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1章 最強のウィザード様

嗚呼、私のウィザードさま 「軟派なウィザード様」

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会社 昼休み

マリアが手作り弁当を前に溜息を吐く
「はぁ~…」
マリアが頭を抱えてうな垂れる リナとマキが顔を見合わせてから言う
「マリア…?」
「どうしちゃったの?マリア?」
マリアが言う
「なんか… 幻滅しちゃって…」
マキとリナが呆気に取られてから言う
「確か 今日だったよね?ウィザード様を お迎えするって… マリア あんなに張り切ってたじゃない?」
「もしかして それが 幻滅って事は…?」
マキとリナが顔を見合わせる マリアが言う
「アレ 本当にウィザード様なのかな…?私 もしかしたら 講習会の参加状態悪かったから その罰ゲームだったりして…」
マキが言う
「そんなに 酷いの?ウィザード様ってさ?アタシもちょっと聞いてみたんだけど?昨日マリアが言っていた通り 人と神様との間って感じで 人でありながらも もの凄い魔力を持っていて 神秘的で とっても… 人間離れしてる人なんだって?」
リナが言う
「人間離れしている人って…?」
マリアが不満そうに言う
「私もそう思ってた… 実際 途中までは とってもそんな感じで… 本当に 思っていた通りの… 神秘的で神聖なウィザード様 …だったんだけど」
マリアの中に レイの姿が思い出され マリアが深く溜息を吐いて言う
「全然 人間だったしっ 神聖なんかじゃなくて…っ」
マリアの記憶の中で強く思い出される

マリアが言う
『…いえ、なら ウィザード様は?何でウィザード様に なったんですか!?』
レイが言う
『それは もちろん!』
レイがマリアを抱きしめて言う
『”マリアのウィザードさま”になる為だよ!マリア!』

マリアが立ち上がって言う
「アレやっぱり 偽物かも!?そんな理由で ウィザードになる筈なんて無いっ!ウィザード様がウィザードになるのは 神様に認められる為だものっ!ウィザード様たちが行う 神聖な灯魔儀式だって この世界を守る為の 神聖な儀式なのっ!それを行うウィザード様が あんな軟派な人で有る筈が無いっ!」
マキとリナが呆気に取られた後言う
「な… 軟派な人?」
「…それじゃ 偽物なの?」
マリアが困りつつ言う
「う… う~ん… でも そうだとしたら お部屋とかは 講習用のものだったとしても 灯魔儀式の予定なんかは 講習で用意出来るモノじゃないし…?」
リナが言う
「灯魔儀式って 町中や近郊の村にある 魔除けの灯魔台へ 魔力を与える儀式でしょ?」
マキが言う
「そんなのあるんだ?…あ、もしかして 中央公園の真ん中にある 噴水の事?私が小さい頃は ずっと水が流れていたのに 10年くらい前から 水が無くなっちゃって」
マリアが言う
「うん 灯魔台の魔力は 定期的に魔力の供給をしていないと 止まってしまうの この町と近郊の村は 10年前までは この町のウィザードさまが守って下さっていたんだけど」
リナが言う
「それをまた動かす為の儀式をやるの?凄いじゃない!?やっぱり 私、あの公園には あの噴水があって欲しいし」
マリアが苦笑して言う
「う、うん… そうだね 私もそう思う それに 灯魔台は噴水だけじゃなくて 火や風や土や雷もあるの 何になるかはその土地や 力を与えるウィザード様によって 変わったりするらしいんだけど」
リナが微笑して言う
「うちのお父さんは 旅行に行くと その土地にある灯魔台をいつも見に行くの だから私も色々見たけど 火の灯魔台が一番多いみたい 次に多いのが水かな?」
マキが言う
「へぇ~ でも 公園の真ん中に 火が出る灯魔台なんてあったらさー?公園で遊ぶ子供たちに危なくないのかなぁ?」
マリアが言う
「灯魔台に灯される魔力は 周囲に結界を張って守る事に力を使っているから 実際に見えている火や水に力は無いの だから 灯魔台の火に触っても 熱くはないんだって」
マキが呆気に取られて言う
「えぇ~そうなの?何だか信じられない 火があるのに 熱くないだなんて」
リナが言う
「私 灯魔台の火や水に触った事があるけど 熱くもないし 冷たくもなかったわ …あ、でも 熱くは無いけど 暖かいって感じかな?水も同じ 川の水ほど冷たくは無いけど 水なんだって分かる程度に冷たいし 後は雷も ピリピリって静電気より弱い感触があったわ」
マキが感心して言う
「へぇ~… 不思議 何だか 魔法みたい」
3人が呆気に取られた後笑って言う
「そっか」「”魔法”だもんね?」「うんうん!」
マキが言う
「それで?いつ その儀式をやるの?もし中央公園のアレを動かすなら 私その儀式って見てみたいな?」
リナが同意を示して頷く マリアが一瞬驚いて言う
「え?あ~…」
マキが残念そうに言う
「私たちは 見ちゃダメなの?」
マリアが言う
「ん?ううんっ!そんな事無い 大丈夫 見られる所もあるの!それが中央公園みたいな… それじゃ 中央公園の灯魔台に灯魔をする時には 2人にも知らせるね?」
マキとリナが嬉しそうに頷いて言う
「うん!よろしく!」
「楽しみにしてるわ!」
マリアが苦笑して言う
「うん!…でも その前に あのウィザード様が ”本物なら”… って 話だけど…」
リナが言う
「そう言えば 今日 そのウィザード様を お迎えしたのに マリア 午後はこっちで仕事なんてしていて良いの?ウィザード様は?」
マリアが言う
「ウィザード様は…」
マリアの脳裏に記憶が戻る

