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9章

アールスローン戦記 真実の友情

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≪ 帝国 通路内 ≫

メルフェスに続く面々が周囲を見渡しながら歩いている アーケストが言う
「門を入ってから 5分以上経つと言うのに まだ先が見えて来ないな… これが帝国の 絶対に落とす事の出来ない城壁 と言われて来た物の正体か」
フレイスが言う
「確かに これほどの厚さ… と言うよりも 距離のある壁を 外から壊すだなんて事は 不可能だ…」
アーケストが言う
「更に その壁の中には…」
アーケストが視線を向ける フレイスが言う
「あれが 帝国の兵器 マシーナリーか 実物を見るのは初めて… …っ!」
フレイスがハッとして足を止める アーケストが言う
「どうした?フレイス?」
フレイスが言う
「RTD560マシーナリー…」
アーケストに続き アミレスとメルフェスが足を止める フレイスがRTD560マシーナリーに目を釘付けにする アーケストがフレイスの横へ来て フレイスの見ているものに気付いて言う
「…あのマシーナリーと同じ物が …メイリス隊長を?」
アミレスがやって来て言う
「どうかしたのかね?」
フレイスがハッとして慌てて言う
「あ、いえっ!…皆様のお足を止めしてしまい 申し訳ありません 何でもございませんので 先へ向かいましょう」
アミレスが言う
「そうか では」
メルフェスが歩き出しアミレスが続く フレイスが視線を落として居る アーケストが言う
「どうした?置いていくぞ?」
アーケストが苦笑してから 先に向かった2人を追おうとする フレイスが言う
「…アーク」
アーケストが疑問して足を止め振り返る フレイスがアーケストを見て言う
「もし… この先で 本当に万が一の事があったら 私は… 君だけを守るっ」
アーケストが一瞬驚いてから 苦笑して言う
「…なっ 何を言っている?大体 カルメス外交長の話を聞いた限り 帝国は 我々が思って居た様な国では」
フレイスが言う
「だから 万が一と言っているだろうっ!?…私はカルメス外交長の話は聞いていないが 父上たちが どのようにあのマシーナリーと戦っていたのかは知っているんだ …当時の戦闘記録レコーダーを 嫌になるほど聞いていたからな… だから どうしても 私は… 帝国を信じる事は出来ない …誰が 何と言おうともっ」
フレイスが手を握り締める アーケストが呆気に取られて言う
「フレイス…」
フレイスがメルフェスたちの方へ目を向けて言う
「行こう」
フレイスが歩き出す アーケストが続く

【 現代 】

軍曹が沈黙している ラミリツが言う
「…起きてる?」
軍曹がハッとして慌てて言う
「も、もちろんっ!?眠ってなどは居ないのだっ!」
ラミリツが苦笑して言う
「まぁ 流石に そうだろうけど?」
軍曹が言う
「うむ… それに なんと言うか… この戦闘記録レコーダーと言うものは とても… まるで 実際にそちらの状況を目にしているかのように 臨場感に溢れていて それこそ とても居眠りなどは出来ぬのだ」
ラミリツが言う
「そうだよね 特に この2人は 政府と国防軍の要だって言われていた2人だから 余計そうなるんだろうけど でも ここからは2人とも会話もしないで 3分18秒間の無音の時間が過ぎるの 僕が1人で聴いて居る時は 飛ばしちゃうんだけど… どうする?」
軍曹が疑問して言う
「うむ?そうであるのか では 自分は そちらで構わないのだが?…何か?」
ラミリツが言う
「いや、だって?勝手に飛ばしたりしたら 後で何か言われそうだし?」
軍曹が疑問して言う
「ふむ?何か言われるとは…?」
ラミリツが呆れて言う
「え?だから… 例えばさ?メイリス家にとって不利になる 重要な所を飛ばして誤魔化したんじゃないかとか?」
軍曹が衝撃を受けてから言う
「なっ!?そんな事は 自分は考えもしないのである!大体 その様な事をするのであれば わざわざ自分へこちらの記録を 聞かせなければ良いのではあらぬのか?」
ラミリツが言う
「まぁ そうだけど… それに そもそも アンタの場合は… 馬鹿だから?そう言う事 考えもしないのかもしれないけど?」
軍曹が衝撃を受ける ラミリツが軽く笑ってから言う
「…って 話してる間に 飛ばす部分も終わっちゃった そろそろ 会話が始まるよ?…それと」
軍曹がラミリツを見る ラミリツが言う
「ここからが 重要な所だから 絶対 聞き逃さないでよね?」
軍曹が呆気にとられてから言う
「う、うむ…っ そうであるのか?では 改めて  しっかりと 聞いておくのだ!」
ラミリツが視線を鋭くする 軍曹が反応して心配する

【 過去 】

アーケストが通路の先に光を見つけて言う
「…うん?光だ 屋外へ繋がっているのか?」
フレイスが言う
「確かに 外光の様だ」
アーケストとフレイスが通路を出て 前方に居るメルフェスとアミレスの背を見る アミレスが困惑した様子で言う
「こ… これは 一体… 一体っ どう言う事だっ!?カルメス外交長っ!」
アーケストが疑問して アミレスから メルフェスを見て 周囲を見て 驚いて言う
「な…っ!」
4人の前には 4人を囲う様にマシーナリーが配備されている メルフェスが言う
「…力を持たぬ アールスローンの民 お前たちは 我ら帝国に従え」
アーケストが呆気に取られている アミレスが一歩後づ去る アーケストにフレイスの小声が聞える
「目を瞑れっ」
アーケストが疑問する フレイスの小声が続く
「…早くっ!」
アーケストがハッとして目を瞑ると フレイスが閃光弾を床へ叩き付ける アミレスが悲鳴を上げる
「ぬあーっ 目がーっ!」
フレイスがアーケストの手首を掴み言う
「走れっ!」
アーケストが驚く フレイスがアーケストの手を引っ張っり 来た道を引き返して 2人が走って行く

通路内に警報が鳴る アーケストとフレイスが走っている アーケストが言う
「警報がっ!」
通路内にキラーマシーンが現れ始める フレイスが言う
「マシーナリーだっ!」
アーケストが驚いて言う
「…これでは無理だっ!とても 逃げ戻る事は出来ないっ!」
フレイスが言う
「アークっ 君は走り続けろ!」
アーケストが驚き横を向くと フレイスがプラズマセイバーを用意する アーケストが驚いて言う
「何をっ!?…まさかっ マシーナリーと 戦うつもりかっ!?」
キラーマシーンが銃撃を開始する アーケストが驚き 思わず身を守るように立ち止まる アーケストの周りで爆発が起きる アーケストが顔を上げると フレイスがプラズマセイバーでマシーナリーを破壊した様子で振り返って言う
「止まるなっ!走れっ!」
アーケストが言う
「し、しかしっ …あっ!」
フレイスがアーケストの腕を掴んで走り出す アーケストが走りながら言う
「無茶だっ 逃げ切れるはずがないっ!この先には…っ 君の父上様を殺した あのマシーナリーが居るんだぞっ!?」
フレイスがハッとする アーケストが言う
「あのマシーナリーを前にする位ならっ フレイス お前も…っ!」
フレイスが表情を顰めてから言う
「ならば もう一度戦うっ!父上の仇を 今度こそ私が 討ち取ってやるっ!」
アーケストが驚く フレイスが言う
「だから 走り続けるんだっ アーク!君は 国防軍総司令官だろうっ!?」
アーケストが悔しそうに言う
「止めろっ 私は…っ!」
周囲でフレイスがキラーマシーンを倒している アーケストが走り抜け フレイスが追う

アーケストの前方で重い足音がする アーケストが立ち止まって言う
「き… 来たか…っ」
アーケストの前にマシーナリー4がやって来る フレイスが走って来て叫ぶ
「先に行け!」
アーケストが振り返りつつ言う
「だが これでは…っ」
フレイスが言う
「ク…ッ 囲まれた」
アーケストが退路へ視線を向けると マシーナリー4の他キラーマシーンが集まって来る アーケストが周囲を見て退路を探す フレイスが到着すると2人が包囲される フレイスが言う
「小型のマシーナリーは撃っては来ない… これは… まさか奴らは?」
アーケストが言う
「…っ 何を言っている?フレイスっ?」
アーケストが言う
「フレイスっ こうとなれば一点突破しかない あの大型のマシーナリーを倒せないとしても 小型のマシーナリーだけであれば そして 出口までこれ以上の増援さえ来なければ …可能性は低いが」
フレイスが言う
「ならば …奴を倒すっ!」
アーケストが言う
「何!?倒すとだとっ?正気かっ!?」
フレイスがマシーナリー4の前にプラズマセイバーを構えて言う
「…見ていて下さい 父上っ 必ずっ!」
マシーナリー4がフレイスへ砲口を向ける マシーナリー4が砲撃を放つと同時に フレイスがマシーナリー4へ向かって突入する 砲撃がフレイスの居た場所へ放たれ 爆発し床にクレーターが出来る アーケストが地響きと衝撃波に身を揺るがされて言う
「うぅ…っ」
アーケストが度重なるそれらに慣れ 目を開くと その先 フレイスがマシーナリー4へ向かって飛び上がっている フレイスが言う
「チャンスは一度っ!貰ったーっ!」
フレイスがマシーナリー4のボディに両足で着地し プラズマセイバーをめい一杯突き刺す アーケストが驚いて言う
「…凄い」
アーケストが思わず後づ去る マシーナリー4が間を置いて顔を動かし フレイスを見る フレイスが驚いて言う
「そんなっ!?何故!?この位置なら 確実に機動回路を破壊している筈っ!?」
フレイスがプラズマセイバーを見て はっと気付いて言う
「まさかっ エネルギーが足りなかったのかっ!?…っ!」
フレイスがマシーナリー4を見上げると マシーナリー4がフレイスの頭を掴み 振り上げてから床へ叩き付ける フレイスが目を見開いて言う
「がぁあっ!」
マシーナリー4がフレイスへ砲口を向ける フレイスが顔を上げると 視線の先で アーケストが後ず去っている フレイスが言う
「逃げ ろ… アー ク…」
アーケストが言う
「フレイス…っ」
フレイスが目を閉じかける フレイスのイヤホンに エルムの声が聞える
『ソロン・フレイス・メイリス警察長 お前を 援護する』
フレイスが驚くと同時に PM70が放たれ マシーナリー4に直撃し マシーナリー4が一瞬止まってから 轟音と共に倒れる フレイスがマシーナリー4の倒れている姿を見て微笑し意識を失う アーケストが呆気に取られて振り返る エルムβたちがPM70を構えている その横でエルムが言う
「目標を拘束した この間に 撤退する」 
エルムがフレイスのもとへ向かう アーケストが言う
「拘束した? 倒した のではないのか?」
エルムがフレイスを肩に担ぎ上げて言う
「RTD560マシーナリーを倒すには フルチャージのプラズマセイバーでなければ不可能 …やはり 同じ血を引く息子か 父親と同じミスを犯した」
アーケストがエルムを見て 不満そうに言う
「今更 何をしに来たっ?」
エルムがアーケストを横目に見て言う
「ヴォール・アーケスト・ハブロス総司令官を救出する」
アーケストが言う
「それが お前の受け持つ任務か?」
エルムが言う
「そうだ」
エルムが歩き出す アーケストが言う
「ならば …その者は置いていけ」
エルムが立ち止まる アーケストが言う
「その者は置いていけ 命令だ 従え」
エルムが歩き始める アーケストが怒って言う
「私の命令を聞かないつもりかっ!?エルム少佐っ!」
エルムが言う
「PM70の効果が切れる前に 戦線を離脱する必要がある 急げ」
エルムが走り出す アーケストが驚き言う
「待てっ!エルム少佐っ!」
エルムが遠ざかって行く アーケストが悔しがりつつも追う エルムβたちが続く

キラーマシーンが通路を塞ぐように現れる エルムが視線を強めると 周囲のエルムβたちがM90を放ち キラーマシーンを破壊して行く アーケストが言う
「エルム少佐っ!国防軍総司令官である 私の命令を聞けっ!」
エルムが言う
「私は もう国防軍の兵士ではない」
アーケストが言う
「ふざけるなっ!悪魔の兵士は 国防軍の所有物だっ!お前のデコイを全て始末するぞ!?」
エルムが言う
「確かに 私の代えである デコイは 国防軍の所有物だ 好きにしろ」
アーケストが呆気に取られてから怒って言う
「ならばっ!デコイではなく 本体のお前を始末する!」
エルムが言う
「私の所有者は ヴォール・ラゼル・防長閣下だ 彼の依存なくして 私を始末する事は許されない」
アーケストが怒って言う
「ではっ お前を始末するように 父上へ申し上げるまでだっ!」
エルムがアーケストを蹴り飛ばす アーケストが驚いて突き飛ばされてから 上体を上げて言う
「おのれっ よくもっ!」
アーケストの言った先 先ほどまでアーケストの居た位置にマシンガンが放たれる エルムがM90を5連射して マシーナリー2を撃破する アーケストが倒れたマシーナリー2を見て呆気に取られる エルムが言う
「好きにしろ お前の依頼が受託され ヴォール・ラゼル・防長閣下より命令を受ければ 私は 私を始末する」
アーケストが歯痒んで言う
「…クッ 父上が お前を守ると分かっているから その様な事が言えるのだなっ」
エルムが言う
「そうではない 私は お前が ソロン・フレイス・メイリス警察長へ伝えた通り ”アールスローン戦記の原本を 所有する者を守るための道具” だ 必要が無くなれば 始末すれば良い」
アーケストが呆気に取られて言う
「何故 その言葉を 知っている?」
マシーナリー4の地響きがする エルムが視線を強めて言う
「追いつかれた」
エルムがフレイスを床へ置き M90を用意する アーケストがマシーナリー4とエルムを交互に見てから言う
「どうするつもりだっ!?」
エルムが言う
「お前たちは ここで待機しろ もう一度 奴の足を止める」
フレイスとアーケストを囲い エルムβ数人がM90を持って構える エルムがマシーナリー4へ向かう エルムβたちがPM70を構える アーケストがフレイスを見る

エルムがM90を放ち マシーナリー4を翻弄した後 PM70のもとへ来て 照準を合わせて放つ マシーナリー4が砲口を向けた状態から倒れる エルムが立ち上がって言う
「目標を拘束 今の内に…」
エルムが言葉の途中で一瞬目を見開くと 銃声が鳴る エルムが表情を戻して言う
「クリア ヴォール・アーケスト・ハブロス総司令官の 誤射を回避した」
エルムが振り返ると視線の先 エルムβがアーケストの銃を持つ手を掴み上げている アーケストがエルムを睨む エルムが視線を変えるとエルムβがアーケストの手を離す アーケストが言う
「何故 邪魔をするっ」
エルムがフレイスのもとへ向かいながら言う
「邪魔はしていない 誤射を回避した」
アーケストがフレイスの頭に銃口を向けて言う
「誤射ではないっ!」
エルムが言う
「理由を確認したい ヴォール・アーケスト・ハブロス総司令官 その構えで放たれた銃弾は 100%の確立で ソロン・フレイス・メイリス警察長の命を奪う」
アーケストが言う
「それで良い」
エルムが言う
「理由としての説明が 不足している」
エルムβがアーケストを見る アーケストがそれを横目に見て言う
「…彼がこのまま 生きて アールスローンへ戻れば メイリス家が 政府の長になってしまうっ」
エルムが言う
「そうだな」
アーケストが言う
「だからここで 殺す」
エルムが言う
「理由としての説明が 不足して…」
アーケストがエルムへ向いて怒って言う
「ならば教えてやる!私は メイリス家を 政府の長に したくないんだっ!」
エルムが一瞬置いて言う
「理由としての説明が…」
アーケストが怒って言う
「まだ分からないかっ!馬鹿な人形がっ!人権もないお前にっ!人の…っ 階級など 分からないのだろうっ!」
エルムが言う
「メイリス家の階級が ハブロス家の階級より低い為 お前は そのメイリス家の者が お前と同等の権力を有する事を 拒むのか?」
アーケストが言う
「それで良いっ 同じ事だ 分かったら邪魔をするなっ!」
エルムが言う
「お前の命令は 受託するに値しない」
アーケストが驚いて言う
「なっ!?」
エルムがフレイスを抱え上げて言う
「RTD560マシーナリーが再起動する前に 退避する」
エルムが走り出す アーケストが驚いて言う
「あっ!待てっ!」
アーケストが走り エルムβたちが走る

アーケストがエルムを追いかけて言う
「おいっ!待てと言っている!」
エルムが言う
「出口まで 残り15m このまま進行する」
アーケストが前方を見ると 外光が見える アーケストがエルムを見て視線を強める 銃声が響く エルムが目を見開き フレイスを庇いながら 勢いのままに前方へ倒れる 続いてエルムβたちが次々倒れる アーケストが立ち尽くす エルムの体の下に大量の血溜りが出来る エルムが呆気に取られつつ言う
「状況 説明… 後方より 銃撃を受けた 致命傷と 識別 …デコイを抜け 銃撃を受ける 可能性 は…」
エルムの頭に銃口が向けられる エルムが視線を向ける アーケストが言う
「心臓を狙っても意味が無かったか だが いくら悪魔の兵士であろうと 頭を撃ち抜かれたらどうだ?少なくとも 今日の記憶位は 消えてくれるだろう?」
エルムが瞬きをしてから 言う
「そうだな 今日の記憶は 消えはしないが 私が蘇る事はない」
アーケストが驚いて言う
「今日の記憶は消えないだと…っ!?…どう言う意味だっ!死ぬ前に答えろっ!」
エルムが言う
「その前に お前たちは退避しろ この身体では 奴を止める事は 出来ない」
アーケストが驚く 後方にマシーナリー4の地響きが響く アーケストが後ろを振り返ってから 改めてエルムの頭へ銃口を向けて言う
「ここでお前を殺さなければっ 父上がお前を蘇らせてしまうっ!そうとなれば 私は お終いだっ!」
エルムが言う
「今日の記憶は 私ではない 別の者に 記録されている お前は もう 戻れない だが ソロン・フレイス・メイリス警察長と共に 退避しろ」
アーケストが呆気に取られる エルムが言う
「お前が助ければ 問題ない」
アーケストがフレイスを見る 続いてアーケストが振り返るとマシーナリー4が見える アーケストがハッとすると 扉にシグナルが点灯し 扉が音を立てて閉まり始める エルムが言う
「急げ」
アーケストが走って向かうが 直前で扉が閉まる アーケストが驚き呆気に取られる エルムが視線を強めるとエルムβたちが立ち上がる フレイスが目を覚ましハッとする フレイスが立ち上がり周囲を見渡す アーケストが困惑しながら言う
「フ、フレイス…っ」
フレイスがアーケストを見てから エルムβたちに続き マシーナリー4を見て言う
「エルム少佐っ 私に力を貸して下さいっ お願いしますっ!」
フレイスがマシーナリー4を見て構える エルムがエルムβへ視線を向ける エルムβが言う
「『RTD560マシーナリーを倒すには 複数のPM70ライフルによる 同時射撃でなければならない この一撃で時間を稼ぐ お前たちは退避しろ』」
エルムβたちがPM70を構える フレイスが言う
「プラズマセイバーなら 一撃で仕留める事が出来ますっ!」
エルムがフレイスを見る エルムβが言う
「『そのセイバーでは エネルギーが足りない ここは私に任せ お前たちは退避しろ』」
フレイスが視線を強めて言う
「”貴方を置いてはいかれない… 我々は 仲間でしょう?少佐っ”」
フレイスが微笑してエルムを見る エルムが言う
「セリフを変えるべきだ 同じ事を 繰り返したくはない」
フレイスが言う
「今度こそ 成功させれば 良いんです!」
エルムが一度視線を逸らしてから戻して言う
「…そうだな」
フレイスがプラズマセイバーを構えて言う
「行きますっ!」
アーケストが呆気に取られている フレイスが声を上げながらマシーナリー4の注意を引き付けに走る エルムが立ち上がり PM70のメインポジションをエルムβと代わる エルムの視界の中 PM70ライフルのチャージゲージが動き完了を示す エルムが言う
「”チャージ完了”」
フレイスが言う
「”了解っ!”」
フレイスがマシーナリー4の挙動を操り PM70の射程範囲へ誘う フレイスが駆け出して叫ぶ
「父上の仇っ!今度こそっ!」
フレイスが地を蹴り マシーナリー4へプラズマセイバーを突き向けて叫ぶ
「やぁあーっ!」
プラズマセイバーがマシーナリー4のボディへ突き刺さる エルムが視線を強め引き金を引く PM70が放たれる フレイスがプラズマセイバーを手放し マシーナリー4から回避する マシーナリー4がフレイスへ顔を向けると 同時にプラズマセイバーへPM70のプラズマがジャストショットし 突き抜ける フレイスがそれを見て言う
「やったっ!」
マシーナリー4が間を置いて倒れる アーケストが後づ去る フレイスが叫ぶ
「やったっ!父上っ!仇は 私が 討ち取りましたっ!」
エルムが息を吐くと エルムβたちが倒れる フレイスが驚いて周囲を見る アーケストがエルムを見る エルムがM82を取り出し 上部へ向けて放つ アーケストが上部を見上げると 巨大なドアの上部に付いていた錠が持ち上がり ドアが僅かに開く エルムが言う
「退避しろ 追っ手が来る」
アーケストが表情を強めてドアへ向かう フレイスが向かおうとしてハッとして顔を向け 視線の先にプラズマセイバーを見つけ取りに向かう エルムがそれを見ていると視界が霞む エルムが言う
「… 血が 足りない… 軍曹… 私は ここで 死ぬ… まだ 必要 なら…」
エルムが倒れる フレイスがエルムの下に来て言う
「エルム少佐っ!?」
エルムが言う
「行け… 私は 問題ない 救護が 来る…」
フレイスが言う
「救護がっ?分かりました!では 私がここへっ!…ア、アーク?」
エルムが何とか顔を向ける ドアの外から アーケストが銃を向けて言う
「これで終わりだ フレイス そして エルム少佐」
フレイスが呆気に取られて言う
「な… 何を…?アークっ!?」
銃声が鳴る エルムが驚く エルムの横にフレイスが倒れ プラズマセイバーが落ちる エルムが驚き呆気に取られて言う
「”… メイリス 隊 長…”」
エルムの意識が遠ざかる エルムの手がフレイスへ向けられる 視界にジャミングが見える 意識が途切れる瞬間に ラゼルの声が聞える
「少佐ぁーーっ!」
エルムが微かに言う
「軍…そ… …」
エルムが息絶える

≪ 国防軍レギスト駐屯地 病室1 ≫

エルムがゆっくりと目を開く 医療器具の音 視線の先に輸血の点滴が見える エルムが瞬きをしてから言う
「”軍曹”」
エルムの視界にラゼルが顔を出し 敬礼して言う
「はっ!少佐ぁーっ!」
エルムが瞬きをして 僅かに手を動かして言う
「各部 異常なし 動力伝達障害率… 微量」
ラゼルが苦笑して言う
「申し訳ありません 少佐 帝国内へ連れ込んだ小隊隊員たちは 回収出来ませんでした 自分が連れて戻られたのは 少佐とメイリス警察長だけであります」
エルムが言う
「上出来だ」
ラゼルが微笑む エルムが言う
「デコイよりも 最後の1丁であった PM70が失われた事は 残念だ」
ラゼルが衝撃を受けて言う
「あ、あれは…っ その… 元々自分1人では持ち上げる事も出来ない 重量でありますし… ああっ!その代わりと言っては難でありますがっ!少佐ご愛用のM82は無事であります!」
エルムが言う
「他のと色が違うだけだ 気にするな」
ラゼルが衝撃を受け 焦りの汗を掻いて言う
「う… まぁ 実の所 こちらは少佐が死後硬直で 手を離されなかった事により 無事であった訳でありますが…」
エルムが言う
「了解」
ラゼルが苦笑して言う
「ああっ!そ、その代わりと言っては難でありますが!」
エルムが言う
「先に確認する 軍曹 この後 何度 ”その代わり”を用いる予定だ?」
ラゼルが苦笑して言う
「少佐も良く 同じ言葉を 使われるではありませんか?」
エルムが言う
「私は前言を撤回する意味で 同じ言葉を用いる事はしない」
ラゼルが苦笑して言う
「了解であります」
エルムが言う
「それで?」
ラゼルが言う
「はっ 実は… 偶然にして 警機の秘密兵器 プラズマセイバーを 手に入れてしまいました」
エルムがサイドテーブルへ視線を向ける サイドテーブルにプラズマセイバーが置かれている ラゼルが苦笑して言う
「これがあの帝国との戦いの最中であったなら ライム中佐やロンドス殿が喜んで解析をなされたはずであります」
エルムが言う
「持ち主へ返却するべきだ」
ラゼルが苦笑して言う
「少佐…」
エルムが言う
「持ち主へ返却するべきだ」
ラゼルが苦笑して言う
「…了解であります」
ラゼルが立ち上がり プラズマセイバーを手にとって 病室を出て行く

≪ 国防軍レギスト駐屯地 病室2 ≫

ドアがノックされ ラゼルの声が届く
「ラゼル軍曹であります!」
フレイスがイヤホンを付けていて 振り向いて言う
「どうぞ」
ラゼルが言いながらドアを開ける
「失礼致しますっ」
フレイスが微笑して言う
「防長閣下 …この度は 私の命を助けて頂き」
ラゼルが言う
「いえ!こちらこそ!私の息子が…」
フレイスが視線を一度逸らしてから 気を取り直してラゼルへ向いて言う
「きっと何か…」
ラゼルが強く言う
「2人も!お世話になりまして!」
フレイスが衝撃を受け疑問して言う
「はっ?…えっ!?ふ、2人…?」
フレイスの疑問する頭にアーケストの姿の後 間を置いてエルムの姿が浮かぶと 言う
「あっ ああ… エ、エルム少佐の 事…」
ラゼルが微笑んで言う
「はっ!どちらも 掛け替えのない 自分の息子たちであります!」
フレイスが苦笑した後言う
「え、ええ 私も… 父と共に 2代に渡り 防長閣下のご子息様には お世話になりました …今回は 偶然とは言え 父の仇をとる事も 出来ましたし その意味でも エルム少佐には 大変お世話になりました」
ラゼルが微笑した後 思い出して言う
「あ、そうでありますっ!そのエルム少佐から こちらをメイリス警察長へ お返しするようにと」
ラゼルがプラズマセイバーを取り出す フレイスが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「有難う御座います… と、言いたい所ですが ここは国防軍の駐屯地で 私自身 国防軍の方々に助けられた身です そのせめてもの恩返しと言いますか?どうぞ、そのプラズマセイバーは 国防軍で… 出来ればエルム少佐へお渡しして 何かのお役に立てて下さい」
ラゼルが呆気に取られる フレイスが微笑する ラゼルが喜んで言う
「おおー!それは 在り難いっ!実の所!国防軍やエルム少佐は 警機のこのセイバーの情報を 何とか得たいと あれよこれよと ご苦労されていたのであるっ!」
フレイスが軽く笑って言う
「では どうぞ…」
ラゼルが言う
「しかし!」
フレイスが疑問する ラゼルが言う
「少佐はこれを 持ち主へ返す様にと 自分へ 念を押して仰られたのだ!従って 自分は!その少佐のご命令に 従うのである!」
フレイスが呆気に取られる ラゼルが笑んでプラズマセイバーを向ける フレイスが苦笑して言う
「なるほど… 本当に 万能な方だ」
ラゼルが疑問して言う
「はぇ?」
フレイスが言う
「エルム少佐は 機動部隊の隊長であると共に とても秀才な方であると よく父から聞いていました」
ラゼルが疑問して言う
「は… はぁ?…うむ!確かに 少佐は 機動部隊の隊長であったと共に とても秀才である …それが?」
フレイスがプラズマセイバーを受け取り 分解しながら言う
「気付いておられたのでしょう」
ラゼルが見つめる先に フレイスが超小型盗聴器を見せて言う
「このセイバーに仕込まれた 盗聴器に」
ラゼルが衝撃を受けて言う
「なぁあっ!」
フレイスが盗聴器を外した状態で プラズマセイバーを元に戻して言う
「ですから どうか この状態にして エルム少佐へ渡して下さい これなら きっと 受け取ってくれますでしょう …但し」
ラゼルがプラズマセイバーを受け取った状態で フレイスを見る フレイスが言う
「私の最後の意識に残っている アークの… ヴォール・アーケスト・ハブロス総司令官の言動に付いては この盗聴器を通じ 記録していたものを 改めて確認させて頂きます」
ラゼルが呆気に取られた後視線を落とす フレイスが毛布を外すと身支度を整えた状態であり ベッドから出て言う
「私の救出と救護をして頂き 有難う御座いました ヴォール・ラゼル・防長閣下 この御恩は 忘れません」
フレイスが病室を出て行く ラゼルが閉められたドアを見る

