【完】死にたがりの少年は、拾われて初めて愛される幸せを知る。

唯月漣

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第一章 常春と真冬編

19)誤魔化し。*

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「はぁ……っ、常春っ、んん……っ」


 常春が二階に上がってきたら、速攻で押し倒してやろう。

 そう思って待っていたはずだったのに、速攻で押し倒されたのは俺の方だった。キスをされたあと、性急に服とズボンを引き剥がされて、両足の間へ常春に顔を埋められる。


「真冬。今日、なんかあったろ?」


 開口一番でそう言った常春は、目の前にある俺のペニスを握る。


「なっ……、何も……っ」


 常春の大きな手によってゆるゆると扱かれたそこは、既に半分ほど勃ちあがっていて、ゾクリと俺の身体に快楽を伝えた。



「ふーん? 言いたくないなら、いいけどな」


 珍しく拗ねたような顔で、常春は手の中のそれを根本から先端までゆっくりと舐め上げた。


「ひっ……!」


 常春の熱い舌が、竿の根本に息づいた茂みの中の二つの膨らみを突く。
 常春は薄皮の中にある球状のそれを持ち上げるように舌で弄ぶと、唇でやんわりと挟み込むようにゆるゆると揉まれた。


「あっ……あっ……やめ……っ」


 男が最も弱いとされるその部分を口に含まれてしまうと、いつ歯を立てられるとも知れぬ淡い恐怖を孕む。
 けれど、決して歯を立てられる事はなく、常春の舌は感触を楽しむようにそこを唇で愛撫した。


「んん、常春……っ」


 俺は常春の髪を掴み、不慣れなその快楽に耐える。

 常春は徐々に舌先を陰茎や先端まで伸ばす。
 俺に快楽を与えるためではなく、俺のその部分をただ愛でるかのように、常春は舌のぬめりを俺のそこに絡めた。
 それはまるで大きな飴玉を舐めるかのような仕草だったが、時折チラリと俺に向けられる常春の視線が、俺の羞恥心を煽った。


「なっ、……舐めるなら、ちゃんと舐めろよ……っ」


 焦れた俺は思わずそう悪態をつくが、常春は楽しそうに言った。


「ちゃんとって、例えば……?」


 同じ男なのだから、わかっているくせに。
 常春は先端の敏感な場所を避けて、陰茎やその根本の膨らみばかりを愛撫した。


「んん…っ、そっちばっか、やだって……」
「んー? じゃあこっちにする?」


 常春はそう言って俺の性器から口を離し、太腿の内側に舌を這わせる。中途半端に愛撫され、放置されたペニスが、半勃ちのまま熱を燻ぶらせていた。


「ちが……っ、うう……」


 俺ががっついているのを分かっていて、きっと常春は焦らしているのだ。


「あああ……、常春、お願いだから……」



 まぶたの裏に浮かび上がる、あの男と腕を組む母親の姿。
 胸の中に湧いた不安を、早く強烈な快楽で忘れたい……。



「どうしてほしいんだ?」
「あ……」
「……言ってみな? ちゃんと言えたら、してやる」


 常春は下半身から離れて、俺の顔の側に来た。腹の上に手を置いて、ただ優しく撫でている。


「ん……、キスして……んんっ……!」


 言い終わるか終わらないかのうちに、俺は常春に唇を塞がれた。舌を絡め取られて、軽く吸われる。歯列の外側をなぞるように舌を這わせた常春は、俺の顎に手を添えて溢れる蜜を舐めとった。


「次はどうしたい?」


 唇を離すと、常春はそう言ってじっと俺を見ている。


「ちっ……乳首を舐めて………あっ……!」


 またもや俺が言い終わらないうちに、常春は俺の乳首に舌を這わせてきた。

 胸についた薄い肉を指で摘み、摘んだ先に突き出した先端をパクリと口に含む。常春はわざと音を立ててちゅっと吸い、チロチロと舌でくすぐるように俺のそれを舐めた。
 こそばゆいような甘い痺れに、俺は思わず常春の頭を抱え込むようにそっと抱きしめる。
 常春は今度は大きく唇を使って胸の先全体を吸い、舌の腹で擦るように濃く色付いた部分全体を何度も舐めた。


「んっ……、気持ちいい……」


 俺が小さくそう漏らすと、常春は唇を離して言った。


「乳首だけでいいのか?」
「ん……っ、下も……」
「下?」

 俺の台詞に、常春は俺に抱え込まれたままの頭をするりと抜き取って、体を下半身へと滑らせる。

 俺の期待する場所を通り過ぎて、常春は俺の足首を持ち上げた。膝を曲げて足先を高く上げると、その爪先に口付ける。


「ちがっ……、馬鹿っ……!」
「はいはい、馬鹿ですよっと」


 ニヤリと笑った常春は、そのまま足の指の間に舌を這わせた。ゾワゾワとくすぐったいその感覚に身をよじっていると、足の指に不意にガブリと強めに歯を立てられる。かと思えば、足の指を一本ずつ口に含むように舐めて、チラリと俺に視線を送った。


「ゃぁっ、……あっ……あっ……そんなとこ……舐め……っ!」
「なら、ちゃんと言えよ。……俺にしてほしいことを!」
「あ……」


 ああ、そうか。常春は、怒って……いや、拗ねていたんだ。明らかに様子がおかしいのに、何も言わない俺に……。


「……ごめん。常春、聞いて」


 俺は体を起こすと、常春の袖を掴んで引き寄せた。常春はやれやれという風に自らも体を起こし、俺の方へ向き直った。


「昼間、雪平に写真を見せられたんだ。こないだ俺を拉致した犯人の」
「は…………?」


 予想外の言葉だったのだろう。常春は俺の話に顔を歪めた。


「そいつ、俺の母さんと一緒にいたんだ。背景も、俺の母さんのアパートだった」


 吐くことも覚悟で告白したが、常春が側にいると、不思議とあのどす黒い目眩や気持ち悪さは上がってこないようだった。


「そういう大事なことを、セックスで誤魔化すなよ……」


 常春は困った顔でそう言って、俺を引き寄せて胸の中にすっぽりと納めた。
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