レイがマリアを抱きしめて言う
「”マリアのウィザードさま”になる為だよ!マリア!」
マリアが呆気に取られて言う
「は?…はぁあっ!?」
レイがマリアの頭を撫でた後マリアを見て言う
「んじゃ 手始めに 何しよっか?」
マリアが言う
「な… 何って あの…」
レイが言う
「マリアが俺の実力を 信じてくれないなら しょうがない 望みの撤回は今度にして」
マリアが言う
「で、ですからっ 私は そちらを信じてない訳じゃ…」
レイが言う
「まずは お互いに もっと知り合って もっと仲良くなるには~ うん!それじゃ!今日はさ?」
マリアが言う
「きょ… 今日は… いえっ 本日はっ ウィザード様は まだ お体を休めなければ いけないんじゃないですか!?…寝室はそちらです」
マリアが寝室の方を手で示す レイが言う
「ん~ 確かに 少し休みたいけど」
マリアがバックから手帳を出しながら言う
「最初の頃は ご無理は禁物だそうです ですから 最初の儀式の予定も 5日から1週間後に入れるようにと言われています …それで どちらが良いですか?」
レイが疑問して言う
「え?」
マリアが不満そうに言う
「”え?”ではなくて 灯魔神館で執り行う灯魔儀式の予定です 今日はそちらを確認する事が 最重要事項ですから」
レイが言う
「それが 最重要?」
マリアが手帳をめくりながら言う
「そうです この町は10年間もウィザード様がご不在だったので 必要最低限の灯魔台への灯魔しかなされていないんです そのせいで 最近では郊外の村に沢山被害が出ていて 出来るだけ早くに 灯魔作業を開始して欲しいと言われていて… 要望も沢山来ているんです まずは 郊外の灯魔台への灯魔儀式を優先して それから…」
レイが言う
「そんなの大丈夫だって!」
マリアが疑問して言う
「え?」
レイが苦笑して言う
「10年間も持ち堪えてたんだからさ?予定より もうちょっと遅れたって 大した事無いだろ?」
マリアが呆気に取られた後困って言う
「そ、それは そうかもしれませんが…っ」
レイが言う
「だから ゆっくり行こうぜ?そんな予定なんて 後で決める事にして …じゃあ 俺は少し休むから?」
レイが寝室へ向かおうとする マリアが慌てて言う
「あっ ま、待って下さいっ ウィザード様っ」
レイが立ち止まりマリアを見る マリアが言う
「えっと では、最初の灯魔儀式の予定は 5日後では 早いですか?」
レイが言う
「儀式の予定なんて 2,3日前に連絡すれば十分だよ それより 今はマリアの言う通り 少し休む …だから おいで?マリア?」
マリアが呆気に取られて言う
「え?おいでって?」
レイが言う
「マリアは俺の奉者なんだから 寝室でも何処でも 入って良いんだぜ?」
マリアが驚き頬を染める レイが微笑して言う
「だから こっち来て?2人きりで部屋に戻ったら やる事は決まってるだろ?」
マリアが怒って叫ぶ
「…わっ!?私はっ!私は そんな事をするつもりは ありませんっ!」
レイが呆気に取られて言う
「え?」
マリアが怒って言う
「ウィザード様っ!ウィザードは 神聖なものですっ 神様に選ばれる為に 鍛錬を積み より強い魔力を得る為に あらゆる面で禁欲しなければならない 大変な職業ですっ!」
レイが呆気に取られつつ言う
「あ… うん そりゃ 知ってるよ?だって俺 一応 そのウィザードだから?」
マリアが言う
「知ってるのならっ そうして下さいっ!大体…っ 分かりましたっ!十分お元気そうですので!?5日後の午後に 最初の儀式の予定を入れられるように 手配しておきますから!」
レイが疑問しながら言う
「ん?…あぁ そう?そりゃ 構わないけど?」
マリアが言う
「”構わない”んですね!?それじゃ 手配をしますからっ!詳しい時間の方は 後日お知らせします!」
レイが言う
「う、うん…」
マリアが手帳に書き込んでから 手帳を閉じて言う
「はい、お待たせ致しました!では ごゆっくり お休み下さい!」
マリアが立ち去ろうとする レイが言う
「え?あ、待ってよ?マリア?」
マリアが立ち止まり振り向いて言う
「はいっ!何でしょうかっ!?」
レイが呆気に取られた後苦笑して言う
「あ… いや… だから その…」
マリアがじっと見る レイが言う
「何でも ない… です」
マリアが立ち去る

