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10章

アールスローン戦記 レギスト機動部隊 『国防軍総司令官 救出作戦』

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【 国防軍レギスト駐屯地 射撃場 】

MT80改が複数置かれている 隊員たちが顔を見合わせてハイケルへ向く マスターが言う
「発想の転換って奴だ これまでの1丁の銃で同じ場所へのジャストショットを狙う方法ではなく メインとなる1丁が目標へ照準を合わせ そこからのデータを 同じ目標へターゲットしている複数の銃へ転送し目標を捕捉 全ての銃がトリガーを引いた瞬間に 各銃の射撃タイミングへ秒速コンマ02の時間差を与えた上で一斉射撃を行う これなら 銃弾同士のジャストショットを防ぐのと同時に 敵からの反撃を受ける事も無く 瞬間的に必要回数分のジャストショットが可能になる」
隊員Aが言う
「そんな事が出来るのか…」
隊員Bが言う
「すっげー!」
マスターが言う
「だが、メインとなる銃を撃つ者には 相応の者を用意しなければならない いくら目標捕捉レーダーの改良をしようとも 実戦時に正確にターゲットの捕捉を行うには 相応の訓練と何より本人の技量が必要になる それを踏まえてメイン銃の撃ち手に必要な命中率は 最低97%」
隊員たちが表情を強める マスターが言う
「この条件に合うのは 現在 国防軍レギスト機動部隊において 小銃メインアームチームのメンバーだけだ 従って その彼らにはメイン銃を担当してもらう 支援にはそこまでの実力は要らないが 諸君のデータを元に選出しておいた… ザキル」
ザキルが言う
「はい メイン銃には 小銃メインアームチームの11名 そして 支援銃には…」
隊員Cが言う
「おお!ついに俺にも スポットライトが当たる時が!」
隊員Fが苦笑して言う
「俺はやっと そのスポットライトが外れて 一安心だ…」
隊員Aが言う
「いや?これからは そのスポットライトが11個になるってだけだろ?フレッド隊員がライトから外れる事は無いって!」
隊員Fが言う
「それを言わないでくれよ …とは言え 少佐と俺の2つだったスポットライトが11個になるのなら… うん?11個?」
隊員AがMT80改を手に取ろうとして言う
「あれ?そう言えば 小銃メインアームチームは 12人なんだが…?」
ザキルが言う
「あ、すみません!えっと~」
ザキルがメモを見て言う
「アラン・シュテール隊員は 外れて下さい」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「うっ …悪いけど そのファミリーネームは言わないでくれよ 昔ほどじゃなくなったけど やっぱり…」
ザキルが呆気に取られてから言う
「え?あっ すみません 名前は正式に言わないと 失礼だって 爺ちゃんに教えられたもんで…」
ハイケルが言う
「お前は既に国防軍レギスト機動部隊の仲間だ それは言い替えるなら 親しい仲であると言っても良い 従って 我々の事は 名前や敬称のみを用いて呼ぶ形で構わない」
マスターが微笑する ザキルが喜んで言う
「はいっ 了解です!少佐ぁ!」
隊員Aが離れ 別の隊員がMT80改を持つ ザキルが言う
「そして それらの銃の押さえには… 後方支援チームの皆さん!」
後方支援チームの隊員が言う
「おう!万年後方支援の俺たちの出番だな!?」
後方支援チームの隊員たちが笑う 皆がスタンバイすると マスターが言う
「よし、それじゃ メイン銃の者は 目標の射撃箇所へ照準をセット 支援銃の皆も 目標をセンターへ合せてくれ …どうだ?照準モニターには 同じ目標をターゲットしている仲間の数が表示されている筈だ」
隊員Cがスコープに見える表示を見て言う
「おおー なるほど… 0人って?」
隊員Cが顔を上げて言う
「何でっ 俺のメイン銃に合せてる 支援銃が居ないんだよっ!?」
隊員Cの両脇に居る支援銃の撃ち手がそっぽへ銃を向けていて言う
「あ… いや…」 「悪い バイスン隊員が…」
隊員Cが顔を向けて叫ぶ
「バイスン隊員っ!」
隊員Bが言う
「え~?だってー?折角 そんな面白い設定なら 両脇の支援だけじゃなくってー サッちゃん以外の 別のメイン銃に合わせたら どうなのかなーってー?中佐ぁー?」
隊員Bがマスターへ向く マスターが軽く笑って言う
「うん?あっはははっ そうだな?良い機転だ どうだ?サッちゃんの両脇に居る メイン銃のお2人さん?支援銃の数が両脇の2丁より 多いだろう?」
隊員Cの両脇のメイン銃撃ち手が言う
「あ、ほんとだ サブ3バレットって表示されてる」
「つまり メインの1バレットの他に 3バレット支援されるって事か」
マスターが言う
「よし、それじゃ 折角だから そのままで行こうか!全員構えー!」
隊員C以外が構える 隊員Cが衝撃を受けて言う
「中佐ぁー!?」
マスターがハイケルへ視線を向けて言う
「さぁ ハイケル?」
ハイケルがマスターを見てから隊員たちを見て言う
「放てっ」
隊員たちがトリガーを引く 全ての銃が一斉に射撃をする 隊員Bが思わず両耳を塞いで言う
「わっ!」
隊員Bが耳を塞いでいた状態から呆気に取られて言う
「うっわぁ…」 
隊員Fと隊員Cが呆気に取られる ハイケルが言う
「上出来だ」
マスターが微笑して言う
「当然」
各メイン銃の照準の先 目標の的の後ろの壁に出来た1つの穴から 次々に銃弾が転がり落ちる

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】

隊員Bが言う
「まぢで!まぢで!チョー凄いよ!あの銃!」
隊員Aが言う
「ああ!あれなら もうマシーナリーなんて 何体居たって 俺らの敵じゃないな!」
隊員Fが言う
「凄いのは銃じゃなくて あのシステムの方だ 1つのメインとなる照準に 他の銃がセミオートで合せて しかも 発射タイミングまで調整して放つなんて」
隊員Cが言う
「流石は 国防軍レギスト駐屯地情報部の… 伝説のマーガレット中佐」
隊員たちが顔を向ける 隊員たちの視線の先 マスターがコーヒーを飲んで言う
「う…っ 相変わらず 不味いなぁ この食堂のコーヒーはぁ~?」
ハイケルがコーヒーを飲んで言う
「俺は慣れた」
マスターが呆れて言う
「こんなのに慣れなさるなって?折角の癒しのコーヒーブレイクがこんなのじゃ 技術革新への原動力にはならないねぇ~ 銃の試し撃ちも終ったし さっさと店に帰るかなぁ?」
ハイケルが言う
「実際に銃を撃っている際の 隊員たちのデータを 取りたいのではなかったのか?」
マスターが言う
「それはまた今度にでも?とりあえず システム自体に問題はない事が 分かった訳だし… …うっ」
マスターが飲みかけたコーヒーを止める ハイケルが言う
「機動部隊の使用する計器類の耐久度は ランクA以上でなければならない その確認として あの銃のデータ取りは まだ足りていない筈だ」
マスターが言う
「今はMT80の改良型を使ってるが 近い内にPM70を復活させる そうとなったら 現状の火薬を使った銃とは異なるデータが必要になるんだ だから今は ジャストショットシステム自体に 問題がないかだけが分かれば それで良いんだよ」
ハイケルが言う
「そのシステム自体においても ランクA以上の耐久性を求めたい」
マスターが苦笑して言う
「何だよ 随分と慎重じゃないか?お前にしては珍しい?」
ハイケルが言う
「俺は構わないが その銃には 隊員たちの命が掛かっている… 俺とは異なり 替えの利かない体だ 従って 出来うる限りの安全策を用いたい」
マスターが呆気に取られた後苦笑して言う
「自分が何度でも蘇る不死身の存在になったと思ったら それ以外の奴らの事が より大切に思えて来たって事か?」
ハイケルが言う
「そうかもな …今なら 隊員たちを庇って 何度も蘇ったと言う 奴の言っていた意味が 分かる気がする」
マスターがハイケルを見た後苦笑して言う
「だからと言って 自分を守る事も 忘れるなよ?ハイケル?」
ハイケルが言う
「ああ、お前の手を煩わせる事へ繋がるからな」
マスターが言う
「相変わらず… 可愛くないのっ そうじゃねぇだろぉ?」
ハイケルが疑問して言う
「可愛くないのは結構だが そうではないとは?」
マスターが言う
「やれやれ それこそ 今のお前さんには 言っても分からないだろうから 止めとくよ」
ハイケルが言う
「どういう意味だ?」
マスターが立ち上がって言う
「じゃぁ また 今度はPM70を持って そいつの試し撃ちとデータ取りに来る その時は この食堂の不味いコーヒーで我慢しながら 長居する事になると思うが」
ハイケルが言う
「待て それより 今日のデータ取りを」
マスターが言う
「今日はもう十分 改良箇所も少しあるから それも兼ねて 一度店へ戻ってプログラムを見直す …それによっては もう一度 改めてのデータ取りに来るかもしれないが」
ハイケルが言う
「それなら ここの情報部で出来るのでは無いのか?それに情報部になら お前が置いて行った コーヒーメイカーもあるぞ?」
マスターが微笑して言う
「いんや 流石に今は あそこへ入るのは止めとくよ 手を出さないでは居られなくなりそうだからな?お疲れさん ハイケル」
マスターが立ち去る ハイケルが疑問しつつ言う
「…お疲れ」

【 国防軍レギスト駐屯地 通路 】

ハイケルが歩いていると ドアの中でアナウンスが鳴り響く
『応援要請 応援要請 国防軍メイス駐屯地 データベースに侵入者あり 国防軍メイス駐屯地 データベースに侵入者あり メイス駐屯地の情報保護のため これより メイス駐屯地の全システムを遮断します 各駐屯地はバックアップを開始して下さい 繰り返します…』
ハイケルが顔を向けて言う
「…こう言う事か」
ハイケルがドアへ向き直る

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

ハイケルが部室へ入ると マイクが言っている
「…部員は レギスト駐屯地のセキュリティ監視を続行!他の部員は応援時のマニュアル通りに!それから アリム君!いつもの様に1人でレギスト駐屯地のセキュリティ構築を!」
アリムが言う
「はいっ!」
マイクが腰を下ろしPCを操作しながら言う
「もぉっ 一体 何処の誰が 何を知りたいって言うんだっ!?」
部室のメインモニターにシステム上の状況が映し出される 情報部員たちが真剣に作業に打ち込んでいる ハイケルが様子を見て沈黙する

部室内にアナウンスが流れる
『応援要請解除 応援要請解除 国防軍メイス駐屯地のデータベースは復旧しました 応援要請解除 応援要請解除 国防軍メイス駐屯地のデータベースは復旧しました 応援要請を受けていた各駐屯地情報部は 速やかに 通常警戒態勢へ移行して下さい 繰り返します…』
情報部員たちが息を吐く マイクがうな垂れて言う
「あぁ… もう 限界…」
ハイケルが言う
「部員たちを動かす主任が 弱音を吐くなっ」
マイクが衝撃を受けてからハイケルを見上げる ハイケルがコーヒーを持っていて言う
「…と、伝説の鬼教官が聞いたら 盛大に怒るだろうな」
ハイケルがコーヒーを飲む マイクが苦笑して言う
「そうは仰いましても ハイケル少佐~?この所の 国防軍へのハッキングは 酷過ぎるんですよぉ?もぉ… 今までの比ではありません」
ハイケルが言う
「問題ない これを乗り越えれば お前たちは更なる窮地さえも 超えられるようになる」
マイクがうな垂れて言う
「ですから…」
ハイケルが言う
「ハッキング相手の探索はどうなっているんだ?相手は以前と同じなのか?」
マイクが言う
「今はもうそれ所じゃないんです 度重なるハッキングから各駐屯地のデータを守る事だけで精一杯で それだって 後どれだけ耐えられるのか…」
ハイケルが言う
「ただ 防戦を続けるだけでは お前たちは相手を拘束する事も 自分たちを守り通す事も出来ない 作戦はどうなっている?」
マイクが言う
「作戦なんて… そもそも 守る事だけで精一杯なんですから 強いて言うのであれば 可能な限りミスをしないで 自分たちの駐屯地への抜け道を与えないようにする事 …ですかね?」
ハイケルが言う
「それでは…」
アナウンスが鳴り響く
『緊急事態発生 緊急事態発生 国防軍レギスト駐屯地 データベースに侵入者あり 国防軍レギスト駐屯地 データベースに侵入者あり』
ハイケルとマイクが驚きハイケルが言う
「なっ!?」
情報部員たちがハッとしてマイクを見る マイクが慌てて言う
「直ちに駐屯地の 全システムをダウン!全部 切って!早く!」
情報部員が言う
「はいっ!」
情報部員たちが慌てて作業をする マイクがPCを操作すると モニターに全システムが表示され 次々に回路が切れて行く アナウンスが鳴り響く 
『国防軍レギスト駐屯地の情報保護のため これより 国防軍レギスト駐屯地の全システムを遮断します バックアップは各国防軍駐屯地へ委託します 繰り返します 国防軍レギスト駐屯地に…』
ミストンが言う
「システム 全て切り終わりました!」
アリムが言う
「最終電源システム 切ります!」
アリムがエンターを押した瞬間 国防軍レギスト駐屯地の全ての電気が切れる

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちが真っ暗な中疑問して 隊員Aが言う
「あ… あれ?」
隊員Bが言う
「停電ー?」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

ハイケルが周囲を見渡してから言う
「それで どうなるんだ?」
マイクがホッとして言う
「これで 国防軍レギスト駐屯地のシステム類は勿論 電源その物が落とされているので ハッキングを行おうにもラインは繋がりませんから 物理的に不可能になります その間に 別の駐屯地の情報部が 国防軍レギスト駐屯地のシステムをチェックをして セキュリティの必要箇所を修正して 全て終ったら こちらを復旧させて完了です」
ハイケルが言う
「なるほど… しかしそれでは その作業をやっている間に 別の駐屯地は自分たちの駐屯地のセキュリティ強化やチェックなどが不十分になり そこへまた隙が出来るだろう …正に イタチゴッコ と言う奴か」
マイクが言う
「そう言う事です」
アリムが言う
「すみませんっ 私がきっと…っ さっきの別駐屯地のバックアップ処理の時に 自分たちのセキュリティ構築にミスを…っ!」
マイクが言う
「いや、しょうがないよ 今は何処の駐屯地だって余裕が無くて 皆同じ様な事になってる 誰も怒ったりなんかしない …それに 束の間とは言え 今だけは ちょっと休憩出来るからね?」
情報部員たちが苦笑する ハイケルが言う
「時間の問題だ」
マイクが言う
「え?」
ハイケルが携帯を取り出して言う
「応援を呼ぶ」
マイクが疑問して言う
「応援って…?」
ハイケルが着信を待った後 携帯を切り言う
「…出ないな?もう戻ったのか?」
ハイケルが携帯を掛け直す

【 マスターの店 】

マリが電話に出て言う
「はいっ 喫茶店マリーシアです!」
受話器からハイケルの声がする
『…ハイケルだが あいつは戻っていないか?』
マリが言う
「ハイケル君 お疲れ様!あら?マスターなら 今日はハイケル君の所へ行くって言っていたけど?」
ハイケルが言う
『ああ、そちらの用件は完了したのだが 別件があって連絡をしている 携帯には出ないのだが… まだ戻ってはいないのか?』
マリが言う
「お店には戻っていないけど… もしかしたら工房に寄っているのかしら?」
ハイケルが言う
『そうか… 店へ戻ると言っていたが もしかしたら 寄っているのかもしれない 分かった 一応戻ったら 俺へ連絡をするようにと伝えてくれ』
マリが微笑して敬礼して言う
「了解ですっ 少佐ぁー!」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

ハイケルが携帯を切り 別の番号へ掛けようとして止めて言う
「とは言え 工房に居るのなら 携帯に出ないというのは無いか…」
部室内の明かりが灯り 皆が見上げると アナウンスが流れる
『応援要請解除 応援要請解除 国防軍レギスト駐屯地のデータベースは復旧しました 応援要請解除 応援要請解除 国防軍レギスト駐屯地のデータベースは復旧しました 速やかに 通常警戒態勢へ移行して下さい 繰り返します…』
マイクが軽く息を吐いて立ち上がり部員たちへ言う
「はーい 束の間の休憩は終了!皆 各システムのウィルスチェックとセキュリティチェックを!アリム君は 変わらずセキュリティ構築を宜しく!」
アリムが言う
「はいっ 有難う御座います!今度こそミスはしません!」
マイクが苦笑して言う
「まぁまぁ そう力まない力まない?それじゃ 皆さん 気を取り直して頑張りましょー!」
部員たちが微笑する マイクが座り直して言う
「いやぁ~ 本当に この情報部の皆が 一緒に頑張ってくれる事だけが 今は励みですよ」
ハイケルが間を置いてから言う
「…そうか なら …良いか」
ハイケルが言う
「邪魔をした また …旨いコーヒーを貰いに来る」
マイクが軽く笑って言う
「ええ いつでもどうぞ!ホント 美味しいですよね?ここのコーヒー!」
ハイケルが言う
「…ああ 改めて分かった」
マイクが微笑する ハイケルが部室を出て行く

【 国防軍レギスト駐屯地 通路 】

ハイケルが歩きながら言う
「部隊には 部隊のやり方がある… 今はマイク少佐が主任だ あの情報部に 以前のやり方を強要しようと言うのは 俺の間違えなのかもしれない …だが それでは解決しない事もある …そちらはどうしたら?」
ハイケルが立ち止まり 携帯を見て言う
「やはり 相談位なら?」
ハイケルが悩む 軍曹がハイケルの下へ向かい走りながら言う
「少佐ぁー!」
軍曹がハイケルの近くへ到着するとハイケルが言う
「館内は緊急時以外 走行禁止だ …それで?」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!申し訳ありません 少佐ぁー!しかしながら 自分にとって少佐への伝達は 緊急時と同等に重要な時でありますのでっ!」
ハイケルが言う
「内容如何だが 私への伝達とは?」
軍曹が言う
「はっ!そちらは 総司令官命令であります!」
ハイケルが衝撃を受け 視線を逸らして言う
「き… 聞こう …いや、その前に 内容はここで聞いても 問題の無い内容か?また… 何か女子的な事を 俺に言えとかやれとか そう言った命令ではないだろうな?」
軍曹が一瞬呆気に取られて言う
「は?…あ、ああっ いえっ!そう言った事では… それに そう言った 兄のちょっとした悪戯は 大した事ではありませんので 特に盗聴などを お気になさる必要もありませんかと?」
ハイケルが衝撃を受け怒って言う
「私にとっては 十分 お気にする事なんだっ!…それで?」
軍曹が言う
「はっ それでは 伝達内容でありますが 結論から言いますと 現行 朝昼体制である国防軍レギスト機動部隊を 早急に昼夜体制へ移行する様にとの事であります!」
ハイケルが疑問して言う
「昼夜体制へ?国防軍の機動部隊は 基本的に朝昼体制で行うものだが …何か特別な理由があるのか?」
軍曹が言う
「はっ 理由としましては 先日まで続いた マシーナリーを使った襲撃が 昼夜の間に行われる事が多いという事が 理由の1つであると それから もう1つは 神出鬼没のマシーナリーと戦う事が出来る機動部隊が 現在我々国防軍レギスト機動部隊の他は 政府警察特殊機動部隊になりますが 彼らは基本的に 朝昼体制なので そちらの時間帯は彼らへ任せようという事であります」
ハイケルが言う
「なるほど 確かに 如何にマシーナリーを退治できる銃火器を完成させた所で それを使う隊員たちは機械ではない よって 24時間待機する訳には行かない …分かった では 早速 明日からは昼夜体制へ移行しよう …軍曹」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!それでは 早速自分は 今度は少佐のご命令を隊員たちへ 伝達して来るであります!」
ハイケルが苦笑して言う
「今の時間帯は 隊員たちはメインアームの訓練へ それぞれの施設へと向かっているだろう?お前は ゼクス隊員と第二射撃場の者へ伝達しろ 第一射撃場の隊員たちと 総合訓練施設の隊員たちへは 私が伝える」
軍曹が言う
「はっ!了解!少佐に ご足労をおかけ致しまして 申し訳ありませんであります!」
ハイケルが言う
「問題ない」
軍曹が微笑し敬礼してから走って行く ハイケルが呆気に取られてから言う
「だから 走るなと… まぁ 良いか…」
ハイケルが歩いて行く

