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4)発熱。
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悟の話によると、将貴はバイト先から戻るなり、玄関でぶっ倒れたらしい。
何でも、数日前から遅番と夜勤を立て続けにこなし、疲れて体調が悪そうな様子だったんだそうだ。
額を触るととても熱くて、呼びかけても返事がない。悟と均はなす術なく、焦って俺に電話をしてきた……と、言うことらしい。
俺はたまたま駅前近くにいたことが幸いし、すぐにタクシーを捕まえて、三人のもとへ駆けつけることができた。
心配する悟に均を頼んで、将貴の肩を抱いてタクシーに乗せた。
俺もそれなりに鍛えてはいるけれど、将貴の体は十八歳男性とは思えないほど軽くて、けれど熱くて。
先週まであんなにしょっちゅう会っていたのに、気づいてやれなかった自分に腹がたった。
「大学病院の、救急外来まで」
将貴に頼ってほしいだなんて言っておきながら、このありさま。
夜も診てもらえる郊外の救急外来へタクシーを走らせながら、俺は自己嫌悪でいっぱいだった。
***
将貴が目を覚ましたのは、翌日の昼のことだった。
「お、起きた? 覚えてるか? お前、家に着くなりぶっ倒れたんだよ。タクシーで救急外来に行って……んで、ここは俺んち。悟から電話貰った時は驚いたよ。体調、どう?」
俺は作業中のパソコンに保存をかけて、いそいそと将貴の側に行く。
「あ、え……?」
いまいち状況が飲み込めていないらしい将貴の額に手を当て、熱を計る。
「うん、点滴してもらったから、顔色は大分マシになったな。熱はまだ微熱が下がってないから、今日は寝てな」
「ん……」
将貴は眩しそうにしばし目を擦っていたが、ハッとしたように跳ね起きる。
「あっ……!! 僕、バイトが……!」
「あー、携帯に電話が来てたんで、悪いけど勝手に出たよ。事情を説明して、今日は休むって連絡しといたから大丈夫」
俺の話を聞いて、将貴は再び力尽きたようにパタリとベッドに倒れ込む。
「うう……。また僕は奏さんに迷惑を……。ごめんなさい……」
落ち込んでいる様子の将貴に、俺は励ますようにテンション高めの返事を返す。
「あーそう言うの、今はいいからさ。何か食べれる? いちおーお粥はあるよ、パウチのやつ。あとはゼリーとか、スポーツドリンクとか、桃缶とかパンとか……。とりあえず何か食べて、薬飲まなきゃ。これ解熱剤と、風邪薬諸々な」
そう言って、俺は薬と食料を袋から取り出して見せる。
「すみません。今食欲、無くて……」
「あ、そう? なにも食べられなそうだったら、座薬タイプの解熱剤もあるけど……」
そう答えて、俺はいたずらな笑みを浮かべる。
「俺、挿れてあげようか? 優しくするから、怖くないよ?」
そう言って座薬の袋をひらひらと見せてやると、赤面した将貴は慌ててパウチタイプのゼリー飲料を掴む。
「た、食べます! えっと、これ貰っていいですか?」
「はは、冗談だって。いいよー好きなの食べて。薬と水、ここ置いとくね」
そう言って、ベッドサイドの棚の上に、水とスポーツドリンク、薬なんかを置く。
「あ、ありがとうございました。何から何まで……僕はいつも迷惑ばかりかけて……。お金……ちゃんと払うので、かかった金額、教えて下さい」
「ん? いーのいーの」
「いや、でもっ……」
「いーから、いーから。君は病人なんだから、たまには大人に甘えること」
食い下がる将貴にそう言って、俺は将貴の額に貼った冷えピタを取り替えてやる。将貴はゼリー飲料の飲み口をくわえたまま、しょんぼりした表情だ。
俺にとっては単に、将貴と親しくなりたい! って下心なんだが、そりゃー理由もなく親切にされたら、将貴の性格上『申し訳ない』って気持ちでいっぱいになってしまうかもしれないな。
そう思い直した俺は冗談めいてこう言った。
「んー……じゃ、まあ。どうしてもって言うなら、"貸し一つ"ってことで。元気になったらほっぺにチューでもしてもらっちゃおーかなぁ」
ベッドの縁に腰掛けて、俺は冗談めいた顔でそんな軽口を叩く。
いかん。気を遣わせないようにしたつもりが、うっかり軽くセクハラ発言をしてしまった。
「ちゅう……ですか。僕、男なんですけど……」
ゼリー飲料を飲みながら、将貴はもごもごと口の中でつぶやいている。
お? おお~?
「うん? ハグのほうが良かった?」
「あ……ハグくらいなら全然……」
「お? やった。まぁ、元気になったらな」
「はい……」
冗談めかせて言ったのに、将貴から意外な返答が来て、内心焦ってしまった。
俺は明らかにセクハラ発言をしてしまったのに、案外将貴……引いてないっぽい……?
相手はノンケのはずなのに。ドキリ、と心臓が脈打った。
熱に浮かされた潤んだ瞳、紅潮した頬。
それだけでも、将貴は破壊力抜群の可愛さなのに。
「とりあえず、薬飲んだら病人は寝た寝た! 俺、すぐそこで仕事してるから。何かあったらいつでも声かけてな」
自分の顔が赤面しかかっていることに気がついて、俺は慌ててパソコンの前に戻る。
画面の文字を目で追って、脳みそを必死に切り替えようとしたが、頭の中は勝手に将貴とのハグやちゅーを妄想しまくっている。
あれー?? ヤバいな。なんか俺、思ったより将貴に恋しちゃってない!?