マキとリナが顔を見合わせてからマリアを見る マリアが表情を困らせて思う
(実はすっごい軟派男で いきなり寝室に誘われたっ!…だなんて言ったら この町のウィザード様が そんな人なんだって 噂になっちゃうかも…?それは ダメよね?アノ人が本物かどうかは分からないけど… 私が今言ったら それが この町のウィザード様としての 噂になっちゃうかもしれない!だから やっぱりっ アレは隠しておかないと!)
マリアが頷いて言う
「うん!」
マキとリナが疑問した後言う
「マリア?」
マリアが気を取り直して言う
「あ、うん!あの… きっと!まだ ウィザード様として!お体の調子が整っていないせいなのかもしれないから!5日間 ゆっくり休んだら きっと!身も心も安らいで 神聖なウィザード様として 生まれ変わるんだと思うから!」
マキとリナが呆れて言う
「う… 生まれ変わる?」
「じゃぁ 今は…?」
マリアが困って言う
「い、今は… その…」
リナが心配そうに言う
「もしかして 暴力とか… 振るわれたりした?」
マキが驚いて言う
「えー!?うそーっ!?」
マリアが言う
「え、えっと…」
リナが心配そうに言う
「無理しちゃ駄目よ?マリア 奉者様として 頑張らなきゃいけないとか言っても 相手は 凄い魔法を使う人なんでしょ?それに ウィザード様って 皆 男の人だし…」
マキが言う
「そうだよっ マリアは可愛いし 本当に身の危険を感じたら 他の人に変わってもらったほうが良いよ!講習受けていた人は 他にも居るんでしょっ!?」
マリアが呆気に取られた後苦笑して言う
「う、うん… ありがとう とりあえず もう少し様子を見てみるから 次は 5日後… あ、その前に 時間を伝えに行かないと… あ!その前に 手配を整えておかなきゃ!」
マリアが手帳を取り出して調べ始める マキとリナが顔を見合わせてからマリアを見る マリアが手帳をめくり作業をしている

4日後

マリアが会社を出てから気を張って言う
「よしっ 行くぞっ」
マリアが一度頷いてから大通りへ向かいタクシーを止める

マンション

マンション前にタクシーが止まりマリアが降り マンションに入って行く

最上階

エレベータが到着の音を鳴らしドアが開く マリアが出て来て部屋のドアの前で思う
(奉者の心構え1!奉者は ウィザードの従事者として 堂々と 且つ 丁寧に 自信を持って…っ)
マリアが正面を見据えてからインターフォンを押す マリアがハッとして思う
(…てっ これウィザード様に対しての 心構えじゃなかった…っ)
マリアが間を置いて 疑問して首を傾げてから 思い出して言う
「あ、そうだ 私 この部屋の鍵を 持ってるんだった …でも 2人で戻る時以外も 開けちゃって良いのかな?」
マリアがバックから鍵を取り出し見つめてから 表情を落として言う
「やっぱり 罰ゲームじゃ なかったのかなぁ…?アノ人が本当に 私の… 私の… ウィザード様…?」
マリアが溜息を吐く
「はぁ…」
マリアが鍵を開けながら言う
「見た目は確かに ウィザード様なんだけどなぁ…」
鍵が開く