【 ハブロス家 】

ハイケルが呆気に取られている アースが言う
「ああ、そう言えば初めてだったな 彼女は私の妻 エレナ・レイン・フラーソワ・ハブロスだ そして」
ハイケルがエレナの抱いている赤ん坊へ視線を向ける アースが言う
「先月生まれた 私の息子 名は ファースト・ライヴァイン・ハブロスだ」
ハイケルが気を取り直して言う
「あ、ああ… 国防軍レギスト機動部隊隊長 ハイケル…・ヴォール・アーヴァイン少佐だ」
ハイケルが敬礼する エレナが微笑して言う
「あら 随分と可愛いらしい 少佐殿でしてね?」
ハイケルが衝撃を受けて表情をしかめる エレナが言う
「とても あのエルム少佐と同じ 悪魔の兵士とは 思えなくてよ?」
ハイケルが反応する エレナが周囲を見渡してから言う
「それに貴方は… 貴方のお人形を 操らなくて?」
ハイケルが言う
「…生憎 私は 奴よりも ”真に不甲斐なく申し訳ない” 悪魔の兵士である為」
軍曹が衝撃を受けて言う
「少佐…っ まだその事を 根に持たれて…っ?」
ハイケルが言う
「デコイを操作する事は出来ない …悪かったな」
ハイケルがムッとする 軍曹が苦笑する エレナが軽く笑って言う
「まあ そうなのでして?でも… 貴方の方が 随分と優秀な様子でしてね?」
ハイケルが疑問して言う
「優秀?私が?…あのエルム少佐と比べて か?」
エレナが言う
「ええ、貴方は とても 作り物には見えなくてよ?」
ハイケルが僅かに表情を強める エレナがハイケルの頬に触れて言う
「エルム少佐は本当に作り物みたいで… でも貴方はそうではないご様子よ?本当に貴方も悪魔の兵士なのでして?」
ハイケルが言う
「先日 蘇った所だ 間違いない」
エレナが軽く笑って言う
「うっふふ そう… それでは もう 疑い様が無くてね?」
エレナがアースを見る アースが言う
「エルム少佐と同じ戦力を持った悪魔の兵士は 近い内に蘇るだろう 最も 以前の彼とは異なるだろうが デコイを操り能力も相応である筈 …その悪魔の兵士であるなら ファーストを守る事も出来る 心配は不要だ」
エレナが言う
「そうですか… しかし その彼がまた私たちの前へ現れる その時までは ファーストの事は この小さな悪魔の兵士殿に お守りを頂けるのですよね?」
ハイケルが反応する アースが言う
「養子とは言え 同じ家に住む家族だ 当然 守ってくれるのだろう?」
ハイケルが視線を逸らしてから言う
「あ… ああ… 私が この屋敷に居る間であるのなら…」
エレナが言う
「貴方がいらっしゃる間?では まさか貴方が このお屋敷にいらっしゃらない時間が あると言う事でしてっ?」
ハイケルが言う
「当然だ 私は 国防軍レギスト機動部隊の隊長だ 就業中は国防軍レギスト駐屯地に滞在している」
エレナが言う
「それでは駄目でしてよっ!?ずっとこの子の側に居て下さらなくては!」
ハイケルが表情をしかめて言う
「生憎 我々国防軍レギスト機動部隊は 一個人の警備部隊などではない 帝国のマシーナリーと戦う事の出来る 特別な部隊だ 24時間の警備を依頼したいと言うのなら 政府警察の警備部隊か私設自衛小隊でも構えるんだな」
エレナが一瞬驚いた後 口をつぐむ アースが言う
「ハイケル少佐 1つ言っておく」
ハイケルが言う
「国防軍総司令官の ご夫人の機嫌は損ねるな か?それも命令だと言うのなら仕方が無い」
アースが言う
「ファーストは足に障害がある 恐らく 成長しても歩く事は出来ないだろうとの事だ」
ハイケルが言う
「だから 国防軍の部隊を1部隊置いて守ろうと?」
アースが言う
「障害の理由は銃撃による神経の損傷だが その事故は 帝国のマシーナリーや政府のマスタートップシークレットを使用されての 大規模な誘拐作戦が原因だった」
ハイケルが驚いて言う
「マシーナリーや政府の…っ!?」
アースが言う
「その時は負傷はしたもの 命は助かったが 再びファーストが狙われる可能性は否定出来ない 従って… 警備に付けとは命じないが ファーストが狙われる可能性がある と言う事は覚えておいてくれ …以上だ」
アースが立ち去る ハイケルがアースを見る エレナがアースに続く ハイケルが沈黙する

【 ハブロス家 ハイケルの部屋 】

ハイケルが考え込んでいる 間を置いて溜息を吐き顔を上げるとオルガンが見える ハイケルがエルムとエルムβたちの姿を思い出し視線を逸らすと ドアがノックされる ハイケルが疑問するとドアの外から軍曹の声がする
「アーヴァイン軍曹であります!夜分に失礼致します!少佐ぁ!」
ハイケルが言い掛ける
「入…っ」
ハイケルが言葉を止めて立ち上がりドアへ向かう

ハイケルがドアを開けると 軍曹が一瞬疑問してから慌てて敬礼する ハイケルが言う
「就業時間以外にまで敬礼をする事は無いだろう?共に この屋敷に居る間は私へ対し上官として畏まる必要も… そもそも 君は私の…」
ハイケルが視線を逸らすと軍曹が言う
「はっ!申し訳ありません 少佐ぁー!自分は少々馬鹿でありますので そう言った 臨機応変な対応は出来兼ねるのであります!」
軍曹が苦笑する ハイケルが呆気に取られた後苦笑して言う
「君らしいな… だが… 安心した」
軍曹が疑問して言う
「はぇ?安心…?」
ハイケルが言う
「いや、気にするな …それで?何か私に用か?」
軍曹が言う
「はっ!いえっ そのぉ~ 何と言いましょうか… 何となく…」
ハイケルが疑問して言う
「何となく?」
軍曹が言う
「あ、いえっ え~… 実は、先ほどの事でして… 少佐にっ ご迷惑をお掛けしてしまいましたかと?自分から先に お伝えしておくべきで ありましたかと!…真に 申し訳ありませんでしたぁー!少佐ぁー!」
ハイケルが呆気に取られた後 苦笑して言う
「いや… だが、そうだな?確かに マシーナリーの関わる事件という事で 知っていたのなら 聞いて置きたかったが… 君は事件の詳しい内容の方は知っているのか?」
軍曹が言う
「いえ 自分も詳しい事は生憎 ただ、その事件の後… いえ?どちらかと言うと 最近なのでありますが… それまで仲の良かった 兄貴とエレナ義姉さんの仲が… 何と言いますか… よそよそしいと言いましょうか?…自分も少々 深入りが出来ない状態でありまして…」
ハイケルが視線を逸らして言う
「そうか… では事件の詳しい内容も 聞き辛いと… …やはり 実際に得てみなければ 分からないものだな?」
軍曹が疑問して言う
「…は?」
ハイケルが言う
「家族や兄弟と言ったものだ 養子とは言え 実際に得てみると… 妙に気を使う… それこそ 国防軍の部下や上官であるのなら 何も気にせずに 思った事を言える 従って …この様な形で考え込む事も無かった」
軍曹が言う
「考え込む… と、申しますと?あ、事件の内容でありますか?少佐が どうしてもと言う事でしたら 自分から兄へ確認をっ!」
ハイケルが言う
「いや… そうではなく …… …先ほどは 悪かったと」
軍曹が疑問して言う
「は?少佐が…?」
ハイケルが言う
「エレナ婦人は マシーナリーや政府のマスタートップシークレットと言う物によって 自身の子供を傷付けられた …その思いから 私へ 子供の警備を依頼していたんだ だが その事を知らなかったとは言え 私は 婦人からの依頼を軽視してしまった …恐らく エルム少佐であったなら あの様な失態はしなかったのだろうな…?」
軍曹が一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「あ… いえ?恐らく エルム少佐でしたら ”無理だな”と 一言で却下されましたかと?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ!?…う、うん そうか?…20年以上 そのエルム少佐と家族であった君が言うのであれば… そうだったのか…?」
軍曹が言う
「はい!…あ、それと?自分の知る限り事件には そのエルム少佐や ラミリツ攻長も関わっていたらしく」
ハイケルが言う
「マシーナリーが関係する事から エルム少佐は分かるとして あのラミリツ攻長が…?」
軍曹が言う
「はい、ラミリツ攻長は以前にあった 偽の攻長の疑惑の時から このハブロス家にて過ごして居りました為 事件の際も 祖父上の屋敷に居りましたので… 恐らくそれで ご協力を頂いたものかと?」
ハイケルが言う
「そうか… とは言え 既に過ぎた話である事から 今更 無理に聞き出そうとも思わないが …先ほどの事に関しては またいつか 夫人に会う機会があれば 謝罪をしなければな…」
軍曹が呆気に取られて言う
「少佐…」
ハイケルが溜息を吐いて言う
「帝国との戦いや 国防軍へのハッキングの犯人… 考えなければならない事は沢山あるというのに 先ほどからずっとそちらの事に意識が行ってしまう… 悪魔の兵士としては どうでも良い事だと 分かっているつもりなのだが」
軍曹が微笑して言う
「それでしたら 少佐も!先に済ましてしまわれば 宜しいかと!」
ハイケルが言う
「先に済ますとは?」
軍曹が言う
「はっ!エレナ義姉さんは 出産とその後のファーストの治療の間は 病院に居りましたが 今日からはまた この屋敷にて暮らすのであります!ですので!何か御用があるのでしたら 直接 お部屋へと向かわれば宜しいかと!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「そ、そうだな?同じ屋敷に居るのなら… こうして長々と悩む位なら さっさと済ませてしまった方が… …良し 分かったっ では 軍曹!」
軍曹が敬礼をして言う
「はっ!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「私に 夫人の部屋を教えてくれ!」
軍曹が言う
「はっ!少佐!では 早速 ご案内を致しますであります!」
ハイケルが意を決して言う
「ああ… では …行くぞ 軍曹っ!」
軍曹が言う
「了解っ!少佐ぁー!」
軍曹とハイケルが歩いて行く

【 ハブロス家 エレナの部屋 】

ハイケルが言う
「…従って 先ほどは… すまなかったと」
エレナが言う
「悪魔の兵士である貴方が 本当にそれだけの理由で わざわざ こちらまで いらして下さったのでして?」
ハイケルが視線を逸らして言う
「悪かったな だが、用件は 本当にそれだけだ」
エレナが微笑して言う
「いいえ 有難う …それに 私も 御免なさい」
ハイケルが疑問してエレナを見る エレナが微笑して言う
「貴方は家族だものね?畏まる必要なんて無かったわ 貴方も私も… ね?」
ハイケルが言う
「あ、ああ…」
軍曹が微笑する エレナが苦笑して言う
「さっきは私も …実は あの人への不満を 貴方へぶつけてしまったの 初対面だったというのに失礼な事をしてしまったと …そう思っていた所へ来てくれて とても嬉しいわ」
ハイケルが呆気に取られた後 苦笑して言う
「俺も軍曹が 尋ねて来てくれなければ こちらへは来られなかった」
軍曹が一瞬呆気に取られた後 慌てて言う
「じ、自分はそのっ!自分にも出来る事があったのではなかったかと…?そちらを少佐へ謝罪しなければと思いましてっ!」
エレナが笑う
「うっふふふ」
ハイケルが微笑する 軍曹がホッとする エレナが言う
「やっぱり帰って来て良かったわ?病院では嫌な事ばかりを考えてしまって…」
ハイケルが言う
「先ほどの依頼だが… 例え就業時間の間であろうとも このハブロス家と国防軍レギスト駐屯地であれば 緊急時は10分と掛からない この屋敷の規模からして マシーナリーの襲撃であっても その間ぐらいは持つ筈だ …必ず 我々国防軍レギスト機動部隊が助けに来る 安心しろ」
エレナがハイケルを見た後 微笑し笑いながら言う
「可愛い悪魔の兵士さんだけれど 頼りになる所は 以前の彼と同じね?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「一言余計だが そう言う事だ …国防軍レギスト機動部隊は 窮地の仲間を助ける為にある やる事は同じだ」
エレナが苦笑しファーストを抱き上げて言う
「でも この子は… 次の国防軍総司令官には なれないのかもしれないのよ?…それでも?」
ハイケルが言う
「足を負傷しているせいでか?」
エレナが表情を落として言う
「ええ… それもあるけど あの人が… まるで この子を… 囮に使うつもりみたいだから」
ハイケルが言う
「囮に?」
エレナがハイケルを見て言う
「この子が以前 狙われた理由をご存知?」
ハイケルが言う
「いや… 詳しくは聞いていないが 察する所で言うのなら 国防軍総司令官の子供であるからではないのか?…長男であるのなら 尚更 次期国防軍総司令官と言う事になる それが理由だったのでは?」
エレナが言う
「あの時の犯人は まだ捕まっていないけれど 政府のマスタートップシークレットを使うのですって それで 帝国のマシーナリーを操るのだと…」
ハイケルが驚いて言う
「マシーナリーを操る!?」
エレナが言う
「ええ、政府のマスタートップシークレットは 帝国のマシーナリーを操る力 対する 国防軍のマスタートップシークレット 悪魔の兵士は マシーナリーを破壊する力」
ハイケルが言う
「では この所 国防軍へ襲撃を行っている マシーナリーは 政府が操っていると!?」
エレナが言う
「現行のミックワイヤー長官の政府では無いわ それ以前の」
ハイケルが言う
「それ以前の政府は… カルメス元長官は捕らえられ メイリス元長官こと シェイム・トルゥースは… 先日の襲撃の際に 死亡が確認されている」
エレナが言う
「その2人が関わった 本当の黒幕が居るのよ その者の名前は… 私は聞いてはいないけれど その黒幕が今 国防軍へハッキングを行っている 犯人らしいわ」
ハイケルが言う
「そこまで分かっているのかっ!?」
エレナが言う
「ええ だからこそ この子を囮にするみたいなの…」
ハイケルが言う
「どういう事だ?ハッキングの犯人は この子供の居場所を捜しているとでも?」
エレナが言う
「犯人の狙いは 国防軍のマスタートップシークレットか もしくは アールスローン戦記の原本を持つ者」
ハイケルが一瞬驚き軍曹を見る エレナが言う
「そうよね?そのアールスローン戦記の原本は ハブロス家の者が代々引き継ぐのだから …だとしたら この子が持っていても おかしくはないでしょ?」
ハイケルが言う
「原本は2つ… 1つは軍曹が持っている もう1つは…」
軍曹が言う
「はっ!少佐ぁ!もう1つは祖父上が持って居られたとの事ですっ …ですから その原本を守るエルム少佐が 祖父上に付いていたのでありまして」
ハイケルが軍曹を見た後エレナを見て言う
「ヴォール・アーケスト・ハブロス元総司令官の持っていた原本を その子へ渡したのか?」
エレナが言う
「いいえ」
ハイケルと軍曹が驚く エレナが言う
「この子は持っていないわ だったら その事を晒したらいいのに あの人は さも、この子が持て居るかのように 振舞わせようとしているの 囮として使おうと言うのよ 本物の場所を知られないようにっ」
ハイケルが目を細めて言う
「本物は何処にあるんだ?」
エレナが苦笑して顔を左右に振って言う
「知らないわ 聞かされていない ただ… 貴方も聞いたでしょう?近い内に エルム少佐と同じ悪魔の兵士が現れるって つまり… もう 原本は 誰かに 引き継がれているのよ それを守る為に 次期総司令官にはなれない この子を…っ 酷いと思うでしょう!?」
ハイケルが沈黙する エレナが苦笑して言う
「それとも貴方も ”当然だ”って 仰るのかしら?あのエルム少佐の様に?」
ハイケルが言う
「…分からない」
エレナが呆気に取られて言う
「え?」
ハイケルが言う
「俺は ハイケル・ヴォール・アーヴァインであって アース・メイヴン・ハブロスではない 当人の考えは 今回と同じく 当人へ直接聞いてみなければ 分からない筈だ」
エレナが表情を落とし視線を逸らして言う
「そうね… そうかもしれない だけど …私は聞けないわ」
ハイケルが言う
「…そうか」
エレナが苦笑して言う
「あら 分かるの?貴方にも この気持ちが?」
ハイケルが言う
「聞き辛い …のだろう?それは… 分かる」
エレナが微笑して言う
「やっぱり 貴方は優秀ね?ハイケル少佐」
ハイケルが沈黙する

【 ハブロス家 ハイケルの部屋 】

ハイケルが考えていて 1つ溜息を吐いて言う
「また別の悩みが発生した… これを解決するには …今度は アース・メイヴン・ハブロス総司令官へ問えば良いのか?国防軍の事であるのなら 夫人は兎も角 国防軍の… 増して 国防軍の悪魔の兵士である 俺であるなら?」
ハイケルの携帯が鳴る ハイケルが反応して携帯を取り出して言う
「そう言えば…」
ハイケルが携帯を着信させる 携帯からマスターの声がする
『よーう ハイケル!悪い悪い 遅くなっちまって!』
ハイケルが言う
「いや… 構わない 本当は お前を呼ぼうと思っていたのだが… その必要性も 今は… 良く分からなくなっている」
マスターが言う
『うん?お前が 分からないって言うのは 珍しいな?いつもYESかNOかで判断する奴だったのが… まぁそんな所が 人間らしいちゃ人間らしいけどな?』
ハイケルが言う
「人間らしい… それが 優秀か?では… 優秀ではない方が 良いのだろうか?」
マスターが言う
『はぁ?そんな訳無いだろう  ハイケル?お前は十分人間らしくて それが良いんだ 今更 何で そんな事言うんだよ?』
ハイケルが溜息を吐いて言う
「孤児院に居た頃は 俺も 他の子供たちと同じく ”家族”と言う物に興味を持ったが… 得てみると 色々と面倒だ」
マスターが言う
『へぇ… …まぁ それに関しては 俺は何も言えないな!なんつったて 俺は未だに家族とは無縁な あの頃のままだから… そう言った面倒とも あの頃のまま無縁でね?それにしても お前がそこまで悩むって言うからには~ 無縁の方が気楽なのかもな?はははっ!』
ハイケルが言う
「確かに その方が気楽ではあったが… 不思議と その時よりは… 良い様な気がする」
マスターが言う
『え?』
ハイケルが言う
「面倒ではあるが… 守りたいと思うんだ」
マスターが間を置いた後言う
『…へぇ~?』
ハイケルがハッとして言う
「はっ!…な、何を言っているんだ俺はっ!?」
マスターが軽く笑って言う
『良いじゃないかぁ~?より人間らしくて!』
ハイケルが言う
「悪魔の兵士が 人間らしくて堪るかっ!?」
マスターが言う
『それこそ 良いんじゃないのか?何しろ その悪魔の兵士が守るのは 人間なんだからな?』
ハイケルが呆気に取られた後苦笑して言う
「そう… かもな?」
マスターが言う
『じゃぁ 俺への用件って奴は… 保留か?それならそうで また いつでも声を掛けろよな?例え そっちが本物の家族を得たとしても 俺は今まで通り お前の事は… 自分の家族の様に思っている』
ハイケルが呆気に取られた後 苦笑して言う
「…そうか 分かった… 例え何度でも蘇えるとしても なるべく… 大切にしてみる」
マスターが言う
『お…?』
ハイケルが慌てて言う
「…よ、予定だっ!」
マスターが間を置いて笑い出す ハイケルが衝撃を受けて言う
「わ、笑うなっ!そもそも お前がそうしろと!…大体 お前こそ こんな時間まで連絡を寄越さないとはっ!一体何処をほっつき歩いていた!?答えろ!」

【 マスターの店 】

マスターが電話をしながらPCを操作して言う
「…あぁ まぁ ちょっとな?」
受話器からハイケルの声がする
『”ちょっとな?”俺の身の心配をするより お前自身の心配をしたらどうなんだ!?マスター!?』
マスターが苦笑して言う
「その マスターに付いて …ちょっと あったもんでね」
ハイケルが言う
『どう言う意味だ?』
マスターが言う
「実は 今 国防軍へ仕掛けられている 帝国のマシーナリーを使った襲撃に…」
ハイケルが言う
『その襲撃には 政府の力が… 政府のマスタートップシークレットが 関わっていると言う情報を入手したぞ』
マスターが言う
「ああ…」
ハイケルが言う
『知っていたのか?何故黙っていた?』
マスターが言う
「その政府のマスタートップシークレットを使っている 犯人を どうするかってな?…俺たちの間で 意見が割れて居たんだ けど どうやら 答えが決まったらしい そうとなったら…」
ハイケルが言う
『そうとなったら?』
マスターが言う
「…今でも俺を 誘ってくれるか?ハイケル?」

【 ハブロス家 ハイケルの部屋 】

ハイケルが呆気に取られた後 苦笑して言う
「…当然だ 国防軍レギスト駐屯地 情報部へ」

【 マスターの店 】

受話器からハイケルの声が聞こえる
『さっさと 戻って来い!マスターグレイゼス!』
マスターが微笑して言う
「ああ、そうさせてもらうよ ハイケル・ヴォール・アーヴァイン」
マスターが携帯の画面をタップする

【 ハブロス家 アースの部屋 】

アースの前にあるノートPCのモニターに表示が出る アースが反応して言う
「ん?これは…っ?」
執事が言う
「如何なさいましたか?アース様」
モニターに一気に表示が増える アースが言う
「…彼らが 戻って来た…っ」
執事が言う
「彼ら …と申されますと?」
アースが言う
「祖父上の頃に居た 国防軍のマスターたちが戻って来たっ …私の国防軍にっ!」
執事が微笑して言う
「彼らマスターたちに アース様の国防軍が認められたと言う事ですね?おめでとう御座います アース様」
アースが言う
「ああ …だが、これが始まりだ そうなれば 決着を付けるぞっ 奴との…  マスターブレイゼスとの決着をっ!」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

ハイケルが呆気に取られて言う
「何故… 居ない?」
マイクが言う
「あ、ハイケル少佐?お早う御座います!今日から国防軍レギスト機動部隊は 昼夜体制だそうですね?羨ましいですよぉ~ こっちなんてもう 今は朝昼も昼夜も無く 朝から晩まで…」
アナウンスが鳴り響く
『応援要請 応援要請 国防軍レムル駐屯地 データベースに侵入者あり 国防軍レムル駐屯地 データベースに侵入者あり レムル駐屯地の情報保護のため これより レムル駐屯地の全システムを遮断します 各駐屯地はバックアップを開始して下さい 繰り返します…』
マイクが言う
「ほら来た!」
ハイケルが言う
「レムル駐屯地… マックス大尉の情報部が…っ?」
マイクが言う
「皆!いつもの通りで!頑張ろう!」
情報部員が言う
「了解!」
ハイケルが言う
「作戦指示も簡略化されるほどだ レムル駐屯地であっても限界と言う事か …と 言うのに」
ハイケルが周囲を見渡した後 携帯を取り出して言う
「戻ると言ったくせに 一体 何処で油を売っているっ?」
ハイケルが携帯を操作して部室を出て行く

【 車内 】

ザキルが運転席で運転している 助手席に居るマスターが携帯に言う
「おー、ハイケルー!丁度 今 連絡しようとしていたんだ!聞いて驚け~?お待ち兼ねのPM70の復活だ!」
ザキルがマスターを見て微笑する 携帯からハイケルの声がする
『そんな事より お前は今何処に居る!?お前の情報部が 大変な時に!』
マスターが言う
「うん?情報部が大変?大いに結構!」
ハイケルが言う
『どういう意味だ!?』
マスターが言う
「頑張れ~って 応援しておいてくれ~?それから 後 15分ぐらいしたら到着する筈だから その頃になったら 国防軍レギスト機動部隊の皆を 第一射撃場へ集めておいてくれ!」
ハイケルが言う
『だから そうではなくっ!』
マスターが言う
「それじゃーなー?ハイケルー!また後でー!」

