありがとうございます」


 きっと佐倉さんが想定しているのは、詩月様に見て頂いている勉強の方の宿題の事だろう。
 
 けれど、今日の私の宿題はきっと、佐倉さんが思っているのとは違う。
 でも、頑張らなければいけないことに、変わりはない。 


 佐倉さんと別れて自室に戻ると、ふぅと一息ついてから机に座る。
 
 私は引き出しの一番下を開け、ドキドキしながらある紙袋を取り出した。


 これは以前詩月様に『宿題』と称して渡されたものだ。中には小さなローションのチューブと、変わった形のとある玩具――エネマグラが入っている。


『日和は一日一回、を入れてオナニーをすること』


 あの日、詩月に出された宿題……。
 私はそれを、あの日以降業務に追われ、結局使わぬまましまい込んでしまっていた。

 ――いや。
 私はこの『苦手な宿題』を、何かと理由をつけ先延ばしにしていた。

 
「さて、と……」

 
 ――『オカズは僕じゃなくてもいいよ』。


 そう詩月様は仰っていたけれど……。
 
 そもそも私には元来、半端に煽られでもしない限り、定期的に自慰をする習慣がない。
 
 なので『オカズ』と言われても……。

 
「どうしよう……。こういう時は取り敢えず……ローションから……なのかな」


 ぽつんと漏れた独り言が、なんだか虚しかった。

 
「…………」

 
 取り敢えず服がローションで汚れないよう、ズボンと下着を下ろす。
 


 手に取ったエネマグラをまじまじと見つめてから、その突起部分にそっとローションを塗る。


「ええっと……それから……」

 
 次にするべき事を少し考えて、私は性器の裏側に手を伸ばした。
 
 まずは、穴の位置を確かめよう……。
 
 そう考えた私は、ローションに濡れた指先で、尻の間を探ってみる。

 なだらかな肉の丘を辿ると、目当ての窄まりはすぐに見つかった――けれど。


「……えっ、――あれ?」

 
 詩月様に触れて頂いてから結構な日数が経ってしまっているせいか、穴の中心に指を潜り込ませようにもなかなか上手くいかない。

『宿題っていうのは、コツコツやらないと。後で自分が後悔するんだよ』

 詩月様の言葉が、脳裏をよぎる。
 

「はぁ……」

  
 ――――本当に、耳が痛い。


 私は少し悩んだ末、座る場所をベッドに移した。
 取った体勢は――四つん這い。
 私はいつぞやのように顎と肩で体重を支え、片手で尻の肉を開くようにして左右に開く。
 
 そしてその中心に、力を込めた指を差し入れようと頑張ってみた。

 
「んっ……――んん?」

  
 けれどもその窄まりはやはり固く閉じ、指一本の侵入すらも拒む。
 
 指すら入らないのでは、玩具どころではない。
 
 
「どうしよう……」

 
 ちょっと痛いかもしれないけど、思い切って強引に指を捻じ入れてみようか……。

 やっぱり、痛いかな……。でも……。
 
 そんな事を考えて、私はゴクリと唾を飲み込んだ。

 心臓が、バクバクと音を立てている。力を込めた指の先が、小さく震える。
 
 決心してグッと指先に力を入れたその時――ドアの向こう側から不意に聞こえたのは、小さなノック音だ。


「!!!!!」
「日和さん、いる? 休憩中にごめんね。ちょっと今、いいかな?」
「ひゃっ……」
 

 ビクっと体が跳ねたのが、自分でも分かった。

 ドアの向こうにいらっしゃるのはどうやら、今朝会社に行かれたはずの律火様のようだ。
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