元・愛玩奴隷は愛されとろけて甘く鳴き~二代目ご主人様は三兄弟~

唯月漣

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95)天性の才能(律火視点)

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「苦しい? 少し休憩する?」


 心にもないことを口にしながらも、僕は手を止めらなかった。執拗に前立腺ばかりを責め苛むと、先端から零れ落ちた先走りが、シーツをトロリと濡らした。


「気持ちいい――?」 
「気持ち……いっ。りつ、かさま……っ。そこ……も、もっとっ、おねが、しま……すっ」
「……!」


 てっきり「もうやめて」と言われると思っていた。
 けれど……。

 
「イキたい……イッ、律火さ……ぁ、い、イカせて、くださ、っ、――もぅ、イかせて……っ」


 普段控えめな日和さんからのおねだり。
 それは、男心を揺さぶるのには十分すぎた。

 
「…………っ」

 
 涙目になっている日和さんは、甘えるような上目遣いで僕を振り返った。キスをねだるような濡れた唇で、無意識のまま僕を煽る。

 それはまるで男を惑わすため生まれついた、天性の才能のように見えた。

 僕は日和さんに気付かれないよう、ゴクリと唾を飲み込む。 
 

「今イッてしまうと、後が辛いよ?」
「いいっ、辛くても、大じょ……夫、ですっ。大、すきな……律火様の手でっ、イカせて、ほし……から」
「…………!」


『大好きな律火様』か……。

 
「ん……、分かった」


  これを無意識にやっているのだから、日和さんは罪な子だ。

 
「イッてもいいよ」

  
 前と後ろに手を伸ばして、ローションのぬめりに任せて小刻みに揺する。

 固くそそり勃つ性器はピクピクと僕の手の中で脈打って、今にも弾けそうになっていた。


「ん、ふ……ッ。ぁ……あ、あっ! イクっ……律火さま、りつか、さまぁっ」
「良い子だね、日和さん。イッてもいいよ」

 
 快楽に仰け反る背中と、それに合わせて上擦る上体。
 蕩ける日和さんと鏡越しに目が合った瞬間。


「き……っ、す、大好き、ですっ……」
「…………!」

 
 潤んだ瞳が僕の姿を捕らえつつ、スラックスにしがみついた指をいっそう強く絡めてくる。
 
 これを意図的ではなく無意識でやっているのだから恐ろしい。
 愛玩奴隷として、日和さんは一級品だ。
 
 ――ああ、本当に。
 ミイラ取りが、ミイラになりそうだ。


「ひっ……ぁ、あっ……、イク……律、りつか、さま、イク…………も、……いっ、イク!!」

 
 濡れた瞳がギュッと閉じられた瞬間。
 ビクビクと痙攣して、日和さんが僕の手の中へ精を放つ。
 
 指を飲み込んだままの蕾がきゅうっと僕の指を締め付けて、日和さんの感じているであろう快楽の波を僕に伝えた。


「…………っ、はぁ……」

 
 くたりと脱力して崩れるように僕の左腕に寄りかかった日和さんは、少し迷うような表情を見せたあと、ゆるりと僕の首に両腕を回して抱きしめてくれる。

 甘えきったその瞳に思わず口付けてしまいそうになった僕は、ハッと我に返った。


「りっか、さま……っ」
「イッたら冷静になっちゃったかな? 一旦コレを抜いて、少し休憩する?」
「え……? あ……っ」


 コレと称した二本の指は、まだ日和さんの中にあった。壁の内側からツンツンと日和さんの中に触れる。
 
 時間はまだある。
 一度抜いて、前が回復したらもう一度すれば良い。
 そう考え、僕はゆっくりと日和さんの中から指を抜く。
 
 後ろだけではまだイケないであろう日和さんをおもんぱかってのことだ。
 

「あ……律火様っ……」
「うん? ごめんね、抜く時に当たっちゃったかな」
「違…………っ。うう。その…………」
「?」
「あの……。もしお嫌じゃなかったら、ハグ、してほし……」


 可愛すぎる要求……。 
 これを計算でやるあざとい子ではないと知っているからこそ、末恐ろしい。
 
 僕は日和さんに微笑みかけながら、腕を回してぎゅっと抱き返す。
 日和さんは僕の胸元に顔を埋めてうっとりしながらさらに口を開いた。
 

「キスをしても?」
「――うん、いいよ」


 そう答えて目を閉じるとすぐに、日和さんのキスがくる。頬、鼻先、顎……そして耳朶。
 
 小鳥が啄むような拙い口付けなのに、日和さんの一生懸命さが伝わってくるようで微笑ましい。
 
 最後に唇を掠めるようにキスをされて、躊躇いがちに舌で唇を舐められた。

 珍しく積極的な日和さんに少しだけ驚いていると、もじもじと控えめに動く腰に気がつく。


「もしかして……続き、おねだりしてる?」
「えっ……あのっ。そんな……」


 そう言いかけた日和さんは、少し迷ったあと恥ずかしそうに俯いた。

 
「続き、してほしい? ほしくない?」
「あ……。して頂きたい、です」

 
 射精して一息着いたはずなのにそんな風に申し出るのは、ひとえに日和さんが勤勉な性格だからだと思う。
 
 けれどもその調子で恋人同士のような甘い行為をもおねだりしてくるのだから、困ってしまう。
 
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