【 国防軍レギスト駐屯地 通路 】

ハイケルが携帯に言う
「話を聞けっ!このままでは 国防軍のっ!」
携帯からツーツー音が聞こえる ハイケルが呆気に取られた後怒って言う
「あの野郎ぉお~っ!」

【 車内 】

マスターが微笑して携帯をしまう ザキルが苦笑して言う
「良いんですか?中佐?」
マスターが言う
「なーに 良いって事よ これも作戦の内だからな?」
ザキルが言う
「作戦… ですか まぁ マスターがそう言うのでしたら 常人の俺が口を挟む事じゃないでしょうけど…」
マスターが苦笑して言う
「そんな言い方するなよ?同じ目的の為に戦う仲間だろ?それに いくらマスターだって 間違える事もあるんだ マスターブレイゼスみたいにな?…そもそも 万物の行き着く先は 無なんだから どれだけ そこへ行き着かないように 進歩するかって事が難しいんだ 行き着いちまったらお仕舞いさ!」
ザキルが言う
「あぁ~ それじゃ 思うんですけど…」
マスターが言う
「うん?何だ?何か意見がある時には 遠慮なく言いたまえ!意見や考えこそが 良きも悪きも物事の始まりだ 始まり無くして進歩なし!」
ザキルが言う
「では 言いますけど ハイケル少佐は エルム少佐より 人間らしいと言うか… 丸みがある分 悪く言えば 甘いですけど 結局どちらも 悪魔の兵士なんですから」
マスターが言う
「うむうむ!」
ザキルが言う
「爺ちゃんが… 何があっても 悪魔の兵士を 本気で怒らせる事だけは するなって言ってました」
マスターが衝撃を受けて言う
「うっ…」
ザキルが言う
「ちなみに エルム少佐の場合ですけど 報告事項だけは 良いも悪いも ハッキリ言わないと… 隊員たちの命に関わる事だから 彼らの命を危ぶませるくらいなら と 容赦なく… だそうで」
マスターが衝撃を受けて言う
「まじかっ!?」

【 国防軍レギスト駐屯地 通路 】

ハイケルが銃をセットして凄んで言う
「国防軍に優しい 悪魔の兵士に 迷いは無い …覚悟しろ マスターグレイゼス」

【 車内 】

マスターがくしゃみをして言う
「はっくしゅんっ!何かヤバイ気がする…っ」
マスターが悪寒に震える ザキルが苦笑して言う
「やっぱり 先に謝っておいた方が 良いんじゃないですか?」

【 国防軍レギスト駐屯地 第一射撃場 】

隊員たちが感心して言う
「おぉ~…」
隊員Bが言う
「何か また すっげー!」
ザキルがMP70をセットしている マスターが言う
「こいつが 前世紀に置いて 最高の威力を誇った PM70だ 残念ながら マガジンに圧入した超高温プラズマを チャンバーに開放する間 約8秒から10秒のタイムラグが発生してしまうのがネックだが… その破壊力は1丁で MT80の3倍に相当する」
隊員Cが驚いて言う
「これ1丁でMT80の3丁分っ!?」
隊員Fが言う
「RTD420マシーナリーを 1撃で倒せるって事か!」
ザキルが準備を終える ハイケルが見て言う
「用意された数は 3丁… MT80の3倍 それを3丁ジャストショットさせれば RTD560マシーナリーを倒せると言う事か?」
マスターが言う
「10メートル以内であればな?」
ハイケルが言う
「10メートル以内?」
ザキルが言う
「PM70は プラズマその物を発射の力としても利用するので 必要な銃の数は その飛距離によっても変わってしまうんです」
ハイケルが言う
「それでは…」
マスターが言う
「プラズマの威力の減少は 単純計算には収まらない その時の気象や温度 細かく言えば 磁場なんかにも影響を受けちまうもんだから 正確な数値はその時でなければ分からない それでも大体10メートル以内なら3丁で足りる筈だ そこから これまた大まかに言うのなら1メートル増しで1丁 …正確な数値の方は PM70のモニターに表示出来るように改良する予定だが そっちはもう少し待ってくれ」
ザキルが言う
「エルム少佐の時には 各PM70の運搬と押さえ役に エルム少佐のデコイが利用されていたので その力は 今回は皆さんで補うと言う事で 1丁の支えに必要な人数は6名という計算です… 残念ながら ちょっと 大人数になってしまいましたが…」
ハイケルが衝撃を受けた後顔を逸らして言う
「悪かったな…」
ザキルが苦笑して言う
「その分 バレルを少し長くして 押さえ易くしてみました!…という事で 早速試し撃ちを!」
隊員Cが周囲を見渡して言う
「今回は 誰が撃ったら良いんだ?」
マスターが言う
「今回は データを取る事がメインだが 機動部隊に準備中は無いからな?万が一の時には 試作銃とは言え こいつを実戦で使うという事も考えて メンバーは小銃メインアームのチーム内で決めてくれ 最終的には 11人全員がこいつを撃つ事になる」
隊員Aが言う
「それじゃ やっぱ 俺は抜けて …フレッド隊員は当然だよな?」
隊員Fが言う
「えっ!?お、俺が 当然って…っ」
隊員Bが言う
「フッちゃんは当然ー!でもって サッちゃんが抜けるのも 当然ー!」
隊員Cが怒って言う
「何で 俺が抜ける事も 当然なんだよっ!?」
隊員Aが言う
「なら フレッド隊員とイリアス隊員とマシル隊員かな?」
隊員Cが怒って言う
「おいっ!勝手に決めるなってっ!?」
隊員Fと隊員Iと隊員MがPM70の横へ立って 隊員Fが言う
「っと 言っても やっぱ 最新の戦闘兵器は最高だ…っ」
隊員Iが言う
「一発入魂の俺たちには こいつがお似合いだよな?」
隊員Mが言う
「ばっちり決めてやるぜ!」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「…ってっ!?本当にそれで 決まっちゃったのかよ!?マジでっ!?」
マスターが言う
「うん、データを取るにも 悪くない人選だ アラン隊員 バイスン隊員 流石だな?」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「中佐ぁーっ!」
隊員Aが苦笑する 隊員Bが敬礼して言う
「はーっ!中佐ぁー!俺たちは 隊長、副隊長不在時の予備隊長とサポートですからー!」
マスターが言う
「よし それじゃ 時間も無い事だし さっさとやっちまおう!」
隊員Cが脱力して言う
「そんなぁ~」
隊員Fと隊員Iと隊員MがPM70を構える 後衛チームが支えに付く 隊員Cが不満そうに見ている

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】

隊員Bが言う
「まぢで!まぢで!チョー凄いよ!あの銃!」
隊員Aが言う
「ああ!あれなら もう マシーナリーなんて どんな頑丈なのが来たって 俺らの敵じゃないぜ!」
隊員Fが言う
「凄いのは銃は勿論だけど やっぱり あのシステムの方だ 1つのメインとなる照準に 他の銃がオートで合せる上 火薬銃弾の時とは違って メインとなるプラズマに別のPM70のプラズマ同士をぶつける事で メインのプラズマをコーティングして強化するなんて 考え付きもしない」
隊員Cが言う
「流石は 国防軍レギスト駐屯地情報部の… 伝説のマーガレット中佐」
隊員たちが顔を向ける 隊員たちの視線の先 マスターがコーヒーを飲んで言う
「う…っ 相変わらず 不味いなぁ この食堂のコーヒーはぁ~?」
ハイケルがコーヒーを飲んで言う
「確かに あの情報部のコーヒーは旨い… だと言うのに」
ハイケルがマスターを見て言う
「国防軍への再入隊を果たしたのならっ 何故 情報部の部室へ向かわない!?」
ハイケルがテーブルを叩く マスターが言う
「だから 言っただろう?これも 作戦なの」
ハイケルが言う
「だから 何の作戦かと 聞いている」
マスターが言う
「それは…」
ハイケルが言う
「それはっ!?」
マスターが言う
「ないしょ!」
ハイケルが立ち上がり マスターへ銃を向けて言う
「やはり 国防軍に優しい 初世代の悪魔の兵士に 迷いなど…っ!」
マスターが慌てて言う
「だあっ こらこらっ!ハイケル君っ!だから言ってるでしょうっ 作戦だから!?その時になれば分かるって!」
ハイケルが言う
「その時になってからではっ 作戦構築にもっ 武装招集にもっ 時間が足りなくなるっ!作戦とは 事前に綿密な準備を行わなければならないものだっ!」
マスターが言う
「だから それを ずっとやって来たんだからっ!協力してくれって 言ってるんだぁ …分かってくれよ?」
ハイケルが銃を仕舞い 椅子に座って息を吐いて言う
「だったら その作戦内容を俺へ伝えるべきだ …それとも マスターたちの作戦は 俺たちには教えられないのか?」
マスターが苦笑して言う
「その作戦が 俺の立てたものだったなら お前にもしっかりと伝えて 当然 力も貸してもらう …だが 今回は 俺も手伝いの側なんだよ それに」
ハイケルが言う
「それに?」
マスターが言う
「敵は 政府にも国防軍にも詳しい者だ 奴を策へはめようとするなら こっちが普段の行動を変えて 感付かれる訳にはいかない」
ハイケルが言う
「お前たちが それほど慎重をきするとは 相手は それほどの者と言う事か」
マスターが言う
「そう言う事だ 何しろ 世紀の天才と言われた マスターだからな?」
ハイケルが言う
「世紀の天才… マスター… ブレイゼスか?」

【 ハブロス家 アースの部屋 】

ドアがノックされ 軍曹が入って来て言う
「兄貴 ただいま帰ったのだが?」
アースが言う
「ああ、お帰り アーヴィン 言い付け通り 通常の朝昼体制の時間で帰って来たか」
軍曹が言う
「うむ、とりあえず 言われた通り帰っては来たが …それで?その俺に 一体何の用があるのだ?」
アースが言う
「いや?特に用などは無いが?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「むっ!?そ、それならっ 自分はっ!レギストの皆と共に 昼夜体制で訓練を行いたいのだがっ!?」
アースが言う
「本来 国防軍の者とは言え 防長閣下は国家家臣だ 就業時間は政府と同じく 朝昼体制とされている お前が国防軍の機動部隊に籍を置こうとも 部隊の体制に関わらず 朝昼業務の終わりである 夕方5時に終業する事は 何もおかしな事では無い」
軍曹が呆気に取られた後 慌てて言う
「た、例えそうであったとしてもっ 自分は 半日だけの訓練で終らせるなどでは 物足りぬしっ そもそも 自分は レギストの仲間たちと共に居たいのだ!」
アースが言う
「家族と共に居るよりも か?」
軍曹が困って言う
「そ、それと これとは…っ」
アースが微笑して言う
「折角 そのお前が早くに帰って来てくれたんだ 今日は 久しぶりに家族水入らずで 食事をしようじゃないか?」
軍曹が呆気に取られた後言う
「う、うむ… それは 構わぬが…」
アースが微笑して言う
「では 服を着替えたら食堂へ来るんだ アーヴィン 先に行っている」
アースが立ち上がりドアへ向かう 軍曹が呆気に取られて言う
「あ、兄貴…?」
アースが立ち去る 軍曹が疑問する 執事が微笑して礼をして 押さえているドアを示す 軍曹が言う
「う、うむ… 分かったのだ」
軍曹が部屋を出て行く

【 ハブロス家 食堂 】

軍曹が向かいながら言う
「確かに 兄貴と2人きりで食事を取るのは 久しぶりな気もするが…」
軍曹が近くへ来ると執事がドアを開ける 軍曹が向かいながら言う
「む?そう言えば 家族水入らずと言う事は エレナ義姉さんも交えてと?それなら更に久し振りで… 流石に まだファーストまでは居らぬだろうが」
軍曹が顔を上げると驚いて目を見開く アースが振り向いて言う
「やっと来たか アーヴィン 私も… 父上も お待ちかねだったぞ?」
軍曹が驚いたまま言う
「ち… 父上…っ!?」
軍曹の視線の先 アーケストが車椅子に座り 食卓に居て軍曹を見ると微笑して言う
「ああ… アーヴィンか… 随分と… 大きく 逞しくなった… まるで…」
アースが言う
「父上 アーヴィンは このアールスローンの国家家臣 防長であると供に 国防軍レギスト機動部隊へ属し そこで 軍曹として部隊を率いているのです」
アーケストが言う
「ほほ~?そうか… うん… まるで若き頃の… 父上の様だ…」
アースが微笑して言う
「ええ 本当に アーヴィンは祖父上にそっくりです そして私は父上に?」
アーケストが弱く笑う
「あっはっは…」
軍曹が立ち尽くしている アースが言う
「どうした?アーヴィン 席へ座りなさい こうして家族3人で食事をするのは… もう12年振りだ お前にも積もる話があるだろう?」
執事が席を示して言う
「どうぞ アーヴァイン様 お席の方へ すぐに食前酒をご用意致します」
軍曹が言う
「あ… ああ…」
軍曹がゆっくりと席へ向かう

【 ハブロス家 軍曹の部屋 】

軍曹が息を吐きながら椅子へ座って言う
「はぁ… まさか…」
軍曹が視線を落として言う
「何かあると思ったら こういう事であったのか… 確かに 以前より 父上のご容態が良くなって来たと 聞いてはいたが…」
軍曹の脳裏に アースとアーケストが微笑ましく語らっている姿が思い出される 軍曹が言う
「ご不便があるとは言え ご自身の手で食事が取られ かつ あの様に お話が出来る様にまで なっていたとは」
ドアが開かれ 執事が礼をして言う
「失礼致します アーヴァイン様 …ご気分の程は如何で御座いましょうか?」
軍曹が言う
「うむ 正直驚いたのだ 自分が知っていた父上のお姿は… 自室のベッドで 発作の悲鳴を上げられているお姿か… それ以前の 何かに取り付かれたかのような 恐ろしい父上のお姿だけだったのだ それが…」
執事が微笑して言う
「アーケスト様は 今ではもう それらのご症状はまったく見受けられません ご気分も安らかに 日々アース様やアーヴァイン様のご成長を伺い喜ばれると共に お孫様であらされる ファースト様のお姿に微笑まれるご様子は やはりラゼル様のお姿を彷彿とされます」
軍曹が言う
「もう 以前の様に お怒りのお声を上げられる事も無いのか?」
執事が言う
「はい そちらの様な事は まったく御座いません 今では ご病気になられる以前のアーケスト様より 柔らかなご様子ですね」
軍曹が言う
「そうなのか… 自分は… その頃の父上の事は もうすっかりと忘れてしまっているのだが …先日 録音とは言え 昔の父上のお声を伺ったのだ その感じは… 何となくだが兄上に似ていた」
執事が一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「そうと申しませば 僭越ながら アーヴァイン様がアース様を ”兄上”と呼ばれているのを耳にしたのも随分と久方振りでした」
軍曹が衝撃を受けて言う
「う、うむっ… それは…っ 流石に 父上の前ではっ …あちらの呼び名を使う訳には行かぬかと…」
執事が微笑して言う
「アース様も 日々のご挨拶や お話の中に置かれましても そちらのお話は伏せられている ご様子です」
軍曹が言う
「では 兄上がずっと父上の看病を?それで…」
執事が言う
「左様に御座いますね 日々欠かさず お話のお時間をお取りし お治療の際も献身的になされておられました そもそもアース様が 旦那様のお治療が可能な名医や そちらへ必要なものを全て揃えられなければ ここまでの回復は御座いませんでした」
軍曹が言う
「そうか… あの父上のお姿には 幼かった兄上も恐ろしいと感じていた筈なのに… やはり兄貴は凄いのだ!…あ?」
執事が軽く笑って言う
「はい、アース様もアニキ様も 確かに お凄いですね?」
軍曹が苦笑して言う
「う、うむ… どちらも… …うむ!どちらの兄貴も 自分にとっては とても尊敬する お人なのだ!」
執事が微笑して言う
「そちらは よろしゅう御座いました アーヴァイン様は ご自慢のお兄様を お持ちであると言う事で」
軍曹が言う
「うむ!それは間違いないのだ!だが… その弟である自分は馬鹿である為 いつも兄貴には助けられてばかりなのだが… 一体どうしたら 自分も兄貴の様に何かの… 家族の役に立てるのだろうか?」
執事が微笑して言う
「アーヴァイン様も 国防軍の防長として 軍曹として どちらもハブロス家の あるべきご主人様のお姿として 誇らしいと思われますが?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「うっ!?い、いや… 自分は それらどちらにおいても まだまだ!なのである… もっと 精進せねばならぬ 訓練は勿論 出来れば もう少し頭も良くなりたいのだが… そちらは どうしても難しい …そうとなれば 自分はやはり レギストの訓練には参加したいのだが 何とかならんものだろうか?」
執事が言う
「…では 私から アース様へ そちらの旨を お伝えしておきましょう」
軍曹が言う
「い、良いのか?」
執事が言う
「勿論に御座います しかしながら 私はお伝えを致しますだけに御座いますので そちらのご要望が通られるかに置かれましては 定かには御座いませんが…」
軍曹が言う
「兄貴はレミックの言う事には信用を置くのだ そのレミックが頼んでくれると言うのであれば きっと大丈夫なのである!どうか宜しく頼むレミック!」
執事が言う
「勿体無いお言葉を有難う御座います アーヴァイン様 では 早速に お伝えをして参ります」
軍曹が微笑んで言う
「うむ!…あ、あぁ!それと!?」
執事が立ち去ろうとしていた体制を戻して言う
「はい?」
軍曹が言う
「兄貴には自分は大丈夫だと… 父上の看病を有難うと伝えてくれ …あぁ!それとも?…自分は まったく手伝わなくて すまなかったと謝るべきだろうか…っ?」
執事が微笑して言う
「畏まりました では アーヴァイン様の そちらのお気持ちのままに お伝えを致します」
軍曹が言う
「う、うむ 宜しく頼むのだ」
執事が立ち去る 軍曹が苦笑する

【 国防軍レギスト駐屯地 第一射撃場 】

マスターが言う
「…と言う事で!早速プラズマ収集測定システムを組み込んだ こいつが実戦仕様のPM70だ!」
隊員たちが感心して言う
「おぉお~!」
隊員Fが言う
「たった1日で…?」
隊員Bが言う
「すっげー!流っ石ー!」
マスターが微笑して言う
「国防軍レギスト駐屯地情報部の 伝説のマーガレット中佐に掛かれば ざっと こんなもんよ!」
ハイケルが沈黙してから言う
「…少し ペースが速過ぎるのではないのか?力の使い過ぎは 宿主に負担を掛ける」
マスターが苦笑して言う
「まぁ 面白いデータを見付けたもんだから いつもの癖で ついつい… な?気は付けてるって!」
ハイケルが言う
「面白いデータであっても お前の興味の範囲ではない筈だ …作戦が近まっているのか?」
隊員たちが試し撃ちの準備をしている マスターがそれを見ながら言う
「作戦の方はとっくに始まっている 後は… 相手が何時行動を起こすか だが」
ハイケルが言う
「手ごたえは?」
マスターが言う
「あると思って こいつの完成を急いでみた …とは言った所で 相手は俺以上の使い手だ 更に上を行かれるつもりで 構えていないとな?」
後衛チームの隊員が言う
「あのぉ… 中佐~?」
マスターが振り向いて言う
「うん?どうした?」
後衛チームの隊員が言う
「ちなみに 押さえの方は… 昨日と同じで?」
マスターが言う
「ああ、そっちは特に変更は無しだが?」
後衛チームの隊員が言う
「あー 実は ちょっとー このPM70の押さえは 6人でもキツくて… もう1人位増やせると良いんですけど」
後衛チームの隊員2が言う
「もうちょっとバレルを伸ばして 2人プラスしてもらうとか?」
マスターが言う
「うーん そっちの話となると ザキルの担当なんだが…」
ザキルが言う
「はい 銃の改造自体は簡単ですけど バレルの長さを変えると 今度はプラズマの抵抗値や その他のシステムに影響が出ると思うんですが?」
マスターが言う
「ああ、そいつは いくらでも 計算の直しは可能だ」
ザキルが言う
「えっ!?でもバレルを1人分伸ばすとすると 全体的なシステム数値をっ …それこそジャストショットのシステムまで 変える事になりますよ?」
マスターが言う
「そうだなぁ …まぁ 急げば 半日位で?」
ハイケルが言う
「そんなに急ぐな」
マスターが言う
「ハイケル~」
ハイケルが言う
「俺の事ばかりではなく 少しはお前も自分の事を考えろ 現状であっても お前は通常を超える力を使っているのだろう?そうとなれば システムや押さえの人数はこのままで行くべきだ」
ハイケルが後衛チームの隊員たちへ向いて言う
「押さえが辛いのなら まずは 自分たちの筋力を鍛えろっ」
後衛チームの隊員たちが衝撃を受けて言う
「えっ?いやぁ… でもぉ~」
ハイケルが言う
「私がベリハース院長から得た情報によれば エルム少佐の筋力は 常人の3倍 その計算で再設計した銃だ 現状のお前たちであっても十分に押さえられる」
後衛チームの隊員たちが顔を見合わせて 苦笑して言う
「けど 俺たちは… なぁ?」 「はい… 俺たちは レギストとは言え 万年後衛チームなので…」 「それこそ そこそこの筋力しか ないのかも…?」
ハイケルが怒って言う
「甘ったれるなっ!」
後衛チームの隊員たちが衝撃を受けて驚く ハイケルが言う
「お前たちは 国防軍レギスト機動部隊の隊員だ!やる気が無いのなら さっさと別部隊へ行け!レギストには不要だ!」
後衛チームの隊員たちが呆気に取られて顔を見合わせる マスターが苦笑する 館内アナウンスが響く
『リンゴ~ン♪リンゴ~ン♪ただ今 午後5時になりました 朝昼勤務の皆様 お疲れ様でした 業務の引継ぎを確認の上 明日に備え しっかりと休んで置きましょう リンゴ~ン♪リンゴ~ン♪ただ今 午後5時になりました 朝昼勤務の皆様 お疲れ様でした 業務の引継ぎを確認の上…』
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「軍曹 時間だ」
軍曹が言う
「はっ!少佐ぁ!自分は本日より 国防軍レギスト機動部隊の勤務体制に倣って良いとの許可を 総司令官より得られましたので!このまま引き続き 夜勤務へ移行しますであります!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「そうか ではまずは PM70のデータ取りを続ける その後は 全員で 通常訓練を もう一度だ」
軍曹が言う
「はっ!了解でありますっ!少佐ぁー!」
隊員Bが言う
「それじゃー 俺たちは 撃ち手でも押さえでも無いんで 先行して 通常訓練をやって来まーす!少佐ぁー!」
サブマシンガンチームの隊員たちが言う
「やって来まーす!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「待て」
隊員Bと共に向かおうとしていた隊員たちが立ち止まる ハイケルが言う
「押さえの後衛隊員たちが無理だと言うのであれば お前たちに代わってもらうと言う事になる このまま待機していろ」
隊員Bが言う
「あー そっかぁー 了解でありまーす!少佐ぁー!」
隊員Bと一緒に向かおうとしていた隊員たちが言う
「了解でありまーす!少佐ぁー!」
後衛チームの隊員たちが顔を見合わせた後 焦りを見せる マスターが言う
「では まずは 昨日と同じメンバーで頼む 全員構え!」
小銃メインアームチームが各PM70を構えると 後衛チームが押さえのポジションへ向かう マスターがハイケルへ視線を向ける ハイケルが目を細めて言う
「装填っ」
撃ち手たちが一斉に装填レバーを引く PM70にプラズマが装填されて装填が完了したPM70のシリンダーが緑色に光る ハイケルが言う
「放てっ」
撃ち手たちがトリガーを引く 一瞬の後 PM70が一斉に放たれ 押さえの隊員たちが歯を食いしばる 隊員FのPM70をセンターに全てのPM70のプラズマが集まり 的の分厚い鉄に1つの穴が焼き開かれる ハイケルが横目にマスターを見る マスターがノートPCを操作して言う
「うーん… システムに異常は無し… 後はどうやってラグを縮めるかだが… 圧縮率を下げて装填回数で補った方が早いかなぁ…?」
ハイケルが言う
「2打目 装填っ」
撃ち手たちが一斉に装填レバーを引く PM70にプラズマが装填されて装填が完了したPM70のシリンダーが緑色に光って行く 後衛チームが押さえに力を込める