【 現代 】

軍曹が困惑している ラミリツがノートPCを操作して言う
「これで終わり …どう?」
軍曹が視線を泳がせて言う
「あ… あの… そのぉー…」
ラミリツが言う
「言っとくけど 僕の父上は別に これで アンタたちの父上様の事 見限ったりなんか しなかったんだからね?それに 僕だって分かるもん それまで一度も実戦を経験した事の無い状態で… しかも いきなりマシーナリーでしょ?ビビっちゃうよ 普通」
軍曹がラミリツを見る ラミリツが苦笑して言う
「だから父上も この記録を聞いたって ハブロス家との繋がりは今まで通りにって この記録も 政府警察には持って行かずに隠してたんだ …いくら混乱してたとしても どんな理由があったにしても 国防軍の総司令官が 政府の重役を殺そうとしたんだもん これ知られると いくらアンタたちでも 結構やばいでしょ?」
軍曹が視線を落として言う
「う、うむ… 自分は その… あまり詳しくは無いのだが それでも 国防軍の重役が 政府の重役を傷つける事は… 勿論その逆も 絶対に犯してはならないタブーなのだ 両者は 陛下の命の下に共に力を合わせる事と 定められているのである それを破ったとなれば ハブロス家は国防軍から 永久追放を受ける可能性すらあるのだ」
ラミリツが言う
「ま、永久追放の方は 流石のハブロス家だもん 何とか免れる事ぐらいは出来るでしょ?けど… 父上が本当に手を打たなかったら ハブロス家の国防軍長の座は 1世代の交代だけじゃ済まされなかった筈だから …別に感謝しろとは言わないけどさ?現国防軍総司令官である アンタの兄上 ハブロス総司令官に悪く言われるのは 気に入らないなっ」
軍曹が困って言う
「う、うむっ それは全く持って ラミリツ攻長の言う事が正しいのだ 如何に馬鹿な自分であっても 恩を仇で返すなどと言う事は!」
ラミリツが言う
「けど、やっぱ アンタ馬鹿だから 分かってないみたいだけど」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はぇっ!?」
ラミリツが言う
「こっちもこっちで 今は うちの兄上が 結構 馬鹿な事やってるでしょ?で、その始末付けているの 全部 アンタたちの国防軍だから 今って丁度 痛み分けって所だと思う」
軍曹が呆気にとられて言う
「は… はぁ…?」
ラミリツが言う
「だからさ?これで一度 全部清算するって言うの どうかな?」
軍曹が驚いて言う
「は…っ?いやっ し、しかしっ ラミリツ攻長?」
ラミリツが言う
「そ、僕 攻長だから これからの戦いの為に やらなきゃいけない事 沢山有るんだ それで 正直 家同士の争いとか 政府と国防軍とか そう言うのに 構ってる余裕 全然無いんだよね 兄上も居ないしさ?」
軍曹が呆気に取られる ラミリツが言う
「アンタの兄上に オリジナルの方渡さなかったのは 別に これでハブロス家をどうしようとか そう言う事じゃないよ?大体 この話って 僕らより1世代前の話だから 今更出しても もう時効でしょ?カルメス殿の場合は 当時も本人だったから 同世代の事として使えたけどね?」
軍曹が疑問して言う
「そ、そうなのであるか?で、では… 何故?カルメス外交長… いや、現代で言えば 元長官にして元皇居宗主なのだが 彼はもう 獄中なのだ 今更これで脅しても…」
ラミリツが怒って言う
「だからっ 脅す為じゃないったら!人聞き悪いなぁ… そんなにメイリス家って 印象悪い訳?現攻長にして 元警察長の家だよ?”悪しきを制し 正義を貫け” これメイリス家の信条なんだけど?」
軍曹が衝撃を受ける ラミリツが溜息を付いて言う
「あぁ… でもそうだよね いくら養子縁組とは言え 長男である兄上が あーだもんね?」
軍曹が驚いて言う
「よ、養子っ!?…シェイム・トルゥース・メイリス元長官はっ メイリス家の養子であったのかっ!?」
ラミリツが言う
「そ、うち 母上が体弱くて 子供は無理だろうって言われてたんだって だから 早い内に養子を取ったんだけど 時間は掛かったけど 結局 僕が生まれたの …だったらさ?普通 実の子である僕の方が 可愛がってもらえるもんでしょ?普通?なのに… 父上は 兄上には優しくて 僕の方に メチャクチャ厳しくてさ?もー何度 僕の方が養子なんじゃないかって 出生届け確認した事か?」
軍曹が呆気にとられて言う
「な、なんとっ それはまた… そのー 何と言ったら良いか…」
ラミリツが言う
「ま、父上の気持ちも分からなくは無いけどね?何しろ自分の父親が 帝国との戦いで戦死してるでしょ?父上自身も早い内に 警察長に就任してそっちでも苦労してたし メイリス家の方も 守らなきゃいけないしで きっと心身共に強くなきゃいけないって考えたんだと思う …けど、僕としては もう少しは可愛がって欲しかったよね?母上も僕を産んで死んじゃったしさ?その母上の父上様である祖父上は 唯一僕に優しくしてくれたけど」
軍曹が表情を落として言う
「う、うむぅ… なるほど 聞けば聞くほど ラミリツ攻長が何故以前まで あれほど捻くれていたのかが 理解出来てしまうのだ…」
ラミリツが言う
「捻くれてた?」
軍曹が衝撃を受け 慌てて言う
「あっ いやっ そのっ!し、仕方が無いのだ それほどまでに ご苦労があったと言う事で…!?」
ラミリツが言う
「苦労ね…?ふふっ 違うよ」
軍曹が呆気にとられて言う
「へ?」
ラミリツが言う
「捻くれてたとか 苦労があったとか そう言うんじゃない ただ甘えてるだけで そう言う境遇だからとかって 言い逃れしてるんだ …って エルムに言われた」
軍曹が呆気に取られる ラミリツが微笑して言う
「ホント そう言うムカつく事 わざと言う奴なんだよね エルムって」
軍曹が衝撃を受ける ラミリツが笑って言う
「ふふっ でもね?そのくせ 今までで一番 僕の我侭を聞いてくれた人だったよ?結局 エルムが一番 甘いんだよね?あははっ!」
軍曹が呆気にとられて言う
「あ、あのエルム少佐を 甘いと言い切るとはっ す、すごいのだ… 自分には今 ラミリツ攻長が 最強に見えるのだっ」
ラミリツが言う
「だって、アンタも聞いただろ?この戦闘記録レコーダー エルムは アンタたちの父上様の事 全然疑わずに 背後から撃たれてるんだよ?あそこまで言い合ってたら 普通 気を付けるでしょ?」
軍曹が苦笑して言う
「いや… 自分はやはり 仲間だと思っている者から 銃撃されるなどとは 考えられないのだ …考えられないものに気を付ける事は やはり出来ないのである」
ラミリツが呆気に取られてから言う
「ん?そっか… あんな状態でも エルムは仲間だからって 信じてたんだ… じゃ、無理かな?…だとしたら 仲間に撃たれて 銃を突きつけられたエルムは 怖いと思ったかな?…きっと父上も」
軍曹が表情を落として言う
「う、うむ… きっと ラミリツ攻長のお父上も 自分らの父から銃を向けられ とても 怖かったはずである」
ラミリツが言う
「うん… あ、そう言えばさ?」
軍曹が疑問する ラミリツが言う
「アンタに言っても 関係無いだろうけど  僕の祖父上… 戦死した方の祖父上ね?マシーナリーに殺されたんじゃ 無かったんだって」
軍曹が驚いて言う
「なんとっ!?いや、しかし ラミリツ攻長のお父上が その仇を取ったと…!?」
ラミリツが苦笑して言う
「祖父上は 本当はそのマシーナリーを エルムと一緒に倒した後に …警機の隊員に撃たれて 死んじゃったんだって」
軍曹が驚いて言う
「なっ!?警機の隊員に!?い、一体何故!?」
ラミリツが言う
「その時もエルムが殺される前に 犯人を見ていたから 戦争が終わってから エルムとラゼル様が 密かに調べていて… で、父上に教えてくれたんだ お陰で父上はそいつを捕まえる事が出来たんだけど… その取調べで 出て来た名前が メルフェス・ラドム・カルメスだったんだよ」
軍曹が言う
「ではっ!?カルメス元長官がっ!?」
ラミリツが言う
「父上はそれを追求してたら 逆にやられちゃた… メイリス家の力で 高位富裕層を相手にするのは やっぱ無理だったみたい …だから 僕はもう やめて欲しかったんだけど 今度は兄上が 父上の仇を取ろうって この戦闘記録レコーダーで カルメス殿を相手にしてたの 丁度その頃だよ 僕がアンタたちと会ったの …で、なんとか 2代掛けて 祖父上と父上の仇は討ったのかな?代償は大きかったけどね」
軍曹が言う
「そんな代償を払ってまで 本当に仇をとる必要が あったのだろうか?自分には…」
ラミリツが言う
「あのカルメスは捕らえて 帝国との繋がりを示す物事が 2つ以上有るって言うのに 刑事罰を与える事も 帝国の情報を聞き出す事も出来ない …けど、アイツを捕らえる為にやってた事で メイリス家が政府の長になったって言うのは 何だか皮肉だよね?…それとも こうなる事が分かってたから ラゼル様やエルムは メイリス家が政府の長になるって話をしてたのかな?」
軍曹が困った後言う
「うむぅ~ 自分には やはり分からないのであるっ!」
ラミリツが呆気に取られた後苦笑して言う
「あぁ… ゴメン 別に良いよ これは メイリス家の話だもん ハブロス家のアンタには 全然関係ない話」
軍曹が顔を左右に振ってから言う
「そうでは無いのだっ 何故 家の為に 家族や仲間が失われなければならないのかっ!?家族や仲間は 守るべき者であるっ!家の為に犠牲にするなどと言う事は 有ってはならないのであるっ!」
ラミリツが呆気に取られた後 苦笑する

【 国防軍レギスト駐屯地 病室 】

ノートPCにメモリースティックが付けられている ハイケルが黙っている 軍曹がベッドの横の椅子に座っていて言う
「ラミリツ攻長や ラミリツ攻長のお父上様は 最初から自分たちの… ハブロス家の味方であったのであります しかし…」
ハイケルが言う
「攻長閣下が君へ話した事が 全て真実であるのなら 彼の兄である メイリス元長官さえ」
軍曹が言う
「あ… いや、その… 兄上殿の場合は 少々… 自分たち国防軍の隊員らや 人質となった者の命まで 犠牲にされてしまったのは やはり 許されるものでは 無いかと…」
ハイケルが言う
「そのメイリス元長官は 以前と現在に置いて 行動に違いが生じてきている 攻長閣下の話からすれば 以前の彼は 父親であったメイリス元警察長の仇である カルメス元外交長を摘発する事が目的であった筈 だが、それが果たされた現在の彼は 何故か その カルメス元外交長と同じく 帝国の味方となっている」
軍曹が驚いてハイケルを見る ハイケルが言う
「軍曹 この記録を聞いた 総司令官は何と言っているんだ?」
軍曹が言う
「兄は…」

【 回想 】

アースが言う
『攻長閣下よりご提供を頂いた この記録に関しては 一応明日早くにでも 専門家へ依頼を掛け 紛い物でない事を確認させる しかし、現状であっても この記録は信じるに値するものであると 私は思っている… とは言え』
軍曹がアースを見る アースが軍曹を見て言う
『お前がラミリツ攻長から聞いた そちらの話に関しては 私は信じる事はしない 従って 今後もメイリス家 …いや、攻長閣下の行いには 目を光らせるつもりだ』
軍曹が驚いて言う
『そんなっ!兄貴っ ここまで来て まだ兄貴はメイリス家を疑うのであるかっ!?』
アースが言う
『もちろんだ 現状メイリス家の者が政府の長官ではないにしろ 同等の権力を有する攻長である以上は 気を抜く事は許されない』
軍曹が怒って言う
『自分には その様な事は出来ないのであるっ ラミリツ攻長は 間違いなく 自分たちの仲間であるっ!』
軍曹がデスクを叩く アースが言う
『お前がそうしたいのなら そうすれば良い アーヴィン』
軍曹が驚く アースが言う
『私は お前が攻長閣下を信じる事へ対し 否定も肯定もしない お前はお前の考えの下に 行動をすれば良い』
軍曹が呆気に取られて言う
『し、しかし…っ』
アースが言う
『但し』
軍曹が反応する アースが軍曹を見て言う
『私もお前も ハブロス家の者 共に 国防軍の者だ 従って その2つを守る事だけは 決して忘れるんじゃない 分かったな?アーヴィン』
軍曹が言う
『そちらは もちろんなのだっ!』
アースが微笑して言う
『それなら良い …では、今日はもう遅い 話はこれで終わりにしよう』

【 回想終了 】

軍曹が言う
「やはり 兄は 自分とは異なり 今後も変わりなく行動をする様子で… その代わりと言いましょうか 自分には 自分の思うままに行動しろと」
ハイケルが言う
「では 総司令官は それなりに 君の実力を認めたと言う事だな」
軍曹が驚いて言う
「はぇっ!?」
ハイケルが言う
「君が攻長閣下を信じ 行動を起こさなければ この記録は手に入らなかった カルメス元外交長が 帝国の息の掛かった者であり 帝国は アールスローンの権力者を引き込み 内側から乗っ取る作戦だったのだろう だが、この記録が残され 結果として そのカルメス外交長を捕らえる事さえも出来た そして その後の メイリス元長官の行動の方は 現在では判断の付きかねる所ではあるが… 帝国が 捕らえられたカルメス外交長の代わりに メイリス元長官を使っているのか それとも…?」
軍曹がハイケルを見る ハイケルが言う
「それから 記録の中で エルム少佐が使っていた銃 RTD560マシーナリーを倒す事が出来る PM70と言っていたな?それから プラズマセイバー」
軍曹が言う
「あ、はぁ…?」
ハイケルが言う
「早速その2つの武器に関して調べる必要がある PM70は エルム少佐が使っていた銃である以上 恐らくロンドス殿が作り上げた銃だと思われるが 現状 それがどうなっているのか …後は プラズマセイバー こちらは恐らく 現在あの攻長閣下が使用している物だろう 時を経て メイリス家の者に返されたと言う事だろうが その間に データ位は取ってあるはずだ」
軍曹が言う
「なるほど…っ やはり 流石は 少佐であります!自分たちが行うべき事を 的確に見定めておられ 自分はとても心強いであります!」
ハイケルが言う
「当然だ 私は悪魔の兵士であり 国防軍レギスト機動部隊の隊長だ そうとなれば その私が 今 最初に行うべき事は!」
ハイケルがベッドから出る 軍曹が言う
「おおっ では、やはり ロンドス殿へPM70の確認を?」
ハイケルが言う
「軍曹 頼みがある」
軍曹が気合を入れて言う
「はっ!自分に手伝える事でありましたら 何なりとっ!」
ハイケルが言う
「よし では 早速 私と共に来いっ」
ハイケルが歩き出す 軍曹が続いて言う
「はっ!…して 少佐 自分は何を?」
ハイケルが言う
「書類に記入を頼みたい」
軍曹がハッとして言う
「少佐… 了解でありますっ して、書類とは…?一体何の?」
ハイケルが言う
「もちろん… 私の退院手続きの書類だ!君が来てくれるのを ずっと待っていたんだ 軍曹っ!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「は、はえっ!?そ、その為に でありますか?」
ハイケルが言う
「当然だ 隊員たちは見舞いや集まりで 毎日来てくれてはいたが その彼らの上官である私が 文字が書けないから 退院書類を代筆して欲しい等とは 言えないだろう!?」
軍曹が言う
「な、なんとーっ!?」

【 政府国民管理局 】

書類に記入がされ提出される 管理局員が書類を確認してから言う
「はい、これで シェイム・トルゥース氏は メイリス家から除名される事になります 書類の登録処理が終了致します 明日の朝までは 機械上の表示に お変わりはありませんが この書類の受託を持って 正式に除名されたものとします」
ラミリツが言う
「そ …じゃ 間違いなく 宜しく」
ラミリツが立ち去る 局員が立ち上がり礼をする 周囲に居た局員たちも礼をしていて見送り ラミリツが建物を出て行くと顔を上げ 周囲と顔を見合わせ 局員1が言う
「元長官だったとは言え やっぱり」
局員2が言う
「ああ、政府の代表 ラミリツ・エーメレス・攻長閣下の お兄様で置き続ける事は 出来ないんだろうな」
局員3が視線を落として言う
「でも ご自分のお兄様を 家名から追い出すなんて」
局員1と2が3を見てから 局員1が言う
「きっと 政府の重役会議とかで 決められた事なんじゃないか?」
局員2が言う
「攻長閣下の権限なら そんな重役たちの言葉なんて あしらう事が出来るだろ?」
局員1が言う
「だがなぁ?今や シェイム・トルゥースは国家犯罪人として 政府警察が追ってる人物だ その政府警察を動かす事も出来る攻長閣下の お兄様のままにって訳には いかないだろう?」
局員2が言う
「複雑だなぁ?」
局員1が言う
「だから けじめを付けたんだろ?これで政府警察も 気兼ねなく 国家犯罪人シェイム・トルゥースを追って 捕らえる事が出来る」
局員3が表情を落として言う
「やっぱり凄いのね 攻長閣下は…」

ラミリツが車の後部座席に座っていて 流れる外の景色を眺めている

局員4が言う
「元々シェイム・トルゥースはメイリス家の養子だったんだ これで メイリス家の主人は 本来の持ち主である 攻長閣下になる 攻長閣下はご自分の名家 メイリス家を守ったって事だろう?」
局員1が言う
「うーん だが その攻長閣下は 現在出家中だろう?いずれは攻長の任から下ろされて お家へ戻るだろうが それまでメイリス家はどうなるんだ?」
局員4が言う
「当主が不在の富裕層名家は 1世代の間凍結されるんだ メイリス家で言えば 今、当主であったシェイム・トルゥースが除名された事で 出家中の攻長閣下がお戻りになるまでは凍結さ」
局員1と2が苦笑して言う
「へぇー 知らなかった」 「俺も」
局員4が言う
「おい お前ら それでも国民管理局員か!?」
局員1が言う
「んな事言われてもなぁ?」
局員1が2へ同意を求める 局員2が苦笑して言う
「あぁ いくら 国民管理局員だって こんな複雑な処理をする事なんて それこそ1世代に1度 有るか無いかじゃないか?」
隊員1が頷いて言う
「そうそう」
局員4が言う
「そんなでもないさ 現に俺が知ってるのだって 俺の父親から聞いた話だ …とは言え その処理をやったのは 父の父 つまり 俺の祖父の時代って事になるが…」
局員1が言う
「それじゃ 2世代に1度じゃないかぁ?」
局員4が衝撃を受ける 局員1と2が笑う 局員4が不満そうに堪える 局員3が言う
「でも、2世代に1度でも こんな悲しい事があるのね… 名家からの除名処理なんて 女子局員たちの間じゃ 恋愛ごとの素敵な話でしか聞いたこと無かったのに」
局員1が苦笑して言う
「大体が 階級の下る恋人との駆け落ちで 親に勘当されてって言うのが お決まりだからな?」
局員4が呆れて言う
「あぁ それこそ 俺の祖父の代では 1世代に1度有るか無いかって位 珍しい処理だったらしい」
局員2が言う
「階級なんて あまり気にしなくなった今では 1、2週間に一件はあるもんな?」
局長が現れて言う
「それが時代の流れと言うものだろう」
局員たちが衝撃を受けて言う
「「きょ、局長っ!?」」
局長が言う
「さ、それが分かったら お前たちは今日もしっかりと丁寧にっ 国民管理局の仕事を行うように」
局員たちが慌てて席に戻りながら言う
「は、はいっ」 「しっかりと丁寧に」 「国民の大切な情報をお守りする」 「それが我ら 国民管理局ー!」
局長が満足げに頷いて言う
「うむっ!今日も国民管理局の その信条の下 しっかりと働きなさい!」
局員たちが返事をする
「はーい」
局長が立ち去る

【 国防軍レギスト駐屯地 通路 】

ハイケルが言う
「すまなかったな 軍曹 わざわざ同行させておきながら」
軍曹が微笑して言う
「いえ!少佐!どうかお気遣いなく!」
ハイケルがIDを確認しながら言う
「国防軍駐屯地内にて 悪魔の兵士は書類記述の全てが免除されていたとは… だが、少し考えれば 分かる事だった 悪魔の兵士はその存在自体が機密扱いであるため 可能な限り 存在を示すものを残さない事が好ましい それが理由で筆跡など 個人の特定に繋がるものが 元より書けない …のかもしれない」
軍曹が苦笑して言う
「しかし、まさか あのエルム少佐までもが 文字を書く事が出来なかったとは… 自分は20年以上も そのエルム少佐と家族でありましたが 今日の今日まで全く知らなったのであります!」
ハイケルが表情をゆがめて言う
「…家族か」
ハイケルがしまいかけていたIDを見て不満そうに言う
「退院処理をする予定が まさか退院書類の代わりに 新たなIDカードを渡されるとは…」
IDカードに ハイケル・ヴォール・アーヴァインの名前が記載されている ハイケルが溜息を吐く 軍曹が気付いて笑顔で言う
「ハブロスの家名は記載されておりませんが その歴代の家族を示すファーストネームが入れられておりますので!これで少佐は間違いなく ハブロス家の家族であります!」
ハイケルが言う
「複雑な心境だ… それは 更に言うのなら 私は あのエルム少佐とも 家族と言う事になるのだろう?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「おおっ!そ、そう言いませばっ!確かに…」
ハイケルが言う
「改めて 凄い家だな ハブロス家は… 一歩間違えば 悪魔の兵士を2人も所有する所だった… まさに無敵の」
軍曹が言う
「そのハブロス家を守る 現在の当主は 自分の兄であります!ですから 少佐はこれからは是非 同じ家族でもあります アース・メイヴン・ハブロスをも お守り頂きたいと!」
ハイケルが言う
「君の兄君は 国防軍総司令官だ 私はエルム少佐とは異なり 国防軍総司令官の命令には従う …予定だ …いくつか借りもあるしな」
軍曹が考えてから言う
「うーむ …では 少佐?折角でありますし 少佐さえ宜しければ 少佐もハブロス家の屋敷にて 暮らされますか?」
ハイケルが衝撃を受ける 軍曹が笑顔で言う
「祖父上も エルム少佐を 養子になさってからは ハブロス家へ招き 寝食を共にしておられました それでしたら少佐も?」
ハイケルが視線を逸らして言う
「いや、それは…っ 言うまでも無く 超高位富裕層のハブロス家へお招き頂ける事は 光栄に思うのだが… 私は奴と違って 感情の制限はされていない その為 …それなりに複雑な心境なんだ 今だけは 心身ともに図々しくあられた 奴の全てが羨ましいと思う」
軍曹が言う
「そう言えば エルム少佐は 国防軍へ召集されてから ハブロス家へお越しになる それまでの寝食は全て この国防軍レギスト駐屯地にて 行っていたそうでありますが 少佐は…?」
ハイケルが言う
「私も似たようなものだが… 食はともかくとして 何処で寝ていたんだ奴は?この駐屯地には 仮眠室さえないだろう?」
軍曹が言う
「仮眠室はありませんが 夜勤部隊の為の宿舎が」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「なぁ!?まさかっ!?いや、待てっ あの宿舎が使えるのは 言うまでも無いっ 当直の夜勤部隊だけだろう?」
軍曹が苦笑して言う
「それが全く持って そうなのでありますが エルム少佐は少佐とは異なり 基本的に 国防軍の規則には 従われない方であられたとか?」
ハイケルが衝撃を受ける 軍曹が続けて言う
「ですので 時に宿舎で 時に病室で 勝手に寝ていたそうであります」
ハイケルが怒って言う
「あの野郎ぉおおっ!何処まで図々しい奴なんだっ!」
軍曹が苦笑して言う
「まぁ 悪魔の兵士 でありますから?」
ハイケルが軍曹へ向かって言う
「私もそうですがっ!?」
軍曹が言う
「少佐も 確かに 悪魔の兵士でありますが… 正直 悪魔の兵士らしくは 無いのであります!従って… 自分は この際!もっと 少佐のお好きな様に振舞われても 宜しいのではないかと!」
ハイケルが言う
「そうか 了解だっ では 早速だが 軍曹!」
軍曹が言う
「はっ!少佐ぁっ!」
ハイケルが言う
「お世話になりますっ!」
軍曹が一瞬呆気に取られた後喜んで言う
「はっ!了解!どうぞ 是非とも お越し下さいであります!少佐ぁーっ!」

【 車内 】

ラミリツが外の景色を見ていて気付いて言う
「あ、ねぇ?悪いけど 政府本部に行く前に ちょっと寄りたいんだ 時間あるかな?」
執事が言う
「はい 15分程で宜しければ」
ラミリツが言う
「5分で良いよ あの教会に寄って?」
執事がラミリスの視線の先を確認して言う
「ヴェレッス教会で御座いますか?」
ラミリツが言う
「そ」
執事が言う
「教会へ寄られるのでしたら 政府本部の手前に御座います マリエスター教会の方が 攻長閣下に お似合いかと思われますが?」
ラミリツが言う
「ううん、あそこで良いんだ 行って?」
運転手が言う
「では 向かわせて頂きます」
執事が運転手を見てから ラミリツへ言う
「しかし… 攻長閣下 あちらのヴェレッス教会は 下層階級の… 現在は正規の神父も不在の教会でありますが…」
ラミリツが言う
「けど 管理はちゃんとされてるでしょ?正規の神父が不在じゃ 政府はやらないけど 国防軍が」
執事が苦笑して言う
「はい… ですので 差し出がましい様ですが 政府が管理しております 中層上層階級の教会の方が宜しいのではないかと… 元より 下層階級の教会は 教会とは名ばかりで ほぼ 孤児院の様な扱いとなっておりますので」
ラミリツが微笑して言う
「良いんだよ それでね」
執事が呆気に取られ困惑したまま言う
「は?はぁ…?」
執事が前方へ向き直り首を傾げてから ルームミラーでラミリツの様子を伺い見る ラミリツは窓の外を眺めている