とりあえず。真面目で健気な子に昔っから弱いところは、自覚しています……。
何でも、数日前から遅番と夜勤を立て続けにこなし、疲れて体調が悪そうな様子だったんだそうだ。
額を触るととても熱くて、呼びかけても返事がない。悟と均はなす術なく、焦って俺に電話をしてきた……と、言うことらしい。
俺はたまたま駅前近くにいたことが幸いし、すぐにタクシーを捕まえて、三人のもとへ駆けつけることができた。
心配する悟に均を頼んで、将貴の肩を抱いてタクシーに乗せた。
俺もそれなりに鍛えてはいるけれど、将貴の体は十八歳男性とは思えないほど軽くて、けれど熱くて。
先週まであんなにしょっちゅう会っていたのに、気づいてやれなかった自分に腹がたった。
「大学病院の、救急外来まで」
将貴に頼ってほしいだなんて言っておきながら、このありさま。
夜も診てもらえる郊外の救急外来へタクシーを走らせながら、俺は自己嫌悪でいっぱいだった。
***
将貴が目を覚ましたのは、翌日の昼のことだった。
「お、起きた? 覚えてるか? お前、家に着くなりぶっ倒れたんだよ。タクシーで救急外来に行って……んで、ここは俺んち。悟から電話貰った時は驚いたよ。体調、どう?」
俺は作業中のパソコンに保存をかけて、いそいそと将貴の側に行く。
「あ、え……?」
いまいち状況が飲み込めていないらしい将貴の額に手を当て、熱を計る。
「うん、点滴してもらったから、顔色は大分マシになったな。熱はまだ微熱が下がってないから、今日は寝てな」
「ん……」
将貴は眩しそうにしばし目を擦っていたが、ハッとしたように跳ね起きる。
「あっ……!! 僕、バイトが……!」
「あー、携帯に電話が来てたんで、悪いけど勝手に出たよ。事情を説明して、今日は休むって連絡しといたから大丈夫」
俺の話を聞いて、将貴は再び力尽きたようにパタリとベッドに倒れ込む。
「うう……。また僕は奏さんに迷惑を……。ごめんなさい……」
落ち込んでいる様子の将貴に、俺は励ますようにテンション高めの返事を返す。
「あーそう言うの、今はいいからさ。何か食べれる? いちおーお粥はあるよ、パウチのやつ。あとはゼリーとか、スポーツドリンクとか、桃缶とかパンとか……。とりあえず何か食べて、薬飲まなきゃ。これ解熱剤と、風邪薬諸々な」
そう言って、俺は薬と食料を袋から取り出して見せる。
「すみません。今食欲、無くて……」
「あ、そう? なにも食べられなそうだったら、座薬タイプの解熱剤もあるけど……」
そう答えて、俺はいたずらな笑みを浮かべる。
「俺、挿れてあげようか? 優しくするから、怖くないよ?」
そう言って座薬の袋をひらひらと見せてやると、赤面した将貴は慌ててパウチタイプのゼリー飲料を掴む。
「た、食べます! えっと、これ貰っていいですか?」
「はは、冗談だって。いいよー好きなの食べて。薬と水、ここ置いとくね」
そう言って、ベッドサイドの棚の上に、水とスポーツドリンク、薬なんかを置く。
「あ、ありがとうございました。何から何まで……僕はいつも迷惑ばかりかけて……。お金……ちゃんと払うので、かかった金額、教えて下さい」
「ん? いーのいーの」
「いや、でもっ……」
「いーから、いーから。君は病人なんだから、たまには大人に甘えること」
食い下がる将貴にそう言って、俺は将貴の額に貼った冷えピタを取り替えてやる。将貴はゼリー飲料の飲み口をくわえたまま、しょんぼりした表情だ。
俺にとっては単に、将貴と親しくなりたい! って下心なんだが、そりゃー理由もなく親切にされたら、将貴の性格上『申し訳ない』って気持ちでいっぱいになってしまうかもしれないな。
そう思い直した俺は冗談めいてこう言った。
「んー……じゃ、まあ。どうしてもって言うなら、"貸し一つ"ってことで。元気になったらほっぺにチューでもしてもらっちゃおーかなぁ」
ベッドの縁に腰掛けて、俺は冗談めいた顔でそんな軽口を叩く。
いかん。気を遣わせないようにしたつもりが、うっかり軽くセクハラ発言をしてしまった。
「ちゅう……ですか。僕、男なんですけど……」
ゼリー飲料を飲みながら、将貴はもごもごと口の中でつぶやいている。
お? おお~?
「うん? ハグのほうが良かった?」
「あ……ハグくらいなら全然……」
「お? やった。まぁ、元気になったらな」
「はい……」
冗談めかせて言ったのに、将貴から意外な返答が来て、内心焦ってしまった。
俺は明らかにセクハラ発言をしてしまったのに、案外将貴……引いてないっぽい……?
相手はノンケのはずなのに。ドキリ、と心臓が脈打った。
熱に浮かされた潤んだ瞳、紅潮した頬。
それだけでも、将貴は破壊力抜群の可愛さなのに。
「とりあえず、薬飲んだら病人は寝た寝た! 俺、すぐそこで仕事してるから。何かあったらいつでも声かけてな」
自分の顔が赤面しかかっていることに気がついて、俺は慌ててパソコンの前に戻る。
画面の文字を目で追って、脳みそを必死に切り替えようとしたが、頭の中は勝手に将貴とのハグやちゅーを妄想しまくっている。
あれー?? ヤバいな。なんか俺、思ったより将貴に恋しちゃってない!?
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