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

部室内にアナウンスが流れる
『応援要請解除 応援要請解除 国防軍リング駐屯地のデータベースは復旧しました 応援要請解除 応援要請解除 国防軍リング駐屯地のデータベースは復旧しました 応援要請を受けていた各駐屯地情報部は 速やかに 通常警戒態勢へ移行して下さい 繰り返します…』
情報部員たちが息を吐く マイクがうな垂れて言う
「あぁ… もう 本当に限界…」
マイクがドアを見て苦笑する 情報部員が苦笑して言う
「マイク少佐?そんな事言ってると また ハイケル少佐に怒られちゃいますよ?」
マイクが苦笑して言う
「うん そうだね… けど、今は そのハイケル少佐に また一喝でもしてもらわないと 気合が入らないかなぁ?なんてね?…はははっ」
情報部員が微笑して言う
「あ、でも その気持ち分かりますよ 以前は良く 私たちも怒られていましたから ”お前たちは 国防軍レギスト駐屯地 情報部員として やる気があるのかぁあっ!?”って それはもう しょっちゅう?」
マイクが呆気に取られて言う
「へ?」
情報部員が嬉しそうに言う
「特に 徹夜の真っ只中とかに ガツンと怒られると 気合が入るんですよね?こっちも”やってやろうじゃありませんかー!”って!あっはははっ!」
マイクが苦笑して言う
「へぇ… それじゃ ハイケル少佐は 以前からそんな風に?」
情報部員が言う
「あ、いえ そちらは ハイケル少佐ではなくて マーガレット中佐です」
マイクが呆気に取られて言う
「へ?…あの温厚そうな コーヒー好きなお方が?」
情報部員が言う
「あぁ そう言えば 先日久し振りにレムル駐屯地のサポートで 中佐と作戦をご一緒した時には 以前のあの 鬼教官だった中佐の面影がまったく無くて ちょっと驚いちゃいました」
マイクが言う
「へぇ… そうなの…?ほぉ… 通りで~」
マイクが部員たちを見渡してから 苦笑して言う
「これだけのヘヴィワークでも 皆しっかりしている訳だ?…うん!私も見習おう!」
マイクが気を取り直して言う
「それじゃー 皆さん 引き続き頑張りましょうー!」
部員たちが苦笑した後言う
「はーい」
部員たちが作業を続行する マイクが見渡した後着席して作業を行う ミストンがアリムへ向いて心配して言う
「アリム… 大丈夫?」
アリムが辛そうに言う
「大丈夫…っ 折角 マイク少佐に任せてもらえているんだから 頑張らなきゃっ」
ミストンが言う
「でも… 辛かったら 言って良いんだよ?マーガレット中佐も 無謀な無理は禁止だって 辛い時には 応援を呼んで皆でフォローし合うようにって 言ってたじゃない?」
アリムが言う
「うん でも… まだ 大丈夫だからっ」
ミストンが心配してアリムを伺いつつ作業をする

【 国防軍レギスト駐屯地 第一射撃場 】

ハイケルが言う
「4打目 装填っ」
撃ち手たちが装填レバーを引く 後衛チームが抑えに力を込める ハイケルが間を置いて言う
「…停止だ」
隊員たちが一瞬驚き疑問する マスターがノートPCから顔を上げて 疑問した後言う
「ん?…ああ、それじゃ 充填を解除する時には 充填レバーを下げてから 手前へ ランプが黄色くなるまでは安定しないから 構えはそのままで待ってくれ」
ハイケルが言う
「ここからは押さえのメンバーを変える フレッド隊員の押さえには バイスン隊員、ハックス隊員、ガルム隊員、ヴェイル隊員…」
後衛チームが言う
「少佐っ 俺たちはまだ!」
ハイケルが言う
「PM70は 強力な銃であると同時に 超精密機械だ よって その押さえには万全をきさなければならない 無理は禁止だ 基本回数として3打目までが押さえられるのであれば 一応は十分と言える 上出来… いや、期待通りだ」
後衛チームが呆気に取られる ハイケルが言う
「欲を言うのであれば 実戦時には 必要以上が要求される 余力が持てる様 努力を続けろ …ここからは 緊急時を想定し その他のメンバーにてデータを取る 後衛チームは一度下がれ そして お前たちは…」
後衛チームのメンバーが表情を明るめる ハイケルが言う
「筋力強化の為 早速 通常訓練を開始しろ」
後衛チームが衝撃を受けて言う
「そ、そんな…」 「休憩の飴も無しか…」
マスターが密かに笑う
「プクク…」
ハイケルが言う
「筋力強化の為 早速 通常訓練を開始しろ」
後衛チームが衝撃を受けて言う
「2回言われた…」 「しかも 早速って…」
マスターが言う
「ハイケル~ 押さえをやった後に 通常訓練の1で 腕立てをするのは ちょっと 身体に無理が掛かるんじゃないか?」
ハイケルが言う
「そうだな では 通常訓練の2を最初に 3と1はどちらを先にしても構わない …が やれっ」
後衛チームが衝撃を受けて言う
「どっちにしても…」 「やれと…」
ハイケルが顔を向ける 後衛チームが敬礼して言う
「了解しましたぁー!少佐ぁー!」
隊員たちが笑う ハイケルが微笑すると 途端に駐屯地の電気が切れる 隊員たちが疑問して言う
「お?」 「なんだ?また停電かー?」
ノートPCの明かりの中 マスターが一瞬呆気に取られた後言う
「停電だと?駐屯地には 予備電源があるんだ 停電なんてある筈がっ」
マスターがノートPCを操作する ハイケルが言う
「恐らく情報部だ 国防軍レギスト駐屯地のデータベースへ ハッキングをされたのだろう」
マスターが言う
「まさかっ!だからって この駐屯地の電源をっ!?」
ハイケルが言う
「マイク少佐の国防軍レギスト駐屯地情報部には あってもおかしくない事だ」
マスターが怒って言う
「あっては許されない事だっ!レギストの駐屯地だけはっ!」
ハイケルが言う
「だから お前を戻そうとした」
マスターが後表情を困らせて言う
「…だが 作戦が終るまでは どうしても… うん?待てよ まさかっ!?」
マスターが慌ててノートPCを操作する ハイケルが言う
「どうした?」
マスターが言う
「やられたっ!レギストに出動要請っ!このタイミングで落とされたっ!」
ハイケルが言う
「なんだとっ!?」
マスターが言う
「国防軍レギスト機動部隊!直ちに 武装招集だっ!」
隊員たちが驚いてハイケルを見る ハイケルが言う
「了解」
ハイケルが走り出す 隊員たちが驚き 隊員Bが言う
「ぶ、武装招集ー!」
隊員たちが言う
「りょ、了解ーっ!?」
隊員たちが走り出す マスターがノートPCを操作した後 いらただしげにして 走り出す

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マイクが言う
「はーい それじゃ 皆さん 束の間の休憩~」
部員たちが息を吐く アリムが悔しそうに言う
「すみませんっ マイク少佐!私がまた…っ!」
マイクが言う
「いやぁ しょうがないよ 気にしない 気にしない~」
部室のドアが叩き開かれ マスターが現れて言う
「馬鹿野郎っ!何やってるっ!?」
マイクが驚き跳ね上がって言う
「わぁあっ!?だ、誰ですかぁっ!?」
ミストンが言う
「マーガレット中佐っ!」
マイクが驚いて言う
「えぇえー!?こ、この人が!?」
マスターがずかずか入って来て言う
「直ちに電源を戻せっ!最終電源システムを手動で起動させろ!起動と同時に 全員でシステム復旧だ!急げっ!」
マイクが驚いて言う
「なっ!?」
ミストンが言う
「了解!」
ミストンが緊急レバーの保護ガラスを割り 最終電源システムのレバーを回してスイッチを押す 部室の明かりが戻る 部員たちが作業を開始する マイクが言う
「ま、待って下さいっ!それではっ」
スピーカーからアナウンスが流れる
『…指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ 繰り返す 緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ』
情報部員たちが驚いて言う
「レギストに緊急指令がっ!?」
マスターがマイクの隣のPCへ座る マイクがマスターへ言う
「しかしっ 今 この駐屯地には ハッキングが行われているんですよっ!?システムを落とさなければ 情報がっ!」
マスターがPCを操作しながら言う
「そのハッキングは俺が押さえる!お前たちは 直ちに レギストのサポートを開始しろ!」
マイクが慌てて言う
「え!?いやっ!?でもっ!?一体何処に襲撃がされているのか!?総司令官の指示も来ていないのに!?」
マスターが怒って言う
「だったら すぐに確認だっ!向こうは この駐屯地の電源が落ちている事から 連絡を止めているんだろうっ こっちが復旧作業をしている事と レギストが武装招集している事も伝えろ!今すぐだっ!」
マイクが慌てて言う
「りょ、了解っ!」
マイクが受話器を取ってボタンを押す マスターが言う
「ミストン!ハイケルへ通信を繋げ 無線イヤホンを使用している 周波数は分かっているな!?」
ミストンが言う
「はいっ 緊急時の無線周波数は62です!」
マスターが言う
「そうだ ついでに 政府警察特殊機動部隊の周波数とも同じだ 向こうから支援要請が来ていないかも確認を!マシーナリーが相手なら十分に有り得る!」
ミストンが言う
「了解!」
マイクが電話に驚いて言う
「えぇええーっ!?そ、それはーっ!!」
マスターが怒って言う
「馬鹿野郎!部員たちを動かす主任が 指令内容に 動揺を表すなっ!」
マイクが慌てて言う
「す、すみませんっ!マーガレット中佐っ しかしっ 襲撃場所はっ!!」
スピーカーからハイケルの声が聞こえる
『こちらレギスト機動部隊 武装招集は完了している 指示を』
マイクが困って言う
「えっと… あの~…っ」
マスターが言う
「答え給えっ!マイク君っ!」
マイクが敬礼して言う
「は、はいーっ!出動場所は!我ら国防軍長のご自宅であり!ハイケル少佐のご自宅でもあります!ハブロス家のお屋敷でありますー!」

【 レギスト車内 】

軍曹がイヤホンを押さえて言う
「なぁあっ!?ハブロス家の屋敷にっ!?」
隊員たちが驚いて言う
「国防軍長のご自宅にっ!?」 「しゅ、襲撃… なのか?」 「い、一体誰が…?」
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「どういう事だっ!?詳しい情報を!」
イヤホンからマイクの動揺する声が聞こえる
『そ、それも…っ!な、何でか…っ』
ハイケルがイライラして言う
「マイク少佐っ!!」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マイクが言う
「は、はいぃっ!すみませんっ!なんとっ マシーナリーの襲撃なんですっ!ハブロス邸にっ!?お屋敷に マシーナリーってっ!?しかも 総司令官が前線で指揮を執っているとかっ!?政府の特殊部隊が戦ってるとか!?一体何がどうなっているんだかっ!?」
隊員Bが驚いて言う
『えー!?マシーナリーが 軍曹や少佐や総司令官のご自宅に お邪魔しているのでありますかー!?マイク少佐ぁー?それって…?』
マスターが言う
「国防軍レギスト機動部隊!」

【 移動トラック車内 】

ハイケルが言う
「出動!」
ドライバーが言う
「了解!」
トラックがサイレンを鳴らして走り出す

【 ハブロス家 外 】

アースが見つめる先 屋敷の敷地にマシーナリー1~3が押し掛けている ラミリツが叫ぶ
「やあぁあー!」
ラミリツがマシーナリー2を斬り付け 振り向き様に中央へプラズマセイバーを突き刺して抜くと マシーナリー2が脱力して倒れる アースが言う
「お前たちで抑え切れるか?」
ラミリツがプラズマセイバーのバッテリーを変えて言う
「答えて平気なの?」
アースが言う
「敵の数が多過ぎる 3体を倒す度に そちらのバッテリーを変えなければならない様では お前たちGPTの剣士5名では とても足りない」
ラミリツがプラズマセイバーをアースの前で構えて言う
「分かってるならさ?屋敷の中に入っててよ 止められるだけ止めたら 隊員たちの為にも 悪いけど 僕たちは逃げさせてもらうから 後は…」
ラミリツがマシーナリー3を倒してから言う
「レギストが来てくれるのを願うんだね …まったく 何やってるのさっ?あいつらはっ!?自分たちの総司令官が やられちゃっても良いって言うのっ?」
アースが言う
「国防軍レギスト駐屯地にはハッキングが行われ 現在 全ての情報が止められている 恐らく マスターブレイゼスの仕業だろう」
ラミリツが言う
「だったら尚更っ 国防軍長の上!非戦闘員の癖に こんな所に居たら危ないだろ!?何考えてるんだよ!?」
アースが言う
「グダグダと喋っていないで 戦えるだけ戦ったら お前たちは さっさと帰れっ」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「何それっ!?それが政府の支援を受けてる 国防軍長総司令官の態度っ!?」

【 移動トラック車内 】

トラックがサイレンを鳴らして走っている ハイケルのイヤホンに マイクの声が聞こえる
『ハイケル少佐!改めて現状が分かりました!』
ハイケルが言う
「伝えろっ」
マイクが言う
『はい!現在 ハブロス邸には RTD210 330 420マシーナリーの3種類が複数 お屋敷へ向け襲撃中!それを 政府警察特殊機動部隊の方々が 押し止めているとの事ですがっ 数が多過ぎる為 殲滅は不可能との事ですっ!』
ハイケルが言う
「屋敷の者の避難はどうなっている!?」
マイクが言う
『お屋敷には 使用人とハブロス家のご家族の方がいらっしゃるとの事でっ 詳しい事は分かりませんが ハブロス総司令官が 現在 屋敷前でGPTの隊員たちへの指示を行っているとの事っ そして、GPTは既にっ 武器弾薬の限界という事で それらが尽き次第 撤退するとの事です!』
ハイケルが言う
「分かった GPTの撤退後は 我々が到着するまで 屋敷の中央で待機するようにと!それから…っ」
ハイケルがドライバーへ問う
「目的地まではっ!?」
ドライバーが言う
「残り約2分!」
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「その状態で我々の到着までの 残り1分を耐えろと伝えろ!」
マイクが言う
『了解っ!』
軍曹が言う
「少佐…っ」
ハイケルが言う
「到着と同時に PM70とMT80 MT77を用意しろっ!MT77の補佐を ガルム隊員、ヴェイル隊員!MT80の撃ち手はフレッド隊員、イリアス隊員、マシル隊員!PM70のメインの撃ち手にサキシュ隊員 サポートはその他小銃メイアームの隊員!」
隊員Cが衝撃を受けて叫ぶ
「こんな時だけ いきなりーっ!?」
ハイケルが言う
「押さえは 後衛支援チームだ!頼んだぞ!」
隊員たちが言う
「「了解!少佐ぁー!」」
隊員Cがヤケクソに言う
「了解!少佐ぁー!」
隊員Bが言う
「良かったねー!サッちゃんー!」
隊員Cが言う
「うるさーいっ!サッちゃん言うなー!」
車両が走り去る

【 ハブロス家 エレナの部屋 】

エレナが怯えながら屋敷の外を見る 爆音に怯えて耳を塞いで目を逸らす 恐る恐るそれらを解除すると ファーストが泣き出す エレナがハッとして ベビーベッドへ向かうと ファーストを抱き上げて言う
「大丈夫よ?すぐにハイケル少佐が助けに来て下さるわ…っ そうすれば きっと…っ」
エレナがファーストをあやしながら窓の外へ向く ドアが開かれ執事が現れて言う
「エレナ様 こちらは危険です どうか お屋敷の中頃へ」
エレナが言う
「ハイケル少佐は?レギストは まだいらっしゃらなくて?」
執事が言う
「ただ今向かっているとの事です 到着は間も無く 後1分ほどであると」
エレナが微笑して言う
「そう… それなら…」
エレナが窓の外を見る 執事が言う
「エレナ様」
エレナが気付いて言う
「あ、あの様な場所にっ!?」
執事が言う
「エレナ様 窓際は危険です どうかお早くこちらへ」
エレナが言う
「でもっ 外にあの人がっ 外では危険でしてよっ 私の事などより 早く主人を屋敷の中へ迎え入れなさいっ!」
執事が言う
「アース様は ハブロス家のご当主として 国防軍総司令官として あちらの場所にて 守られるとの事です」
エレナが言う
「そんなっ!」
執事が言う
「そして 私は そちらのアース様より エレナ様とファースト様を 必ず お守りする様にと 仰せ付かっております ですので どうか ご避難の程を エレナ様」
エレナが驚いて言う
「あの人が… 私とファーストを…っ!?」
エレナが窓の外を見る

【 ハブロス家 外 】

ラミリツが叫んで向かう
「やぁあーっ!」
ラミリツがプラズマセイバーでマシーナリー3を斬り付けると 続いて言う
「420は右!」
ラミリツがプラズマセイバーをマシーナリー3の右胸へ突き刺す マシーナリー3が一瞬倒れ掛かった体制を戻す ラミリツが衝撃を受けて言う
「え?あれ?なんで…?」
ラミリツがセイバーの柄を見ると エンプティマークが出ている ラミリツが悲鳴を上げて言う
「わぁあー!嘘ぉー!チャージ切れー!もう バッテリーも無いのにー!?」
ラミリツが顔を上げると マシーナリー3がラミリツへマシンガンを向ける ラミリツがハッとして慌ててM82を取り出し 震える手で叫びながら撃つ
「た、助けて!エルムー!!」
M82が3発 次々と放たれるが 狙いが定まらずマシーナリー3の装甲に弾かれる ラミリツが怯えて後退ると ラミリツの手からM82が取り上げられる ラミリツが驚いて見上げると アースがM82を両手で構え歯を食いしばって2連射する M82の銃弾がプラズマセイバーで破壊したマシーナリー3の右の傷に当たる アースが一瞬表情を顰めると銃を下ろす マシーナリー3が何とか動こうとする ラミリツが気を取り直し アースから銃を取り戻して構えて言う
「これで トドメ!」
ラミリツがM82を放つと マシーナリー3が停止して倒れる ラミリツがホッと息を吐いて言う
「危なかったぁ…」
アースが言う
「当てられるのなら 3発も無駄に撃つんじゃない」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「しょっ しょうがないだろっ 怖かったんだからぁっ」
アースが言う
「やはり ガキだな…」
ラミリツが言う
「うるさいなっ どうせガキだよっ!…って そんな事より」
ラミリツのイヤホンに 特警隊員の声が聞こえる
『こちらGPT4班 プラズマセイバーのエネルギーが切れましたっ!』
『こちらGPTサポート!捕獲銃のプラズマも限界です!』
ラミリツがイヤホンを押さえて言う
「こっちも無くなった こうなっては仕方が無い… GPTは退避する!全員ヘリへ!」
上空に特警のヘリが旋回する ラミリツがアースへ向いて言う
「ハブロス総司令官 悪いけど もう 無理だから」
アースが言う
「分かっている お前たちは 予定通り退避しろ」
ラミリツがロープを片手に掴み アースへ手を向けて言う
「ハブロス総司令官も!ヘリには もう1人位乗れるよっ」
アースが言う
「私は残る」
ラミリツが言う
「何でっ!?屋敷の扉は頑丈に施錠してあるんだっ もう入れない!420マシーナリーに追われたら 走った位じゃ間に合わないんだよっ!?」
アースが言う
「奴の狙いは… マスターブレイゼスの狙いは 私だ その私が今ヘリで逃げようものなら 街中へマシーナリーを引き込む事になるか この屋敷を壊されるかのどちらかだ」
ラミリツが言う
「だからってっ!?」
遠くからサイレンが聞こえる ラミリツが顔を向けて言う
「レギスト!?遅いんだよ!もうっ!」
ラミリツがイヤホンを外し操作をして付け直してから イヤホンを押さえて言う
「国防軍レギスト機動部隊!」