【 ヴェレッス教会 前 】

車が到着し ドアが開けられる ラミリツが車を降りて言う
「ここで待ってて?すぐ戻るから」
執事が礼をして言う
「畏まりました 攻長閣下」
ラミリツが教会へ向かう 執事が疑問している

【 ヴェレッス教会 内 】

ラミリツが教会に入り歩いて行くと 子供たちが走り回っている ラミリツがその様子を見て微笑していると 前方から幼女の声が響く
「エルム エルムー!オルガン弾いてー!?」
ラミリツが反応して顔を向ける 教会のパイプオルガンの演奏席に 白い服を着た大人の背があり その横に幼女が居る 神父が幼女の近くへ来て言う
「シスター?エルムはもう おじいちゃんですから オルガンは 夕方に1度だけ お願いをしましょうか?」
幼女が言う
「エルムは おじいちゃんじゃないよ?神父様より お兄さんだよ?」
神父が苦笑して言う
「うんー… そうですねぇ?」
ラミリツが微笑して言う
「エルムは お医者様に元気にしてもらったんじゃ なかったの?」
幼女と神父がラミリツへ向き 幼女が言う
「あー!こうちょうかっかだー!」
ラミリツが微笑する 神父が一瞬驚いてから 礼をして言う
「これは これは 政府の攻長閣下 この様な小さな教会へ ようこそお越し下さいました」
ラミリツが幼女を見てから神父へ向いて言う
「ここへ寄らせてもらったのは これで2回目なんだけどね この前来た時は 丁度 あの演奏マリオネットが 修理に出されていて留守だったもんだから?」
ラミリツが幼女へ言う
「…エルムは元気になって 戻って来たんじゃないの?」
幼女が言う
「エルム元気じゃないのー 1日1回しかオルガン弾かないもんー」
ラミリツが神父を見る 神父が苦笑して言う
「修理はしたのですが なにぶん物が古いので その修理にも お金が掛かると言う事で… 出来るだけ使用回数を減らして 故障のリスクを減らそうかと…」
ラミリツが苦笑して言う
「何だ そんな事?この教会には 古くから多額の寄付をしている人がいるでしょ?確か… このマリオネットと同じ名前の?」
神父が苦笑して言う
「…はい 良くご存知ですね?それは この教会にとっての不思議の1つなのです 時に1世代ほど止まり 時に1世代ほど始まる しかし、例え最下層の1構想の名前とは言いましても 全く同じ”エルム”と言う名の 寄付者が現れるなど それこそ 神の奇跡か悪戯か…?」
ラミリツが微笑して言う
「きっとこの”エルム”が 自分を修理するためのお金を せっせと稼いでるんじゃない?フフフッ」
神父が呆気にとられて言う
「は?…あははっ それはまた 面白いお話で」
ラミリツがマリオネットの顔を覗き込んで言う
「ね?エルム?」
マリオネットの顔はエルムの同じ顔をしている 幼女が言う
「エルムー!こうちょうかっかも オルガン聴きたいってー!エルム エルムー オルガン弾いてー!」
ラミリツが神父を見る 神父が苦笑して言う
「仕方がありません シスターだけでなく 攻長閣下のご指名とあれば エルムも今日は 張り切って弾いてくれるでしょう」
神父が演奏椅子のレバーを数回回し手を離す マリオネットの手足が動き出し パイプオルガンが音色を響かせる 幼女が喜んでマリオネットを見る 神父が言う
「この教会の不思議の1つが この立派なパイプオルガンです この様な小さな教会に 何故これほど立派な物があるのか… 例え このマリオネットが どれほど上手に演奏をして見せたとしても 聴くのはこの小さなシスターや 音楽も分からない子供たちばかりなのですが」
ラミリツが言う
「いや 聞いてるよ ずっと… それこそ 生まれる前から ずっとね…?お陰で たった1人の演奏者が 10人もの仲間を動かせるんだ その皆の記憶の中にある このパイプオルガンの音色でね?」
神父が不思議そうに言う
「はぁ…?それはまた 不思議なお話ですが?…そちらは一体?」
ラミリツが微笑して言う
「アールスローン戦記の原本にある お話しだよ この教会は そんな特別な教会に よく似てる」
神父が微笑して言う
「なるほど アールスローン戦記のお話でしたか 流石は陛下の剣であらされる攻長閣下… しかし 申し訳ありません 私は 出来損ないとは言え 神に仕える者ですので 神の教えに反する アールスローン戦記に関しましては…」
ラミリツが言う
「そうだよね 僕もアールスローン真書を信仰する政府の人間だもん 神様が悪魔の兵士を認める アールスローン戦記は邪道だって教わって来た」
神父が微笑し軽く頷く ラミリツが言う
「だから さっきのは忘れて良いよ?けど、このマリオネットは このパイプオルガンを弾く為だけに ずっと昔に特注で作られたんだって?…だったら エルムには オルガンを一杯弾かせてあげたいんだ エルムの演奏は小さなシスターも お気に入りみたいだし… 僕も?お気に入りだから」
幼女が嬉しそうに頷いて言う
「おきにいりー エルムは シスターと こうちょうかっかの おきにいりー」
ラミリツが幼女に微笑する 神父が言う
「はい…」
ラミリツが神父を見て苦笑して言う
「それに そうしてあげないと エルムは怒って この教会への寄付を やめちゃうかもよ?他の教会のオルガンを弾きに 行っちゃうかも?」
神父が苦笑して言う
「それは 困りますね エルム様の寄付は この教会の大きな資金源と なっておりますから」
幼女が言う
「エルム またどっか行っちゃうのー?エルムはこうちょうかっかに お呼ばれすると とことこ歩いて行っちゃうのー」
ラミリツが呆気に取られる 神父が言う
「あっはは すみません 攻長閣下 シスターは このマリオネットが修理から戻った その前日に 一足早く エルムが戻って来たと言うのです そして しばらくシスターのお願いを聞いて このオルガンを弾いていたのだと…」
幼女が言う
「でも こうちょうかっかがお呼びしたら エルム オルガン止めて 歩いて行っちゃったのー」
ラミリツが微笑する 神父が苦笑して言う
「その日 私はこの教会を留守にしていたのですが きっと夢でも見ていたのではないかと… しかし これがまた不思議なのですが その時の演奏は シスターだけでなく 他の子供たちも聴いたと」
ラミリツが笑んで言う
「ね?だから 言ったでしょ?エルムはオルガンを弾かせてもらえないと 別の教会に行っちゃうんだって …そうなったら もちろん?寄付の先も 変更になるよね?」
神父が衝撃を受けて言う
「えっ!?そ… それは…」
幼女が言う
「大丈夫だもん エルム居なくなっちゃったら こうちょうかっかに お呼びしてもらうのー!そうしたら エルム とことこ歩いて戻ってくるのー!」
ラミリツが笑って言う
「うん そうだね?」
神父が呆気に取られてから苦笑して言う
「なるほど 攻長閣下の… そう言えば この教会の不思議の1つに この様なモノもありました」
ラミリツが疑問して言う
「ん?」
神父が言う
「下層階級の者が集う 政府に見放されたこの教会には 数世代に1度 何故か 政府の攻長閣下が オルガンの演奏を聴きに お越しになるのだとか…?もしや?」
ラミリツが微笑して言う
「さぁね?僕は知らないよ?僕は 悪魔の兵士じゃないからね?何度も蘇ったりなんか しないもの?」
神父が笑う 幼女が疑問して言う
「あくまのへーし?」
神父が言う
「あぁ… いやいや シスター?神に仕えるシスターが その名を口にしてはいけませんよ?」
ラミリツがマリオネットを見る マリオネットが演奏を終えて止まる ラミリツが微笑して言う
「さて、そろそろ 行かないと」
ラミリツが出口へ向かおうとする 神父が十字を切って言う
「ラミリツ・エーメレス・攻長閣下へ 神の祝福があらん事を…」
ラミリツが背を向けたまま苦笑する 幼女が言う
「こうちょうかっかー!」
ラミリツが振り返って言う
「うん?」
幼女が言う
「エルムを呼んでー!エルムが歩くの もう一度見たいー!」
ラミリツが言う
「え?あー…」
ラミリツがマリオネットを見てから 苦笑して言う
「エルムは我侭だから 言う事聞かないかもよ?」
幼女が笑って言う
「いいの いいのー!呼んで 呼んでー こうちょうかっかー」
ラミリツが微笑し マリオネットへ向いて言う
「”エルム 残念だけど時間だよ 行こうか?”」
幼女がワクワクしてマリオネットを見る マリオネットは身動きひとつしない 幼女が疑問して言う
「エルム 歩かないー」
ラミリツが言う
「ほらね?きっとまだ オルガンを弾いて居たいんだよ だからシスター また時々 神父様にお願いして?エルムにオルガンを弾かせてあげて って ね?」
幼女が微笑して言う
「うん!」
ラミリツが立ち去る 神父が苦笑して言う
「多額の寄付を行っているのは ”エルム”ではなく 時の攻長閣下なのでしょう… と言う事は その攻長閣下方は このパイプオルガンを好まれて?それとも…?」
神父がマリオネットを見る 幼女がマリオネットに言う
「エルムー!オルガン弾いてー!オルガンもっと弾いてー エルムー!」
神父が微笑して言う
「あっはは… では エルムに もっとオルガンを弾いてもらいましょうか?シスター」
幼女が喜んで言う
「うん!」
神父がレバーを回す マリオネットが動き出す シスターが笑んで言う
「良かったねー!エルムー!こうちょうかっかが お願いしてくれたから エルム いっぱい オルガン弾けるよー」
マリオネットが演奏を続ける

【 国防軍レギスト駐屯地 射撃場 】

隊員Fが視線を強め引き金を引く 激しい銃声と共にMT80が放たれ MT80を押さえていた隊員たちが悲鳴を上げる
「「ぐわぁっ!」」
隊員Fが続けて言う
「2打目っ!」
隊員Fが装填して視線を強める 隊員たちが支えに力を入れる 隊員Fが視線の先ターゲットがロックされると引き金を引く 激しい銃声と共にMT80が放たれ MT80を押さえていた隊員たちが悲鳴を上げる
「「ぎゃぁっ!」」
隊員Fが言う
「3打目!」
押さえていた隊員たちが慌てて言う
「ま、待ったぁっ!」
隊員Fが疑問して言う
「…うん?どうかしたのか?」
MT80を押さえていた隊員たちが脱力して言う
「無理だぁ~」 「キツイ~」
隊員Fが構えを解除して MT80を抑えていた隊員たちを見る 隊員Nが言う
「なぁ~?ザキルっちー?もうちょと 押さえに回る隊員に 優しい銃を作ってくれよー?」
隊員Mが言う
「だよなぁ これじゃ マシーナリーが壊れるのが先か 俺らが壊れるのが先か分からねーわ」
ザキルがノートPCを操作しながら困って言う
「うーん そうですか… やっぱり データ上の総力だけで押さえられるんじゃ 駄目なんだ… 爺ちゃんの言ってたのは こう言う事かぁ うーん…」
隊員Fが苦笑して言う
「あぁ 悪い 皆にそんなに負担掛かってるって 知らなくて」
隊員Aが言う
「いや、けど 凄いぜ?フレッド隊員」
隊員たちが疑問する 隊員Aが的を見る 隊員たちが隊員Aの視線の先を見て驚き 隊員Nが言う
「ジャストショットだっ!」
隊員Fが呆気に取られる 隊員Bが人知れずニヤリと笑んでから言う
「”上出来だ”」
隊員たちが衝撃を受け振り向く 隊員たちの視線の先 入り口付近に隊員Bが居て振り返って言う
「ですよねー?少佐ぁー?」
隊員たちが隊員Bの視線を追う ハイケルが微笑して言う
「大したものだな」
軍曹が微笑する 隊員Bが呆気に取られて言う
「あれー?」
隊員たちが表情を明るめて言う
「少佐!」 「少佐ー!」
ハイケルが隊員たちの下へ来る 隊員Fが言う
「少佐 お加減はもう宜しいのですか?」
隊員Bがハイケルの近くへ走って来て 笑んで言う
「”問題ない”」
ハイケルが言う
「ああ 悪くない」
隊員Bが疑問して言う
「あれー?」
ザキルが立ち上がって言う
「ハイケル少佐!入院してたって聞いて びっくりしましたよ!」
軍曹が近くへ来る ハイケルがザキルへ言う
「怪我自体は 大した事では無かったんだが 先代の我侭な悪魔の兵士のとばっちりを受け 半ば強制的に入院させられていた」
ザキルがぷっと吹き出して言う
「あっははっ なるほど 分かります!」
ハイケルが苦笑した後MT80を見て言う
「新しい銃か?」
ザキルが言う
「まだまだ試作途中ですが MT80です!MT77より少しだけ威力を上げて 警空から拝借した 目標捕捉レーダーをとりあえず 付けてみたんですが たったそれだけでも!」
ハイケルと隊員たちが的を見る ハイケルが言う
「その目標捕捉レーダーは やはり フレッド隊員でなければ 操作は難しいのか?」
ザキルが苦笑して言う
「多分そうだと思います 実は僕自身も使い方が分からなくて フレッド隊員に教えてもらおうかと思ってたんですが 取り付けただけで成功させちゃうなんて」
隊員Fが苦笑して言う
「いやぁ… でも、まさか本当に国防軍で 警空のレーダーを使う事になるなんて 驚いたけど 学んで置いて良かった… 俺に教えられる事だったら 何でも!」
ザキルが笑んで言う
「有難う御座います!助かります!」
ハイケルが言う
「警空から 拝借したと言うのは?」
ザキルが言う
「政府警察の武器開発チームにコンタクトを取って こちらのM82とM90の情報と引き換えに 警空の目標捕捉レーダーの技術を頂いたんです」
ハイケルが僅かに驚いて言う
「良かったのか?M82やM90の情報は お前たちにとっては 大切な財産だろう?」
ザキルが微笑して言う
「もちろんそうですけど ”技術と言う財産は 役立ててこその物 新たな力を手に入れる為の 礎になるのなら” …って 爺ちゃんに言われました!」
隊員Nが感心して言う
「すげー…」
隊員Bが笑んで言う
「ザキル君のお爺ちゃん カッコイイねー!」
ザキルが照れ笑いして言う
「はいっ!自慢の爺ちゃんですっ」
隊員たちが笑む ザキルが言う
「けど、その爺ちゃんには 自分以上の銃職人になれって言われてるんで 正直 プレッシャーですけど」
ザキルが苦笑する 隊員FがMT80を見ながら言う
「きっと越えられるよ 最初からこんな凄い銃を作ってるんだ 目標捕捉レーダーをもっと簡素化するか その大元のシステムを組み上げさえすれば きっと この銃を レギストの皆で使えるぞ?」
隊員Aが言う
「そいつは凄いなっ!」
ザキルが言う
「レーダーのシステムに関しては 俺だと手に負えないんで 専属のプログラマーを用意する事も考え中です」
ハイケルが言う
「専属のプログラマーを?」
軍曹が言う
「国防軍レギスト駐屯地の 情報部では出来ぬのだろうか?」
ザキルが言う
「プログラム自体は出来ない事は無いと思いますが やっぱり 一緒に開発していく仲間として 専属になってもらわないと難しいだろうって… 実は 爺ちゃんの時も 1人居たんです ライム中佐って方なんですけど」
ハイケルと軍曹が反応し軍曹がハイケルを見て言う
「ライム中佐というと… 少佐 確か あのレコーダー記録にあった」
ハイケルが言う
「恐らくその人物だろう 中佐 と言う事は やはり国防軍の者であった筈だが… 歴代の中佐軍階にその名前は存在しない エルム少佐の情報と共に消されたのか それとも…」
ザキルが微笑して言う
「ライムって言うのは そのお方のニックネームだったらしいです」
ハイケルが言う
「国防軍レギスト駐屯地の情報部では 良くある話だ」
軍曹が呆気にとられて言う
「ほぉ…?」
ハイケルが言う
「それで、当てはあるのか?」
ザキルが苦笑して言う
「それが ちょっとキビシくて… 爺ちゃんの時は この国防軍レギスト駐屯地情報部の主任だった そのライム中佐が エルム少佐の身勝手さに怒って 爺ちゃんの所に逃避して来たのが切欠で そのまま専属になってくれたらしいんですけど」
ハイケルが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「って事は 少佐ぁー!?」
ハイケルが考えて言う
「現状 マイク少佐を逃避させる訳には行かない その作戦は決行出来ないな」
隊員たちが衝撃を受ける ザキルが苦笑して言う
「ですよね?それに ハイケル少佐は エルム少佐と違って 他人を怒らせるほど 身勝手じゃないですし?」
ハイケルが他方を睨んで言う
「私は奴とは違って より 人らしい からな」
軍曹が苦笑する 隊員Aが言う
「けど、無茶苦茶な所は やっぱりちょっと… あっ」
隊員Bが笑う
「にひひっ アッちゃん 相変わらず…」
隊員Aが衝撃を受け ハイケルを見る ハイケルが言う
「無茶苦茶な所は 悪魔の兵士であるなら 普通の事だ」
隊員Bが疑問して言う
「あれー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「開き直ったっ!?」
ハイケルが言う
「専属のプログラマーに関しては 私の方でも伝を当たってみる」
ザキルが喜んで言う
「助かります!宜しくお願いします!ハイケル少佐!」
ハイケルが言う
「ああ…」
隊員Bがふと気付いて言う
「あれー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「どうした バイスン隊員」
皆が隊員Bを見る 隊員Bが言う
「少佐は 軍曹のご子息になられた訳ですしー これからは 敬称に名前を付ける時は 3構想のフルネームで呼ぶのが 正しいのでありますよねー?」
ハイケルが衝撃を受け視線を逸らして言う
「願わくば 敬称だけで 呼んでくれ」
隊員Bが笑って言う
「あっはははっ 了解でありますー!少佐ぁー!」
ザキルが衝撃を受けて慌てて言う
「あっ そっかっ やべっ 3構想の中層階級の方だっけっ え、えっと~」
ザキルがメモを漁る ハイケルが言う
「願わくば 敬称だけで 呼んでくれ」
ザキルが衝撃を受け 苦笑して言う
「あー っはははっ りょ、了解でありますー!少佐ぁー!」
隊員Bが反応して言う
「あーザキル君 今 俺の真似したー!?」
ザキルが照れ隠しに頭を掻いて言う
「えっへへ やっぱり 最初って 何か照れるんで~」
軍曹が笑顔で言う
「少佐も エルム少佐の真似は封印すると仰っていましたが 先ほどのは紛れも無く エルム少佐直伝 同じ言葉で強調作戦 でありましたね?少佐ぁ?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「ぐっ…!…いや、気のせいだろう 私の記憶には無い」
軍曹が苦笑して言う
「口癖と言うものは 真似をしている内に 自然と自分の癖になって行ってしまう物であります!少佐は ご自分の癖として ご利用になられても宜しいのではないかと!」
隊員Bが言う
「そうでありますー!俺も 少佐の口癖は 少佐の技だと思っていたでありますー!」
ハイケルが不満そうに言う
「私は 奴の真似ではなく あくまでレーベット大佐の真似を…」
ハイケルが気を取り直して言う
「いや、そんな事よりも 今は PM70の事を確認しなければ」
隊員Aが言う
「PM70?」
ハイケルがザキルへ向いて言う
「ロンドス殿へ伺うつもりだったのだが お前も知っているか?」
ザキルが驚いて言う
「あ… いや、ハイケ… いえ、少佐の口から その銃の名前が出るとは驚きました PM70は今から12年前に 最後の1丁を紛失して 無くなってしまった銃なんです」
ハイケルが言う
「ああ、訳あって その事は知っている …それで、その銃の再製造は出来ないのか?」
ザキルが言う
「銃自体は作れるんですが 問題はそこに充填する 超高温プラズマの方で この技術は 警機のトップシークレットなんです 手に入れようと思ったら それこそ警機の基地へ向かわないと」
ハイケルが言う
「以前はどうやってそれを?」
ザキルが苦笑して言う
「はい、それは エルム少佐が…」
ハイケルがそっぽを向いて言う
「聞かなかった事にする」
隊員たちが苦笑する

【 マスターの店 】

マスターが言う
「超高温プラズマ製造システムかぁ~ あれはなー… 残念だが 俺でもお手上げだ」
ハイケルが不満そうに言う
「何故だ?警機の技術を盗み見る事くらい お前なら大した事ではないだろう?」
マスターが言う
「あれは 元々警機や政府警察の武器開発チームが作り上げた技術じゃなくて 発掘したロストテクノロジーなんだ だから 警機も武器開発チームも解析なんかは出来てなくて ただそのシステムで作られる 超高温プラズマを抽出しているだけだって噂だ」
ハイケルが考えてから言う
「では 我々がそれを 手に入れようと思ったら?」
マスターが言う
「物はロストテクノロジーだからな 目標捕捉レーダーとは違って 国防軍やお前専属になった銃技師の情報位じゃ 釣り合わない」
ハイケルが言う
「では こんな時こそ ハブロス家の財力で」
マスターが苦笑して言う
「うーん いくら掛かるかは 正直想像も出来ないが ハブロス家であっても 簡単なものじゃないと思うぜ?」
ハイケルが言う
「…だろうな しかし、帝国との戦いには 必要不可欠な力だ どうあっても手に入れたい」
マスターが言う
「ちなみに、以前はどうやって 手に入れてたって?」
ハイケルが視線を逸らして言う
「だから さっき話しただろう エルム少佐が…」
マスターが言う
「ああ、エルム少佐が …どうやって?」
ハイケルが言う
「…知らん 奴の事だ どうせ 力ずくか何かで」
マスターが苦笑して言う
「おいおい そんな思い込みで 重要な所を聞き逃すなよ?」
ハイケルが言う
「お前に聞けば 何とかなると思っていたんだっ ”悪かったな”」
ハイケルがハッとして衝撃を受け視線を逸らし コーヒーを飲む マスターが軽く笑って言う
「っはは 別に そんな毛嫌いする事無いだろ?エルム少佐は お前にとっては 良き大先輩じゃないか?」
ハイケルが不満そうに言う
「前レギストの隊長であった事から 先輩である事は認めるが 何処が 良き なんだ?国防軍の隊員でありながら 総司令官の命令には従わない 国防軍の規則には従わないと そんな身勝手で図々しい奴がっ」
マスターが笑んで言う
「その人に 教えられ 助けられた奴が 何を言ってるんだかねぇ?」
ハイケルが立ち上がって言う
「もう良いっ …とにかく 今は 警機の持つ超高温プラズマ製造システムが必要なんだ 技術を盗めないとなれば 買い取るか 提供を願い出るか どちらにしろ 必要なのは金だろう 軍曹に… いや、額を考えれば ここは直接 ハブロス家当主である アース・メイヴン・ハブロス総司令官へ願い出るしかない」
ハイケルが歩き出す マスターが笑んで言う
「ちゃんと可愛く おねだりするんだぞー?ハイケルー?」
ハイケルが振り向かずに言う
「出来るかっ」

【 道中 】

ハイケルが歩きながら溜息を付いて言う
「…とは言え 今まで何かを仕入れるのに 指示や命令で行った事はあるが 流石に 総司令官へその様にする事は出来ない… 下手をすれば 国防軍から除名… 更には ハブロス家からも除名させられ 俺は… 廃棄物として処分されるのか?」
ハイケルが表情を顰めてから顔を左右に振って言う
「いや、何を考えてるんだ 大体 俺を除名して困るのは 国防軍の筈だっ 帝国との戦いがある以上 悪魔の兵士は必要で… うん?」
ハイケルが通り掛った公園の園内を見て足を止める

【 公園 】

公園の花壇の前 マリが表情を落とししゃがんでいる ハイケルが言う
「マリーニ・アントワネット・ライネミア・アーミレイテス」
マリが一瞬驚き 振り返ってから 微笑して立ち上がって 言う
「あ、ハイケル君…」
ハイケルが言う
「ここで何をしている」
マリが苦笑して言う
「うん… この花壇にね 育てられなくなってしまった お花を 植えておいたのだけど…」
ハイケルが花壇へ視線を向ける 花壇にはチューリップの花が咲き乱れている マリが苦笑して言う
「いくら皆の公園だからって 勝手に植えちゃ駄目だったみたい 他のお花に 変えられちゃってた」
ハイケルが言う
「公園の管理運営は 政府の国土管理局が行っている その季節にあった植物を 一定期ごとに植え替えているらしい」
マリが苦笑して言う
「そうなんだ 知らなかった… ハイケル君 そう言う事も知ってるんだね 凄いね… 私なんて 何も知らなくて 大好きなお花も 守ってあげられなかった… ハイケル君だったら あのお花たちも 守ってあげられたんだね」
マリが花壇へ視線を向け表情を落とす ハイケルが言う
「俺はその情報を知っていても 花を守るつもりは無い 例えあの花が お前の植えたものであったとしても そのお前が 手を掛けられない間を 代行するつもりも無い」
マリが苦笑して言う
「そうだよね ごめんなさい 変な事言っちゃって… 警察に居る間も ずっと心配はしてたんだけど 良いお天気が続いて お水も上げに来られなかったから もしかしたら 枯れちゃってたのかも…」
ハイケルが言う
「枯れてはいない」
マリが呆気に取られて言う
「え?」
ハイケルが身を向かせて言う
「公園の情報を調べるつもりも 水をやるつもりも無いが 行くべき場所を 案内ぐらいはしてやる 付いて来い」
ハイケルが歩き出す マリが呆気に取られた状態から慌てて追い掛けて言う
「行くべき場所って?…待って ハイケル君っ」

【 店頭 】

マリが驚く マリの視線の先 店頭の花壇にマーガレットの花が咲き乱れている ハイケルが言う
「お前が あの公園に居るのを 何度か見かけた ついでに 隣接する公園にある花壇を 整備しているのを見かけたと 俺はそれを話しただけだ 国土管理局の情報を調べろなどと 言ったつもりはないが 翌日には公園の管理がどの様になっているかの その情報を聞かされた」
ハイケルが店のドアを開ける マリが慌てて言う
「あっ!」
マリが慌てて窓の近くから身を隠す 店内からマスターの声が届く
「ん?どうしたー?ハイケルー?」
ハイケルが店内へ向かって言う
「あの公園で」
マリが慌ててハイケルを止めたそうにする ハイケルが言う
「…お前に聞き忘れていた事を思い出した」
店内からマスターの声が届く
「うん?なんだ?」
ハイケルが言う
「お前の知る者で 銃開発の専属プログラマーに なれそうな奴はいないか?伝があるなら 当たって欲しい」
店内からマスターの声が届く
「うーん そうだなぁ… 分かった なら少し聞いてみる」
マリがマスターの声を聞きながら胸を苦しませている ハイケルが言う
「宜しく頼む」
店内からマスターの声が届く
「ああ …とは言え あんまり期待しないでくれ 俺と同期の奴は まだ皆その方で現役だから 大した伝は無いんだ」
ハイケルが言う
「だろうな 期待はしないが 返答は待っている …ずっとな?」
マリが驚く 店内からマスターの疑問した声が届く
「は?ずっと?」
ハイケルが言う
「お前の真似をしてみただけだ 伝説のマーガレット中佐 花言葉はお前に良く似合っている」
マリが呆気に取られている 店内からマスターの声が届く
「花言葉?…あぁ 何だよ?今日はまた自棄に遠まわしな恥ずかしい言い方するなぁ?俺とお前なら”信頼”かぁ?っははは …けど、伝の方は期待しないでくれって言ってるだろ?折角の花言葉を あんまり無駄使いするなって」
ハイケルが言う
「そうだな …俺の用は それだけだ」
店内からマスターの声が届く
「なんだ それ位なら電話でもすれば良かっただろう?わざわざ戻って来なくとも…」
ハイケルが押さえていたドアを離そうとする 店内からマスターの声が届く
「まぁ良い じゃあな ハイケル」
ハイケルが言う
「ああ…」
店内でマスターが作業に戻る ハイケルが視線を変えて言う
「これ以上手を貸すつもりは無い 奴は 名前だけとは言え高位富裕層のお前とは違う …花を植える場所が欲しいのなら お前から願い出るべきだ」
マリがハイケルを見る ハイケルがドアから手を離して立ち去る マリがハイケルを見つめてから ハッとしてドアを見て ドアが閉まる直前に意を決して手を掛ける