マリアがドアを開けながら言う
「失礼します ウィザード様」
マリアが正面を向いた状態から ふと気付いて横を向くと レイがキッチンのシンク近くで水を飲み終えた様子で振り向いて 一瞬2人が止まった後 レイが言う
「マリアーっ!」
マリアが一瞬後づ去ると レイがマリアを抱きしめて言う
「酷いよっ マリアっ!4日間も来てくれないだなんてさっ!俺 見捨てられたかと思って すっげー心配して!」
マリアが息を吐いてげっそりする マリアが気を取り直し 不満そうに言う
「ウィザード様 お体の調子は如何でしょうか?灯魔儀式は出来そうでしょうか?」
レイが苦笑して言う
「灯魔儀式なんて!そんなに急がなくても 灯魔台は逃げないぜ?」
マリアが言う
「灯魔台は逃げないですけど 悪い魔力のせいで 自然環境が狂わされたり 郊外では野生動物が凶暴化しての被害とか …何より この町や同じ区域にされている近郊の村の人たちは 灯魔台に魔力が灯されていない事で 不安に駆られるんです ですから」
レイが言う
「ああ 分かったよ とりあえず あれだろ?この町に配属されたウィザードが その灯魔作業を開始したって事実で 安心させたいって?マリアは優しいなぁ?」
マリアが苦笑して言う
「優しいって言うか… 母がそうしているのを見て 素敵だなって思ったんです …人々に安心と安らぎを与えられる そんなすごい事が出来るお仕事って 少ないと思いますし …あ、いえっ そのっ 儀式を行うのは もちろん ウィザード様ですがっ!」
マリアが慌てて訂正すると レイが一瞬疑問した後微笑して言う
「その手配をするのは マリアだろ?だったら 十分 マリアが素敵じゃないか?」
マリアが驚き 微笑してレイを見て言う
「ウィザード様…」
レイが言う
「だって ウィザードは  そんな事 考えてないからな?」
マリアが驚いて言う
「え…っ?」
レイが言う
「ウィザードにとっての 灯魔儀式って言うのは 自分の魔力が どの程度高まったのかを 確かめるだけのものだよ」
マリアが言う
「そ、そんな…っ」
レイが言う
「それが 人と神様との間だって言われる ウィザードってもんだよ?マリア」
マリアが呆気に取られる レイが苦笑する マリアが視線を落として言う
「どうして…?だってウィザード様は 世界を救える凄い魔力を持っていらっしゃるのに…っ どうしてそれを皆の為に 使おうと思わないんですか!?」
レイが言う
「それは マリアもこの前言ってただろう?ウィザードは 神聖なもので 神様に選ばれる為に 鍛錬を積んでるんだって つまり その通りで 普通のウィザードは神様に選ばれる事を目指しているんだから 人の為になろうなんて事は考えてないんだよ?」
マリアが気付いてショックを受ける レイが微笑して言う
「けど、俺は違う!」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「俺は 神様に選ばれるんじゃなくて マリアに選ばれる為に ウィザードになったんだからな!」
レイが笑顔になる マリアが呆れて言う
「は?」
レイが言う
「だからさ?マリアが俺にお願いするんだったら 何でもやってやるぞ!俺にとっては それこそ 神々にどう思われようが どうでも良いんだ!マリアの為になる事が 一番だからさっ!」
マリアが呆れ困りつつ言う
「いえ… 神々は良くとも 私じゃなくて 人々の為になる事を 考えて頂きたいと…」
レイが言う
「じゃ、早速 時間も時間だし 一緒に夕食でも食べに行こうか!?マリア!」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「何が食べたい?何処か高級な店でも行って 美味しい物食べようか?折角 マリアと俺が会ったのに まだ何も お祝いとかしてないしさ!?」
マリアが困って言う
「え… えっと… あの…?」
レイが言う
「ああ、金の心配とか 要らないぜ?街に所属するウィザードに掛かる費用は  全部無料からな!」
マリアが叫ぶ
「人々の税金ですっ!」


続く
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