【 レギスト車内 】

ハイケルのイヤホンにラミリツの声が聞こえる
『遅いよっ!何やってたんだ!』
ハイケルが言う
「遅れた事は謝罪する 敵の策に しっかりとハマっていた」
ラミリツが怒って言う
『そんな所で しっかりして どうするんだよ!?その間に こっちはもう チャージ切れなんだから!僕らは 退避するよ!?』
ハイケルが言う
「聞いている お前たちは 帰って良い」
ラミリツが言う
『あのねぇえっ!?』
車両が停車する ハイケルが言う
「国防軍レギスト機動部隊 行くぞ!」
隊員たちが言う
「「「了解!少佐ぁー!」」」
ハイケルと隊員たちがトラックを降りて走る

【 ハブロス家 外 】

隊員たちが走る ハイケルが言う
「PM70の撃ち手と支援は 後方からで良い!しらみ潰しに片付けろ!」
PM70の隊員たちが言う
「「了解!少佐ぁー!」」
PM70の隊員たちがマシーナリーへ向かって行く ハイケルが言う
「その他の隊員たちは 屋敷前に居る 総司令官の警護へ向かう!付いて来い!急げ!」
残った隊員たちが言う
「「「了解!少佐ぁー!」」」
ハイケルと隊員たちが走る

PM70が次々にマシーナリーを倒して行く 隊員Fが言う
「目の前の420マシーナリーへターゲット!」
隊員FがMT80を構えると 隊員Iと隊員Mが同じくMT80を構えて言う
「了解!フッちゃん!」
隊員Fが照準モニターを見て言う
「放てー!」
隊員FIMがトリガーを引くと MT80が3発のジャストショットを行って マシーナリー3を倒す ハイケルがアースの横で言う
「何とか間に合った」
ラミリツが言う
「僕らが居なかったら間に合わなかったけどね?」
軍曹が言う
「本当に助かったのだ ラミリツ攻長!兄貴を助けてくれて感謝するのだ!」
ラミリツが言う
「まったく 世話が掛かるんだからさ?」

【 ハブロス家 エレナの部屋 】

エレナがホッとして言う
「良かった… 国防軍が… ハイケル少佐が来てくれたわ… これならもう 大丈夫でしてよね?レミック?」
執事が言う
「はい しかし、目下は戦場です こちらはやはり危険ですので どうか 一番安全なお屋敷の中頃の方へ ご避難の程をお願い致します エレナ様」
エレナが微笑して言う
「ええ…」
エレナが立ち去る

【 ハブロス家 外 】

ラミリツがイヤホンを押さえて言う
「…うん、それじゃ 皆は一度下がって プラズマのチャージを… あ、僕のもお願いね?」
ラミリツがバッテリーホルダーをロープに付けて手放すと ロープが引かれ ヘリが飛び去って行く ラミリツが言う
「それで そっちは大丈夫な訳?チャージ…って言うかさ?弾切れになったりとか …しないよね?」
ハイケルが言う
「確認した限りであるなら 残りのマシーナリーの殲滅は可能だ」
ラミリツが言う
「そ なら…」
ハイケルが言う
「しかし これ以上となれば…」
ラミリツが言う
「え?これ以上になったら …ひょっとして ヤバイとか?」
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「マイク少佐 こちらはハイケル少佐だ 情報部の車両は到着しているか?」
ハイケルのイヤホンにマイクの声がする
『え?情報部の…?』
ハイケルが呆気に取られて言う
「出していなかったのか…?」
マイクが言う
『あ… そ、そのぉ… てっきり 屋外の戦闘時には 要らないものかと…?』
マスターの声が聞こえる
『馬鹿野郎!何を考えてる!基本の基本が まったく なってないっ!』
マイクの声が聞こえる
『す、すみませんっ!』
ハイケルが言う
「今からでは間に合わない どちらにしろ 弾数の限りは同じだ」
ハイケルがアースへ向いて言う
「ハブロス総司令官 最悪 屋敷は守り切られない可能性がある 覚悟を」
アースが言う
「覚悟なら最初からしている レギストは弾薬が尽き次第 お前たちも退避をしろ」
ハイケルが言う
「それでは…っ」
軍曹が疑問してハイケルとアースを交互に見る ラミリツが言う
「まさかっ!?それで 最初から 外にっ!?」
アースが言う
「言った筈だ 奴の狙いは 私であると」
ハイケルのイヤホンに隊員Cの声が聞こえる
『少佐ぁー!敷地外から マシーナリーの増援が!』
ハイケルが言う
「何っ!?数はっ!?」
隊員Cが言う
『ここから確認出来る限りでも… 10体以上っ!自分の使っているPM70の弾数は残り3!しかし 押さえの連中も限界でっ PM70の銃身も凄い熱でっ 連射は出来ません!』
ハイケルが言う
「分かった …マイク少佐!聞こえているか!?マーガレット中佐へ 銃弾の補填を!」
マスターが言う
『銃弾の補填は無理だっ あの銃は実戦用とは言え 10発以上の連続使用は出来ない計算だっ 無理に使おうものなら チャンバーが熱ダレして破損する可能性がある!危険だ!』
ハイケルが言う
「では 代わりの銃を!MT80を用意しろ!ザキルへ!」
マスターが言う
『無理だ どちらにしろ 隊員たちの身が持たない!』
ハイケルが表情をしかめて言う
「では… どうしたらっ!?」
ハイケルが顔を向けた先 マシーナリーの増援が目視で見える アースが言う
「どうやら 潮時の様だな?」
ハイケルが言う
「ハブロス総司令官…っ?」
アースが言う
「総司令官命令だ お前たちは総員 退避しろ」
ハイケルが驚く アースがラミリツを見て言う
「ついでに お前もだ ラミリツ攻長」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「つ、ついでって…っ」
アースが言う
「…乗ったつもりが まんまとハメられたのかもしれないが… 構わない 私にも意地がある」
アースがマシーナリーへ向かって行く 軍曹が慌てて言う
「兄貴っ!?」
アースが言う
「来るな!奴らは用のある私を撃つ事は無い だが お前は狙われる」
軍曹が立ち止まる ハイケルのイヤホンに隊員Cの声が届く
『少佐ぁー!こちらPM70 弾切れであります!』
隊員Fが言う
『少佐!こちらMT80も弾切れです!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「銃弾の残りがある隊員は報告を!」
一瞬の間の後ハイケルが言う
「どうしたっ!?誰か居ないのか!?」
一際大きな足音がする ハイケルが驚き顔を向けると 皆が驚いて見上げる ハイケルが言う
「あれが…っ!?」
ラミリツが言う
「RTD560マシーナリーっ!」
皆の視線の先 マシーナリー4が アースの前に立ち塞がって居る アースが言う
「マスターブレイゼス 何処に居る?私に用があるのだろう?」
マシーナリー4がアースを見下ろし身を屈めると ハッヂが開く アースが目を細める ハッヂの中に第7部隊隊員の身体を乗っ取ったマスターブレイゼスが居て 微笑して言う
「潔いな?総司令官 もしやと思うが… 私と手を組もうとでも?」
アースが鼻で笑って言う
「ふん…っ つまらない冗談は止めてくれ 私は歴代国防軍長ハブロス家の者だ 政府に寝返るなど 歴代の恥 殺された方が よほどマシだ」
アースのイヤホンに ラミリツが言う
『あのさぁ?聞こえてるんだけど…?』
遠くで 軍曹が慌てている マスターブレイゼスが言う
「政府ではない 私は 政府と国防軍 双方の力を手に入れる」
アースが言う
「そして行う事は アールスローン帝国の殲滅か?そのマシーナリーで?」
マスターブレイゼスが言う
「そこまでを知っているか ならば話は早い 私に従え アールスローン戦記の原本は?お前が ヴォール・ラゼル・ハブロスから引き継いだ原本は何処ある?誰に 継承をさせた?答えろ」
マシーナリー4がマシンガンをアースへ向ける ハイケルがMT77を構えていて 一瞬目を細めて5連射する MT77を押さえていた隊員たちが歯を食いしばり 軍曹が手を貸す MT77の銃弾がマシーナリー4のハッヂに連続着弾すると マスターブレイゼスがハッとして身を引く ハッヂに張られていた透明なシールドにヒビが入る ハイケルが言う
「クッ… もう一度っ!」
ハイケルがトリガーを引くと MT77が2発放たれ ヒビの入ったシールドが割られる ハイケルがトリガーを引くが弾切れている ハイケルが悔しさを噛み締めて言う
「弾切れかっ!後一歩でっ!」
ハイケルがM82を手にして向かおうとすると マシーナリーたちが一斉にハイケルへマシンガンを向ける ハイケルが立ち止まる アースが横目に見て言う
「下がれっ!ハイケル少佐っ!」
ハイケルが言う
「しかしっ!」
マシーナリーたちがマシーナリー4の周囲を囲い ハイケルや隊員たちへマシンガンを向ける ハイケルがハッとして辺りを見渡す アースが言う
「分かった どうやらお前の作戦勝ちの様だ マスターブレイゼス… 原本の継承者と その居場所を教える …それで私を助けてくれ?」
皆が驚き ラミリツが言う
「な…っ!?」
軍曹が呆気に取られて言う
「あ…っ 兄貴…っ!?」
隊員たちが顔を見合わせる マスターブレイゼスが笑って言う
「あっははははっ 滑稽だな 総司令官?だが 良いのか?隊員たちの前で その様な醜態を晒しても?」
アースが言う
「残念ながら こうとなっては仕方が無い どうせ原本の場所やその他を私から聞き出せば ここに居る隊員たちは始末する予定なのだろう?このマシーナリーの数に加え これほど大きく強いマシーナリーまであると言うのでは そのお前に勝てる筈が無い 私は無駄な事はしない性質だ」
マスターブレイゼスが言う
「ほう…?」
アースが言う
「それとも?ここで私も始末するつもりなのか?私が伝える事が偽りかもしれない… 本当に原本が確認されるまで お前は私を殺さない筈だ」
マスターブレイゼス
「なるほど 一応 それなりに頭は切れる様だな?良いだろう ここに居る者を全て始末し 証拠も無くせば お前を国防軍総司令官として そのまま使う事も出来る…」
アースが言う
「交渉成立だな?」
隊員たちが呆気に取られて顔を見合わせる マスターブレイゼスが言う
「その様だ …では まずは聞かせてもらおう 原本は誰に継承させた?」
アースが言う
「私の子供だ」
マスターブレイゼスが言う
「ファースト・ライヴァイン・ハブロスか?」
アースが言う
「あの子では無い まだ 生まれていない子供だ 今は母体と共に病院に居る 場所を教えよう」
マスターブレイゼスが言う
「何処の病院だ?」
アースが言う
「ここで答えれば その病院の警備を行っている 政府の攻長殿に聞かれてしまうだろう?…私をそちらへ お前にだけに 聞こえる様に」
ラミリツが驚く アースがラミリツへ向く マスターブレイゼスがラミリツを見てから言う
「…良いだろう」
マシーナリー4がアースへ手を伸ばす アースがマシーナリー4の手に乗ると マシーナリー4がアースをハッヂへ近付ける マスターブレイゼスが言う
「この位置なら…」
アースがマスターブレイゼスへ向いて言う
「そうだな この位置なら…」
アースがマスターブレイゼスへ拳を突き付けて言う
「こいつを使っても 彼らにも 屋敷にも 被害は与え無いだろう?」
マスターブレイゼスが目を見開いて言う
「N2爆弾…っ」
アースが微笑して言う
「最後は 派手に終らせてやるよ マスターブレイゼス …どうだ 最高だろう?」
アースが手を離す マスターブレイゼスが目を見開く ラミリツとハイケルが叫ぶ
「「ハブロス総司令官っ!!」」
軍曹が叫ぶ
「兄貴ーっ!!」
隊員たちが驚きに言葉を失う 強い光が放たれた後 爆発が起きる

爆風から身を守った隊員たちが顔を上げると 視界の先に マシーナリーたちの残骸とマシーナリー4の居た場所にクレーターが出来ている 隊員たちが言葉を失う ハイケルが呆気に取られたまま言う
「ハブロス… 総司令官…っ」
ラミリツが涙声で言う
「う、嘘ぉ… そんなぁ… ハブロス総司令官まで…っ!?」
ハイケルが軍曹を見上げる 軍曹が呆気に取られ言葉を失っている ハイケルが掛ける言葉を探しあぐねて視線を逸らすと 軍曹がハッとして言う
「あ…っ 兄貴っ?」
皆が軍曹の声に驚いて顔を向けると 軍曹の視線の先 クレーターより先に アースが立っていて 隣に背を向けて誰かが居る 

アースがN2爆弾のセーフティー金具を軽くもてあそんでから言う
「折角 キメた所を… あそこで邪魔をするか?普通?」
アースがセーフティー金具を弾いて飛ばした先 男が受け取り微笑して言う
「それは 失礼しました まるで… 以前まで居た どこかの人気バンドの お方の様でしたね?」
男が金具をピック代わりにギターを弾くフリをする アースが衝撃を受けて言う
「う…っ …知っていたのか?」
男が微笑して言う
「弟がファンでしたもので」
アースがバツの悪そうに言う
「…そちらは知っている」

ハイケルが呆気に取られて言う
「あの一瞬でどうやって?…もしや 隣に居る あの者が?」
ハイケルたちの視線の先 背を向けている人物が消える様に居なくなる 軍曹が放心状態で動けずに居る ラミリツが涙を堪えながら言う
「よ… 良かった…っ 良かったよ…っ もう…っ もうっ!」
ラミリツがアースへ向かって走り出す ハイケルが続こうとして軍曹を見てから 隊員Fへ向いて言う
「フレッド隊員 軍曹を頼む」
隊員Fがハッとして言う
「えっ!?あ、はいっ!了解!」
ハイケルがラミリツを追って走る

ハイケルが到着すると ラミリツがアースへ怒って言っている
「…なら さっきの あれも全部 作戦だったとかって言う訳っ!?ただのお芝居だったって事っ!?」
アースが衝撃を受け視線を逸らして言う
「あ、あれは…っ」
チャラそうな男が第7部隊隊員を担いでやって来て言う
「ああ、あれも作戦の内だって?あの台詞も全部 …な?ハブロス総司令官?」
ラミリツが言う
「アンタ誰?」
チャラそうな男が衝撃を受けて言う
「だ、誰って… その前に こいつを助けてやったんだから?そこは普通…」
アースが言う
「マスターブレイゼスの操りは 解除されているのか?」
ハイケルが疑問して言う
「マスターブレイゼスの操り とは?」
チャラそうな男がネックセンサーを見せて言う
「ああ、そいつはここに!」
ハイケルがネックセンサーを見て疑問する ラミリツが言う
「これは ネックセンサーって言うんだけど 別名 政府のマスタートップシークレット」
ハイケルが驚いてラミリツを見る チャラそうな男が言う
「多分 こいつが オリジナルだろうな?俺でも分かる マスターブレイゼスの悪意が 絶縁手袋越しでも ビンビン伝わって来る …って事で」
チャラそうな男がハイケルを見て 第7部隊隊員を預けながら言う
「こいつは あんたら国防軍にお返しする きっと 体内にナノマシーンが取り込まれているから 念の為 そいつの除去をしてやってくれ」
ハイケルが言う
「ナノマシーンが?」
ラミリツがハイケルを見て言う
「あれ?意外と 知ってるんだ?」
ハイケルが言う
「ナノマシーンを使いこなす マスターの1人と友人だ」
チャラそうな男が言う
「んで こいつは…」
チャラそうな男がネックセンサーを皆に見せた状態で ライターで火を点けて燃やす ハイケルが驚いて言う
「なっ!?い、良いのか?政府のマスタートップシークレットを!?」
ラミリツが言う
「良いんだよ これは元々 政府が持つべき力じゃないんだ」
チャラそうな男が 燃え尽きたネックセンサーを手放して言う
「よっし!これで 作戦は完了!な?総司令官?」
アースが言う
「お前たちの作戦など 最初から期待はしていなかったが 結果は認めてやる」
チャラそうな男が表情を困らせて言う
「あ…っ もしかして ちょっと ご不満だった?」
アースが言う
「素人の作戦らしく 手際が悪かった様だが お陰でマシーナリーとの有力な実戦データが取られただろう お互いにな?」
ハイケルとラミリツが反応する アースが言う
「我々の 本当の戦いは これからだ」
ハイケルが目を細めて言う
「本当の戦い…?」

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員Bが叫ぶ
「通常訓練のいちー か~いし~」
隊員Cが怒って言う
「だからっ!そんなんじゃ 気合が入らねぇって言うのっ!」
隊員Bが言う
「え~?」
隊員たちが軽く笑いつつ言う
「りょ~か~い」
隊員Cが衝撃を受け言う
「おいっ お前らっ!」
隊員たちが腕立てを開始する 隊員Aが言う
「それで 軍曹と少佐は?」
隊員Fが言う
「それぞれで 緊急会議だってさ?」
隊員Nが言う
「やっぱ 昨日の件だろうな?」
隊員Cが言う
「えっ!?それじゃ もしかして… 俺たちが 政府警察より遅れたって事で… 総司令官から お咎めとか…?」
隊員Fが言う
「遅れたのもあるけど あのマシーナリーを倒し切れなかったって言うのも… 痛かったじゃないかな?何しろそのせいで 危うく」
隊員Aが言う
「あの時 総司令官が N2爆弾を使わなかったら あのマシーナリーたちは退治出来なかったもんな…?」
隊員Cが言う
「そうだよな?国防軍のトップにそんな事をさせた以上… お咎め所じゃないのかも…?」
隊員Fが言う
「それじゃ…?」
隊員Bが言う
「それよりさぁ~?ハブロス総司令官って~ 結構 やる時はやる人だったんだね~?自分で爆弾を持って行くなんてさー!?俺 チョーびっくりー!」
隊員Nが言う
「そうそう!しかも あの台詞!」
隊員Vが言う
「ああ!決まってたよな!?」
隊員Bが疑問して言う
「え~?台詞って?」
隊員Fが苦笑して言う
「ああ、あれだろ?どっかで聞いた事があると思ったら… そう言うのに疎い俺でも 知ってるよ」
隊員Bが疑問して言う
「え~?なになに~?アッちゃん 知ってるー?」
隊員Aが言う
「あぁ… そう言えば… うちも弟がファンだったもんだから…」
隊員Bが疑問して言う
「ふぁん?」

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

TVにライブ映像が流れていて ボーカルが叫ぶ
『最後は 派手に終らせてやるよ!』
ギターが掻き鳴らされる 観客たちが歓声を上げる ボーカルが叫ぶ
『俺たちナックキラー インディーズ時代の1曲 メステゲレンダーだ! …どうだ 最高だろう?』
観客たちが叫ぶ
『最高ー!』
TVの前で 隊員Nと隊員Vが叫ぶ
「「最高ー!!」」
隊員Cが呆気に取られて言う
「な、何だぁ?」
隊員Aが苦笑して言う
「人気デスメタルバンド ナックキラーだってさ?」
隊員Cが疑問して言う
「デ、デスメタルバンド…?」
隊員Mが言う
「結成当時のインディーズ時代から かなりの人気で あっという間にTVや雑誌で有名になってメジャーデビューしたらしいけど その時にはインディーズ時代に居た 一番人気のギターの奴が 辞めて行ったんだって」
隊員Bが言う
「えー?何でー?折角人気があって メジャーデビューしたのにー?」
隊員Aが言う
「ああ、弟もがっかりしてたよ 俺はギターの事なんて分からないけど 何か凄く良くって そいつのギターソロが 最高なんだってさ…?」
TVから音声が聞こえる
『ナックキラー!!』
隊員Nと隊員Vが叫ぶ
「「最高ー!!」」
隊員Mが苦笑して言う
「…で、あの 最高 最高 って言うのが そのナックキラーってバンドの 掛け声みたいな…?決まり文句らしい」
隊員Cが言う
「へぇ~?」
隊員Bが言う
「えー?それじゃーさー?もしかして-?総司令官もー?そのナックなんとかってバンドの ファンなのかなぁ?」
隊員Mが呆気にとられて言う
「え?いやぁ… それは 流石に…」
隊員Aが苦笑して言う
「偶然だよ バイちゃん… だって ハブロス家って言ったら 超高位富裕層だし… 大体 国防軍の総司令官が デスメタルミュージックを聞くだなんて 想像付かないだろ?」
隊員Bが首を傾げて言う
「うーん まぁ それもそうかもー?」
TVの映像にボーカルが拳を突き上げて叫ぶ
『ナックキラー!』
隊員Nと隊員Vが叫ぶ
「「最高ー!!」」
隊員たちが呆れる