【 マスターの店 】

マスターが作業をしていると 店の来客鈴が僅かに鳴る マスターが疑問して顔を向けて言う
「うん?ハイケルか?まだ何か…?っ!?」
マスターが呆気に取られる マリがマスターを見てから一度視線を逸らし 意を決して顔を向け苦笑して言う
「き、来ちゃった…」
マスターが呆気に取られた状態から微笑して言う
「なるほど?お供のハイケルが 連れて来てくれたのか… お帰りなさい!お姫様!」
マリが呆気に取られてから微笑して言う
「ただいま!王子様!」
マスターとマリが笑う

【 ハブロス家 アースの部屋 】

アースが言う
「それは出来ないな ハイケル少佐」
ハイケルが衝撃を受けてから 表情を困らせて言う
「何故だっ 警機のトップシークレット 超高温プラズマ製造システムの力を得られなければ RTD560マシーナリーは倒せないっ お前も知っているのだろう 過去エルム少佐が使っていたPM70の銃に必要な力だ 銃本体だけの製造は可能だが 警機の持つ その力を充填出来なければ 完成はしない」
アースが言う
「話は分かった だが ロストテクノロジーの力を借り受けるとなれば その費用は予想だに出来ない …いや、そもそも 彼らはいくら金を積んだ所で 良い返事はしないだろう ロストテクノロジーとは それほどの価値がある」
ハイケルが表情を困らせて言う
「では どうしたら…」
ドアがノックされ 軍曹の声がする
「兄貴 話があるのだが」
ハイケルが振り向く アースが言う
「ああ、入れ」
軍曹がドアを開ける アースが言う
「お帰り アーヴィン 丁度良かった」
軍曹が疑問する アースが言う
「お前の息子が 私を尋ねて来ていた所だ」
軍曹が疑問してふと横を見て驚いて言う
「のぉおっ!?少佐ぁーっ!?」
ハイケルが顔を背けて言う
「お… お帰りなさいませ… お父様…」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが羞恥に堪えている アースが笑って言う
「っはははっ エルム少佐と違って 初世代の悪魔の兵士は 素直で可愛いな アーヴィン?」
軍曹が衝撃を受け慌ててアースへ言う
「あ、兄貴っ!少佐に 女子の挨拶を教えるのは 止めて欲しいのであるっ!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?」
アースが軽く笑って言う
「どうせ男子しかいない家なんだ この際 女子の挨拶を教えても良いだろう?本来 物に性別などは無いのだからな?」
ハイケルが衝撃を受け 頬を染めつつアースへ怒りの視線を向ける 軍曹が慌ててハイケルを押さえて言う
「兄貴っ!少佐を物と言うのは 止めてくれと言っているのだっ!それから 少佐は 同じく悪魔の兵士であった エルム少佐と違って 確かに 小さく 可愛いらしいが 決して女子では無いのであってっ!」
ハイケルが衝撃を受け 軍曹を殴り飛ばし 怒って立ち去る 軍曹が殴られた頬を押さえて 疑問して言う
「な、何故 少佐を擁護した自分が!?しょ、少佐?少佐ぁー!?」
アースが笑っている
「あっはははは…っ!」

【 ハブロス家 通路 】

ハイケルが怒りながら歩いている 軍曹が追いかけて来て言う
「少佐ぁー!お待ち下さいーっ 少佐ぁー!」
ハイケルが立ち止まり息を吐く 軍曹が追いついて言う
「少佐っ じ、自分の兄が失礼を致しまして!し、しかし そのっ 兄は決して わ、悪気があった訳ではっ」
ハイケルが言う
「ああ 分かっている!恐らく 私の大先輩である エルム少佐への 長年の恨みでもあるのだろう!同じ悪魔の兵士として… 同じ居候として 仕方なく 受け止めはするが…っ」
軍曹が苦笑して言う
「は、はぁ…?さ、流石 少佐でありますっ!なんと お心の広い!」
ハイケルが軍曹へ向き直って言う
「だがっ その私をここへ招いた 君までもがっ 私へ 恨みをぶつける事は無いだろう!?」
軍曹が疑問して言う
「は… はぇっ!?じ、自分が!?自分は 決してっ!そのような事をするつもりはっ!」
ハイケルが怒って言う
「ではっ 先ほどのは何だっ!?」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「はっ!?じ、自分が何かっ!?」
ハイケルが気付き息を吐いて言う
「もう良い…」
ハイケルが歩き出す 軍曹が慌てて追って言う
「あ、あのっ!少佐ぁーっ!?自分が何か 間違った事を致しておりましたらっ しかと謝罪を致しますのでっ!」
ハイケルが言う
「結構だっ 私は エルム少佐より 小さくとも足が速いと バイスン隊員に 褒めてもらったからなっ」
軍曹が追いかけながら言う
「は、はっ!確かに 足はお速いかとっ しかし 何も 自宅の中を それほど急いで歩かれずともっ」
ハイケルが言う
「更に あの図々しい エルム少佐に比べれば 私の方が よほど!か…っ 可愛くもっ あるのだろうっ」
軍曹が気付き笑顔で言う
「あ、はいっ!少佐は 男子にしては とても可愛いらしいと!自分は予てより…」
軍曹の真横の壁が殴られ壁に亀裂が入る ハイケルが怒って立ち去りながら言う
「悪魔の兵士が 可愛いらしくてたまるかっ!」
軍曹が苦笑して言う
「しょ… 少佐は その事を お怒りで…」
軍曹がハイケルへ追いついて言う
「しょ、少佐っ 先ほどは 失礼を…っ」
ハイケルが言う
「分かってくれたのなら良いんだ 軍曹 やはり君には 頭で分からせるより 体で分からせる方が 飲み込みが速い様だな」
軍曹が苦笑して言う
「あ… はぁ… し、しかし!これでも大分 頭で理解する事も 出来る様になって参りましたのでっ 出来れば 今後はその… 頭… と言いますか 言葉にて教えて頂けますと… その方が… 屋敷の破損等も 無く済みますかと思われますので」
ハイケルが言う
「そうだな 了解したっ」
軍曹が苦笑する ハイケルが立ち止まって言う
「所で 軍曹」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!少佐ぁっ!」
ハイケルが言う
「私は何処へ向ったら良いんだ?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はっ …はぇっ!?」

【 ハブロス家 ハイケルの部屋 】

軍曹が言う
「特にどちらの部屋であっても 構いませんが 宜しければこちらを ご利用下さい」
ハイケルが軽く周囲を見てから言う
「高位富裕層の屋敷に世話になった事はある 従って 一通りの知識は備えているつもりだが… 何かハブロス家特有の事などはあるのか?」
ハイケルが室内へ入る 軍曹が言う
「いえ 特にそう言った事はありませんかと?」
ハイケルが周囲を確認しつつ言う
「了解」
軍曹が言う
「自分の部屋は 先ほど通りました 通路の中ごろであります それと 何か必要がありましたら ご遠慮なく 自分や使用人へ」
ハイケルが部屋の一角を見て気付いて言う
「うん?」
軍曹が反応して言う
「少佐?」
ハイケルが部屋の一角へ向かいながら言う
「変わってるな ここは通常の客間と言った所だろうが その部屋に?」
ハイケルがオルガンを見て疑問する 軍曹が気付いて苦笑して言う
「あ はい、そちらは 以前この部屋を ご利用であられた エルム少佐のご希望で」
ハイケルが驚く 軍曹が微笑して言う
「少佐も 何かご希望が御座いましたら 何なりとお好きな物を!」
ハイケルが言う
「いや… 特に私には そう言った趣向は無いが… あのエルム少佐の希望がこれか?」
ハイケルがオルガンの鍵盤を1つ押す 軍曹が言う
「祖父上がいらした屋敷の方には もっと立派な 本格的なパイプオルガンが備えられております 自分も何度か聞きましたが エルム少佐はオルガンの演奏がとてもお上手で… あっ?ちなみに少佐は?ヴァイオリンやエレキギターをあれほど お上手に弾きこなされると言う事は もしや オルガンも?」
ハイケルが言う
「いや 一度でも見れば可能だが オルガンの演奏は見た事が無い為 一曲も出来ない」
軍曹が言う
「そうでありますか …しかし 一度見れば弾きこなせるというのは 本当に凄い能力であります」
ハイケルが言う
「確かに便利ではあるが 逆を言えば 見た事の無い技術や 別の曲を弾く事は出来ない 私は譜面を読む事も出来ないからな」
軍曹が疑問して言う
「なるほど …ん?いや しかし 確か?自分は以前 エルム少佐へ譜面を渡し 弾いて頂いたような…?」
ハイケルが衝撃を受け 不満そうに言う
「優秀な 2世代目の悪魔の兵士である エルム少佐ならっ」
軍曹が衝撃を受け 慌てて言う
「のあぁっ!?い、いやっ!少佐っ 少佐は決してっ!」
ハイケルがそっぽを向いて言う
「良いんだっ 別にっ!」
軍曹がハッと思い出し 慌てて言う
「あ!いえっ!しかし 少佐っ!エルム少佐も 自分が渡した譜面を読めはしましたが 演奏は オルガンでしか出来ないと!」
ハイケルが軍曹を見て言う
「うん?そうなのか?」
軍曹が苦笑して言う
「は、はいっ 自分がお願いしたのは エレキギターの譜面でありましたが ギターは弾けないと 断られてしまったのであります その点に置きましては エルム少佐より少佐の方が 優れていらっしゃるかと!」
ハイケルが悪笑んで言う
「ほぅ…?ふ… ふふ…っ ふふふふ…っ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「しょ、少佐… 何だかとっても嬉しそうで…?自分は…っ 自分も嬉しいような?何故か… 寂しいような…?実に 複雑な心境でありますっ!」

【 ハブロス家 食堂 】

アースが言う
「それは 弾けないのではなく 弾きたくない と言う意味だったのだと 私は思うのだが?アーヴィン?」
ハイケルが衝撃を受け怒りを堪える 軍曹が慌てて言う
「え!?いやっ しかしっ 確かに 演奏はオルガンで 聞いたのだがっ!?」
アースが料理に手を付けながら言う
「エルム少佐は万能でありながらも 果てしなく我侭だったからな お前の頼みを了承しただけでも 大したもの… いや、たまたま 気が向いただけだったのかもしれないぞ?」
軍曹が困って言う
「う… うむ…」
ハイケルが言う
「帝国との戦争の最中で無ければ その様なモノは ハブロス家は勿論 国防軍からも 即刻追放されていただろう」
軍曹が苦笑して言う
「いえ 帝国との戦争の最中では無くとも 恐らく 祖父上は…」
アースが言う
「エルム少佐は 国防軍から追い出せば 警機へ ハブロス家から追い出せば 政府の元攻長の屋敷へでも 招かれていただろう」
ハイケルが驚いて言う
「それは どう言う意味だ?」
アースが言う
「そのままの意味だ エルム少佐は国防軍の者が見つけ出す以前に 数世代前の政府の攻長に目を掛けられていたのだそうだ 一足先に 国防軍が召集を掛けなければ 彼はその攻長に引き取られ 警機へでも入隊していただろう 現に エルム少佐は国防軍へ入隊してからも その攻長とは縁を保っていた」
ハイケルが驚いて言う
「そうなのか… うん?では もしやっ!?」
アースが言う
「お前が先ほど私の部屋を訪ね話していた 警機のトップシークレット その装置を過去に借り受けられたのも 恐らく エルム少佐の そちらの伝を頼ったのだろう」
ハイケルが視線を落として言う
「では 現在装置を借り受けるのに 同じ方法は出来ない… 金でも無理となれば どうしたら…?」
アースが言う
「やはり伝を使う他に無いだろうな?」
ハイケルがアースを見て言う
「だが 私は 奴とは違い 警機には… いや そもそも政府の者と その様な関わりを持った事などは」
軍曹が言う
「ではっ 自分が!ラミリツ攻長へ!」
ハイケルが一瞬驚いて軍曹を見る アースが言う
「ああ それで良い エルム少佐や祖父上も ともすれば そちらを見越して 攻長閣下へ恩を着せていたのかもしれないな?」
ハイケルが呆気に取られる 軍曹が怒って言う
「兄貴っ いつも言っているがっ ラミリツ攻長が エルム少佐や祖父上を敬愛して下されている事もっ 逆に エルム少佐や祖父上が ラミリツ攻長を可愛がって居られたのも そう言った 下心があっての事では 決してないのであるっ!」
アースが苦笑して言う
「そうか 構わない お前はお前の好きな様に考えると良い そのお前のお陰で 装置の借り受けも きっと上手く行くだろう」
軍曹が不満そうに身を静める ハイケルが視線を逸らし食事を続ける

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員Fが叫ぶ
「通常訓練の1!開始ーっ!」
隊員たちが腕立てを開始する 隊員達が顔を見合わせて言う
「今日は軍曹居ないな?」
「少佐が居て 軍曹がいないって言うのは 何だか久しぶりだな?」
「最近は 軍曹 殆ど防長閣下は してなかったみたいだけど 久しぶりに招集でも掛かったかな?」
「そうかもな?そうじゃなかったら 少佐が居て軍曹がいないって言うのは無いもんな?」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルが隊員たちを一瞥してから 視線をいつも軍曹がやってくる方へ向ける

【 政府警察本部 武器開発局 】

局員が言う
「では こちらを」
局員がディスクを向ける 軍曹が疑問し受け取りながら言う
「これは…?」
ラミリツが言う
「簡単に言えば 設計図だよ 容器のね?」
軍曹が疑問して言う
「容器の?」
ラミリツが言う
「そ 超高温プラズマを分け与えるには その容器が無いと駄目なんだって だから アンタはまず その設計図を持って帰るの …プラズマをあげるのは その後だよ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はぇっ!?」
局員が苦笑して言う
「折角 防長閣下に御足労を頂いたのですから そちらが仕上がるまでの間に関しては 我々で受け持って差し上げても 宜しいのではと思うのですが…?」
ラミリツが言う
「駄目駄目 そう言う甘い事は 彼らの為にならないよ 政府警察 武器開発局の信条は?」
局員が言う
「はい ”目下の力より真の力を”」
ラミリツが言う
「そ 常に先を見ると共に 基礎はしっかり固めるように」
局員が礼をして言う
「はい 局長っ」
軍曹が反応して言う
「”局長”?」
ラミリツが言う
「なに?」
軍曹が疑問して言う
「何故 ラミリツ攻長が 局長なのだ?」
ラミリツが言う
「はぁ?今更 何言ってんの?攻長は 政府の剣だから 攻撃に携わる武器開発局の局長を兼務出来るんだよ まさか 知らなかったの?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「し、知らなかったのだ」
ラミリツが言う
「なんだ そうだったの?てっきり 知ってて 超高温プラズマの話を 僕に 持ってきたのかと思った」
軍曹が言う
「いや、自分は唯 自分が政府の者で頼られるのは ラミリツ攻長しか居ない為 そうしたのだが…?」
ラミリツが言う
「ああ そう言う事?でもさ?それなら 尚更?わざわざ 攻長だの防長だので来なくったって 国防軍総司令官が うちの長官や 直接 警察長へ依頼すれば 話は通ったのに… アンタの兄上 相当 政府に借りを作りたくないんだね?」
軍曹が驚いて言う
「なんと!?その様な物であったのかっ?」
ラミリツが言う
「当たり前だろ?今はアールスローンと帝国との戦いの時だよ?政府と国防軍は 合同協力協定を結んだし そうとなれば両者のトップからの直接依頼には 協力するに決まってるじゃない?その代わり この技術はロストテクノロジーだからね 国防軍の総司令官から協力要請を受けたら こっちも 国防軍のロストテクノロジーの提供を 取引にしただろうけど?」
軍曹が疑問して言う
「む…?そうであるのか…?うむ では もしや?国防軍には その取引に出される ロストテクノロジーなどが 無い事が理由と言う事では?少なくとも 自分は 国防軍のロストテクノロジーなどは 何1つ知らぬのだ」
ラミリツが苦笑して言う
「はぁ?アンタ… 相変わらず馬鹿なんだから 何言ってるんだよ?僕が知っているだけでも アンタは 国防軍のロストテクノロジーを4つも知ってるじゃない?」
軍曹が驚いて言う
「はえっ!?自分がっ!?」
ラミリツが言う
「2人の悪魔の兵士に 2つのアールスローン戦記の原本」
軍曹が呆気に取られる ラミリツが言う
「ま、1人の悪魔の兵士に関しては 僕も大分提供を受けたから 今回のは そのお礼かな?エルムに感謝してよね?もちろん ラゼル様にも」
軍曹が呆気に取られた後微笑して言う
「うむ!その2人には 大いに感謝しているのである!今更 感謝も無いのだ 正に ”当然だ” なのである!」
ラミリツが笑って言う
「あっははっ 何それ アンタじゃ 逆立ちしたって エルムの真似は出来ないね」
軍曹が笑顔で言う
「うむ!それこそ 当然なのである!」
ラミリツが苦笑した後言う
「とにかく アンタたちの方で その容器を作れる人を探して それで 専属にでもしないと 超高温プラズマの制御は とっても繊細で 難しい技術だから ちゃんとした人探すんだよ?」
軍曹が頷いて言う
「了解なのだっ ラミリツ攻長!協力と助言を感謝する!」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

ハイケルが言う
「どうなんだ?マイク少佐」
マイクがモニターを見つめて言う
「う~ん…」
軍曹が心配して言う
「容器さえ 作る事は難しいと?」
ハイケルが疑問して言う
「容器?」
軍曹が言う
「あ、はい 実は…」
マイクが叫ぶ
「スバラシーーッ!」
ハイケルと軍曹が衝撃を受け驚く マイクが言う
「何と素晴らしい!正にロストテクノロジー!正に究極のエネルギー!これほど素晴らしい技術が 政府警察にあっただなんてー!…政府警察の武器開発局へ 履歴書送るべきだった~…」
ハイケルが怒りを忍ばせて言う
「おい…っ」
マイクが衝撃を受ける ハイケルがマイクの頭に銃を突き付けて言う
「これから転職をするというのなら その頭の中にある レギストの情報は消去させてもらうぞ?マイク少佐」
マイクが青ざめる 軍曹が慌てて言う
「しょっ 少佐ぁっ!?もちろん冗談でありますよねっ!?少佐ぁーっ!?」
ハイケルが言う
「問題ない 国防軍の機密保持の為だ 国防軍に優しい 初世代の悪魔の兵士に 迷いは無い」
軍曹が慌てて言う
「しょ、少佐ぁー!どうかっ その様な所で ご自分に付加価値を付け様などとは なさいません様にっ!少佐は現状であっても 国防軍の大切な 初世代の悪魔の兵士でありますのでっ!」
ハイケルが舌打ちをして銃を仕舞う 軍曹が衝撃を受ける マイクが苦笑して言う
「は… はぁ?まぁ、私としましては 初世代でも良いので もう少し構造的な情報を手に入れられると 面白くもあるのですが… そちらの情報は 医療部のベリハース院長が固持してますからねぇ 情報部で得られる初世代の悪魔の兵士の基礎能力データは 凄いとは言え常人のそれと変わりませんし …ちょっと損した気分」
ハイケルが視線を強めて言う
「転職アシストが欲しいのなら ハッキリそうと…」
軍曹がハイケルを抑える ハイケルが気を切り替えて言う
「で?結局 作れないのか?マイク少佐 そうならそうと 素直に言うのなら」
マイクが言う
「いえ?作れますよ?ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐?」
ハイケルが言う
「転職アシストが欲しいのなら ハッキリそうと…」
軍曹が衝撃を受け叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
マイクが苦笑して言う
「問題は そこではなくですね?これだけ厳重な容器が必要とされる その超高温プラズマを制御する方が 大変だと 私が言いたいのは そちらなんですよ?」
ハイケルが不満そうに言う
「そうならそうと 最初から言えっ 何故 毎回 国防軍レギスト駐屯地情報部の主任となる奴は 人をイラ付かせる奴ばかりなんだ?」
マイクが苦笑して言う
「それはもちろん?国防軍保有のロストテクノロジーの反応を 楽しんで!」
ハイケルが言う
「転職アシストが欲しいのなら ハッキリそうと…」
軍曹が衝撃を受けて言う
「3回目!?」
マイクが表情を困らせて言う
「モノは超高温プラズマですからね 一歩間違えば 大事故にだって繋がるものです それを管理して 必要な時は そこからエネルギーを抽出して そのPM70と言う 特注の銃に充填させなければならない おまけにその銃を改良する事も 考えないといけない訳ですから もし私が受け持つとしたら とてもとても?ここの主任を兼務する事は出来ないんですよ」
ハイケルが言う
「やはり ライム中佐と同じ事になるのか」
軍曹が気付いて言う
「は?ライム中佐と同じ事… と申しますと?」
ハイケルが言う
「恐らく 実際はそんな所なのだろう それが奴の作戦であったかどうかまでは知れないが 優秀な2世代目の悪魔の兵士 エルム少佐の事だ 必要とあれば それくらいの作戦は立てるだろう」
マイクが苦笑して言う
「国防軍に優しい 初世代の悪魔の兵士 ハイケル少佐は その作戦はお立てにならないのです?」
ハイケルが言う
「この情報部から お前を外すと とある情報部員2名が 私を射殺しに来る可能性があるからな」
ミストンとアリムが衝撃を受け 顔を見合わせてから ハイケルを見る マイクが疑問して言う
「は?情報部員が?ハイケル少佐を?」
ハイケルが言う
「まぁ良い それより マイク少佐 お前の方で その超高温プラズマを管理出来そうな者に 心当たりなどは無いか?もしくは この情報部の部員の中からでも」
マイクが言う
「うーん 難しいですね… 何しろ 超ハイレベルの技術ですから それに加えて 現状 情報部員を引き抜いてしまうと 情報部の手が足りなくなってしまいますし…」
ハイケルが考えてから言う
「そうか… とは言え 帝国との戦いに必須な力を制御する人員だ こうなれば 総司令官へ依頼し 国防軍の保有する情報部員から 選出してもらうしかない …軍曹」
軍曹が言う
「はっ!少佐っ では 自分から 総司令官へ依頼を行います」
軍曹が携帯を取り出しつつ部屋を出て行く マイクが言う
「しかし、ハイケル少佐?現状国防軍の情報部員から 選出するというのも 難しいかもしれませんよ?」
ハイケルが言う
「どう言う意味だ?」
マイクが言う
「この所 国防軍の保有する ありとあらえる施設に ハッキングが行われているんです 今の所大きな被害はありませんが お陰で今は何処の駐屯地でも 情報部はそれらの対応に忙しくて 人手は何処も足りていない状態だと思われますので」
ハイケルが言う
「国防軍のそれらの施設へのハッキング行為は 以前からあった事だろう?各駐屯地情報部の仕事の大半は それらの対応だと 聞いていたが?」
マイクが言う
「以前はその殆どが 政府からのもので 国防軍もまた 同様の事をしていたので さして取り立たされては居ませんでしたが 両者の協力協定が結ばれてからは 基本的に互いのハッキング行為は禁止事項になっているんですよ」
ハイケルが言う
「それなのに 人手が足りないとは?」
マイクが言う
「発信元の特定が出来ていないので ハッキリとは言えませんが …恐らく」
ハイケルが視線を強めて言う
「帝国からか?」
マイクが言う
「だと 思われています しかし、そうと見せ掛けている 別の者と言う可能性も十分にあるので それらの断定は行わず 範囲を広げて対策を取っているので やはり人員は足りていないんです」
ハイケルが言う
「…だが そうは言われても こちらも 正にその帝国と戦う為に 必要な力だ 何とかしてもらわなければ どうやって戦えと言うんだ?」
マイクが言う
「国防軍の情報部員である 私が言ってしまうのも心苦しいのですが… 最悪 国防軍の武器製造を 全て政府警察の武器開発チームへ 委託するという手もあります」
ハイケルが驚いて言う
「なっ!?」
マイクが言う
「実際には その方が効率は良いんですよ ハイケル少佐 そうすれば 国防軍の機動部隊も警機も 同じ武器で一緒に 戦う事が出来ますからね?これぞ 本当の共同戦線って奴ですよ」
ハイケルが視線を落として言う
「それは そうかもしれないが…」
軍曹が部屋に入って来る ハイケルが視線を向けて言う
「どうだ?軍曹」
軍曹が表情を落として言う
「あ… はぁ… その… 難しいと言われてしまいました それでも 一応… 確認はさせてみるとの事で」
ハイケルが視線を逸らして言う
「そうか…」
情報部部室内に緊急を知らせるブザーが鳴る ハイケルと軍曹が驚く 部室内にアナウンスが鳴り響く
『応援要請 応援要請 国防軍リング駐屯地 データベースに侵入者あり 国防軍リング駐屯地 データベースに侵入者あり リング駐屯地の情報保護のため これより リング駐屯地の全システムを遮断します 各駐屯地はバックアップを開始して下さい 繰り返します…』
マイクがキーボード入力を開始しながら言う
「ほら来たっ!」
マイクがキー入力をしてから立ち上がって情報部員へ言う
「ミストン部員とエレナ部員は レギスト駐屯地のセキュリティ監視を続行!他の部員は応援時のマニュアル通りに!それから アリム君!1人でレギスト駐屯地のセキュリティ構築を頼めるかい!?」
アリムが言う
「はいっ!やってみます!」
マイクが言う
「苦しくなったら すぐに呼んで!」
アリムが言う
「了解っ!」
ハイケルと軍曹が驚き呆気に取られる 部室のメインモニターにシステム上の状況が映し出される 情報部員たちが真剣に作業に打ち込んでいる

部室内にアナウンスが流れる
『応援要請解除 応援要請解除 国防軍リング駐屯地のデータベースは復旧しました 応援要請解除 応援要請解除 国防軍リング駐屯地のデータベースは復旧しました 応援要請を受けていた各駐屯地情報部は 速やかに 通常警戒態勢へ移行して下さい 繰り返します…』
情報部員たちが息を吐く マイクが微笑して言う
「はーい 皆良くやってくれたね ホッとしたい所だけど 警戒が解かれた時こそ 他の敵が目を光らせているから 国防軍レギスト駐屯地の各システムを再チェック 一服はその後だよ?」
情報部員たちが軽く笑い合ってから言う
「了解ー」
軍曹が呆気に取られている ハイケルがマイクへ向いて言う
「こんな事が 稀に起きると言う事か」
マイクが軽く作業をしながら言う
「あっはは 稀と言いますかね?一日に最低2回はあるんですよ?ハイケル少佐?」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが表情を顰めて言う
「2回も…?」
マイクが言う
「多い時には5回6回と… まぁ それは本当に あの後2、3日だけでしたけどね?正直あれが続いてたらと思うと ゾッとしますよ」
ハイケルが言う
「あの後 とは?」
マイクが苦笑して言う
「ハイケル少佐が マスタートップシークレットへ接触した日です」
ハイケルが呆気に取られる マイクが苦笑して言う
「それこそ この駐屯地は勿論 国防軍の殆どの駐屯地が一斉に攻撃を受けましてね?…ここだけの話 正直 もう駄目かと思いましたよ… はははっ」
ハイケルが言う
「そうだったのか」
マイクが言う
「と、言う感じですので 人員は1人も裂けないんです ハイケル少佐」
ハイケルが軽く息を吐いて言う
「了解」

【 国防軍レギスト駐屯地 通路 】

ハイケルと軍曹が歩いている 軍曹が言う
「少佐 あのような状況が 国防軍の全ての駐屯地の現状だとすると…」
ハイケルが言う
「ああ… 総司令官へ依頼した方も やはり 難しいだろう」
軍曹が苦笑して言う
「自分は その… 情報部の戦いと言うものが ああ言ったものだと言う事は まったくもって 知りませんでして… 先ほどは 驚いてしまいました」
ハイケルが言う
「私もだ」
軍曹が一瞬呆気に取られる ハイケルが言う
「情報部の… 特に主任になる奴は 確かに知識は多いが 何とも 気の抜けた奴が多いからな さらには、こちらが用を持ちかける時は 大抵が平時だ 真剣に作業を行っている姿というのは 初めて見た気さえする」
軍曹が呆気に取られた後 苦笑して言う
「そうでありますね 機動部隊と共同戦線をしている時は きっと先ほどと同じ様な感じなのでありましょうが 出動している自分らは 目にする事は出来ませんですし」
ハイケルが言う
「そうだな」
ハイケルがディスクを見て言う
「こうなれば 残る手段は2つだ」
軍曹が言う
「2つ と言いますと?」
ハイケルが言う
「1つは マイク少佐に先ほど言われた事だが 国防軍の武器製造を全て 政府警察の武器開発チームへ委託する事 …そして もう1つは」
軍曹が考えて言う
「自分は今日 そのディスクを手に入れるため 政府警察本部の武器開発局へ行って参りましたが 確かに 彼らへ委託するというのも 悪くは無いものかと」
ハイケルが言う
「そうか… では そうするべきなのかもしれないな」
軍曹がハイケルを見て言う
「ちなみに 少佐のもう1つの手段と仰るのは?」
ハイケルがディスクを見て言う
「ああ… これを餌に 釣れれば良いんだが…」
軍曹が衝撃を受けて言う
「つ、釣れればっ!?しょ、少佐ぁ!?ディスクなどを餌に …い、一体何を釣られるおつもりで?」
ハイケルが言う
「だがこちらも 別の意味で恐らく 難しいだろう …これがマイク少佐であったなら 釣れたかも知れなかったが 奴には ディスクより コーヒー豆の方が 餌になるらしいからな」
軍曹が気付き苦笑して言う
「お?…なるほど!少佐ぁ!自分は一瞬 本当に少佐が 魚釣りにでも向かわれるのかと 思ってしまいましたが!流石の自分にも 今回は分かりましたであります!少佐ぁー!」
ハイケルが苦笑して言う
「…上出来だ」

【 マスターの店 】

ハイケルと軍曹が呆気に取られる マリが微笑して言う
「いらっしゃいませ!喫茶店マリーシアへ ようこそ!」
軍曹が間を置いてはっと気付いて言う
「…あ!貴女は確か!あのカルメス邸で!」
マスターがマリの隣に居て微笑して言う
「ああ そう言えば以前の時は世話になったな アーヴィン君?もちろん レギストの皆にもだが 今日はそのメンバーの代表である 隊長、副隊長のお二人に あの時の礼として 最高に旨いエビフライ定食を ご馳走しよう!」
マスターがマリへ向いて言う
「それじゃ エビフライ定食2人前 よろしく!マリちゃん」
マリがマスターへ向いて微笑んで言う
「はい!マスター!」
マリが調理に取り掛かる ハイケルが苦笑して言う
「ようやく 作戦完了か」
ハイケルがカウンター席へ座る 軍曹がハイケルの言葉に疑問しつつ続く マスターがコーヒーを淹れながら言う
「ああ 長い作戦だったなぁ?17年掛かりだぜ?」
ハイケルがそっぽを向いて言う
「我ながら 良く協力したと 自分を評価してやりたい 任務達成ランクは当然Sランクだろうな?」
マスターが笑いながらコーヒーを出して言う
「さぁな?そいつは 報酬を得て確認してくれ?」
ハイケルが不満そうに言う
「何だと?」
マリがハイケルの前にエビフライ定食を出して言う
「はいっ お待たせ致しました!マリーシア特性 エビフライ定食です!」
ハイケルがマスターを見てから エビフライを見て 一口食べ衝撃を受けて言う
「熱いっ」
マリが微笑して言う
「恋の炎でアツアツだから 火傷しないように 気を付けてね?ハイケル君?」
ハイケルが衝撃を受けてから怒って言う
「先に言えっ」
マリが呆気に取られた後マスターの横で笑う マスターが笑って言う
「っはははっ どう?マリちゃん?ハイケルは  こー言う奴だから からかって遊ぶには丁度良いでしょ?」
マリが言う
「ふふふっ 素直で可愛いっ ハイケル君」
ハイケルが衝撃を受け怒りを堪える 軍曹が慌てる マリがマスターへ向いて言う
「でも マスター?からかって遊んじゃ駄目よ こういう子は ナイーブなんだから!」
マスターが言う
「ナイーブねぇ?ま、感受性が強いって事は認めるけどね?純粋と言えるまでには もうちょっと人としての訓練が 必要だよな~?ハーイケルー?」
ハイケルが言う
「余計なお世話だっ」
ハイケルが食事を続ける マスターとマリが笑う 軍曹が微笑し食事を続ける

【 道中 】

ハイケルが言う
「まったくっ 何故 国防軍レギスト駐屯地情報部の主任の周りに集まる女子は 私に危害を与える奴らばかりなんだっ!?」
軍曹が苦笑して言う
「ま、まぁまぁ!少佐っ!あのエビフライ定食は とても美味しかったでありますし!何より マスターも彼女も とてもお幸せそうでありました!」
ハイケルが言う
「まぁな …何せ 私を巻き込んでまでの17年掛りだ 幸せにでもなってくれなければ 作戦は失敗と評価されるだろう?」
軍曹が微笑して言う
「作戦は成功 達成ランクはSランクの ご様子でありましたぁ!少佐ぁ!」
ハイケルがディスクを取り出して言う
「ふん… お陰で こちらの作戦は 始まる前に終わってしまった訳だが…」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが苦笑して言う
「あの状態では 強制召集を掛ける訳にも行くまい?」
軍曹が苦笑して言う
「は… はぁ… 確かに」
ハイケルが言う
「望みは薄いが 総司令官へ最終確認を取った後 その足で政府警察へと 向かう事になるだろう …軍曹」
軍曹が言う
「はっ!少佐ぁ!では 只今 最終確認を」
軍曹が携帯を取り出すと同時に 携帯が鳴る 軍曹が驚きハイケルが軍曹へ顔を向けると 同時にハイケルの携帯も着信する ハイケルが驚き携帯を見て言う
「レギストの招集だ 急ぐぞ 軍曹っ!」
ハイケルが走り出す 軍曹が慌てて追いかけて言う
「了解!少佐ぁーっ!」

【 国防軍レギスト駐屯地 施設内 】

サイレンが鳴っている スピーカーからアナウンスが流れる
『緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ 繰り返す 緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ』
施設各所に居る隊員たちが スピーカーを見上げてから顔を見合わせ 頷き合って走り向かう

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

情報部員たちが慌しく作業を行っている マイクの横にアルバートが居る バックスがやって来て言う
「17部隊隊員及び 隊長の所在はどうなっている!?」
情報部員が言う
「17部隊隊員58名の準備が整いました!現在 車両保管所にて待機中!」
アルバートがバックスへ振り向いて言う
「ハイケル少佐の到着を待たずに出すか?後から追わせる事も可能だ」
バックスが言う
「装備はどうなっている?隊員たちだけでは マシーナリーの撃破は不可能だろう?」
マイクがバックスへ向いて言う
「ハイケル少佐と連絡が繋がりました!」
バックスが言う
「ハイケル少佐 聞こえるか?」
スピーカーからハイケルの声がする
『国防軍レギスト駐屯地到着まで 残り およそ3分40秒 状況はっ?』
バックスがマイクへ向く マイクが言う
「状況は 国防軍プロイム駐屯地より レギストへ応援要請です!マシーナリーが確認されています!」
スピーカーからハイケルの声がする
『マシーナリーの種類は?』
マイクが言う
「キラーマシーンを含む RTD330 RTD420の2種類が確認されています!現在プロイム駐屯地の機動隊員らが 420を爆心点へ誘導中です!」
スピーカーからハイケルの声がする
『時間が惜しい 他のレギスト機動隊員が終結しているのなら MT77及びMT80を持たせ 先に出動させてくれ』
マイクが一度バックスを見る バックスが頷く マイクが言う
「了解!」

【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 】

隊員たちのイヤホンにバックスの声が聞こえる
『レギスト機動部隊 出動せよっ』
ドライバーが言う
「了解!」
隊員Fがイヤホンを押さえて叫ぶ
「なぁあっ!?MT80をって事は!?少佐っ!それってまさかっ!?」
隊員たちのイヤホンにハイケルの声が聞こえる
『フレッド隊員 任せたぞ』
隊員Fが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「フッちゃんスゲー!少佐の 期待している を超えてイキナリ 任されちゃうなんてー!」
隊員Fが表情を堅くして言う
「そ、そんな… まだ 試作品なのに… そ、それを お、俺が…っ?」
隊員Cが言う
「流石レギストの 最年長」
隊員Fが衝撃を受けて言う
「なぁっ!?最年長は サッちゃんじゃなかったのかっ?」
隊員Cが言う
「俺はフレッド隊員より1つ下だもんね~ って だからっ サッちゃん言うなってのっ」
隊員たちのイヤホンにハイケルの声が聞こえる
『私と軍曹も急いで向かう それまでの間 レギスト機動部隊の部隊指示を アラン隊員へ委託する』
隊員Aが衝撃を受けて言う
「俺ー!?」
隊員たちが驚く 隊員Bが驚きから喜びに変えて言う
「アッちゃん!スゲー!」
隊員たちのイヤホンにハイケルの声が聞こえる
『共に バイスン隊員は アラン隊員のサポートを行え』
隊員Bが呆気に取られる 隊員Cが軽く笑って言う
「少佐のサポートを 軍曹がやるのと同じだな?」
隊員Bが喜んで言う
「了解!少佐ぁー!」
隊員たちのイヤホンにハイケルの声が聞こえる
『アラン隊員 私が合流するまで レギスト機動部隊を頼んだぞ』
隊員Aが慌てて言う
「は、はっ!了解!少佐ぁー!」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

情報部員が言う
「レギスト機動部隊 国防軍プロイム駐屯地到着まで およそ18分!」
バッカスが言う
「掛かるな… マイク少佐 プロイム駐屯地の状況を モニター出来るか?」
マイクがキー操作をしながら言う
「被害状況を メインモニターへ切り替えます!」
バッカスがメインモニターへ視線を向ける メインモニターの表示が切り替わり 簡易図面に赤い表示が多く表示される アルバートが言う
「18分も掛かっていては とても間に合わない 政府警察へ応援を要請して 移動ルートの確保をさせよう 5分は早まる」
アルバートが受話器を取る バッカスが言う
「借りを作る事になるな?」
アルバートが言う
「その程度なら 何とでもなるだろう プロイム駐屯地への迅速な援護の方が重要だ」

【 レギスト車内 】

隊員Bが外の様子を見て言う
「スッゲー いつもならこの辺り 大渋滞なのにー」
隊員Cが言う
「政府警察が交通整備をしてくれてるんだろ これなら予定より かなり早く到着するんじゃないか?」
隊員Bが喜んで言う
「アッちゃん仮隊長の 初任務も早まるねー!アッちゃん!…ん?アッちゃん?」
隊員Aが青ざめて言う
「ど… どどどどっ どうしよう…っ!?お、俺が部隊指揮を だなんて…っ しょ、少佐 相変わらず む、無茶苦茶なんだからっ」
隊員Cが苦笑して言う
「まぁまぁ そう緊張しなさるなって?少佐が到着するまでの ほんのちょっとの間じゃねーかぁ?」
隊員Aが隊員Cへ向いてぎこちない苦笑をして言う
「そ、そうだよな?も、もしかしたらっ 最初の 号令だけで しょ、少佐が到着するかもしれないもんなっ!?」
隊員Bが笑顔で言う
「そうそう!最初の 行くぞー!おー! だけで終わっちゃうよー きっとー?」
隊員Cが軽く笑って言う
「”おー!”なんて いつも言ってたか?」
隊員Bが気付いて言う
「あー そうだったー えへへー いつもならー 了解!少佐ぁー! だねー?だから今日はー?」
隊員Cが笑ってから言う
「クフフフ… それなら今日は 了解!アッちゃんー! だぜ?」
隊員Bが笑って言う
「あー そうだねー!それ最高ー!」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「最高かよっ!?」
隊員Aが苦笑して言う
「あ… はは… なんか ちょっと気が溶かれて来た… ありがとな バイちゃん… それから サキも」
隊員Cが軽く笑う 隊員Bが微笑する 車両無線に警察無線が受信する
『国防軍レギスト機動部隊 緊急車両 応答を こちら政府警察国土交通局』
ドライバー隊員が言う
「こちら国防軍レギスト機動部隊 緊急車両 どうぞ!」
車両無線に警察無線が受信する
『これより先 諸君の緊急車両をより優先させる為 新規マニュアルのルートにて誘導を行う 我々の車両に付いて来てくれ』
前方でスポーツカーにパトライトが付けられた警察車両がサイレンを鳴らす 車両無線に警察無線が受信する
『尚、こちらのルートは 地元警察による完全車道確保がなされている 安心して最高速度を維持してくれ これにより過去のマニュアルより 2分早まる計算だ』
隊員たちが歓声を上る ドライバーが言う
「助かる!」
車両無線に警察無線が受信する
『それでは誘導を開始する 一応 安全運転を忘れずに』
警察車両がアクセルを吹かす 隊員たちが笑う 隊員Aが外の様子を見て言う
「お?あの車両!確かゴンダの最新スポーツカーだ!」
隊員Fが遠くから言う
「MSX2000… 最高速度430キロ 15000馬力…」
隊員Dが言う
「15000!?化け物だなぁ!?」
車両の速度が上がる 隊員たちが反応して笑い合う 隊員Bが窓の外をのぞき見て言う
「MSX どれどれー!?俺も見たいー!」
隊員Aが言う
「横からじゃ もう見えないよ バイちゃん 見るなら前方コネクトウィンドウからじゃないと」
隊員Bが喜んで向かいながら言う
「見たい!見たいー!」
隊員Cが苦笑して言う
「まったく どんな時でも マイペースな奴だなぁ バイスン隊員は?」
隊員Aが苦笑して言う
「お陰で 助かってるよ さっきまでの俺なんて…」
隊員Cが軽く笑って言う
「ああ 少佐もそれが分かってるから バイスン隊員をサポートにしたんだろうな?」
隊員Aが苦笑して言う
「サポート役を任されたって言うのに そのバイちゃんは相変わらずだけどな?」
隊員Cが苦笑して言う
「相変わらずと言えば フレッド隊員も相変わらず 最新の機械物に詳しいよなぁ?見ても居ないのに エンジン音だけで車両を…」
隊員Cが振り返って気付き言葉を止める 隊員Aが続けて言う
「あぁ 本当凄いよな?その趣味が高じて 少佐に…っ」
隊員Aが振り返って衝撃を受ける 隊員Fがどんよりしながら言う
「アラン隊員は… 良いよな…っ 少佐が来てさえくれれば…っ お、俺は… きっと その後も…っ」
隊員AとCが困り汗を掻く

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

ハイケルが駆け込んで来て言う
「遅くなった」
マイクがキーボード操作をしながら言う
「プロイム駐屯地内の構造を表示します!ハイケル少佐」
ハイケルがモニターを見る バックスが言う
「ハイケル少佐 副長はどうした?」
ハイケルが言う
「先に武装準備へ向かわせている」
ハイケルが情報部員たちへ向いて言う
「車両到着時間は?」
情報部員が言う
「車両到着まで およそ9分です!」
ハイケルが歩き出しながら言う
「急いで追い掛ける」
バックスが言う
「待ちたまえ ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「時間が無い 何かあるなら」
バックスが言う
「時間が無いから 待てと言っているんだ」
ハイケルが不満そうに立ち止まって言う
「どう言う意味だ?」
バックスが言う
「アルバート中佐 どうだ?行けそうか?」
スピーカーからアルバートの声が届く
『ああ、無茶苦茶な教えしか受けなかったが 何とかなりそうだ』
ハイケルが疑問する バックスが言う
「ハイケル少佐 武装準備が済み次第 アーヴァイン軍曹と共に 屋上階へ向かえ 命令だ」
ハイケルがマイクを見る マイクが微笑して頷く ハイケルがバックスを見て言う
「…了解」

【 国防軍プロイム駐屯地 】

レギスト車両が到着する 隊員たちが次々車両を降り 隊員Aがイヤホンを押さえて言う
「レギスト機動部隊 国防軍プロイム駐屯地へ 到着しました!」
隊員たちの一部が 後方でMT80を運んでいる イヤホンにマイクの声が聞こえる
『レギスト機動部隊 それでは国防軍プロイム駐屯地の内部へ向かって下さい 進入路は駐屯地南西の出入り口から 外部、内部共に マシーナリーの反応があります 気を付けて!』
隊員Aが言う
「了解!」
隊員Bが言う
「アッちゃーん 俺先行して マシーナリーの種類見て来ようかー?」
隊員Aが言う
「よし、それじゃ フレッド隊員を除く いつものA班からD班は通常装備を持って 先に向かおう 後衛部隊の皆は MT77とMT80を持って 後から付いて来てくれ」
隊員たちが頷く 隊員Cが言う
「仮隊長 いつもの号令 頼むぜ?」
隊員Aが一瞬呆気に取られる 隊員たちがクスクス笑う 隊員Aが頬を染めて言う
「ならぁ… 行くぞー!」
隊員たちが笑って言う
「「了解!アッちゃんーっ!」」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「何で全員知ってるんだよっ!?」
隊員たちが笑いながら走る 隊員Fが苦笑して言う
「バイスン隊員の 無線マイクが… 以下略だ」
隊員Aが衝撃を受け 怒って言う
「バイちゃんっ!」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
 
【 上空 】

一機のヘリが旋回する サブシートに座っているハイケルが言う
「大型輸送機の話は聞いていたが 国防軍はいつの間に高速ヘリを作っていたんだ?」
操縦席に座るアルバートが言う
「いや、国防軍ではヘリは開発していない 確かに こう言った時は便利ではあるが 国防軍が動くのは基本的に隊でだからな?」
軍曹が後部シートに居て言う
「小隊であっても 隊員数は10名以上となります為 大型とは言わずとも 国防軍は輸送機のみの開発を行っているのであります!」
ハイケルが言う
「では これは…?」
アルバートが言う
「うむ、これは 例えそうであっても やはりあった方が便利であったと …とあるお方からの 置き土産だ」
ハイケルが表情を顰めて言う
「とあるお方からの 置き土産… それは もしやと思うのだが?」
アルバートが苦笑して言う
「いくら政府警察に顔が利くからと言って まさか 高速ヘリを一機頂いて来てくれるとはな?ついでに私が操縦を教わったのだが それがまた 誰かさんの様に『飛ばせ』の一言で いくら戦闘機マニアと言われた私であっても 苦労させられたさ?はっはっはっはっ!」
ハイケルが衝撃を受ける 軍曹が疑問して言う
「ほぉ…?ヘリの操縦の教えが『飛ばせ』の一言であるとは… そう言えば自分も以前 少佐に白羽止めを教えていただいた際は 『掴め』の一言であったかと 何処のどなたか存じませんが 少佐同様に単純明確な指示を与えると共に 政府警察にも顔が利くとは… 自分も一度お会いして挨拶をしてみたいものであります!」
ハイケルが視線を逸らして言う
「挨拶なら していたのではないのか軍曹?…更には 別の建物とは言え 同じ敷地内の屋敷で寝食を共に…」
軍曹が疑問して言う
「はぇ?自分が…?」
アルバートが笑う

【 国防軍プロイム駐屯地 】

隊員Fが狙いを定めて言う
「目標捕捉っ!1打目!」
MT80が放たれる 押さえの隊員たちが歯を食いしばる 隊員BがM80でマシーナリー3の目標を 自分へ向けさせながら言う
「フッちゃんっ 急いでっ!」
隊員Fがレーダー捕捉を歯がゆく見つめながら言う
「もう少し…っ 2打目 行くぞっ!」
MT80を押さえる隊員たちが構える MT80が放たれる 隊員FがMT80の弾倉を換えながら言う
「この調子で もう一回!」
隊員BがM80を放つ マシーナリー3が隊員Fへ狙いを定めて向かって行く 隊員Bが言う
「え!?あれ!?何でっ!?」
隊員Aが叫ぶ
「回避っ!」
隊員Fがハッとして 隊員Fと押さえの隊員たちが慌てて回避する 隊員BがM80を放ちながら言う
「何でこっちに 来てくれないのっ!?」
隊員AがM82を撃ってから 気付いて言う
「もしかしたらっ MT80の方が威力が強いって事が 分かるのかもしれないっ!?」
隊員Bが言う
「そんなっ どうしよう アッちゃんっ!?MT80は 放つまでに時間掛かっちゃうよっ」
隊員Aが焦って言う
「どうしようって言ったって…っ 引き付けようにも MT80より強い銃なんか無いしっ 何か…」
隊員Bがマシーナリーを見て言う
「こんな時 少佐ならどうするだろうっ!?」
隊員Aが言う
「しょ、少佐なら…!?けど、少佐なら出来ても 俺たちに出来る事なんて…っ」
隊員Aの視線の先 隊員Fが回避し 隊員Xが援護している 隊員Aがはっと気付いて言う
「そうだ…っ 集中攻撃が出来ないから駄目なだけで 威力だけなら十分!」
隊員Aが隊員Bへ向いて言う
「バイちゃんっ!ビフォアーバーストショットだ!それで 奴の気を引けるかもしれない!」
隊員Bが一瞬驚いた後喜んで言う
「了解っ!アッちゃんっ!」
隊員Bが両手に手榴弾を持ち ピンを口で抜き取り投げ付けて言う
「食ーらえー!」
隊員AがM82を構え視線を強め次々に銃撃する マシーナリー3の側面で 手榴弾に銃弾が着弾し 手榴弾が爆発するマシーナリー3が衝撃に動きを止めてから 一瞬間を置いて隊員Aへ向き直り マシンガンを構える 隊員Aが衝撃を受けて言う
「お、俺ー!?」
隊員Bが言う
「やったぁー 作戦成功だよ!アッちゃんっ!」
隊員Aが逃げながら言う
「ターゲット 俺かよー!」
マシーナリー3が隊員Aを追い掛ける

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

情報部員が言う
「マイク少佐!プロイム駐屯地情報部より通信です!」
スピーカーに声が聞こえる
『こちらプロイム駐屯地情報部!第7部隊との通信が途絶えたっ 残りの第8部隊がマシーナリーを引き付けていられる間に 基地を爆破させたい!』
マイクが言う
「こちらレギスト駐屯地情報部!既にレギストが到着しています!もう少しだけ頑張って下さいっ!助けに行きますから!」
スピーカーにハイケルの声がする
『こちら ハイケル少佐 プロイム駐屯地に到着した』
マイクが表情を明るめる

【 国防軍プロイム駐屯地 】

ハイケルがMT77を放つ 隊員Aを追いかけていたマシーナリー3が止まり脱力する 隊員Bが言う
「さっすが 少佐ー!」
隊員Aが溜息を吐いて言う
「助かったぁ~…」
隊員Fがホッと息を吐く ハイケルが周囲を見渡し表情を険しくしてイヤホンを押さえて言う
「マイク少佐 プロイム駐屯地情報部からの要求を 総司令官へ伝えろ」
隊員たちが驚く

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マイクが驚いて言う
「え…っ!?それは…っ」
スピーカーからハイケルの声が聞こえる
『第3マシーナリー… RTD420マシーナリーの集団接近を上空から確認した これから来るであろう そいつらの対処をしていては 第8部隊の救出には 間に合わない』

【 国防軍プロイム駐屯地 】

隊員Bが言う
「そんな…」
隊員Aが言う
「俺たちがもっと早ければ…っ」
隊員Fが悔しそうにMT80を握り締める ハイケルのイヤホンにアースの声がする
『こちらはハブロス総司令官だ 国防軍レギスト機動部隊隊長ハイケル少佐 応答を』
隊員たちがハッとする ハイケルが言う
「こちらハイケル少佐」
アースが言う
『状況は把握している これより…』
ハイケルたちの前に上空から複数人の人影が着地する ハイケルが顔を向けると同時にアースが言う
『政府警察特殊機動部隊 GPTの支援を受託する 駐屯地外部のマシーナリーは彼らへ任せ レギスト機動部隊は駐屯地内 第8部隊の救出へと向かえ』
ラミリツがプラズマセイバーを振りかざして言う
「政府警察特殊機動部隊 始動!」
GPT隊員たちが言う
「了解っ!」
軍曹が驚いて言う
「ラミリツ攻長!?な、何故 ラミリツ攻長がっ!?」
隊員Aが言う
「政府警察特殊機動部隊?」
ハイケルが言う
「…レギスト機動部隊 了解 これより 第8部隊の救出へ向かう マイク少佐 ナビを」
イヤホンにマイクの声が聞こえる
『りょ、了解 それでは レギストは駐屯地南西の出入り口から進入を!出入り口付近のマシーナリー反応は無くなりました 恐らく駐屯地の奥へ向かったものと思われます!』
ハイケルが言う
「了解」
ラミリツが言う
「まずはレギストのアシストを行う 当施設南西の出入り口前を確保だ!」
GPT隊員が言う
「了解!隊長!」
軍曹がラミリツとハイケルを交互に見る ラミリツとGPT隊員たちが捕獲銃を持って向かう ハイケルがGPT隊員たちを見た後 隊員たちへ言う
「行くぞ!」
隊員たちが言う
「了解 少佐ぁー!」
軍曹が慌てて言う
「りょ、了解であります 少佐ぁー!」