【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】

ハイケルが言う
「国防軍の全部隊に PM70を配備する事は 出来ないのか?」
マスターが言う
「ああ、残念ながら いくら銃を用意した所で その銃弾の元となる 超高温プラズマは 抽出に限りがあるからな」
ハイケルが言う
「では 今まで通り 帝国に近い駐屯地へは火薬を使用した 対マシーナリー用の銃火器を用意させるしかないと言う事か… そちらの強化は?」
マスターが言う
「強化に関しては 以前から行われていた事だが ロンドス殿がM90の技術公開をした事から 更に加速されているみたいだ」
ハイケルが言う
「MT80のジャストショットシステムを公開する事で 更に強化する事は?」
マスターが言う
「あれは 元々 MT80のために作成したシステムだから 固定式のマシンガンには必要ない むしろ 連射性を損ねる可能性がある」
ハイケルが言う
「そうか… では レギストも引き続き PM70と共にMT80の製作も続け 可能な限り数を揃えておくしか無い」
マスターが言う
「まぁ そう言う事だな 一応 ザキルも PM70のチャンバー強化や 反動の軽減を考案している所だ 俺の方は… タイムラグの縮小と 使用するプラズマの効率化を考えてみたんだが… ちょっと難しい 何しろ 相手は ロストテクノロジーだからなぁ?」
ハイケルが言う
「…あまり無理はするな」
マスターが苦笑して言う
「ご心配をどうも」
ハイケルが言う
「それに いくら数を揃えた所で あのマシーナリーが一体どれだけあるのか… 帝国はこれからも アールスローンへ攻撃を仕掛けてくるのか?」
マスターが言う
「うん?いや… それは 分からないが とりあえず この所の国防軍へ襲撃を行っていた その犯人と言われている マスターブレイゼスは 倒した訳だから」
ハイケルが言う
「では もう マシーナリーの襲撃も無いと?」
マスターが言う
「そうとは言い切れない そもそも マスターブレイゼスは帝国の… 皇帝の為にと 行動を起こしていた人物だ それが 皇帝の意向であったのかどうかは もう、分からないからな?」
ハイケルが言う
「マスターブレイゼスは 今から 数十年前に政府と国防軍が力を合せて捕らえ 処刑されたのではなかったのか?」
マスターが言う
「本人は確かに処刑された… だが、彼の得ていた ナノマシーンは残っていたらしい」
ハイケルが言う
「ナノマシーン… 身体へ取り入れることで 通常の人の能力を数十倍にも上げる事が出来る… 帝国の力」
マスターが言う
「それを使いこなす マスターたちの中において マスターブレイゼスは天才だった その彼が… 何故 身体を失ってまで 事件を続けたのか…」
ハイケルが言う
「マスターブレイゼスとの戦いは お前たちマスターたちの中で 行われていたのではなかったのか?」
マスターが言う
「だから 言っただろう?意見が分かれていたって」
ハイケルが言う
「それで 国防軍への召集へ従わずに居たと?つまり お前もマスターブレイゼスの考えに 共感していたと言う事か?」
マスターが苦笑して言う
「そんな言い方するなよ?俺は 今も昔も この国防軍レギスト駐屯地の皆の仲間だよ」
ハイケルが言う
「ならば 何故 戻らなかった?マスターブレイゼスと戦う国防軍へ」
マスターが言う
「そのマスターブレイゼスと戦っていたのは 国防軍じゃなかったからだ」
ハイケルが言う
「何?」
マスターが言う
「奴と戦っていたのは… 元政府長長官シェイム・トルゥース・メイリスと 元政府皇居宗主メルフェス・ラドム・カルメス」
ハイケルが驚いて言う
「馬鹿なっ!その2人はっ!」
マスターが言う
「2人は国防軍の… いや、ハブロス総司令官にとっての 親の仇だった …だから ハブロス総司令官は 彼らと競い 争っていた …それで俺たちは手を引いたんだ 俺自身は 国防軍に付きたかったが… やっている事は 政府の彼らの方が 正しいと思ったからな?」
ハイケルが言う
「何故だっ!?元政府長長官シェイム・トルゥース・メイリス!いや、指名手配犯のシェイム・トルゥースは 国防軍の仲間をっ!」
マスターが言う
「あれは 彼の行いではなかった だがそれを…」
ハイケルが言う
「それを…!?」
マスターが苦笑して言う
「…いや、止めよう 今はもう全て収まったんだ その上で 俺たちは国防軍へ戻って来た 今のハブロス総司令官になら …従えるってな?」
ハイケルが間を置いて言う
「今の…?そうか… では?」
マスターが言う
「ああ、だからもう良いんだ… …それよりも!これからは 先の事を考えないとな!?」
ハイケルが言う
「そうだな …俺は 国防軍の悪魔の兵士だ 戦いの事だけを… …考えれば良いんだ」
マスターが苦笑する

【 国防軍レギスト駐屯地 第一射撃場 】

小銃メインアームチームの隊員たちが訓練をしている ハイケルがそれを見ていると 軍曹がやって来て敬礼して言う
「遅くなりまして 申し訳ありませんでしたー!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「問題ない …それで?」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「政府との話し合いはどうなった?」
軍曹が言う
「はっ!それが…」
軍曹が視線を落とす ハイケルが言う
「私には言えない事であるのなら それで構わない 何か… 結論だけでも良い 国防軍と政府はこれから どうなると?」
軍曹が言う
「はっ!いえっ!自分が少佐へお伝え出来ない事は 何もありませんっ!ただ… 兄が…」
ハイケルが言う
「ハブロス総司令官がどうした?」
軍曹が言う
「はっ!兄は… 近々… 政府の者と共に 国防軍の代表として… 帝国へ向かうと」
ハイケルが驚いて言う
「何っ?総司令官が 帝国へっ!?」
隊員たちがハイケルを見る 軍曹が言う
「少佐…っ 自分は… その… 何と言いますか… 先日もそうでありましたが…っ 兄が 心配です… 政府からは 帝国を刺激しない為にも 武器は勿論 部隊などの戦力は 連れて行かない事にすると」
ハイケルが慌てて言う
「それでは まるで 以前のっ!」
軍曹が言う
「はい…っ ですから 自分は やはり… 行かない方が良いと言ったのですが… 兄は どうしても行くと… 万が一の際は 自分と少佐に… 国防軍を… 託すと」
ハイケルが言う
「馬鹿なっ!」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

ハイケルが言う
「どういう事だっ!?」
アースが苦笑して言う
「ハイケル少佐 ここは屋敷ではない 一応 それなりの上下関係は保ってもらいたいと思うのだが?」
ハイケルが言う
「ならば 命令をしろ!国防軍レギスト機動部隊へ 帝国へ向かう お前の護衛に付けとっ!」
アースが言う
「帝国へは お前たちを連れては 行かない」
ハイケルが言う
「死ぬ気か?N2爆弾を使った あの時の様に」
アースが苦笑して言う
「ふっ… いや?今回は 爆弾を使うつもりは無いが… 私は父の様に 怯えて逃げるつもりも無い あの記録にあった様な事があれば… そうだな?」
アースが軽く拳を握って見せてから言う
「武器弾薬は持っていかれないが その代わりに この手で 帝国の皇帝を 一発殴ってやるよ?」
ハイケルが言う
「お前は 悪魔の兵士では無い 蘇る事は出来ない… そんな事をする位なら 父親と同じく 逃げ戻って来るべきだ」
アースが言う
「父は自分に力が無い事を恐れていた だが 私は違う… 確かに お前たちの様な実戦的な力は無いが 私は そのお前たちを… 歴代No1の国防軍と言う力を 備える事を叶えた …ならば それで良い」
軍曹が言う
「兄貴…」
アースが言う
「私が帝国から戻らなければ 帝国の皇帝は 我々の仲間にはならないと言う事だ それは即ち 国防軍や政府が 帝国と戦う理由となる」
ハイケルが言う
「帝国との話し合いを続けていた 政府の者が行くと言っているのだろう?そこへ 国防軍のお前が行く必要はあるのか?」
アースが言う
「有るのか無いのかと問われれば 無いのかもしれない 私はナノマシーンを持つ者ではない そうとなれば 帝国では不利な存在だ ナノマシーンが無ければ 皇帝と直接話をする事も出来ないと言う可能性もある そして… 万が一 政府に悪策があるのなら 私はそれに飲まれるだろう」
ハイケルが言う
「ならば せめて俺を1人だけでも 護衛として連れて行け!武器が許されないのなら 全て置いて行く!」
軍曹が驚いて言う
「少佐っ!?」
アースが言う
「それも出来ないな ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「何故だっ!俺は悪魔の兵士だっ 何度でも蘇る!だから お前を守ってやると言っているんだっ!」
アースが言う
「お前が守るべき相手は 私ではなく アーヴァインの筈だ」
ハイケルが一瞬驚いた後に言う
「…だがっ!私ならっ!」
アースが言う
「ハイケル少佐 言って置くが… いくら悪魔の兵士であっても 魂を壊されたら 蘇る事は出来なくなる」
ハイケルが言う
「魂?」
アースが微笑して言う
「お前の頭の中に入っているものだ」
ハイケルが言う
「記憶データの詰まった マイクロチップの事か」
アースが言う
「万が一帝国内で倒れ その回収が不可能になれば 誰が 原本を持つ アーヴァインを守られるんだ?」
ハイケルが言う
「し、しかし…っ」
アースが言う
「これは 国防軍が帝国と戦うか否なかの 判断材料となる重要な任務だ その任務へ 私は 国防軍総司令官として向かう …以上だ ハイケル少佐」
ハイケルが視線を落とした後 間を置いて言う
「…了解」

【 ハブロス家 ハイケルの部屋 】

ハイケルが考えていて 間を置いて言う
「…また悩みが増えた」

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

軍曹が言う
「通常訓練の1!開始ぃーっ!」
隊員たちが言う
「はっ!了解!軍曹ぉー!」
隊員たちが腕立てを開始して 隊員Cが言う
「これこれ!やっぱ軍曹の号令じゃないとな!」
隊員Aが言う
「ああ!やっぱり 気合が入るよな!」
隊員Bが言う
「けどさー?少佐はー?」
隊員Fが言う
「中佐に相談があるとかで …喫茶店に行って来るって 言って出て行ったけど?」
隊員Aが言う
「え?喫茶店って…?」
隊員Bが言う
「そう言えばー 中佐ってー?喫茶店のマスターだーって 言ってなかったっけー?」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「えっ!?そ、そうなのかっ!?」
隊員Fが苦笑して言う
「確かに以前 無線でそんな事言っていたけど… だが もう正式に 国防軍に復帰したんだろ?」
隊員Bが言う
「じゃぁー… 国防軍は副業ー?」
隊員たちが衝撃を受け 隊員Aが苦笑して言う
「い、いや… まさか…?」
隊員たちが悩む

【 マスターの店 】

マスターがハイケルの前へメモリースティックを置く ハイケルがマスターを見上げて言う
「感想は?」
マスターが言う
「うん… 何とも言えないな?アース・メイヴン・ハブロス総司令官は ヴォール・アーケスト・ハブロス元総司令官ではない 万が一 帝国内で同じ事が起こったとしても アース・メイヴン・ハブロス総司令官なら 本当に… それこそ 皇帝を殴ってでも 別の結果をもたらすと言う可能性も考えられる …そう言った意味でも 今回の帝国行きを 否定する事は 出来ないだろう」
ハイケルが視線を落として言う
「だが 1人も護衛を付けずに向かうなど …それが帝国の意向だと言うのであれば それこそ アールスローンへ対しての敵意ではないのか?」
マスターが言う
「とは言えなぁ?こっちは 政府の長官と政府の外交長 それに 国防軍の総司令官が向かうんだ 直接の武力は持たないとは言え 3人で向かうとなれば…」
ハイケルが言う
「あちらには 無数のマシーナリーが居るだろうっ!?」
マスターが言う
「ああ だが… そこに 命を持つ者は 皇帝1人だ」
ハイケルが呆気に取られて言う
「何?」
マスターが言う
「帝国には もう 皇帝以外に命を持つ者は 誰も居ない それも 500年以上も昔からな?」
ハイケルが言う
「500年以上…?それは どう言う事だ?」
マスターが言う
「ハイケル 先日のハブロス邸襲撃事件の際 ハブロス総司令官がマスターブレイゼスと話した 会話の内容を覚えているだろう?」
ハイケルが言う
「当然だ 俺のレコーダー機能は 蘇っても健在だ」
マスターが言う
「なら あの時 マスターブレイゼスが 政府と国防軍の力を手に入れて それで何をしようとしているのか?…それを ハブロス総司令官が言い当てた訳だが その時 ハブロス総司令官が口にした言葉だ」
ハイケルが言う
「ハブロス総司令官は こう言った ”そして行う事は アールスローン帝国の殲滅か?”と…」
ハイケルが気付いて言う
「”アールスローン帝国”?」
マスターが言う
「そう アールスローンは国ではなく 元々帝国なんだ そして皇帝は アールスローン帝国の皇帝」
ハイケルが呆気に取られて言う
「なっ!?では…っ 帝国の皇帝とは アールスローンに住む 我々の王であると言う事なのかっ!?」
マスターが言う
「そう言う事だ」
ハイケルが驚いて言う
「馬鹿なっ!?それでは一体っ!?」
マスターが続けて言う
「皇帝は 呼称において 帝国と呼ばれている城に 500年以上 縛り付けられている」
ハイケルが困惑して言う
「何だと!?それが事実なら 何故 誰も助けに行かないっ!?まさか マシーナリーに遮られているとでもっ!?」
マスターが言う
「そうじゃない… だが、ハイケル この事は 政府と国防軍の限られた ごく一部のマスターが隠蔽している事実だ 他言無用で …お前も これ以上は」
ハイケルが言う
「ふざけるなっ!?どう言う事だ!?知っているのなら 全てを話せっ!俺は悪魔の兵士だっ アールスローンを守る為に存在している!だったら 聞く権利があるのではないのかっ!?」
マスターが言う
「悪魔の兵士と言うのは 皇帝の后が 自分を守る為に 悪魔から手に入れた 戦いの兵士だ」
ハイケルが驚いて言う
「アールスローン戦記…っ そう言う事だったのかっ?」
マスターが言う
「だが 物語の詳細に関しては 俺たちも知らない 皇帝の下から逃れ ペジテの姫と呼ばれた皇帝の后が どうなったのか… 悪魔の兵士がどうなったのか …ペジテと言う国は無くなり アールスローン帝国の一部となったが それでも姫は 帝国へは …皇帝の下には戻らなかった… だから皇帝は 500年が経った今も 后を連れて来る様にと 政府の外交長へ命じ続けていたらしい」
ハイケルが反応して言う
「”らしい” とは?それは お前たちの… 帝国の力を持つマスターたちの 情報ではないのか?」
マスターが言う
「政府の外交長は 組織内にマスターを置かないと歌っている政府に置いて 唯一 秘密裏にその存在を認められているマスターだ だから 表向きにはアールスローン国民の名を名乗っている 少し前までは 人は変わっても その名前は同じモノを使っていた ”メルフェス・ラドム・カルメス”と」
ハイケルが呆気に取られて言う
「奴は今 政府警察に…」
マスターが言う
「ああ… 色々あって 偽者へすり替えられていたんだ だから今 政府警察に拘留されている アイツは 偽者で マスターではない」
ハイケルが言う
「では 本物は?」
マスターが微笑して言う
「その彼が 今度の帝国行きを担っている 大丈夫だ 信頼は置ける」
ハイケルが言う
「そうか… お前がそうと言うのであれば… では 俺はどうしたら良いんだ?国防軍は?…皇帝は 何を望んでいる?ペジテの姫… 后を連れ戻せと?」
マスターが言う
「それを確かめに行こうって言うんだろう?政府に任せるのでは無く 自分自身で …ってな?」
ハイケルが言う
「国防軍の代表として …ハブロス総司令官が?」
マスターが言う
「そう言う事だ」
マスターがハイケルの前にコーヒーを置く ハイケルがコーヒーを見て 目を細める

【 帝国 門前 】

アースが振り返り苦笑して言う
「ハイケル少佐 私は言った筈だが?」
ハイケルが言う
「見送りをするなと 命じられた覚えは無い」
アースが苦笑して言う
「見送りか… それも 国防軍レギスト機動部隊が一同でか?」
ハイケルが言う
「一同で見送りに来るなと 命じられた覚えも無い …ついでに 国防軍レギスト駐屯地 情報部も 駐屯地からだが 見送りだ」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マイクの隣のPCの席にマスターが居て微笑して視線を上げる マスターの視線の先 情報部のモニターにハイケルの視線の先が映っている

【 帝国 門前 】

ハイケルの上げられているゴーグルの脇に小型カメラが付いている アースが苦笑して言う
「随分と盛大だな?国防軍総司令官として 諸君のそちらは受け取っておくが 見送りは ここまでだ」
ハイケルが無線イヤホンを向けて言う
「無線周波数は62 特殊無線周波数だ 帝国内であっても 恐らく…」
アースが言う
「確か使用中は 受信だけではなく送信もリアルタイムで行われる設定であった筈だ 今回の謁見では 機密情報が含まれる可能性もある 残念だが そちらの使用は出来ないな」
ハイケルが言う
「その時には電源を切れば良いんだ …皇帝を殴る前には切る様にしろ 国防軍の機密保持だ」
アースが呆気に取られた後 苦笑して言う
「なるほど?上手く使いこなせると良いのだが?」
アースが無線イヤホンを受け取る ハイケルが言う
「それから 言うまでもないが 送られるのは音声だけだ 可能な限り 状況の説明を」
アースが言う
「私にエルム少佐の真似をしろと?」
ハイケルが言う
「出来るだろう?20年以上も家族で居たのなら」
アースが無線イヤホンを装備しながら言う
「どうだろうな?出来たとしても やる気にはなれそうにないのだが?」
ハイケルが言う
「国防軍総司令官であるならば行うべきだ」
アースが言う
「手厳しいな?」
ハイケルが微笑して言う
「”当然だ”」
アースが苦笑する 政府の車両が到着する ハイケルとアースが顔を向ける 車のドアが開かれると ミックワイヤーが降り アースを見た後ハイケルを見る ハイケルがミックワイヤーを見ると 車からラミリツが降りて言う
「え?どういう事?ハイケル少佐も連れて行く気?…って言うか レギスト機動部隊まで?」
ラミリツがハイケルと後方に居る隊員たちを見る ハイケルが言う
「私と隊員たちは 総司令官の見送りだ」
ラミリツが言う
「見送り?…そ?なら良いんだけど 僕も同じ… ま、こっちは GPTを率いたりはしないけどね?」
アースが言う
「ラミリツ攻長 外交長殿はどうした?マスターシュレイゼスは?」
ラミリツが言う
「先に 帝国の門の中に居るって …皇帝に あんたたちが来る事を 伝えておくって言ってたけど」
ラミリツが帝国の門を見る ラミリツに続いて皆が帝国の門を見ると 門から メルフェスが出て来て言う
「お久しぶりです 皆様」
ハイケルが呆気に取られる メルフェスがハイケルを見て言う
「貴方と直接お話をするのは 初めてですね ハイケル少佐 …お噂はかねがね」
ハイケルが言う
「なるほど… 我々が見知っている 偽者ではない」
メルフェスが苦笑して言う
「その節は 私の偽者を退治して下さったとの事で 真に有難うございました」
アースが言う
「積もる話も有るだろうが 今は先を急ぎたい 元 マスターシュレイゼス 現 マスターシュレイゼスはどうした?」
ハイケルが疑問して言う
「元?現?」
メルフェスが苦笑して言う
「そうでしたね 現 マスターシュレイゼスも 帝国の皇帝に会う事を楽しみにしてます そして、その皇帝への連絡も終わったとの事ですので 私が代わって皆様へ そちらをお伝えに参りました どうぞ ミックワイヤー長官 ハブロス総司令官 帝国へお入り下さい 私からナノマシーンと 外交長の役割を引継いだ 優秀な 現マスターシュレイゼスが 先に居りますので」
ラミリツが言う
「それって誰?」
メルフェスがラミリツへ苦笑して言う
「ミックワイヤー長官と ハブロス総司令官のお2方へは 役割の引継ぎをしたという事で 既に挨拶を済ませておりますので ご心配なく」
ラミリツが言う
「相変わらず アンタ 僕には 秘密にするんだね?」
メルフェスが苦笑して言う
「申し訳ありません 攻長閣下」
ラミリツが言う
「ふんっ …良い訳?僕の事そんな呼び方すると また偽者と間違えるよ?」
メルフェスが微笑して言う
「ここは公の場所ですので」
ラミリツが顔を背けて言う
「あっそ…?…なら もう 良いよっ!」
アースが悪微笑して言う
「不貞腐れるなよ?ガキ」
ラミリツが言う
「うるさい オジサン!」
アースが衝撃を受け 一瞬怒りを抑えてから 気を取り直して言う
「では参りましょう ミックワイヤー長官」
ミックワイヤーが言う
「はい ハブロス総司令官 …では 攻長閣下 後は頼みます」
ラミリツがミックワイヤーへ向いて言う
「そんな言い方は止めてよ …絶対 帰って来て 僕は ここで待ってるからね?…後 あいつらも」
ラミリツがレギスト隊員たちを示す 隊員たちが衝撃を受け 顔を見合わせる ラミリツが言う
「それから 万が一の時には …コイツが行くから 大丈夫だよ?」
ラミリツがハイケルを示す ハイケルが衝撃を受けて言う
「あ、ああ… そのつもりでは あるが…」
ラミリツがハイケルを見て不満そうに言う
「何それ?頼りにならないの …そう言う時にはさぁ?」
ハイケルが言う
「”問題ない”」
ラミリツが微笑する ハイケルが続けて言う
「…予定だ」
ラミリツが転ぶ

ハイケルとラミリツ 後方に隊員たちが見守る中 アースとミックワイヤーが帝国の門へ向かって行く ハイケルが目を細めイヤホンを調整する ラミリツがその様子を見て言う
「もしかして 無線 使ってる?」
ハイケルが言う
「必要な時は電源を入れ… いや、必要があれば 切る様にと伝えて置いたが」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「は?何?それって?重要な所だと思うんだけど 大丈夫?」
ハイケルのイヤホンにアースの声が聞こえる
『…では 予定通り この3人で向かおう』
ハイケルが反応してから言う
「問題ない」
ラミリツが一瞬反応してから背を向けて 横目に見て言う
「しっかり 聞いておいてよね?」
ハイケルがラミリツを見て頷く

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターのヘッドホンにアースの声が聞こえる
『過去の記録にあった通りだな この辺りは マシーナリーの残骸だらけだ』
ミックワイヤーの声が聞こえる
『過去の記録… と 申されますと?』
アースが言う
『今から約12年ほど前… 私の父が国防軍総司令官であった頃 政府の方々と共に この帝国へ向かった その時の記録です …先日 亡くなった祖父の遺品に紛れていまして』
ミックワイヤーが呆気に取られて言う
『そうでしたか そちらに このマシーナリーの残骸の理由などが?』
アースが言う
『ええ、我々国防軍の部隊が 当時総司令官であった父を助けようと向かい その際に破壊した物であると… ああ、やはり 間違いないですね すっかりさび付いていますが これが恐らくその時に使用した PM70です』
ミックワイヤーが言う
『おおっ これが 先日も使用されたと言う マシーナリーを倒す事の出来る銃!』
アースが言う
『はい こちらの銃であるなら 帝国を襲うマシーナリーを 退治する事も可能です』
ミックワイヤーが疑問して言う
『ほほぅ 心強い そして 我々にも …うん?帝国を襲うマシーナリーとは?帝国から送られる マシーナリーを退治するのではないのですか?』
アースが疑問して言う
『うん?…そうですか では どうやら 私の言い間違えのようですね?マスターシュレイゼス?』
マスターシュレイゼスの声が聞こえる
『いえ ハブロス総司令官のお言葉で 正しいです ミックワイヤー長官』
マスターが目を細める