GPT隊員たちが捕獲銃を放つと 複数機のマシーナリー2が衝撃を受け一瞬動作を止める その間に ラミリツやプラズマセイバーを持った隊員たちが向かう ラミリツが言う
「330は左!」
ラミリツやプラズマセイバーを持ったGPT隊員たちがマシーナリー2の左胸を刺すと マシーナリー2が次々に動きを止め脱力する 隊員たちが呆気に取られ 隊員Fが言う
「一撃で…」
ハイケルが言う
「相手の動きを止められる事が前提の攻撃方法だ 常人では マシーナリーの懐へ入る前に 銃撃される」
隊員Fが言う
「なるほど…」
隊員Cが言う
「なら 本当に凄いのは あっちの 動きを止められる銃の方か」
ハイケルが言う
「マシーナリーの動きを止める銃に マシーナリーの装甲を貫通出来るセイバー… どちらも 貴重だ」
ラミリツがハイケルへ向いて言う
「さぁ 感心していないで早く行きなよ?レギストは何の為に居るのか 知らないの?」
ハイケルがラミリツを見る ラミリツが言う
「レギストは 窮地の仲間を 助け出す為に居るんだよ?」
ハイケルが言う
「それも エルム少佐の教えか?」
ラミリツが微笑する

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

スピーカーにハイケルの声がする
『こちらレギスト機動部隊 駐屯地内へ進入した これより 第8部隊の救出へ向かう』
情報部員が言う
「了解 レギスト機動部隊 進入路を直進 突き当りを右へ100メートル先に マシーナリー反応 熱源反応からRTD330マシーナリーと推測」
スピーカーに隊員Bの声が聞こえる
『330なら 俺たちだって1撃だよー!』
隊員Aが言う
『けど通路だから』
隊員Xが言う
『自分が抑えるであります!』
ハイケルが言う
『よし では フレッド隊員』
隊員Fが慌てて言う
『えっ!?俺っ!?りょ、了解であります 少佐ぁー!』
マイクが言う
「プロイム駐屯地情報部応答を!現在レギストが館内を進行中 そちらの状況は!?」
スピーカーに声が聞こえる
『こちらプロイム駐屯地情報部!レギストが来てくれたのなら 第8部隊へは退避指示を出しても良いか!?』
マイクが言う
「ただいま確認をっ」
バックスが言う
「いや、プロイム駐屯地情報部 そちらは退避指示を出して構わない ハイケル少佐 聞こえているな?」
スピーカーからハイケルが言う
『こちらハイケル少佐 通信は聞いている』
バックスが言う
「通路内の戦闘になるが」
ハイケルが言う
『問題ない こちらには 奴らへの遠距離攻撃が出来る銃が2丁ある 可能だ』

【 国防軍プロイム駐屯地 内部 】

隊員Fが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?そ、その2丁って…っ!」
隊員Fの前 隊員Xが盾を構えていて その前方でマシーナリー2が脱力して倒れる ハイケルが言う
「撃ち手も2名 あちらから来てくれるというのなら 構えて居られるこちらに分がある」
隊員Fが言う
「やっぱり 俺っ!?」
イヤホンにバックスの声がする
『よし では その場にて構えろ 通路内の構造からして その場所が好所だ 第8部隊を使い マシーナリーを誘導させる』
隊員Bが言う
「どうせなら3人居れば 丁度良かったのにー?」
ハイケルが言う
「そうでもない 3人で3発のジャストショットを狙うと 銃弾同士がジャストショットしてしまう可能性がある 2人なら その可能性は大幅に減少する」
隊員Bが言う
「なるほど~」
ハイケルが言う
「MT77及びMT80の準備を マイク少佐 カウントを」
隊員たちが銃を準備する イヤホンにマイクの声がする
『了解!』

【 国防軍プロイム駐屯地 外部 】

GPT隊員たちが捕獲銃を撃ちまくっている マシーナリー3が回避しているが命中して動きを止める プラズマセイバーを持ったGPT副隊長が向かい叫ぶ
「420は右!」
副隊長が マシーナリー3の胸にセイバーを突き刺し離れると マシーナリー3が倒れる GPT隊員たちが言う
「おぉおっ!」「流石ですっ 副隊長!」
副隊長が言う
「いや、お前たちのお陰だ」
GPT隊員が言う
「そんな事はありません 副隊長の迅速な攻撃がなければ 折角 捕獲銃をヒットさせても 攻撃が間に合わないと言う事も」 「そうですよ!」
副隊長が顔を向けて言う
「だが それさえも必要としない お方が居られるからな?」
GPT隊員たちが副隊長の視線の先を見る その先で ラミリツがマシーナリー3の銃弾を抜けて向かいながら叫ぶ
「やぁあーっ!」
ラミリツがマシーナリー3を斬り付け マシーナリー3が一瞬動きを止めると すかさずプラズマセイバーを胸に突き刺し退避する マシーナリー3が動きを止め脱力する ラミリツが別の敵へ視線を向ける GPT隊員が驚きに言葉を失う 副隊長が言う
「攻長閣下には 捕獲銃のアシストも不要の様だ」
GPT隊員が言う
「流石は 我らGPTの隊長にして!」 「我ら 政府の攻長閣下!なんと頼もしい!」
ラミリツがプラズマセイバーを構えて言う
「残りは 1体!余裕っ!」
ラミリツのプラズマセイバーからプラズマが消える ラミリツが呆気に取られて言う
「…って?え…?あれ?」
ラミリツがセイバーの柄を見ると エンプティ表示がなされている ラミリツが衝撃を受け慌てて言う
「あぁあーっ!チャージ切れぇえ!?嘘ぉお!?」
GPT隊員と副隊長が衝撃を受け呆れて言う
「え…?」 「攻長閣下…?」
ラミリツがマシーナリー3に追い駆けられながら叫ぶ
「うわぁああー!誰か助けてぇー!捕獲銃とセイバー持ってる人ー!早くたーすけてー!エルムーっ!」
GPT隊員たちが呆気に取られている

【 国防軍プロイム駐屯地 内部 】

隊員Fとハイケルがそれぞれの銃を構えていて ハイケルが言う
「420マシーナリーの際は 私が受け持つ  しかし 同時に構えている以上 威力の高いそちらへ 奴らの照準が向く可能性もある 気を抜くな」
隊員Fが緊張しながら言う
「りょ、了解っ」
ハイケルが言う
「330マシーナリーの際は そちらの1撃を優先 こちらは失敗に備える 後方支援は 銃弾の補填を」
後衛隊員たちが銃弾を持って言う
「了解!」
イヤホンにマイクの声が聞こえる
『ハイケル少佐!420マシーナリー来ます!カウント5秒前!4!3!2…』
ハイケルと隊員Fが集中する 隊員たちが息を飲む 通路の角から銃声が聞こえる マイクが言う
『1!接近!』
第8部隊隊員とそれを追って マシーナリー3が姿を見せる ハイケルが目を細めて引き金を引く MT77を押さえていた隊員たちが衝撃に堪える
「ぐぅっ!」
マシーナリー3に銃弾がショットしてマシーナリー3が一瞬止まる 続く銃撃がヒットすると マシーナリー3がマシンガンを隊員Fへ向ける 隊員Fがハッとすると ハイケルが引き金を引く マシーナリー3がマシンガンを放ちつつ銃撃を受け 脱力して倒れる 隊員Fがホッとすると 隊員Fの前で隊員Xが盾を構えていて その前に居る 軍曹が 第8部隊員を庇っている イヤホンにマイクの声が届く
『330マシーナリー 来ます!カウント!』
隊員Fがハッとして言う
「りょ、了解!」

【 国防軍プロイム駐屯地 情報部 】

情報部員が言う
「第8部隊が爆破地点に誘い込んだマシーナリーの再誘導は終了!第8部隊は全員無事です!」 「駐屯地外部の マシーナリー反応も全て消滅しました!」
情報部員たちが微笑する スピーカーからマイクの声がする
『了解!それでは レギスト機動部隊を撤収させます』
情報部員がPCを操作して気付いて言う
「ん?これは… 主任!旧地下倉庫に熱源反応有り!」
主任が言う
「何!?旧地下倉庫に!?」
情報部員が言う
「主任!誘導を終えた 第8部隊から通信です!」
第8部隊隊員が言う
『こちら第8部隊!我々はレギストに助けられたが 旧地下倉庫へマシーナリーを追って行った 第7部隊を!彼らの状況を確認してくれ!』
主任が言う
「旧地下倉庫は 通親類が全て遮断される こちらからの確認は無理だ」
スピーカーからハイケルの声が聞こえる
『では 我々が確認を』
情報部員が言う
「旧地下倉庫から 有線通信です!」
主任が言う
「繋げ!」
スピーカーから声が聞こえる
『こちら国防軍第7部隊!旧地下倉庫に430マシーナリーが5体!』
主任が言う
「了解!すぐにレギストが向か…」
スピーカーから声が聞こえる
『それをっ 指名手配の政府の元長官がっ!シェイム…』

【 国防軍プロイム駐屯地 外部 】

ラミリツのイヤホンに声が聞こえる
『トルゥース・メイリス!…いやっ シェイム・トルゥース容疑者が!マシーナリーを…っ ぐあっ!』
ラミリツが目を見開き手を握り締める

【 国防軍プロイム駐屯地 情報部 】

スピーカーから雑音が入り途絶える 主任が驚いて言う
「どうしたっ!?シェイム・トルゥース容疑者が マシーナリーを何だっ!?」
情報部員が言う
「駄目です 通信途絶えました!」
主任が表情をしかめてから言う
「国防軍レギスト駐屯地情報部!状況は聞いての通りだがっ!?」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マイクが言う
「りょ、了解っ とりあえず ハイケル少佐!?」
スピーカーからハイケルの声がする
『了解 これより レギスト機動部隊が…』
スピーカーにラミリツの声が聞こえる
『いや、我々が行く』
マイクが驚く ラミリツが続けて言う
『通信内容から 我々政府警察の追っている容疑者が居るものと推測される 従って その地下倉庫と言う場所には 我々GPTが 国防軍第7部隊の救助任務と共に 向かわせてもらう』
マイクがバックスへ顔を向ける バックスが考えてから言う
「了解 それでは…」
スピーカーからアースの声が聞こえる
『第7部隊の救出は当初の予定通りに 国防軍レギスト機動部隊を向かわせる』

【 国防軍プロイム駐屯地 外部 】

ラミリツがイヤホンを押さえて言う
「ハブロス総司令官っ!」
イヤホンにアースの声が聞こえる
『場所は国防軍の管理下だ 応援の政府警察には 私の指示に従って頂く』
ラミリツが悔しそうに言う
「く…っ」

【 国防軍プロイム駐屯地 内部 】

ハイケルのイヤホンにラミリツの声が聞こえる
『…了解』
イヤホンにアースの声が聞こえる
『レギスト機動部隊はプロイム駐屯地旧地下倉庫へ 政府警察特殊機動部隊は引き続き 駐屯地外部からのマシーナリー襲来へ備えてくれ』
ハイケルが言う
「レギスト機動部隊 了解」
ハイケルが隊員たちへ向いて言う
「MT77とMT80へ銃弾を補填しろ 直ちに旧地下倉庫へ向かうぞ」
隊員たちが言う
「了解 少佐ぁー!」

【 国防軍プロイム駐屯地 外部 】

建物からハイケルたちが出ると 周囲にマシーナリーの残骸が散乱している 隊員たちが驚いて言う
「こ、これ 全部 あの政府警察の連中が…!?」
ハイケルがラミリツを見る ラミリツがハイケルを見る ハイケルが気を取り直して言う
「行くぞ」
ハイケルが急ぐ 隊員たちがハイケルを追う

GPT隊員がレギスト隊員たちを見てからラミリツへ言う
「攻長閣下…っ」
副隊長が言う
「この場は我々へ任せ どうか閣下だけでもっ」
ラミリツが言う
「僕もここで良いよ 国防軍の管理下で 国防軍総司令官の命令だからね」
副隊長が言う
「しかし…」
ラミリツが言う
「その代わり」
ラミリツがイヤホンを押さえる

ハイケルのイヤホンに ラミリツの声がする
『国防軍レギスト機動部隊隊長 ハイケル少佐 指名手配犯は必ず捕らえてよね?今度こそ 絶対…っ 逃がしたりしないでよっ!?』
ハイケルがラミリツへ向く ラミリツがハイケルを見ている ハイケルが一度立ち止まって言う
「了解 ラミリツ・エーメレス・攻長閣下」
ハイケルが進む 軍曹が立ち止まり心配そうにハイケルとラミリツを交互に見る ハイケルが言う
「軍曹!」
軍曹がハッとして慌てて言う
「は、はぁー!了解 少佐ぁー!」
軍曹が慌ててハイケルを追う ラミリツが顔を逸らす 副隊長とGPT隊員たちが心配する

【 国防軍プロイム駐屯地 旧地下倉庫入り口 】

ハイケルたちが到着して 破壊されている周囲を見る 隊員Bが言う
「あれ~?この感じってー?なんか どっかでー?」
ハイケルが目を細めてから言う
「行くぞ 警戒を怠るな ここからは情報部のナビも 無線も使えなくなる」
ハイケルが走って向かう 隊員たちが慌てて言う
「りょ、了解 少佐ぁー!」

長い下り坂を ハイケルと隊員たちが走りながら 隊員Cが言う
「はぁはぁ… この坂 何処まで続いてるんだ!?」
隊員Aが言う
「何か こんな事 前にもあったような!?」
隊員Bが言う
「それじゃー?今ってどの位 下ったんだろうー?」
隊員Fが言う
「傾斜角から計算すると 大体…」
隊員Nが衝撃を受けて言う
「なぁっ!?この会話はっ もしかしてー!?」
隊員Bが言う
「分かったー!デジャヴュだー!」
隊員Cが言う
「そうだけど 違うだろー!」
隊員Bが言う
「えー?そうですよねー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「構造は良く似ているが マスタートップシークレットではなく こちらは旧地下倉庫と呼ばれている …と言う事は」
隊員Bが言う
「それじゃー 少佐の別荘とかじゃないんですかー?」
隊員Aが衝撃を受けて 慌てて言う
「バ、バイちゃんっ!」
通路の先で銃声が聞こえる 皆がハッとして顔を向ける ハイケルが言う
「私の別荘であろうと無かろうと 国防軍の敷地にマシーナリーは歓迎出来ない 従って早急に排除を行い 第7部隊を救出すると共に 私の別荘への不法侵入としてでも シェイム・トルゥース容疑者を拘束するっ」
隊員たちが衝撃を受け 隊員Eが言う
「何か… 少佐はまんざら ここが別荘でも良いって 雰囲気じゃないか?」
隊員Xが言う
「別荘ならせめて 地下では無くて 地上に作って欲しいであります」
隊員Bが言う
「だよねー それに チョー遠いしー?」
隊員Cが言う
「そして 帰りは永遠の上り坂…」
隊員たちが息を吐く

ハイケルと隊員たちが到着すると 第7部隊隊員たちが振り返る ハイケルが言う
「国防軍第7部隊隊員48名を確認 同時に…」
ハイケルが顔を向けると 視線の先シェイムがハイケルへ向く 隊員Aが言う
「シェイム・トルゥース容疑者を発見!」
隊員Bが言う
「でー?もう1人はー?」
隊員Bと皆の視線の先 シェイムの向かいに居る中年の男が隊員たちを見て言う
「ク…ッ また邪魔がっ」
シェイムが目を細める ハイケルが言う
「指名手配犯シェイム・トルゥース 共に 元政府研究局局長 ガルイッド・ベーク・ハーベス 国防軍私有地への不法侵入容疑にて お前たちを拘束する」
隊員Cが驚いて言う
「元政府研究局局長!?」
隊員Fが言う
「つまり 元政府の重役!?」
隊員Nが言う
「じゃぁ 元長官だったシェイム・トルゥース容疑者の仲間って事か?」
元重役が言う
「全員動くなっ 動けば これを…っ!」
元重役が懐から爆弾を取り出す レギストの隊員たちが驚く ハイケルが目を細めて言う
「N2爆弾か」
元重役が言う
「そうだ これ1つで 少なくともこの地下施設を破壊する事が出来る もちろん お前たちも道連れに」
皆が息を飲む 元重役が微笑して言う
「こいつを今すぐ使用されたくなければ 私の邪魔をしない事だ」
元重役が背を向けて作業を行う 隊員Aが言う
「少佐っ どうしましょう!?」
隊員Cが銃を持って言う
「アイツが背を向けている間に…」
ハイケルが言う
「いや、すでにセーフティを外されている 狙撃を成功させても あれを手放されては意味が無い」
隊員Bが言う
「けどっ このままじゃ アイツ きっとあの最後のドアを開けちゃうでありますよー 少佐ぁー!?」
ハイケルが言う
「それは構わないが その後 奴が何をするつもりなのか …そちらが問題だ」
隊員たちが驚き 隊員Aが言う
「その後ってっ!?」
隊員Cが言う
「って言うか 開けさせちゃって良いって事かっ!?あのドアを!?」
隊員Bが言う
「それじゃ 少佐はー 少佐の別荘の玄関を開けられちゃって 中の物を 見られちゃっても良いって事でありますかー!?少佐ぁー!?」
ハイケルが言う
「爆薬で脅してまで見たいと言うのなら 止めはしない だが 問題はその後だ」
隊員Cが言う
「止めないのか… そして」
隊員Aが言う
「その後…っ」
隊員Aがつばを飲む 隊員Xが真剣に言う
「少佐の別荘の中には… 一体 何があるのでありましょうか…っ!?」
隊員Fが半ば呆れて言う
「お、お前ら…」
元重役が片手でドアロック解除操作を行うと 近くで装置の起動音がする 隊員たちが反応する 元重役が微笑してドアへ向く ドアのロックが解除される 隊員たちが注目する 元重役がドアへ向かい ドアを押し開くと ドアの先何も無い空間が露になる 元重役が驚く 隊員たちが呆気に取られ 隊員Aが言う
「な…っ!?」
隊員Cが続けて言う
「…にも ない?」
隊員Bが言う
「えー!?少佐ぁー!?少佐の別荘の中は 空っぽでありますー!少佐ぁー!?」
元重役が何も無い空間へ駆け込み 周囲を見渡しながら言う
「な…っ!?な…っ!?」
ハイケルが言う
「当然だ ここは私の別荘… 以前まで私のマスタートップシークレットがあった場所だ」
隊員たちが驚く 隊員Aが言う
「そ、それじゃ… 元々ここにあった少佐のデコイたちやあの設備が 全て レファム駐屯地へ移されたと!?」
ハイケルが言う
「そう言う事だ …レファム駐屯地での記憶の交錯はデジャヴュではなかった 私はこの駐屯地にファームがあった時の その記憶と似ていると言う事で 記憶を交錯させていたんだ 今なら正確に思い出せる」
元重役が悔しそうに言う
「こ… ここではなかったっ!?クッ… もう1人の悪魔の兵士はっ 何処に眠っている!?」
元重役が隊員たちへ銃を向ける 隊員たちがハッとする 元重役が照準の先を選びながら言う
「答えろっ!国防軍なら知っているだろう!?もう1人のファームは何処だっ!?」
シェイムが言う
「無駄ですよ 彼らは知らない」
皆がシェイムを見る 元重役がシェイムへ銃を向ける シェイムが言う
「国防軍のマスタートップシークレットの場所は… アールスローン戦記の原本に記されている」
隊員たちが驚く 軍曹が呆気に取られて言う
「そ、それは…」
元重役が悔しそうにした後 軍曹へ銃を向けて言う
「ならば お前がっ!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えっ!?いやっ 自分の持つ原本には 少佐のファームの場所しか!?」
シェイムが言う
「ええ、そうでしょうね?アールスローン戦記の原本は2つ …ここまで言えば どういう意味か お分かりですね?ガルイッド元局長」
ガルイッドが言う
「ではっ もうひとつの原本は何処にある!?答えろっ!さもなくば…っ」
ガルイッドが軍曹へ銃を向け力を込める 軍曹が慌てて言う
「のわっ!?そ、そうと言われても 自分は…っ!」
軍曹が思わず盾を構える ガルイッドが呆気に取られた後 言う
「知らないとでも言うのか!?な、ならばっ これをっ!」
ガルイッドがN2爆弾を見せる シェイムが言う
「良いのですか?貴方の使える駒は 数が限られている こんな所で その駒を使い捨てても?」
ガルイッドが悔しそうにする シェイムが言う
「その爆弾を抱えて 大人しく引き下がると言うのなら 国防軍の彼らも手出しはしないでしょう?駒の無駄遣いはしない事です」
ハイケルが視線を強めてシェイムを見る ガルイッドが悔しそうにN2爆弾を持った手を下げようとするが 一瞬の後 顔を上げ 微笑して言う
「…いや 無駄では無い」
皆が驚く ガルイッドがハイケルを見て言う
「ここでお前たちを皆殺しにすれば 少なくとも 1人の悪魔の兵士を再起不能に出来る」
ハイケルが驚く 軍曹が呆気に取られてからハッとして言う
「あ、そ… そうか!悪魔の兵士は… 原本の所有者を…?で、では それで!?」
ガルイッドが微笑して言う
「そう… 原本を持つ者 ヴォール・アーヴァイン・防長 お前が倒れれば 悪魔の兵士は蘇らない」
軍曹が驚いて言う
「なぁあっ!?」
ガルイッドが微笑して言う
「これで… 1人…」
ガルイッドがN2爆弾を手放す 皆が目を見開く 強い光が辺りに広がる 国防軍プロイム駐屯地の一角で爆発が起きる

【 国防軍プロイム駐屯地 情報部 】

情報部の部室が大きく揺れる 皆が悲鳴を上げて 女子部員が悲鳴を上げる
「きゃぁああーっ!」
主任がデスクに掴まりながら言う
「何が起きたっ!?」

【 国防軍プロイム駐屯地 外部 】

地面が揺れている GPT隊員たちが慌てる中 副隊長が言う
「攻長閣下!?」
ラミリツが旧地下倉庫へ顔を向けて言う
「兄上っ!?」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マイクが叫ぶ
「国防軍プロイム駐屯地でM8規模の振動を確認!震源は旧地下倉庫からと推定!震動の規模から推測して 恐らくN2規模の爆薬が使われたものと!」
バックスとアルバートが焦る 情報部員たちが顔を見合わせる バックスが言う
「国防軍プロイム駐屯地情報部へ 被害の状況と 旧地下倉庫へ向かった隊員たちの安否を確認させろ!」
情報部員が言う
「駄目ですっ プロイム駐屯地の全ての 通信が途絶えています!」
バックスが言葉を失う アルバートが言う
「ハイケル少佐っ」

【 ? 】

ハイケルが目を覚まして思う
《ここは…?》
ハイケルの視線の先 車の後部座席から見上げた後部座席の窓の外にマスタートップシークレット施設の通路の天井が車の速度で流れて見える ハイケルが思う
《これは…?》
ハイケルが視線を変えると 薄暗い車内の広い天井に続いて人の顔が下から見上げる形で見える 寝かされているハイケルが視線を向けていると ハイケルを膝に抱えているラゼルが顔を向けて微笑する ハイケルが思う
《ヴォール・ラゼル・ハブロス元総司令官…》
ハイケルが瞬きをしてから視線を下へ向けると 視線の先エルムがハイケルへ視線を向けている ハイケルが思う
《エルム少佐…》
ハイケルが再び窓の外を見て思う
《俺は… 死んだのか?これは…?》
ハイケルの視線の先 マスタートップシークレットの出口になり 天井から空へ変わる ハイケルが強い光に眩しそうにして目を閉じる ハイケルが思う
《皆は…?隊員たちはどうなった?軍曹… 私は… 俺は…?》

【 国防軍プロイム駐屯地 旧地下倉庫 】

隊員Aが辛そうに目を開いて言う
「う…っ」
隊員Aが身を起こして振り返ると驚きに目を見開く 隊員Bが言う
「アッちゃん…?」
隊員Aがハッとして隊員Bへ振り向いて言う
「バイちゃんっ 無事かっ!?」
隊員Bが身を起こして言う
「うん 体中痛いけど… 何とか」
隊員Aが言う
「俺たち… 良く生きてたよな?」
隊員Bが言う
「え…?」
隊員Aが言う
「だって あれが… あのMT80でも5発をジャストショットさせないと壊せない マシーナリーの装甲が…」
隊員Bが隊員Aの視線の先を見て驚いて言う
「う… うわ…」
隊員Cが言う
「原型もねぇって… マジかよ?」
隊員Fが言う
「お陰で その盾に守られて 俺たちは生き残った…」
隊員Bが言う
「そ、それじゃ!?」
隊員Xが軍曹の肩を揺らして言う
「軍曹っ!?無事でありますかっ!?軍曹っ!?」
隊員たちが 隊員Xの声に顔を向けて駆け寄る 軍曹が身を起こしつつ言う
「う、うむ… 自分は大丈夫なのだ …皆は?」
隊員Xが周囲を見渡す 周囲では第7部隊隊員たちやレギスト隊員たちが身を起こしている 隊員Xが言う
「皆も 何とか無事の様でありますっ」
軍曹が言う
「良かったのだ… これも 全ては 少佐の迅速な…」
軍曹がハッとする 隊員Aが周囲を見渡して言う
「そう言えば… その 少佐は…?」
隊員たちが周囲を見渡してから 隊員Bがガルイッドのものと思われる黒い燃えカスを見て 隊員Bが怯えて言う
「ま、まさか…っ!?」
隊員Aが言う
「少佐は!?」
軍曹が走り出す 隊員Xが言う
「軍曹っ!?」
軍曹が叫ぶ
「少佐ぁー!少佐ぁー!?何処でありますかー!?お返事を下さいでありますー!少佐ぁー!」
軍曹の叫び声が響く
「少佐ぁー!」
隊員Bが言う
「ね、ねぇ アッちゃん!?俺たちも探そうよ!?アッちゃんっ!?」
隊員Fが言う
「俺… 最後に見たよ …少佐が あの元政府の奴の所へ 向かって行くの…」
隊員Bが言う
「そんな…っ で、でもっ 少佐は めちゃくちゃ足が速いからっ!?あの爆弾をキャッチアンドリリースしてから 俺たちよりも!…も、もっと先まで回避したのかもっ!?ねっ!?ねっ!?アッちゃん!?そうだよね!?アッちゃん!?」
隊員Aが視線を落としたまま言う
「いくら少佐でも あの一瞬で そこまでは…」
隊員Fが視線を奥へ向けて言う
「爆心が 奴の居た場所より ずっと奥… あの分厚い扉の先になってる… きっと少佐は バイスン隊員の言った通り あの爆弾のキャッチアンドリリースを成功させたんだ お陰で …俺たちは助かった」
隊員Bが言う
「そんな…っ 俺たちだけ助かったって… レギストはっ 俺たちのレギストはっ!少佐が居なかったら…っ!」
隊員たちが視線を落とす 隊員Bが涙を堪える 軍曹が扉の前で叫ぶ
「少佐ぁああー!!」
軍曹が俯いて言う
「少佐ぁ… 自分が… 自分が居ながらも…っ 少佐を守れず…っ」
軍曹が涙を流しつつ目を開くと 足元に爆撃で溶け掛かったサブマシンガンが落ちている 軍曹が歯を食いしばって屈んで言う
「これは少佐の…っ!…少佐ぁっ!」
軍曹がサブマシンガンをつかむと サブマシンガンの熱に手の皮膚が焼けてと火傷をする 軍曹が衝撃を受けて叫ぶ
「あちぃーっ!」
隊員たちが軍曹の声に顔を向ける 軍曹が手を抑えたまま悔しがると サブマシンガンの影に落ちているものに気付いて言う
「む?…こ、これは?何処かで…?」

隊員たちが軍曹の下へ駆け付けて 隊員Xが言う
「軍曹っ!?大丈夫でありますか!?」
軍曹が火傷した指を押さえつつ言う
「う、うむ… 少々火傷をしたが 大丈夫であるっ …それより」
軍曹が視線を向けると 隊員たちが気付き 隊員Bが言う
「少佐の サブマシンガン…」
隊員Cが言う
「鉄の塊がこんなになるなんて… それじゃ 人間の身体なんて…っ」
隊員Bが表情を悲しませる 隊員Aが言う
「バイちゃん…」
軍曹が言う
「しかし 少佐は もしかしたら これで…」
軍曹がサブマシンガンを退けると そこにマイクロチップが落ちている 隊員Aが言う
「軍曹 それは…?」
軍曹がマイクロチップを拾って言う
「悪魔の兵士は… 何度でも 蘇るのだっ!」
隊員たちが驚く 軍曹の手にマイクロチップが乗せられている

【 国防軍レギスト駐屯地 バックスの執務室 】

隊員Aが緊張して言う
「こ、国防軍レギスト機動部隊っ 任務完了でーありますっ!負傷者…っ 1名っ 火傷の軽症!死亡者っ… 1名っ!国防軍プロイム駐屯地への 支援作戦 完了致しましたぁっ!」
バックスが言う
「ご苦労 任務の達成ランクは… その前に 隊長もしくは副隊長はどうした?」
隊員Aが緊張して言う
「はーっ!副隊長は火傷の軽症でありますっ!」
バックスが言う
「そうか では 隊長はどうした?…ハイケル少佐は?」
隊員Aが言う
「隊長の ハイケル少佐は…っ」
隊員Aが唾を飲み込んでから言う
「少佐はっ!…た、ただいまっ …蘇りの最中でありますっ!」

一瞬沈黙が流れる

隊員Aが緊張してバックスを見る バックスが言う
「良し、では 蘇ったら ハイケル少佐に 改めて報告に来る様にと伝えてくれ」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「納得したぁあっ!?」
バックスが苦笑して言う
「君では 少々 報告内容が少な過ぎる 国防軍プロイム駐屯地の旧地下倉庫は 通信遮断区域だ もう少し詳しい報告を聞きたい」
隊員Aが言う
「は、はぁ?…って!?いやっ!?その前に…っ?」
バックスが言う
「それで?彼の蘇りは… 出来そうなのか?」
隊員Aがハッとする バックスが苦笑して言う
「この国防軍レギスト駐屯地は 代々 悪魔の兵士と共にある その駐屯地の管理者ともなれば 驚きはしないが 心配はする …それで?」
隊員Aが言う
「は、はい… 今は 軍曹が その方法を調べに…」

【 マスターの店 】

店の入り口に 準備中の札が掛けられている 老紳士がそれを見て残念そうに苦笑してから立ち去る

店内

マスターが真剣にPCを操作している マリが心配そうに見ている 軍曹がカウンターに身を乗り出して言う
「マスターっ!?如何でありましょうか!?あれは以前 自分が兄から見せられた アールスローン戦記の原本と呼ばれる物に とてもよく似ているのでありますがっ!?やはり 何らかの関係がっ!?」
マスターが作業を止めて言う
「うん… 確かに これは アーヴィン君の言う通りの物ではあるんだが… 残念ながら モノはロストテクノロジーだ とても 俺の手に負えるものじゃない」
軍曹が驚いて言う
「そ、そんなっ それではっ!?」
マスターが言う
「いや それでも これが『何であるのか』は 分かった… こいつは 記憶の詰まった記録装置だ」
軍曹が呆気にとられて言う
「き… 記憶の詰まった…?」
マスターが言う
「アイツが生まれてから 見たり聞いたり… それこそ手足を動かしたり 銃を撃ったり… 俺たちやレギストの皆と過ごして来た… そう言った アイツの人生の 全ての記憶が このマイクロチップに入力されている」
軍曹が呆気にとられて言う
「で、では…っ!?」
マスターが言う
「つまり 悪魔の兵士が蘇るのは この記憶の詰まったマイクロチップを… アイツのデコイに埋め込む …って事なのかもしれない」
軍曹が言う
「なるほど!それでは 早速っ!」
マスターが言う
「とは言ってもな?埋め込む先は やっぱり アイツのデコイの脳みそなんじゃないか?そうとなったら 俺は勿論 そんな繊細な作業は ちょっとやそっとで出来るもんじゃない 専門の脳外科医… それも マスターレベルじゃないと無理だ」
軍曹が言う
「マスターレベル?」
マスターが言う
「ああ、それに いくらその人物を頼ろうと言ってもな… 大体 こんな 見た事も聞いた事も無い 前例の無い作業を 何の資料も無くやれる筈が… …あっ!」
マスターが気付く 軍曹が視線を落としていて言う
「なるほど… 確かに 何の資料も無い状態では…」
マスターが言う
「そうかっ!こんな時こそ アールスローン戦記の原本だっ!アーヴィン君っ!」
マスターが身を乗り出して軍曹を見る 軍曹が呆気にとられて言う
「は、はぇ!?」

スピーカーにクラシックが流れている 軍曹が白い本を開く マスターが言う
「さあっ!悪魔の兵士を蘇らせる その方法を教えてくれ!アーヴィン君!」
軍曹が言う
「は、はっ!了解っ!?で、では… 是非ともっ そちらの方向にてっ!ぬー… せいっ!」
軍曹が気合を入れる 白い本に文字が浮かび上がる 軍曹が言う
「おおっ ”昔々アールスローンの戦乱の最中 ペジテと言う国に 1人の美しいお姫様が…”」
マスターが怒って言う
「違うっ!そんな 複製にある 簡単な話でどうするっ!やり直しっ!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「のわっ!も、申し訳ありませんっ マスター!で、では もう一度…っ ぬんっ!」
軍曹が本を開き直す 白い本に文字が浮かび上がる 軍曹が言う
「おお!”そして アールスローンに平和が訪れたのでありました!めでたし めでたし”」
マスターが怒って言う
「違うっ!それでは全てが 終わっているじゃないか!?悪魔の兵士が蘇るのは 誰もが知る物語の中盤だろうっ!?終わってしまっては意味が無いっ!お前は 国防軍レギスト駐屯地 情報部員として やる気があるのかぁあっ!?」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「は、はぁあっ!も、申し訳ありませんっ!マスター!自分は 国防軍レギスト駐屯地の 情報部員ではなく 機動隊員でありますが!やる気だけは人一倍あると自負しております!」
マスターが怒って言う
「ならば 今度こそ 現して見せ給え!もう一度だっ!」
軍曹が言う
「は、はっ!了解っ!もう一度!せいぃい!」
軍曹が本を開き直し 白い本に文字が浮かび上がる 軍曹が言う
「おお!”そして目覚めた 悪魔の兵士は言いました もう一度 私はお前たちと共に戦う と…”」
マスターが怒って言う
「ちがーうっ!それじゃ もう 蘇っちまってるだろぉお!だが分かったぞっ!お前は 蘇った後の幸せばかり考えているんだ!人生はそんなに甘くない!蘇らせる為の その苦労を思い描くんだ!もう一度!」
軍曹が言う
「は、はぁ!りょ、了解っ!蘇らせる為の 苦労を…?ならば… ぬぅうー せいぃい!」
軍曹が本を開き直す 白い本に文字が浮かび上がる 軍曹が言う
「おお… お?」
軍曹が疑問して言う
「何やら… さっぱり 分からぬページが…?」
マスターが叫ぶ
「これだあっ!よし では早速!」
軍曹が驚いて言う
「なんとぉおっ 成功したっ!?…とは言え やはりこの内容では 自分にはさっぱり…」
本の文字が消えて別の文字になる 軍曹が言う
「あ… しま…」
マスターが怒りに燃えて言う
「何をやっているんだね?アーヴィン君…っ?」
軍曹が怯えて言う
「も、ももももっ 申し訳…っ!」
マスターが怒って言う
「もう一度!」
軍曹が言う
「は、はいぃい!せいっ」
マスターが怒って言う
「ちがーうっ!また簡単な冒頭に戻っているだろう!?」
軍曹が言う
「ぬあー!?も、申し訳ありません!」
マスターが言う
「もう一度!」
軍曹が言う
「は、はいぃい!」
マスターが怒って言う
「ちがーうっ!また終わってるじゃないかっ!」
軍曹が言う
「ぬあー」
マスターが言う
「もう一度!」

軍曹が倒れている様に眠っていて寝言を言う
「も… もう 一度… も、申し訳…」
マスターがPCを操作している マリが軍曹に毛布を掛けて苦笑してから マスターを見る マスターは一心不乱にPCを操作している

【 国防軍レギスト駐屯地 治療室 】

治療台の上にハイケルβが寝かされている 医療服を着た男 プロイゼスが言う
「では 始める」
窓ガラスの先でマスターがマイクへ向かって言う
『宜しく頼む』
プロイゼスが双眼鏡を見ながら処置を開始する 窓ガラスの先で マスターと軍曹が見守っている 軍曹が言う
「マスター?あちらのお方は?」
マスターが言う
「ああ 彼は… 俺の知り合いの知り合いの… もっと先の知り合いで とりあえず 超一流の脳外科医だ」
軍曹が驚いて言う
「な、なんとっ!?…そ、それほど 遠いお方で 尚且つ 超一流の…っ それほど素晴らしいお方を お招きする事が出来るとは…っ さ、流石はマスターであります!」
マスターが言う
「うん まぁな?俺たちには強力なコネクトがあるから どうしてもって時には助かるんだ… もちろん その分 俺も逆の時には 手を貸す事になるけど…」
軍曹が言う
「なるほど…?それはまた… とても強力なコネがあるという事で …しかし それほど強力とは 一体どういった繋がりで?宜しければ是非自分にも?」
マスターが苦笑して言う
「いや 残念ながら このコネクトには 例え 防長閣下であろうとも入れないんだ ゴメンな?」
軍曹が言う
「あっ い、いえ!失礼いたしましたっ …しかし そうでありますか… 残念ではありますが… いえ!今は それより…っ!?」
医療器具にマイクロチップがはさまれ プロイゼスが装置を操作すると マイクロチップがハイケルβの脳へ入れられて行く

【 国防軍レギスト駐屯地 医療室 】

プロイゼスが医療服を脱いで言う
「俺が出来るのは ここまでだ 後は…」
マスターが言う
「ああ、マイクロチップから脳神経へのアクセス補佐は 俺がやる」
プロイゼスが苦笑して言う
「下手をしたら マイクロチップに入力されてるデータに損傷を与えるからな?気を付けろよ?普通のデータ処理だと思ってると 一気にパーになるぞ?」
マスターが苦笑して言う
「プレッシャー掛けないでくれよ?」
プロイゼスが軽く笑って言う
「まぁ 俺も貴方の噂は聞いてる その腕なら大丈夫だろう」
マスターが言う
「本当に助かった 有難う それと 迷惑ついでに もしかしたら またいつか 同じ事を 頼む日が来るかもしれないんだが…?」
プロイゼスが言う
「ああ、分かってる 何せ ”俺の中の俺”は この作業を知っているんだ」
軍曹が疑問して言う
「お、”俺の中の俺”…?」
軍曹が謎めいている マスターが苦笑して言う
「なるほど 通りで 手馴れている訳だな?」
プロイゼスが言う
「あぁ いや?それに関しては この以前に もっと難しいオペをやったもんでな?それに比べれば 成人の脳の記憶中枢に チップを埋め込む事くらい 大した事は無い」
マスターが言う
「え…?おいおい 大した事はあるだろう?…ちなみに その もっと難しいって言うのは…?」
プロイゼスが言う
「何処にその記憶中枢が作られるかも分からない 受精卵へのチップ移植作業だ こいつには 流石に 骨を折らされた」
マスターが呆気に取られて言う
「受精卵にって… そんな事 本当に出来るのか?人の脳みそが出来る それ以前の状態で って事だろう!?」
プロイゼスが言う
「ああ、それこそ ”俺の中の俺”に頼るしかなかったよ」
マスターが苦笑する 軍曹が悩んで言う
「”俺の中の俺”…?」
マスターが言う
「なるほど」
プロイゼスが微笑して言う
「じゃ お前も頑張れよ?マスター?」
マスターが言う
「ああ!有難う 後は任せてくれ!」
プロイゼスが去って行く 軍曹が呆気にとられて言う
「うん?あちらのお方も マスターが喫茶店のマスターであられる事を ご存知で?」
マスターが言う
「うん?…さぁ?それは どうかな?特にそんな話はしていないが」
軍曹が謎めいて言う
「え?あ… はぁ?」
マスターが腕まくりをして言う
「さぁて こっからは 俺の出番だ」
マスターがハイケルβの側に来て言う
「待ってろよ ハイケル… 今 帰還経路をナビしてやるからな?いつもの通り 必ず 帰って来るんだぜ?」
軍曹が言葉を失う マスターがハイケルβの頭に装置を付け PCの前へ向かい作業を開始する

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】

軍曹がやって来て言う
「やはり食欲などは沸かぬが… 何か飲み物でも…」
軍曹が顔を上げて気付いて言う
「む?あれは…!?」
軍曹が食堂横の休憩所へ来て言う
「お、お前たち!?今日は…っ いや、重要任務の後は2日間の休養を と言う事で 部隊訓練などは…っ!」
隊員たちが軍曹へ向いて言う
「軍曹っ!」 「軍曹っ!少佐はっ!?」
隊員Aが言う
「少佐は 本当に…!?」
隊員Bが言う
「だ、大丈夫ですよね!?軍曹!?だって、少佐は… 少佐は!”真に不甲斐なく申し訳ない初世代の悪魔の兵士”ではあるけどっ それでも 悪魔の兵士ならっ 何度でも蘇るんですよねっ!?軍曹ぉー!?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「バ、バイちゃんっ!」
軍曹が表情を落としつつも苦笑して言う
「そうか お前たちも 少佐を… う、うむっ 大丈夫なのだっ!少佐にはっ 真に心強いご友人であり この国防軍レギスト駐屯地情報部の 伝説の中佐と呼ばれた マスターが付いておられるのだっ!…それにっ」
軍曹が泣きながら言う
「それに… こんなにも 隊長思いの隊員たちが居るのだぁあー!少佐は必ず 蘇っていらっしゃるぅううー!」
隊員たちが泣きながら言う
「軍曹ー!」 「軍曹ぉおー!」

【 国防軍レギスト駐屯地 医療室 】

軍曹が戻って来ると マスターの声が聞こえる
「何故だっ!何故 蘇って来ないっ!?」
軍曹が驚き言う
「マ、マスターっ!?」
軍曹が急いで向かうと マスターがハイケルβの横で俯いている 軍曹がマスターの近くへ向かおうとすると マスターが言う
「…通信網は全て繋いでやっただろう?…全部思い出せただろう?そのチップに記憶されている データの通りに… 以前のお前のままで 戻って来れば良いんだっ!?早く戻って来い!ハイケルっ!」
マスターがハイケルβへ向かって叫ぶ
「ハイケルっ!…ハイケルっ!!」
マスターが力を失い俯く 軍曹が言葉を捜して言う
「マ、マスター… その… 少佐 は…?」
マスターが俯いていた顔を上げ ハイケルβの手を握って言う
「…体温が低過ぎる もちろん意識も無い… 言っちまえば 植物状態って奴だ… こいつら流に言えば デコイのままって言うのか?けど 俺に出来る事はもう… 一体 何が足りないって言うんだ…っ!?」
軍曹が言う
「デコイのまま… では… 今の少佐は あのエルム少佐の小隊隊員たちと同じく 白い血が流れている …っと言う事で?」
マスターと軍曹がハッとして マスター呆気に取られて言う
「白い…血…っ!」
軍曹が言う
「マ、マスター!?少佐の血は 間違いなく 自分らと同じくっ 赤い血でありましたっ!エルム少佐もっ 恐らく何度も蘇った筈でありますがっ!やはり 本体のエルム少佐の血は 赤かったでありますっ!」
マスターが言う
「そうだっ!ベリハース院長が言っていたと言う 肉体と血液の年齢が 違うってのはっ!」
軍曹が言う
「では やはりっ!?マスター!?」
マスターが言う
「だが 待てっ ハイケルの血は それこそ1滴も残っていないんだっ それでどうやってっ!?それに何で エルム少佐は 肉体が30代で血液が70代だったんだっ!?元の血液を保存していたと言うのならっ その保存方法は冷凍保存 そうとなれば年齢は そこまでは上がらないっ それが何故!?」
軍曹が困って言う
「エルム少佐は 実際には69歳でお亡くなりになりましたが それでは?血液は 冷凍ではなく… 何かをして 先行してお年を召された… と言う事でありましょうか?」
軍曹が謎めく マスターが呆気にとられて言う
「…そうかっ!?」
軍曹がマスターを見て言う
「はえ?マスター?」
マスターが軍曹へ向いて言う
「デコイの年齢が常に30代であるのなら その身体に循環する血液が正常に年齢を重ねるのは不自然だっ そうとなれば エルム少佐はっ …エルム少佐の身体には 別の人間の血液が使われていたっ それはっ!」
軍曹が驚いて言う
「なんとっ!?では、それはっ!?」
マスターが軍曹へ向いて言う
「それは アールスローン戦記の原本を持つ 保有者の血液に違いないっ!つまり 今ハイケルを蘇らせるには アーヴィン君!君の血液が必要なんだ!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なんとぉおっ!?じ、自分のぉおっ!?」

マスターが言う
「とは言え 憶測だけじゃ始まらないっ!そうとなれば ソースの確認だっ!アーヴィン君!」
軍曹が白い本を持って言う
「はっ!マスター!マスターのご指導のお陰で 自分も21年を経って やっとこの原本の読み方が分かって来た所であります!マスター!」
マスターが言う
「よし!では 早速 やりたまえ!アーヴィン君!」
軍曹が言う
「はっ!了解!さあ 原本よ!今の少佐のお体に 何が必要なのかを…っ 自分ではなく マスターへお伝えするのだぁあ!ぬぅうー せいぃいー!」
軍曹が白い本を気合を入れて開き置く 白いページに文字が浮かび上がる 軍曹が本を見て言う
「うむ!やはり 自分にはまったく分からんが…っ」
軍曹がマスターへ向いて言う
「如何でありましょうっ!?マスタぁーっ!?」

【 ? 】

ハイケルが目を開くと 幼いハイケルがつっ立っている ハイケルが疑問すると ハイケルの前に居るラゼルが微笑してハイケルの頭を撫でる ハイケルが呆気に取られていると エルムが言う
『任務完了だ 軍曹』
ラゼルが苦笑して言う
『了解であります 少佐』
ラゼルが曲げていた腰を上げて言う
『いつか貴方が”少佐”と呼ばれる頃に また お会いしましょう …どうか レギストの皆を… アーヴィンを 宜しくお願い致します…』
エルムが身を翻して言う
『軍曹』
ラゼルが苦笑して立ち去る ハイケルが顔を上げて言う
「ぐん…」

【 国防軍レギスト駐屯地 医務室 】

ハイケルが言う
「…そう …軍曹?」
ハイケルが疑問して視線を横へ向けると 軍曹が驚きと喜びに顔をぐしゃぐしゃにして叫ぶ
「はぁーっ!少佐ぁああ!!」
ハイケルが呆気に取られて言う
「軍曹…?にん… む…?いや… その前に …ここは?」
軍曹が思わずハイケルに抱きついて叫ぶ
「少佐ぁあーっ!あぁああっ!!良かったでありますぅうう!少佐あああーー!!」
軍曹が力いっぱいハイケルの身体を抱きしめる ハイケルが悲鳴を上げて言う
「く、苦しいぃっ!苦しい 軍曹ーっ!」

解放されたハイケルが言う
「それで 任務は…?レギストの皆は 無事か?軍曹?」
軍曹が言う
「はっ!皆は!少佐のお陰で!全員無事であります!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「そうか… では レギストの他は?」
軍曹が言う
「はー!レギスト機動部隊隊員59名と共に!第7部隊の48名!国防軍の仲間は 全員無事でありますー!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「…そうか あれ程の爆発で 全員無事だったとは…」
軍曹が言う
「はっ!全ては 少佐の迅速なご判断のお陰であります!あの瞬間に 少佐が…!」

【 回想 】

ガルイッドが微笑して言う
『そう… 原本を持つ者 ヴォール・アーヴァイン・防長 お前が倒れれば 悪魔の兵士は蘇らない』
軍曹がハッとして言う
『なぁあっ!?』
ガルイッドが微笑して言う
『これで… 1人…』
ガルイッドがN2爆弾を手放す 皆が目を見開く ハイケルが叫ぶ
『回避っ!!』
隊員たちがはっとして出口へ向かって走り出す ハイケルが1人 ガルイッドへ向かって駆け出す 軍曹が振り返って言う
『少佐ぁーーっ!!』
軍曹の脳裏にラゼルの声が聞こえる
『良いか アーヴィン?必ず… 例え レギストの仲間が 全員命を落とす事になるかもしれないとあっても …お前だけは生き延びねばならない どんなに辛くとも …それが出来ないのであれば すぐにレギストの軍曹を辞めなさい それが 原本を持つ者の… お前の使命なのだ』
軍曹がハッとして思う
《祖父上…っ!》
軍曹が歯を食いしばり逃げ出す ハイケルが地面に落ちる前にN2爆弾をキャッチすると 施設の奥へ向かって投げ付ける 防御扉の遠くでN2爆弾が光る ハイケルがサブマシンガンを盾に防御体制で頭を守る 強い光が辺りに広がり 爆音が轟く

【 回想終了 】

軍曹が言う
「少佐が隊員たちへ回避命令を下し 尚且つ 爆弾を遠くへ… あの防衛扉の奥へ投げて下さらなかったら きっと自分たちは無事ではなかったと 思われるであります」
ハイケルが言う
「そうか… だが そうとは言え N2爆弾は 建物1つを軽く粉砕するだけの威力を持っている 例え あの頑丈な防御扉の奥へ投げたと言っても その場に居た者たちが無傷である筈が…」
軍曹が言う
「はい 実は 少佐のそちらに加えまして…」

【 国防軍プロイム駐屯地 旧地下倉庫 】

アースが言う
「では このマシーナリーたちが 国防軍の隊員らを守ったと?」
主任が言う
「はい、このRTD420マシーナリー5体が 隊員らの前で壁となってくれたお陰です そうでなければ とても…」
アースが言う
「偶然か?」
主任が言う
「いえ、意図的に でしょう」
アースがマシーナリーたちを見て言う
「前列の3体は もはや原型も無いな 後列の2体も 殆ど…」
主任が言う
「体勢も 本来のマシーナリーの体勢とは異なり 防御姿勢となっています事からも …明らか であるかと」
アースが沈黙した後に言う
「分かった では… この事は 国防軍のトリプルトップシークレットとする」
主任が苦笑して言う
「帝国のマシーナリーと戦う国防軍が そのマシーナリーに助けられた …とは 格好が付かないですものね?」
アースが言う
「いや、そちらではない トリプルトップシークレットは これから私が言う事だ」
主任が言う
「は?」
アースが主任へ向き直る

【 国防軍レギスト駐屯地 医務室 】

ハイケルが言う
「マシーナリーが 隊員たちの盾に…?」
軍曹が言う
「はい 少佐の作戦に加え そのマシーナリーの盾のお陰で 国防軍の隊員は全員無事であったと そして あの爆弾を落とした 元政府研究局局長 ガルイッド・ベーク・ハーベスはもちろん …マシーナリーより前に居た 指名手配犯シェイム・トルゥースは…」
ハイケルが反応する 軍曹が視線を落とす

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩室 】

TVにニュースが流れていて キャスターが言う
『先日の国防軍プロイム駐屯地への襲撃は 元政府研究局局長 ガルイッド・ベーク・ハーベスが引き起こした事件であった事が 本日 国防軍より発表されました そして、その事件の際 国防軍に追い詰められたガルイッド元政府局長は所持していた爆弾を使って自爆 国防軍の一部の施設を爆破したとの事です 尚、事件には指名手配犯シェイム・トルゥースも関与していた疑いがありますが 同氏はガルイッド元政府局長の自爆の際 その爆発に巻き込まれ 本日 両2名の遺体の一部が確認されたとの事です』
隊員Aが言う
「それにしても あの爆発は凄かったよなぁ?」
隊員Bが言う
「ほんとほんとー 目の前が真っ白ー になったよねー?」
隊員Aが言う
「そんな中 少佐の声だけが頼りだったよな?」
隊員Bが言う
「うんうん!少佐の いつもの”回避!”があったからー?動けたって感じでー!」
隊員Cが言う
「俺はどっちかって言ったら その後の軍曹の”少佐ぁー!”のお陰かな?回避って言われた瞬間は 俺はもう 恐ろしくて腰が抜けそうでさ?けど 軍曹の声で」
隊員Xが言う
「自分もそうだったであります!軍曹のお声のお陰で 少佐の命令に従わなければと 気合が入ったであります!」
隊員Nが言う
「ああ 俺もだ!」
隊員たちが笑う 隊員Fが苦笑して言う
「で…?その 少佐と軍曹は…?」

【 国防軍レギスト駐屯地 医務室 】

ハイケルが自分の手を見ている 軍曹が視線を落として言う
「ラミリツ攻長には… 一足先に 兄が… 国防軍総司令官として 指名手配犯シェイム・トルゥースを拘束出来なかった事の侘びと共に… そちらの報告を 行ったと…」
ハイケルが言う
「そうか… では… …そちらはそうと 1つ確認をしたいのだが …軍曹?」
軍曹が緊張して言う
「は、はっ!な、何でありましょうかーっ!?少佐ぁーっ!?」
ハイケルが軍曹を見て言う
「私は… …私か?」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「私の右手には 以前 コーヒーカップを素手で割った際の 傷跡が残っていた… だが それが今は無い …それに 私の回避の命令で 回避したお前たちと違って 私は… あのN2爆弾を キャッチアンドリリースするべく向かった つまり 死亡の確認が成された それら2名よりも 私は爆弾に近い位置に居た筈だ その私が無傷で …むしろ 以前にあった 傷跡さえ無くなっているとは言うのは… 私は…」
軍曹が言う
「少佐…っ」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「私は… 蘇ったのか?悪魔の兵士として」
軍曹が間を置いて言う
「…… …っ …はいっ そうであります!」
ハイケルが言う
「そうか… 了解 では 報告へ向かう」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えっ!?ほ、報告…っ!?とは!?」
ハイケルが言う
「私は 例え蘇っても 今までの… いや、以前までの私が得て来た記憶を 何一つ忘れては居なかった」
軍曹が呆気に取られる ハイケルが微笑して言う
「私が蘇れば 自分の事を忘れるのではないかと 心配している奴が居るんだ …喫茶店にな?」
軍曹が表情を綻ばせ喜んで言う
「はーっ!了解であります!少佐ぁー!きっと マスターは お喜びになると共に ご安心をなされる筈であります!…とてもっ!」
ハイケルが言う
「そうか… つまり 奴も 知っていると言う事だな?」
軍曹が言う
「はっ!自分が真っ先に 相談へと向かった先が マスターの下でありましたので!」
ハイケルが言う
「そうか それなら 尚更 礼に行かねばな?…それで 奴が 私を?」
軍曹が言う
「はっ!そうであります!」
ハイケルが苦笑して言う
「流石は 元国防軍レギスト駐屯地情報部の マスターだ」
ハイケルがベッドを出る 軍曹が疑問して言う
「はっ!マスターは 真にすばらしき 元国防軍レギスト駐屯地情報部のー …?情報部のマスター…?…あ、あのっ それはそうと 少佐!?」
ハイケルが言う
「何だ 軍曹」
軍曹が言う
「はっ!ご尽力を頂きましたマスターの下へ ご挨拶へ向かうべきと言う事は 勿論なのでありますが 実はその… 少佐の身を案じて 今日も 休日出隊をしている 隊員たちが …少佐の隊員たちが 待っているのであります!ですので どうか!駐屯地を出られる その前に 一目 あいつらの下へ!」
ハイケルが一瞬反応した後微笑して言う
「そうか 了解」