【 帝国 門前 】

ハイケルがイヤホンに集中している イヤホンにマスターシュレイゼスの声が聞こえる
『この帝国は 帝国の外より押し寄せる マシーナリーの襲撃から アールスローンを守っています』
ハイケルが驚いて言う
「なっ!?」
ラミリツがハイケルを見て言う
「どうかした?」
ハイケルが言う
「帝国が マシーナリーの襲撃から アールスローンを守っている!?」
ラミリツが言う
「そうだよ?知らなかったの?悪魔の兵士なのに?」
ハイケルが言う
「エルム少佐は知っていたと言うのか!?」
ラミリツが言う
「”当然だ” …だって 僕は エルムから聞いたんだもん」
ハイケルが表情を怒らせて言う
「何だとっ!?何故 奴は 私へ伝えなかったっ!?」
ラミリツが言う
「だって アンタは ペジテの姫に与えられた 悪魔の兵士だろ?エルムは その逆だもの?」
ハイケルがハッとして言う
「逆!?ではっ ペジテの敵であった 何処かの王子が 悪魔から得たと言う…っ …そう言う事だったのかっ!?」
ラミリツが言う
「今更 何言ってんの?アールスローン戦記を信仰する 国防ー軍の癖に 知らな過ぎ!」
ハイケルが悔しそうに言う
「あんな おとぎ話など!…真剣に考えた事は無かった」
ラミリツが呆れて言う
「アンタさ… その原本と保有者を守る 悪魔の兵士じゃなかった?」
ハイケルが視線を逸らして沈黙する 軍曹が苦笑している イヤホンにアースの声が聞こえる
『…所で マスターシュレイゼス』
マスターシュレイゼスが言う
『はい 何でしょう?』
アースが言う
『皇帝は… ここへ来た 我々へ対し何か言っているのか?』
マスターシュレイゼスが言う
『…いえ 今の所は 何も』
アースが言う
『…そうか …では 先へ向かいましょう?ミックワイヤー長官』
ミックワイヤーが言う
『はい ハブロス総司令官』

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターがPCを操作しつつヘッドホンへ意識を向ける ヘッドホンにアースの声が聞こえる
『ん?光が… と言う事は』
マスターシュレイゼスが言う
『ええ、恐らく』
アースが言う
『先に聞いておくが あの先で お前が何者かに 操られる可能性は?』
マスターシュレイゼスが苦笑して言う
『あったとしても どうか逃げ出さないで下さい 逃げ出せば 過去と同じ事になりかねません』
ミックワイヤーが言う
『それは!?どう言う事で!?』
マスターシュレイゼスが言う
『帝国からの意思は ナノマシーンを身に持つ 私にしか感じられません ですので もし 帝国が私以外のお二人とのコンタクトを試みるとしたら 私の身体を… 私を介して お二方へ言葉を伝えるものと思われます』
ミックワイヤーが言う
『それでは…っ!?』
アースが言う
『それでナノマシーンを持たない我々であっても 皇帝の真意を確かめる事が出来ると言う事だな』
マスターシュレイゼスが苦笑して言う
『どうか穏便にお願いしますね?ハブロス総司令官?』
アースが言う
『相手次第だ』
マスターシュレイゼスが苦笑する アースが言う
『さぁ 答えを聞こう 私の意思が伝わっているのならっ』

【 帝国 門前 】

ハイケルがイヤホンに集中する ラミリツと軍曹 隊員たちがハイケルを見る ハイケルのイヤホンにミックワイヤーの声が聞こえる
『マ、マシーナリーがっ!』
ハイケルが表情を強める アースの声が聞こえる
『敵意があるのなら さっさと撃っているだろう これは ただ 起用されているだけと言った所か』
ミックワイヤーが言う
『な、なるほどっ しかし… ここで 万が一っ!?』
マスターシュレイゼスの声が聞こえる
『アールスローンの民よ ペジテの姫はどうした?ペジテの姫を 我が下へ…』
ミックワイヤーの声が聞こえる
『か、身体を乗っ取られたのかっ!?それなら これが 皇帝の言葉!?』
アースが言う
『お前がアールスローン帝国の皇帝か!?』
マスターシュレイゼスが言う
『ペジテの姫を 我が下へ… 我ら帝国は 長きに渡り お前たちの勝手を 許して来た その恩 忘れては居るまい?ペジテの姫を… 我が下へ さすれば お前たちに 三度の平穏を… さもなくば』
アースが言う
『お前は 皇帝かと聞いている!答えろっ!』
ミックワイヤーが言う
『ハ、ハブロス総司令官っ!?どうか穏便に!』
マスターシュレイゼスが言う
『力を持たないアールスローンの民 お前たちは 我ら帝国に従え』
アースが言う
『その言葉は…っ …おいっ こちらの言葉を聞いているのか?私の言葉が通じないのか!?』
マスターシュレイゼスの声が聞こえる
『アールスローンの民よ ペジテの姫はどうした?ペジテの姫を 我が下へ… 力を持たないアールスローンの民 お前たちは 我ら帝国に従え』
アースが言う
『…分かった では 教えろ ペジテの姫の その名前は?』
ハイケルが目を細める アースが言う
『どうした?姫の名だ!お前の后の名前だろう!?500年以上も求めていながら その名を忘れたか!?』

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターがPCを操作しつつ 真剣にイヤホンの音に聞き入る アースの声が聞こえる
『おいっ!目を覚ませ!お前は誰に操られているっ!?』
マスターが驚いて言う
「操られて… そうかっ!皇帝はナノマシーンの保有者では無いっ マスターへ言葉を代弁させるなんて事は 最初から不可能な筈なんだ!」
イヤホンにハイケルの声がする
『何だとっ!?では 一体 奴は 誰に操られているっ!?』
イヤホンにラミリツの声がする
『操られているだってっ!?アイツまた 操られたのっ!?それなら 名前を呼んで!ナノマシーンの名を!マスターシュレイゼスと!』
ハイケルが言う
『聞こえたか!?ハブロス総司令官っ!?』

【 帝国 門前 】

ハイケルのイヤホンに アースの声が聞こえる
『ああ!聞こえている!…目を覚ませっ!マスターシュレイゼスっ!』
ラミリツがイヤホンを付ける イヤホンにアースの声が聞こえる
『マスターシュレイゼス!目を覚ませっ!マスター シュレイゼス!この…っ …シェイム・トルゥース・メイリスッ!!』
ラミリツが目を見開いて言う
「な…っ!?」
ハイケルがラミリツを見る ラミリツのイヤホンにシェイムの声が聞こえる
『ハブロス… 総司令官…』
ラミリツが驚いたまま言う
「兄上っ!?」
軍曹が衝撃を受けラミリツを見る ハイケルがラミリツを見る アースの声が聞こえる
『やっと目を覚ましたか …手間を掛けさせるな』
シェイムの苦笑と声が聞こえる
『痛いですね… 一体 何度 殴ったのです?』
アースが言う
『当たったのは 1発だけだ まったく気に入らんな 身体補佐能力のマスターは』
シェイムが苦笑して言う
『そのマスターを ナノマシーンを持たずに殴る事が出来るのは きっと アールスローン中を探しても 貴方だけですよ』
ラミリツが呆気に取られている アースが言う
『2回目だ コツを掴んだ …それで?お前を操っていたのは誰だ?皇帝ではなかった様だが?』
シェイムが言う
『すみません 生憎 私にも…』
アースが言う
『使えない マスターだな』
シェイムが言う
『手厳しいですね 私もマスターの名を得たのは つい最近なもので …それでも この先へ向かえば 皇帝へお会い出来ると言う事を 私の中にあるナノマシーン シュレイゼスが伝えています』
ラミリツが目を見開いて言う
「…っ どう言う事!?兄上が…!?」
アースが言う
『ナノマシーンは帝国の力だ 信用は出来ない …だが ここで引き返す訳にも行かない …私の国防軍は 進軍あるのみだっ』
ハイケルが手を握り締める 軍曹が気付いてハイケルを見る シェイムが苦笑して言う
『心強いです ハブロス総司令官』
ハイケルが気を引き締めて言う
「先へ進むのか …気を付けろ」
ラミリツがイヤホンに集中する

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターがPCを操作する ヘッドホンにアースの声が聞こえる
『頑丈そうな扉だ この先へ進めば 外部とは遮断されるかもな?』
シェイムが言う
『…大丈夫だそうです 特殊無線周波数62は 過去の大戦の際も 皇帝の前まで向かったエルム少佐と 国防軍レギスト駐屯地 情報部との連絡を繋いでいたと』
アースが言う
『ならば何故その情報が…?いや、消されたのか?エルム少佐の情報と共に』
シェイムが言う
『政府の方は 国防軍の機密保持のために消去されていますが …でも そうですね 政府警察のメイリス部隊が エルム少佐の部隊とは別に 帝国外のマシーナリーと対戦した そちらの記録は 残っていてもおかしくは無い筈ですが』
アースが言う
『そう言えば エルム少佐本人も言っていたな ”思い出せない”と …ともすれば それが帝国の力か?』
シェイムが言う
『アールスローン戦記では 王子の国の神が 忘却の神…でしたね?』
アースが言う
『なるほど …そうとなれば原本に 答えが示されているのかもしれない』
マスターが目を細める シェイムが言う
『失礼ですが ハブロス家のご当主様は ハブロス家の家宝と言われるそちらを お読みになられた事は?』
アースが言う
『原本を引き継いだのは弟だ 確かにその弟の力を借り 読んだ事はあるが 全てを読むには…』
シェイムが言う
『読むには?』

【 帝国 門前 】

アースが言う
『あいつの気合が足り無過ぎる』
ラミリツが衝撃を受けて軍曹を見る 軍曹が疑問する シェイムが言う
『は?気合… ですか?』
アースが言う
『弟は 人一倍 身体を使う事が得意な分 人一倍 頭を使う事は不得意なんだ』
ラミリツが言う
「馬鹿だからね」
ハイケルが言う
「ああ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「な、なにやら 自分の事を言われている様な気が…っ?」
アースが言う
『うん?あれは… 人か?』
ハイケルとラミリツが反応する シェイムが言う
『いえ、帝国内には もう人と呼べる者は居ない筈です』
アースが言う
『では…?…っ!これは…っ!』
シェイムが言う
『人と同じ大きさの… マシーナリーでしょうか?他のマシーナリーと同じく こちらも動きませんね?』
アースが言う
『ああ しかも これは… この上に人の皮を被せれば まるで…』
シェイムが言う
『…もしや これが あのエルム少佐と同じく 悪魔の兵士の正体なのでは…?』
ハイケルが目を細める アースが言う
『違うな… 彼らは 人と同じ肉体を持つ 痛みを感じる事もあれば 人と同等に 心を通じ合わせる事も出来る この様な 機械人形等では決してない』
ハイケルが反応して呆気に取られる ラミリツが微笑して横目にハイケルを見る シェイムが言う
『失礼しました そうですね 確かに 言動は人形の様であっても 決して 機械の様な 心の無い物ではありませんでした』
アースが言う
『当然だ、物などではない 彼は… 彼らは…』
シェイムが苦笑して言う
『国防軍の 仲間 ですものね?ハブロス総司令官?…それに エルム少佐は 我々 マスターたちにとっても 仲間ですよ?』
アースが言う
『ふんっ 甘いな?』
シェイムが言う
『え?』
アースが言う
『彼らは 私の 家族だ』
ハイケルが驚く ラミリツが一瞬驚いた後微笑して頷いて言う
「うんっ そうだよね!」
アースが言う
『ハブロス家の者だ お前たちには 渡さない!』
ラミリツが衝撃を受けて言う
「えっ!?もしかして… ハブロス総司令官って かなりの 独占主義?」
ハイケルが返答に困る シェイムが軽く笑って言う
『…ふふっ では 我々は… 彼らとは仲間として これからも ご協力を頂きたいと思います』
アースが言う
『協力するかどうかは お前たち次第だ …行くぞ』
シェイムが軽く笑って続く ラミリツが苦笑してからハイケルを見る ハイケルが苦笑する

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターがPCを操作して言う
「無線発信源を特定 位置を捕捉っ」
PCモニターに レーダー映像が映されている

【 帝国 城内 】

アースとシェイムとミックワイヤーが大きな扉を抜け広いホールへ入って来る アースとシェイムが周囲を見渡し アースが言う
「ここは何だ?周囲には何も…」
ドアの軋み音が響き アースとシェイムが振り向くとドアが音を立てて閉まる アースが呆気に取られて言う
「扉が…っ」
周囲から強い光が照射される アースとシェイムが手で目を庇いつつ アースが言う
「何だ!?この光はっ!?」
シェイムが言う
「ただの光ではありませんっ!これは…っ!?」
ミックワイヤーが怯えて言う
「うっ!な、なんだっ!?何かがっ!?」
アースが言う
「頭の中に!?意識に入り込んで来るっ!?ぐ…っ!あぁあっ!」
アースの耳にハイケルの声が届く
『ハブロス総司令官っ!?』
アースがはっと目を開く

【 帝国 門前 】

ハイケルがイヤホンを押さえて叫ぶ
「何があったっ!?ハブロス総司令官!現状をっ!」
イヤホンにアースの声が聞こえる
『ここは… 何処だ?先程の場所では…?』
ハイケルが言う
「どうしたっ!?何が見える!?」
アースが言う
『うん?なっ!?お前はっ!?』
ハイケルが言う
「ハブロス総司令官っ!?」
アースが言う
『…お前が 皇帝か?』
ハイケルが驚いて目を見開く ラミリツが意識を集中させる ラミリツのイヤホンにアースの声がする
『…そうか 私は アース・メイヴン・ハブロス 国防軍総司令官だ 貴方と話をしたくて ここへ来た』
ハイケルが言う
「皇帝と会っているのか!?」
アースが言う
『…そうか …いや それでは 結局 何も変わりはしない 皇帝 我々は』
ラミリツが言う
「皇帝の声は ハブロス総司令官にしか 聞こえていないのかな?」
ハイケルが言う
「そうらしいな」
アースが言う
『貴方を助ける その為の力を用意しているんだ!』
ハイケルとラミリツが真剣に聞き入る

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターが言う
「だが それこそが 今までと同じだ… エルム少佐の時と… …やっぱり 何も 変わらないのか?」
マスターが視線を落とす ヘッドホンにアースの声が聞こえる
『従って 皇帝 貴方は… 我々の仲間になれ!』
マスターが驚き呆気に取られる

【 帝国 門前 】

ハイケルとラミリツが呆気に取られている ラミリツが言う
「帝国の皇帝まで…っ 自分の者にしようって言うの…っ!?」
アースが言う
『いくら 貴方の支えとなる 后が居ようとも… 国や民が在ろうとも ただ 守り続けるだけで 進まなければ いずれは負ける それだけだっ …だからこそ このアールスローン帝国へ押し寄せるマシーナリーの その元を叩き!襲い来るマシーナリーを全て止め 貴方をその場所から完全に解放する!それが 私の国防軍の作戦だ!皇帝!貴方も 我々と共に戦え!』
ハイケルが驚き呆気に取られる ラミリツが苦笑して言う
「な、何か… もの凄い事 言ってるんだけど…?」
ハイケルが言う
「流石は 軍曹の兄だ」
ラミリツが言う
「え?それって…?」
ラミリツが軍曹を見る 軍曹が疑問する アースが言う
『…変えて見せる だから 私の言葉を!…我々を 信じろ!皇帝!』

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターのイヤホンを介して マスターの脳裏に 皇帝の声が聞こえる
『…その言葉 信じよう アース・メイヴン・ハブロス…』
マスターが微笑して言う
「陛下…」
マスターの脳裏に 皇帝の声が聞こえる
『されど この城は…』
イヤホンに突如 サイレンが響く マスターが驚きPCを見て操作を行う

【 帝国 門前 】

帝国内からサイレンが響いている 皆が驚き帝国へ顔を向けてから ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「帝国内で警報がっ!?何だ!?何が起きているっ!?無事か ハブロス総司令官っ!?」

【 帝国 意思空間 】

アースが周囲を見渡す アースの脳裏に皇帝の声が聞こえる
『この城は アールスローン帝国を守る要塞 その為のシステムが組まれている 我を… 不変の法則を 乱そうとする者を 決して許しはしない』
アースが言う
「では この警報はっ!?」
アースの脳裏に皇帝の声が聞こえる
『聞こえているか?反逆の兵士』
アースが言う
「反逆の兵士?それは…」

【 帝国 門前 】

ハイケルが言う
「反逆の兵士とはっ!?」
ハイケルがラミリツへ向く ラミリツが言う
「反逆の兵士は アールスローン信書に現れる 帝国を裏切った兵士 …つまり マスターシュレイゼスの事だよっ!」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターの脳裏に 皇帝の声が聞こえる
『彼を助けよ このアールスローンを守るには… 力 失いし我には もはや何も出来ぬ システムから逃れ得る その方らだけが 頼りぞ』
マスターが表情を強めPC操作を急ぐ

【 帝国 意思空間 】

アースの横にシェイムが現れ アースが向かっていた相手へ跪いて言う
「イエス、ユア、マジェスティ」
アースとシェイムが光の世界から解放される

【 帝国 城内 】

アースが周囲を見渡して言う
「元の空間に戻った…?あれが 皇帝か マスターシュレイゼス?」
シェイムが言う
「恐らく… 少なくとも 私にはその様にと」
アースが言う
「そうか では 皇帝に… 私の魂は伝わった」
シェイムが微笑して言う
「ええ、皇帝の心を動かされるとは」
ミックワイヤーが言う
「ハブロス総司令官っ シェイム外交長っ!」
アースが言う
「ミックワイヤー長官 貴方も 皇帝と我々の話を聞いていたか?」
ミックワイヤーが言う
「聞いてはいましたが 私には 何もっ!…それよりっ!」
出入り口の扉が軋み音を上げながら開かれる ミックワイヤーが言う
「あの 人型のマシーナリーがっ!」
アースがイヤホンを押さえて言う
「ハイケル少佐っ 聞こえているかっ!?」

【 帝国 入り口 】

警報が鳴り響く中 マシーナリー4が倒れる 激しい衝撃の中 ハイケルが立って言う
「国防軍レギスト機動部隊 突入!」
隊員たちが叫ぶ
「「「了解!少佐ぁー!」」」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターが言う
「皇帝からの許可は得ている!国防軍レギスト機動部隊は 呼称 帝国内において どの様な手段を用いてでも ハブロス総司令官を救出する!」
スピーカーからハイケルの声がする
『国防軍レギスト機動部隊 了解 こちらは現在 呼称 帝国の入り口より進軍中 キラーマシーン 及び マシーナリーの邪魔はあるが 撃破は可能だ』
マスターが言う
「ハブロス総司令官の現在地は把握している!更に 通信内容から 現在複数の 総称 人型マシーナリーが ハブロス総司令官 他2名の下へ迫っている!このままでは時間が無い …ハイケル!」

【 帝国 通路 】

ハイケルが言う
「分かっている 私が先行して…っ!」
ハイケルのイヤホンにアースの声が聞こえる
『ハイケル少佐!』
ハイケルが言う
「ハブロス総司令官!レギストが向かっている!私が行くまでっ!」
アースが言う
『来るな!こちらへは 来なくて良い!』
ハイケルが驚いて言う
「何っ!?…何を言っているっ!?今助けに!」
アースが言う
『聞けっ!ハイケル少佐!今 身体補佐能力のマスターシュレイゼスが ミックワイヤー長官を連れ そちらへ向かっている!レギストは ミックワイヤー長官を守り 帝国から脱出しろ!』
ハイケルが慌てて言う
「それでは お前がっ!」
アースが言う
『現在 お前たちが居るであろう その通路の先 外光の届く空間には 先日現れたマシーナリーを 遥かに越える数のマシーナリーが待機している レギストでは… 現行のお前たちでは とても倒しきれないっ!』
ハイケルが言う
「だがっ 私ならっ!」
アースが言う
『その マシーナリーは 私が引き付ける!お前たちは ミックワイヤー長官と マスターシュレイゼスを… いや!シェイム・トルゥース・メイリスを守れ!国防軍総司令官命令だ!』
隊員たちがPM70を次々放ち マシーナリーたちを破壊する ラミリツがマシーナリーを倒して振り返って言う
「ハブロス総司令官!まさか それで 過去のっ …あの時の清算を しようなんて言うんじゃっ!?」
アースが言う
『それだけではない ラミリツ攻長 私は… 私の策により シェイム・トルゥース・メイリスを罪人へ仕立て 政府長長官の任を剥奪させた』
ラミリツが驚いて言う
「え…?」
アースが言う
『それに 私は父を助ける為に 陛下を…っ』
ラミリツが呆気に取られて言う
「陛下を…?それじゃ まさか あの女帝陛下を …殺したのはっ!?」
ハイケルがラミリツを見る ラミリツのイヤホンにメルフェスの声が届く
『違いますっ 陛下のお命を奪ったのは ルイル・エリーム・ライデリア 奴が行った事っ ハブロス総司令官は 奴の策に使われただけです!』
アースが言う
『同じ事だ それは 私が父を助けようと行った事が起因 …そして 全ては12年前に 父がこの帝国を恐れ 逃げ出した事が始まりだっ だからこそ 私が 今 全てを… あの時へ戻す!』
ハイケルが視線を強める アースが言う
『国防軍と政府は 共に戦い 帝国の皇帝を救い そして…っ 帝国へ襲い来るマシーナリーの元凶を破壊する!』
シェイムの声がする
『それでは あの時以上の事ですよ ハブロス総司令官 …貴方が居なければ出来ません」
ハイケルとラミリツが顔を向けると 通路の先に ミックワイヤーとシェイムが現れる ラミリツがハッとして言う
「兄上っ!」
ハイケルとラミリツがシェイムの下へ向かう ハイケルとラミリツが到着すると シェイムが言う
「私がもう一度向かい 今度は ハブロス総司令官を救出して来ます ですから… うっ…」
ハイケルがシェイムの怪我に気付いて言う
「身体を負傷している状態で ナノマシーンの使用はタブーだ」
シェイムが苦笑して言う
「負担は掛かるでしょう ですが あの場所から ここまでお連れする事は 出来ると… いえ、やり遂げて見せます!」
ラミリツがシェイムを見る ハイケルが言う
「無茶はするな 国防軍総司令官の救出任務は 国防軍レギスト機動部隊 隊長である 私が 引き受ける」
ラミリツが言う
「だけどっ!?」
ハイケルが言う
「私は 悪魔の兵士だ 悪魔の兵士は… 我が侭なんだ」
ラミリツが呆気に取られた後 苦笑する アースが呆気に取られて言う
『な…っ!?』
ハイケルが言う
「マスターグレイゼス!準備は!?」
イヤホンにマスターの声がする
『準備万端!いつでもいらっしゃい!』
ハイケルがイヤホンへ言う
「アラン隊員、バイスン隊員 しばらく レギスト機動部隊を預ける 私が戻るまで マシーナリーを押さえ この退避路を確保しろ!」
イヤホンに 隊員Aと隊員Bの声が届く
『『了解!少佐ぁー!』』
軍曹が慌てて言う
『えぇえー!?しょ、少佐ぁー!?副長の自分はぁっ!?』
ハイケルがゴーグルを下げて言う
「こちらも 準備完了だ グレイゼス!」
マスターが言う
『よーし それでは これより アース・メイヴン・ハブロス総司令官 救出作戦 特殊ナビを開始する!』
ハイケルのゴーグルにシミュレーション表示が現れる ハイケルが言う
「了解 任務開始」
ハイケルが武器を仕舞い走り出す ラミリツがハッとしてハイケルを見る