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩室 】

ハイケルが言う
「心配を掛けたようだな?」
隊員たちが目を見開いて驚く ハイケルが言う
「記憶の損失などは無い お前たちが入隊してからこれまでの2年と6ヶ月の事は 私は何一つ忘れずに覚えている …予定だ」
隊員たちが転び掛ける ハイケルが首を傾げて言う
「良く考えたら 記憶の損失があるかどうかなど 自分で分かる筈が無い」
隊員たちが苦笑して 隊員Aが言う
「そ、それは…」
隊員Fが言う
「…確かに」
隊員Bが一瞬堪えてから ハイケルへ抱き付いて叫ぶ
「少佐ぁあー!」
ハイケルが呆気に取られる 隊員Bが言う
「少佐少佐ぁー!?それなら 俺と少佐で語らった シャワールームの事も 覚えているでありますかー!?少佐ぁー!?」
ハイケルが苦笑して言う
「もちろん覚えている 国防軍の規則から レギストの特例… 人気デスメタルバンドの話などもした筈だ」
隊員Bが言う
「そうそうー!でもって!来月からは 俺の給料にだけ 特別ボーナスを付けてくれるって 約束もー!」
ハイケルが疑問して言う
「うん?…その様な約束をしただろうか?」
隊員Aが怒って言う
「こら!バイちゃん!勝手に 話を作ったりしてっ 少佐の記憶がおかしくなっちゃったらどうするんだよ!?」
隊員Bが苦笑して言う
「にひひ~ 今のは 嘘であります~ 少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「そうか バイスン隊員は 私の記憶に欠損や間違えが無いかを 確認してくれたのだろう 礼を言う …だが 私は 嘘は嫌いだ よって バイスン隊員には 罰として 駐屯地1000周を課する」
隊員Bが喜んで言う
「やっぱ 少佐だー!それなら 俺は 喜んで行って来るでありまーす!」
ハイケルが苦笑して言う
「冗談だ」
隊員たちが呆気にとられた後 喜んで笑い出す ハイケルが微笑する

【 マスターの店 】

来客鈴が鳴る マスターが振り返って言い掛ける
「いらっしゃいま…」
マスターが驚いて言葉を止める ハイケルが言う
「蘇って来た」
マリが驚く マスターが苦笑して言う
「この野郎… 心配掛けやがってっ!」
ハイケルが言う
「悪かったな」
マスターが笑む マリが微笑して言う
「お帰りなさい ハイケル君!」
ハイケルが言う
「ああ」
軍曹が微笑する ハイケルと軍曹が店に入る

ハイケルがいつもの席に座っている マスターが密かに確認して微笑しつつコーヒーを入れながら言う
「それで 調子はどうだ?」
ハイケルが言う
「問題ない」
マスターがコーヒーを出しつつ言う
「そうは言っても 多少はあるだろう?」
ハイケルが言う
「そうだな 先日のベリハース院長による 強制入院3日間の後の様な 感覚の違和感はあるが …すぐに慣れそうだ」
マスターが軍曹のコーヒーを入れつつ言う
「そうか… まぁ なんつったって 身体を丸ごと入れ替えたんだ それ位はしょうがないよな?…ほら お疲れ アーヴィン君」
マスターが軍曹にコーヒーを出す 軍曹が礼をしつつ言う
「はっ 有難う御座います マスター!そして、何より ご尽力をされたマスターも 実に お疲れ様でありました!」
マスターが自分の分のコーヒーを入れつつ言う
「ああ、本当にな?それじゃ… ハイケルの蘇りを祝ってか?はははっ!」
軍曹が微笑してからコーヒーを飲む ハイケルが言う
「で、具体的には 何をどうしたんだ?俺が覚えている限り 俺は… 以前の俺が死ぬ直前に N2爆弾のキャッチアンドリリースへと向かった そして 爆心からの距離からして 俺の身体は一辺残らず燃え尽きたものと推測されるのだが?」
マスターが言う
「まったく無茶な事しやがって」
ハイケルが言う
「あの瞬間… ”とある方”に レギストの皆を頼む と言われた事を思い出したんだ その時にはもう 身体が動き出していた」
軍曹が言う
「その ”とある方”… と申しますと?」
マスターが言う
「レーベット大佐か?」
ハイケルが言う
「いや… 俺を あの孤児院へ 送って下さった お方だ」
マスターが呆気に取られて言う
「お前を あの孤児院へ?」
ハイケルが言う
「ああ」
軍曹が疑問して言う
「少佐は その… 確か?先日の国防軍プロイム駐屯地に ご自宅があられた頃に… あの通路をごらんになった ご記憶があると仰っていましたが?」
ハイケルが微笑して言う
「”そうだな”」
ハイケルがコーヒーを飲む 軍曹が疑問して言う
「あの… 少佐?僭越ながら… 少佐は エルム少佐の口癖は なるべくお控えになるご予定だったのでは?」
ハイケルが言う
「良いんだ …確かに 気に入らない奴ではあったが 今なら… 良き大先輩として 尊敬も… 出来るかもな?」
軍曹が言う
「少佐…」
マスターが言う
「ハイケル… お前… …お前 やっぱぁ どっか おかしくなっちまったかぁ!?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「なっ!?」
マスターが頭を抱えて言う
「俺の知っているハイケルはぁ~!こんなに可愛い奴じゃなかったぁ~!」
ハイケルが怒りを忍ばせて言う
「黙れ」

ハイケルが言う
「それで、詳しい事は聞いていないのだが お前が色々と手を回してくれたそうだな?」
マスターが言う
「ああ まずは 俺のコネをフルに使って 何と言っても重要な 記憶データの詰まったお前の命とも言える マイクロチップを 新しいお前の体の脳ミソにある記憶中枢へ移植出来る脳外科医を用意する事が必要だった 次は その移植がされた マイクロチップからの情報を お前の新しい身体に流してやる為のアクセス補助 …ま、こいつは 俺の専門だ 探す手間は無かった 後はそれらを行う 医療施設だが こっちは大した事は無い 国防軍レギスト駐屯地の ベリハース院長へ声を掛けて 使わせてもらっただけだ」
軍曹が言う
「とは言え それらのどちらを取りましても マスターがアールスローン戦記の原本を解読して下さり 尚且つ 必要な人材を適材適所に それも 最高位の方々を取り揃えて下さいましたお陰でありますっ 全ては マスターのご人徳とご協力の賜物であるかと!」
ハイケルが言う
「なるほど 流石は 元国防軍レギスト駐屯地 情報部のマスターだ」
軍曹が呆気にとられて言う
「情報部のマスター?」
マスターが言う
「おいおい…」
ハイケルが言う
「そこまで協力をしてくれたのなら そろそろ 帰って来ても良いのではないのか?」
マスターが言う
「考えとくって言ったろう?記憶の欠損か?」
ハイケルが言う
「欠損はしていない その言葉を言ったあの日から 考える時間は十分に経過した筈だ」
マスターが苦笑して言う
「まだ 最後の確認が取れていないんだよ だから… とは言え どちらにしても 今後もお前さんの蘇りには 手を貸すつもりだから そっちは安心してくれ」
ハイケルが言う
「俺の友人としてか?」
マスターが言う
「そう言う事 …でもなぁ?だからと言って そう簡単に死んでくれるなよ?お前を蘇らせるのは~ それはもう 大変だったんだからぁ~?…なぁ?アーヴィン君?」
軍曹が苦笑して言う
「い、いえ~ 自分は大した事は何も… しかし 自分も少佐には 1人1人の少佐の命… あ、いえっ 少佐のお体の方は 大切にして頂きたいと!思うであります!」
ハイケルが言う
「君にも何か?…ああ、アールスローン戦記の原本を?」
軍曹が言う
「あ、はいっ!それはもう!マスターの… 素晴らしき… 並々ならぬ ご指導のお陰で…」
マスターが言う
「あぁ そりゃぁもう 大変だったよなぁ?アーヴィン君?俺も久しぶりに 出来の悪い 部下を持った上官気持ちで 気合が入っちまったよー!はははっ!」
軍曹が言う
「お陰さまで 自分は原本の読みたい箇所を 読まれるようになりました それはもう… 今までの国防軍レギスト機動部隊の どの様な訓練よりも 苦しく厳しい訓練でありましたが…」
ハイケルが言う
「国防軍レギスト駐屯地 情報部のマスターは とても厳しい鬼教官と呼ばれていた 流石の君でも 堪えただろう …だが、その教えは 必ず力になる」
軍曹が言う
「はっ!確かに!改めて ご指導の程を有難う御座いました マスター!」
マスターが言う
「いやぁ 何!それ位!他にも 何らかの指導を受けたかったら いつでも言い給え!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「い、いえっ …折角のお言葉でありますが 自分は しばらくは…っ」
マスターが言う
「まぁ そうだよな?しばらくは 心身共に 安静にしておいた方が良いだろう」
ハイケルが言う
「うん?何かあったのか?いくら 原本を読む為の その訓練を受けたとは言え」
軍曹が言い辛そうに言う
「は、はい… それは… その…」
マスターが言う
「ああ、アーヴィン君には アールスローン戦記の原本を 表示して貰っただけじゃない …ハイケル?お前も以前言っていただろう?蘇りに必要なのは もしかしたら 元の血液なんじゃないかって?」
ハイケルが気付いて言う
「うん?…ああ、そうだったな?しかし 良く考えたら 俺の以前の身体に入っていた血液は N2爆弾の熱で 肉体共々1敵残らず蒸発したものと思われるのだが…?」
マスターが言う
「ああ、それに何度身体を入れ替えようとも 滞りなく年を重ねるその血液の正体は… 聞いて驚け?ハイケル?そいつはな?お前の… お父様の血液だ!」
ハイケルが呆気に取られて言う
「俺の… お父様の…?…っ!?」
ハイケルが衝撃を受けぎこちなく軍曹を見る 軍曹が苦笑する マスターが言う
「いやぁ大変だったんだぞ~?増血剤を投与したり 輸血をしたり~ 何とかして 人1人分のギリギリの血液を用意しなきゃいけないって… なぁ?アーヴィン君?」
軍曹が言う
「はい…  むしろ 今は 自分自身の身体が 他人の血液で 動いている気がするであります…っ」
ハイケルが青ざめている マスターが言う
「これからは 余裕のあるときにでも 少しずつ用意しておいた方が良いかもな?」
軍曹が言う
「そうでありますね 流石に… 急激に あれだけ抜き取りますと 今まで貧血と言う言葉とは無縁であった自分も少々…」
ハイケルが吐きそうになって言う
「うっ!」
軍曹が衝撃を受ける マスターが言う
「おいおい 折角入れた貴重な血液と 俺からの祝いのコーヒーを吐くなよ?」
ハイケルが言う
「一気に気分が悪くなった…」
軍曹が衝撃を受け苦笑する

マスターが言う
「まぁ、これで 悪魔の兵士の蘇りの謎は解けた訳だから これからは 安心して… って言うのも難だが マシーナリーとの戦いに専念出来るよな?ハイケル?」
ハイケルが言う
「そうだな 現状は… 国防軍は政府に後れを取っている MT80の改良も重要だが 何と言っても 超高温プラズマを使った銃の開発… いや 開発自体は エルム少佐の代にされている よって その制御と改良開発なのだが…」
マスターが言う
「なら 超高温プラズマ自体の方は 何とかなったのか?」
ハイケルが言う
「ああ… 専属の者を1人用意出来れば 政府警察から分けてもらえると」
ハイケルがディスクを出す マスターがディスクを受け取って見て言う
「ん?こいつは…?」
マスターがPCへディスクを入れ操作をする ハイケルが言う
「分け与えるプラズマを入れる容器の設計図だそうだ 我ら国防軍の防長閣下が 政府の攻長閣下から受け取って来た その容器を作りプラズマの管理をする人員の用意する事が プラズマを分け与える条件だそうだ」
マスターがモニターを見ながら言う
「ふむふむ… これはこれは…」
ハイケルが様子を見つつ言う
「…興味が?」
マスターが言う
「まぁ 無いって事は無いが… 俺は元々エンジニアじゃぁないから こいつが… 例えば俺たちの敵が使っている物だ!…って言う事なら それこそ こいつを無効化するデータでも 作ってやろう!って気にもなるんだがなぁ?これを管理して 容器自体を作れって言うのはねぇ…?」
ハイケルがそっぽを向いて言う
「駄目だったか…」
軍曹が苦笑して言う
「しょうがないであります 少佐 …それでは 予定通り これからは国防軍の武器開発は 政府の…」
マスターが言う
「でも まぁ… やってやろうじゃないの?」
ハイケルと軍曹が驚き ハイケルが言う
「本気か?」
マスターがPCを操作しながら言う
「この容器とやらを作る時や こいつからプラズマを抽出する時は別だが 基本的に 銃自体はお前専属の銃技師ザキル殿がやってくれるんだろう?それなら 俺は改良の為のデータを研究して作る位だから この場所で店をやりながらでも 十分 出来る」
軍曹が言う
「少佐!良かったでありますね!?あのディスクで マスターが釣れたであります!これは大物でありますよ!」
マスターが苦笑して言う
「釣れたってなぁ?俺はディスクに食い付く魚かぁ?」
軍曹が苦笑して言う
「あぁあっ し、失礼しましたぁっ!」
ハイケルが言う
「だが良いのか?マスター?…お前たちは 一組織には」
軍曹が疑問する マスターが言う
「ああ… それでも今は 少し状況が変わりつつある 実際に力を貸している連中が居るんだ そうとなればこっちも… それに今は この店にも優秀な助手が居るもんでね?誰かさんのお陰で… って事で店の方も大丈夫!これだけの条件が揃えば 俺がお前たちに手を貸さない訳には 行かないだろ?」
遠くで片付けをしているマリが顔を向けて微笑する 軍曹が言う
「おお!良かったでありますね!少佐ぁ!?」
ハイケルが言う
「むしろ その助手と感けている時間が無くなると言う理由で 断られると思ったのだが?」
軍曹が衝撃を受ける マスターが言う
「彼女の頼みでもあるんだよ」
ハイケルがマスターを見て言う
「ほう…?」
マスターが言う
「それじゃ、早速ザキル殿へ連絡を付けてくれ こいつを作るには それなりに材料が必要だ」
軍曹が微笑してハイケルを見る ハイケルが言う
「了解」

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

軍曹が叫ぼうとする
「通常訓練の1ぃー!かい…」
軍曹が倒れそうになる 隊員たちが慌てて言う
「ぐ、軍曹ぉーっ!?」
軍曹が言う
「う、うむ… ひ、貧血のせいか 立ち眩みが…」
ハイケルが言う
「だから無理をするなと言ったんだ …ゼクス隊員」
隊員Xが驚いて言う
「は、はーっ!少佐ぁ!?」
ハイケルが言う
「軍曹に代わり 号令役をやれ」
隊員Xがあっけに取られて言う
「え!?じ、自分がっ!?」
隊員Bが言う
「やったねー!?ゼクちゃんっ!」
ハイケルが言う
「軍曹 君は医務室へでも行って 休んで居ろ」
軍曹が言う
「は、は… 了解であります 少佐 …すまぬ ゼクス隊員 自分に代わり よろしく頼むのだ」
隊員Xが言う
「はーっ!了解であります 軍曹っ!どうか 号令のご心配はなさらず ゆっくりとお休み下さい!」
軍曹が言う
「うむ 心強いぞ ゼクス隊員っ …では ここは任せるのだ」
隊員Xが敬礼して言う
「はーっ!軍曹ぉー!」
隊員Xが隊員たちへ向いて気合を入れて言う
「通常訓練の1ーっ!開始ぃーっ!」
隊員Aたちが微笑した後 言う
「了解ーっ!」
ハイケルが微笑してから軍曹を見る 軍曹が軽く息を吐いてからはっとして慌てて言う
「で、ではっ 申し訳ありません 少佐…っ 自分は少々」
ハイケルが言う
「ああ、何かあれば君にも連絡をする 無理はせず休んでいろ」
軍曹が言う
「はっ 有難う御座います では」
軍曹が立ち去る ハイケルが苦笑してから隊員たちへ向き直る 隊員たちが訓練を続けている

【 ザキルの工房 】

ハイケルと軍曹が歩いていて ハイケルが言う
「状況の確認だ わざわざ君までが来る必要もないと思うが?」
軍曹が言う
「いえっ 午前中の訓練を休んだおかげで 休養はもう十分でありますのでっ それに…」
ハイケルが言う
「そうか ”それに” あの容器の設計図を手に入れて来たのは 君であり 提供をしたのがあの攻長閣下だ… 君が気にするのも無理はないかもな?」
軍曹が言う
「は…っ 実はそうでありまして あのラミリツ攻長から預かったものだと思うと… どうも 自分は気になってしまいまして…」
ハイケルと軍曹が建物に入ると ザキルが気付いて言う
「あっ!少佐!丁度良かったです たった今 完成の連絡をしようとしていた所で!」
ハイケルと軍曹が呆気に取られ 軍曹が言う
「は、はぇ?完成の連絡…とは?」
ハイケルが言う
「もう… 出来たのか?」
マスターが言う
「どうだー?ざっとこんなもんよ!」
ハイケルたちの前にプラズマ保管装置がある 軍曹が言う
「す、凄いでありますっ これほど巨大な装置を たった2日で仕上げてしまわれるとは!」
マスターが言う
「と言っても 実は この工房に必要な機材が揃っていたお陰なんだよ …ハイケル?もしかしてお前 事前にあのディスクをザキルへ見せて 用意でもさせていたのか?」
ハイケルが言う
「いや、あのディスクを見せたのは お前とマイク少佐だけだが…?」
ハイケルがザキルを見る ザキルが微笑して言う
「材料の方は 爺ちゃんの代の頃に使っていたものから 再使用出来るものは流用して 後は 交換部品として揃えてあったものと そこに いくつか追加した位なので 準備と言うより元々あったと言うか… けど、流石マスターです 出力数値が以前のものより10%も向上してる …これって 設計図の改良ですよね?」
マスターが微笑して言う
「ふふ~ん 当然!与えられたものを そのまま使うなんて 知能補佐能力のマスターには まず、あり得ない!何も考えなくったって 形にしている間に どんどん改良を考えちまうんだよ」
軍曹が疑問して言う
「知能補佐能力のマスター?」
ザキルが言う
「すげぇ~ 流石 マスター!」
マスターが苦笑して言う
「まぁ そう マスター、マスターって 呼ぶなって?この工房のマスターは お前だろ?」
ハイケルが反応して言う
「そうなのか?」
ザキルが言う
「あ、はい 爺ちゃんから 昨日 正式に引き継いだんです ”渡す時が来た”って …俺には 全然早いと思うんですけど」
マスターが笑んで言う
「頑張れよ マスター!」
ザキルが微笑して言う
「はいっ 頑張ります!それに なんて言ったって これからは マスターも一緒に!」
マスターが言う
「おいおい だから 俺は」
ハイケルが言う
「マーガレット中佐だ」
ザキルが言う
「え?」
ハイケルが言う
「この工房の事は 政府やその他も目を付けている筈だ 従って ライム中佐の時と同じく 情報探索に掛からない様 十分な警戒を行え そして、装置も完成したのなら 早速 政府警察からプラズマを分けてもらい その危険性からも 警備の者を… 国防軍からの警備部隊を付けるべきだ」
ザキルが呆気にとられて言う
「この工房に 警備部隊を…?」
マスターが言う
「そうだな 実際にプラズマを管理するとなれば それくらいの防衛は必要だ」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「軍曹 ハブロス総司令官へ依頼を」
軍曹がはっとして言う
「あっ は、はっ!了解であります!少佐ぁ!…で?え~と?具体的には…?どの程度のものを どの様に要請したら 良いでありましょうか?」
ハイケルが言う
「工房の規模から 24時間体勢としても 人数は1部隊で足りるだろう この工房専属にして 十分な作戦とその実行が可能な部隊を そして 必要時には迅速な応援要請が出来る事も重要だ 出来れば 最低限の科学知識のある隊長であれば 銃製造と共に 超高温プラズマを保管する工房での作戦を より高度に正確に配慮し 更には 必要に応じて…」
軍曹が悩み困り始めて言う
「しょ、少佐ぁっ!?申し訳ありません!それらの要求をするべき自分が…っ もはや その要請内容を理解出来ない状態にありましてっ この状態では 自分は とても 正しい伝達と要請は 出来そうにないのであります!」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が頭を下げて言う
「真に不甲斐なく申し訳ありません 少佐ぁー!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「むっ!?何か …何処かで聞いた事のある台詞だな?」
ハイケルが気を取り直して言う
「…仕方が無い それでは 通常要請の手順で バックス中佐を経由して総司令官へ」
ザキルが疑問して言う
「え?でも ハブロス総司令官は 少佐の叔父様なのでは?」
ハイケルが衝撃を受ける マスターが言う
「そうだぜ?どうせ同じ屋敷に住んでるんなら 今夜にでも屋敷で話したらどうだ?どうせ プラズマが入れられるまでは その危険性も無い訳だし」
ハイケルが言う
「いや、既に装置が完成した以上は その保護と… そもそも これだけの物を作っていたのなら 多少の機材の物流で 足が付いていると言う可能性もある こういう時には 早めの対策を取るべきだ 従って… バックス中佐へ連絡を…」
ハイケルが携帯を取り出す 軍曹が言う
「ん?それでしたら少佐?少佐が 直接 総司令官へ… 自分の兄へと 連絡をしたら宜しいのでは?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ… いや それはそうなのだが…」
ハイケルが視線を泳がせてから言う
「わ、分かった では 国防軍総司令本部へ連絡を…」
軍曹が携帯を操作しつつ言う
「それでしたら 自分が直接兄へ連絡を繋ぎますので どうぞ そちらで少佐がお話を…?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「あ!あぁあ~っ!」
軍曹が着信を待ちつつ言う
「それから 少佐も既にハブロス家の家族なのでありますから 兄とも携帯番号を教え合っておいた方が宜しいかと… あ、兄貴 俺なのだが…?」
ハイケルが言う
「そ、それは… そうかもしれないが ハブロス総司令官からは…」
軍曹が携帯へ言う
「…と言う事で 自分には把握しきれぬので 直接 少佐とお話して欲しいのだ 今替わる …では 少佐 申し訳ありませんが 先ほどの説明のほどを 改めて宜しくお願い致します」
ハイケルが携帯を受け取りつつ言う
「あ、ああ… では… 仕方が無い」
ハイケルが携帯を構えてから 周囲をうかがいつつ言い辛そうに言う
「お、叔父様… ごきげんよう… ハイケルです…」
マスターとザキルと軍曹が呆気にとられた後 マスターとザキルが転ぶ 軍曹が慌てて言う
「しょ、少佐ぁー!?」
ハイケルが羞恥に耐えながら言う
「家族として話をする時には まずは このように挨拶をしろと 命令されたんだっ!」
ザキルが困惑して言う
「め、命令…?」
携帯からアースの声が聞こえる
『あっはははははっ いや、まったく 初世代の悪魔の兵士は 素直で可愛いな?』
ハイケルが悔しそうに言う
「願わくば 悪魔の兵士で 遊ばないで欲しいのだが…っ」
アースがエルムの真似をして言う
『”無理だな”』
ハイケルが怒りを押し殺して言う
「やはり 奴のせいか…っ」
ハイケルの脳裏にエルムの姿が浮かぶ アースが言う
『それで?何か 重要な要請があると聞いたのだが?』
ハイケルが衝撃を受けた後 悔しそうに言う
「あ、ああ…っ 以前 そのエルム少佐が 銃火器の製造開発を 委託していたと言う工房に…」

アースが言う
『…そうか 分かった では 相応の部隊を… そうだな?13部隊を向かわせよう』
ハイケルが呆気に取られて言う
「13部隊?それは 皇居の警備部隊では!?」
アースが言う
『ああ、以前はそうであったが 今は皇居の警備は 政府警察の警備部隊へ返還している そして、13部隊のマーレー少佐は 理工学科の博士号を取得している よって 一応のそれらの知識はあるだろう 暫定ではあるが 相応の部隊と言って良い筈だ』
ハイケルが言う
「そうか… 確かに マーレー少佐であるなら 私の知る限りに置いても 作戦の構築と応援要請能力にも 問題はないものと推測される …了解 では その様に」
アースが言う
『ちなみに、その銃火器の製造開発は 国防軍レギスト機動部隊の為とは言え… ハイケル少佐?この事は 君の独断で行われていると言う事になっているのだが?』
ハイケルが反応して言う
「うん?…あ、ああ 分かっている ハイケル・ヴォール・アーヴァインの名で 処理がされていると」
マスターが笑いを押さえる ハイケルがムッとする アースが言う
『ああ、それなら 分かっているな?』
ハイケルが疑問して言う
「うん?”分かっているな?”…とは?」
軍曹が疑問する アースが言う
『この警備の依頼は 言うなれば 君から私への 個人的な お願いと言う事だ』
ハイケルが衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?…で、ではっ」
マスターとザキルと軍曹が顔を見合わせ疑問して 軍曹が言う
「少佐…?なにか…?」
ハイケルが手を握り締め 羞恥を抑えた後言う
「ど、どうか お、お願いを… い、いたしますわ… お、叔父様~…っ」
マスターとザキルと軍曹が衝撃を受けて ザキルが苦笑して言う
「ま、まさか また…」
アースが言う
『あっははははっ!面白いっ これが初世代の悪魔の兵士か!からかって遊ぶには丁度良いが 今のでは不合格だ  上辺の言葉のみではなく 抑揚を付け もっと 可愛らしく言ってもらおうか?ハイケル?』
ハイケルが怒りに燃えて言う
「黙れ…っ」
アースが言う
『ふむ?まぁ良いだろう… では 今日の所はこの位で 私も 国防軍総司令官として忙しいからな?お前で遊んでばかりも居られないんだ』
ハイケルが怒りを抑えて言う
「くぅ…っ!」
アースが言う
『私からは 13部隊を用いて 警備に就けとだけ 言っておくからな?マーレー少佐への詳細説明は お前から改めて行なえよ?じゃぁな?』
通話が切れる ハイケルが携帯を握りつぶして言う
「ザキルっ 今すぐに マシーナリーではなく 国防軍総司令官を暗殺する 銃を作れ!」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「しょ、少佐ぁーっ!」
ザキルが苦笑する


続く
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