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターがPCを操作しながら言う
「第一障害100メートル先 210マシーナリー 足元を抜け 30メートル直進せよ 第二障害 420マシーナリー こいつは一気に飛び越えろ!上を抜けてのターゲットには応用が利かない仕様だ 着地は通常 そのまま直進!」
マスターのPCモニターにデモ映像が表示されている マイクが同じ映像を自分のモニターで見て目を丸くして言う
「こ、この設定はっ!あの第二訓練所の設備越えのデータ!?しかも このタイム設定はっ …まさか これをナビしようなんてっ!?」
マイクが顔を上げると 情報部のモニターにハイケルのゴーグルに付けられているカメラの映像が流れている マイクが映像を見比べて言う
「お、同じ…っ!?シュミレーションナビを送るだけで ハイケル少佐は これを再現している!?こ、こんな事がっ!?」
マイクが情報部のモニターを見上げる

【 帝国 通路 】

ハイケルがマシーナリー3を飛び越え 着地と同時に走り出す マシーナリー3がマシンガンの射撃を止め左右を見てターゲットを探し 旋回してハイケルへターゲットを設定し マシンガンを構えると 機体が一瞬弾かれ脱力して倒れる ラミリツがプラズマセイバーを引き抜いて 息を切らせつつ ハイケルへ向いて言う
「何だよアイツっ この僕が追い付けないだなんて…っ このーっ 待てってばーっ!」
ラミリツが追って走る

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

スピーカーにハイケルの声がする
『光だ …外光を確認 ハブロス総司令官の示した場所か?』
マスターが言う
「恐らく その場所だ ここからが本番だぜ?ハイケル!」
ハイケルが言う
『問題ない 後方は大丈夫か?』
マスターが言う
「予想外の助っ人 ラミリツ攻長が マシーナリーを退治してくれてる 後方からの追っ手は気にせず 前方の障害に集中を」
ハイケルが言う
『了解』
マスターが言う
「国防軍レギスト駐屯地 情報部」
マイクが衝撃を受けて言う
「は、はいっ!?」
マスターが言う
「俺はハイケルのサポートで手が離せない レギスト機動部隊の方は頼むぞ 退路の確保だ!」
マイクが慌てて言う
「りょ、了解!皆どうなってる!?」
アリムが言う
「レギスト機動部隊 通路内に配備されている 各マシーナリーの破壊を行っています」
ミストンが言う
「バイスン隊員から確認です 通路内に配備されているマシーナリーの破壊に… え、N3爆弾を使用しても良いでありますか?と!」
アリムが慌てて言う
「つ、通路内で 爆弾を!?そんな事したら 通路が埋まって!」
マイクが考えて言う
「N3爆弾でマシーナリーを… ふむふむ… それなら 行ける!大丈夫!」
アリムとミストンが驚いて言う
「えっ!?」 「しかし!?」
マイクが言う
「ミストン君!通信を私の方へ繋いで!詳しい方法を指示するから!」
ミストンがPCを操作しながら言う
「りょ、了解!」
マイクがヘッドホンを装着する

【 帝国 外光の広場 】

ハイケルが次々とマシーナリーを回避し 飛び越えて行く ラミリツがプラズマセイバーを収納して言う
「これ以上相手してたら こっちが持たないよっ もう こうなったら!僕だって 全力で追い駆けてやるんだから!まぁーてぇー!」
ラミリツがハイケルを追って走る マシーナリーがハイケルの動きに翻弄される中を ラミリツがすり抜けて行く マシーナリーたちが翻弄される

【 帝国 城内 】

ハイケルとラミリツが到着する イヤホンにマスターの声が届く
『ハブロス総司令官は その通路の先に居る …だが こいつらは?…今までのデータに無い マシーナリーだ』
ラミリツがプラズマセイバーを用意して言う
「データは無いかもしれないけど 大きさが僕らと同じ分」
ハイケルがM82を用意して言う
「スピードは 今までのマシーナリーより 速いと言う可能性もある」
ラミリツがハイケルを見て言う
「だったら…?」
ハイケルがゴーグルを上げながら言う
「作戦は1つ」
ラミリツとハイケルが2手に分かれて ラミリツが言う
「2手に分かれる!」
ハイケルが言う
「上出来だ」
ラミリツとハイケルがそれぞれの人型マシーナリーへ向かって行く 人型マシーナリーたちがそれぞれハイケルとラミリツへマシンガンを放つ ラミリツが人型マシーナリーの首を切り落とす ハイケルがM82をジャストショットさせて人型マシーナリーの首を狙う 人型マシーナリーの首が外れかかった状態で倒れると振動で首が外れ 人型マシーナリーが止まる ハイケルが言う
「起動回路は頭部か」
イヤホンにマスターの声がする
『ハイケルっ ハブロス総司令官の居場所が変わった!負傷の可能性がある 急げるか!?』
ラミリツが言う
「ここは僕の方が有利だよ!アンタは ハブロス総司令官を助けに行って!」
ハイケルが言う
「了解 …グレイゼス!ナビを!」
ハイケルがゴーグルを下げる マスターが言う
『よし 一気に切り抜けるぞ!』
ハイケルがラミリツへ向いて言う
「攻長閣下 ここは任せる」
ラミリツが言う
「了解!」
ハイケルが走る ラミリツが人型マシーナリーを次々に斬り倒す

【 帝国 地下 】

アースが苦しそうに意識を取り戻して言う
「う…っ」
イヤホンにマスターの声が届く
『…総司令官っ ハブロス総司令官っ 応答を!ハブロス総司令官っ!』
アースが言う
「き…こえている… ここは…?っ…!」
マスターが言う
『意識はあるようだな?何が見える?』
アースが暗い空間の中目を瞬かせながら言う
「何も… …いや 僅かに聞こえる… 照明の無い 密閉された 空間の様だが… 何かが動いて 機械の音が… うっ…!」
マスターが言う
『分かった 負傷しているのか?度合いは?』
アースが言う
「分からない… 感覚が… 意識が遠退く…」
マスターが言う
『しっかりしろ!すぐそこまで ハイケルとラミリツ攻長が助けに来ている!2人が必ず貴方を助ける!』
アースが言う
「2人… ラミリツ 攻長 が…?く…っ」
アースが表情を苦しませつつ身体を起こそうとする

【 帝国 ホール 】

ハイケルが周囲を見渡す イヤホンにマスターの声が聞こえる
『ハイケルっ レーダー上では その場所だ!何がある!?』
ハイケルが言う
「何も無い マシーナリーも 何も…」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターが言う
「明かりはどうだ!?」
マスターのヘッドホンにハイケルが言う
『明かり?…今までの屋内と同様 壁や天井から 明かりが発せられている 何も変化は無い』
マスターがPCを操作すると モニターのレーダー映像が3D表示で反転され マスターが言う
「では 地下だ!ハイケル 手榴弾は?」
ハイケルが言う
『隊員からのプレゼント N3爆弾を入手している』
マスターが呆気に取られた後苦笑して言う
「よし それなら丁度良い!」

【 帝国 ホール 】

ハイケルがM82を連射している 銃口の先 床に銃弾による穴があけられている ハイケルがN3爆弾をそこへセットして セーフティー金具に糸を通すと距離を置き 身を屈めて言う
「準備完了 …爆破っ!」
ハイケルが身を守りつつ糸を引く N3爆弾からセーフティーが外れ 一瞬の後爆発が起きる

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターのヘッドホンにハイケルの声が聞こえる
『ターゲット ハブロス総司令官を 目視にて確認!』
マスターが言う
「状況は?救出は出来そうか!?」
ハイケルの声が聞こえる
『施設内に人型マシーナリーが複数居るっ 殲滅するには数が多過ぎる ハブロス総司令官の負傷の度合いは ここからの確認でも 負傷度Dランク 歩行は不可能 出血量から生命の危険もある 俺が降下して救出するしかないが 施設内の構造は分かるか!?』
マスターがPCを操作しながら言う
「場所は確認出来ているが …そこから 引き上げる事は出来ないか?」

【 帝国 ホール 】

ハイケルが下階からの銃撃から身を逸らしつつ言う
「既に爆破の衝撃と音で 施設内に居た敵から こちらをマークされているっ 敵の殲滅も不可能な上 私1人では ピックアップ中の襲撃から保護対象者を守る術が無い 私が降下するだけでも 現行 奴らのターゲットを逃れている ハブロス総司令官の居場所を 悟られる可能性が高い」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターのヘッドホンにハイケルの声が聞こえる
『降下と同時に 特殊ナビによる退路の指示を望む!施設内の出口の場所は 分からないのか!?』
マスターが表情を渋らせつつ言う
「構造も出口も分かってはいるが 肝心の出口のロック解除が ここからでは出来ないんだっ 何とか引き上げるしか…っ」
マスターのヘッドホンに チャラそうな男の声がする
『大丈夫だ そっちの解除は 俺が受け持つ』
マスターが呆気に取られる

【 帝国 城内 】

ラミリツが人型マシーナリーを倒し終え 軽く息を吐いて言う
「ふぅ… 流石に…」
ラミリツがハッとして振り返り様にプラズマセイバーを向けると チャラそうな男がその前で両手を上げて言う
「うわぁあっ!ま、待った待ったっ!」
ラミリツが呆気に取られて言う
「あれ?アンタ こないだの?」
チャラそうな男が苦笑して言う
「あぁ 名乗ってなかったっけ?俺は マスターイリンゼス!シェイムの大先輩さ!よろしくな!エーメレス攻長!」
イリンゼスがラミリツへ握手の手を向ける ラミリツが不満そうに言う
「はぁ?アンタが兄上の…?」
ラミリツがプイッとそっぽを向いて言う
「アンタみたいのが 兄上の大先輩なんて有り得ないし!…信じたくないから 嫌だっ!」
イリンゼスが衝撃を受けて言う
「なっ!?可愛くねぇ~!」

【 帝国 ホール 】

ラミリツとイリンゼスがやって来て ラミリツがハイケルへ言う
「ハブロス総司令官はっ!?」
ハイケルがラミリツへ向いて言う
「この下だ」
ラミリツが床の穴を見る ハイケルがイリンゼスを見てからイヤホンを押さえて言う
「グレイゼス 先日会った男だ」
イリンゼスがハイケルへ向いて言う
「マスターイリンゼスだ よろしくな?ハイケル少佐!」
イリンゼスがハイケルへ握手の手を差し出す ハイケルが握手を交わして言う
「作戦に参加する気があるのなら…」
ハイケルが握手の手を握り締めて言う
「もっと早く来いっ!部隊に置いて任務への遅刻は厳禁っ!駐屯地1000周と3ヶ月の減給処分を受けたいのかっ!」
イリンゼスが悲鳴を上げながら言う
「イタタタタァ!そ、そんな事言われたってっ!マスターが帝国に入るのは 命懸けなんだよっ!むしろ 褒めてくれってぇのぉおっ!」
ラミリツが言う
「それで 作戦は?」
ラミリツのイヤホンにマスターの声がする
『ラミリツ攻長 貴方も手伝ってくれるか?』
ラミリツが言う
「当然!大体 僕は 任務だろうと何だろうと 遅刻なんて した事無いからね!」
マスターが言う
『流石は 警察長の息子だな?』
ラミリツが言う
「そう言う事!」
イリンゼスが手をさすりながら言う
「だから 俺は 遅刻したんじゃ ないってぇのに…」
マスターが言う
『よし それでは 手短に 作戦を伝える』
ハイケルとラミリツとイリンゼスが頷く

【 帝国 地下 】

周囲で手榴弾が爆発する 人型マシーナリーたちが顔を上げると ハイケルが高い所に立っていて言う
「さぁ 捕まえられるものなら 捕まえてみろ!」
ハイケルがゴーグルを下ろし走り出す 人型マシーナリーがハイケルを追って移動する ラミリツがその間にロープを伝って降下する イリンゼスが扉の前でロック解除作業をしながら言う
「いくらマスターなら狙われないって言われても 後ろでドンパチされている中で ロックの解除作業なんて 難しいよなぁ~ だって俺は 身体補佐能力のマスターなんだから こう言った コード解除なんて言うのはさぁ…」
イリンゼスのイヤホンにハイケルの声が聞こえる
『グダグダと言っている暇があるのなら 急げっ』
イリンゼスが表情を渋らせて言う
「やってるよぉ …あーっ!」
イリンゼスの目前 ロックモニターにエラーが表示される イリンゼスが頭を掻きながら作業を続ける

ラミリツが小声で言う
「ハブロス総司令官っ 大丈夫!?迎えに来たよっ!」
アースが薄っすら目を開いて言う
「ラミリツ… 攻長…」
ラミリツが表情を苦しませてから 一度イリンゼスの様子を伺い ハイケルの様子を見てから アースへ向いて言う
「ちょっと待ってて 今 出口のロックを解除してるから そうしたら」
ラミリツがアースの身体を支えて言う
「少し辛いだろうけど 頑張って …皆 待ってるからっ」
アースが言う
「私は… お前の兄を… シェイム・トルゥース・メイリスを…」
ラミリツが一瞬驚いた後苦笑して言う
「うん 分かった… でも その兄上だって 待ってるから ハブロス総司令官の事… だって 皆 仲間でしょ?エルムが言ってたよ 作戦が違う時は 敵だけど 結局 皆仲間なんだって 一緒に戦う仲間だって …皇帝だって エルムの仲間なんだって …だから ハブロス総司令官も 同じでしょ?」
アースが言う
「私は… そうか… 全ては 作戦…」
ラミリツが苦笑して言う
「そうだよっ 皆、全部 作戦だよっ だからそれが終ったらっ 皆仲間なんだから…っ 今度はその皆で 全員で!同じ作戦をやるんでしょ?この世界を守っちゃおうなんてさ?アンタじゃなきゃ 出来ないよ!ハブロス総司令官じゃなきゃ!…だからっ 死なせないよ こんな所でっ」
アースが苦笑する イリンゼスが言う
「出来たぁあっ!」
扉が音を立てて開く ハイケルが振り返って言う
「上出来…」
イヤホンにマスターの声がする
『解除コードを 全部言って教えたんだからぁ 当たり前だろ?』
ハイケルが言う
「…当然だ」
イリンゼスが衝撃を受けて言う
「ゲッ 言うなよっ 薄情なマスターだなぁ?そう言うの ”マスターの風上にも置けない”って言うんだぜ?知ってるぅ?」
マスターが言う
『知らないな?と、そんな事より ラミリツ攻長 扉が開いたぞ 行けるかっ?』
ラミリツが言う
「もちろん!…行くよ?」
ラミリツがアースを見る アースが苦笑して言う
「ああ…」
ラミリツが頷き アースに肩を貸して立ち上がらせる マスターが言う
『イリンゼス 先行して 状況を伝えてくれ』
イリンゼスが言う
「あいよっ!」
イリンゼスが消える ハイケルが人型マシーナリーを引き付けている間に ラミリツがアースを連れて施設を出て行く

ハイケルが人型マシーナリーの銃撃を回避している イヤホンにマスターの声が届く
『ハイケル!お前も退避だ!』
ハイケルが言う
「了解」
マスターが言う
『そのまま 彼らの後を追えるか?』
ハイケルが言う
「問題ない 人型マシーナリーたちの弾薬も尽きて来た様子だ 行ける」
マスターが言う
『よしっ それじゃ!』
ハイケルのゴーグルにデモ映像が表示される ハイケルが瞬時に身を翻し 人型マシーナリーの正面までやって来ると 人型マシーナリーの肩へ手を付き飛び越え バク転して着地しそのまま走り去る 人型マシーナリーが混乱し周囲を見渡し回れ右をしてハイケルを見付け向かう 周囲の人型マシーナリーも続く

ハイケルが通路を走る イヤホンにマスターの声が届く
『そのまま直進!出口は あの外光の広場へ 繋がっている!』
ハイケルが言う
「では 再び マシーナリーを越えるのか?一度突破した経路を戻るとなれば 相手は以前より…っ」
マスターが言う
『いや、その必要は無い!安心しろ!』
ハイケルが疑問して言う
「どういう意味だ!?」
マスターが言う
『大丈夫だ マスターを信じなさい!ハイケル君!』
ハイケルが言う
「信じてはいるが 疑問はするっ!」
マスターが言う
『なら 答えは すぐそこだ!目の前に在る!』
ハイケルが外光の光に眩しそうにしながら通路を走り抜ける

【 帝国 外光の広場 】

ハイケルが走って来ると 驚いて呆気に取られる ハイケルの視線の先 広場にあるマシーナリーが全て止められている マシーナリーたちの前に 国防軍の制服を来たマスターたちが居て ハイケルを振り返り微笑する ハイケルが呆気に取られた状態から微笑して言う
「なるほど… 国防軍従軍のマスターは お前だけではなかったな グレイゼス?」
マスターが言う
『そう言う事~!無線を聞いていた 機動部隊のマスターたちが レギストの支援に 飛んで来たんだ!』
ハイケルが苦笑して言う
「では早速… 部隊に置いて任務への遅刻は厳禁 駐屯地1000周と 3ヶ月の減給処分を言い渡してやるか?」
マスターが言う
『ハイケル~ 折角 国防軍へ戻って来たマスターたちに そんな可愛くねぇ事 言ってると…』
マスターたちがハッとして消える ハイケルが呆気に取られて言う
「な…っ!?何も… 本気で 逃げなくとも…?」
マスターが言う
『マスターの持つ ナノマシーンの命令さえ聞かない 人型マシーナリーに 追い付かれちまうぞぉ?ハイケル?』
ハイケルがハッとして 慌てて走りながら言う
「先に言えっ!」
ハイケルが逃げる 人型マシーナリーたちがハイケルを追う

【 帝国 通路 】

隊員たちがハイケルを見て 表情を明るめて言う
「少佐!」 「少佐だ!」
隊員Bが言う
「少佐ぁー!」
ハイケルが叫ぶ
「国防軍レギスト機動部隊!」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!少佐ぁー!」
ハイケルが叫ぶ
「撤退っ!」
隊員たちが呆気にとられて言う
「え?」 「て、撤退?」 「何で…?」
隊員Bが言う
「え~?通路内のマシーナリーも あの広場のマシーナリーもー 全部 止めたのにでありますかー?少佐ぁー?」
ハイケルが近付いて来る 隊員Aが目を細めて言う
「って言うか… 少佐の後ろに居るのは…?」
隊員Cが言う
「なんだぁ?ありゃ…?」
ハイケルが叫ぶ
「何をしている!早く逃げろ!全速前進!」
隊員Fが言う
「…て、そう言えば 少佐って …もの凄く足が速くなかったっけ?」
隊員Nが言う
「それが… あいつらには 今にも追い付かれそうに…?」
隊員たちがハッとして顔を見合わせた後言う
「やべぇ!」 「超速ぇえぞアレ!?」 「一体 何なんだっ!?」
隊員Aが言う
「それより 今はっ!」
隊員Bが言う
「てった~いっ!」
隊員たちが慌てて逃げ出す ハイケルが逃げる 人型マシーナリーたちが 弾切れの状態で追い駆ける

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員Xが言う
「通常訓練の1!開始ぃー!」
隊員たちが苦笑して言う
「了解!」
隊員たちが腕立てを開始しながら話す
「まぁ 軍曹ほどじゃないけど」 「ゼクス隊員の号令なら 一応気合は入るな?」 「ああ、流石 軍曹の愛弟子!」
隊員Xがが周囲を見渡し軽く頷いてからハイケルへ向く ハイケルが言う
「では、ゼクス隊員 号令役はお前に任せる」
隊員Xが敬礼して言う
「はっ!了解であります!少佐ぁ!」
ハイケルが言う
「アラン隊員」
隊員Aが敬礼して言う
「はっ!少佐っ!」
ハイケルが言う
「通常訓練を含め お前の判断で 隊員たちの足りないと思われる訓練を 追加しろ」
隊員Aが衝撃を受けてからあわてて言う
「えっ!?お、俺の判断で…?は、はっ!了解!」
ハイケルが言う
「お前一人で考え無くても良い バイスン隊員や他の隊員たちと話し合い 必要とするものが異なると言うのなら その様に分けて訓練を行え お前に任せる」
隊員Aが言う
「は… はい…」
ハイケルが半身翻して言う
「私は情報部に居る 何かあれば連絡を」
隊員Aが敬礼して言う
「りょ、了解っ」
ハイケルが立ち去る 隊員Bが呆気に取られてから言う
「すっげ~… やっぱ スッゲーじゃん!アッちゃん!?少佐に 訓練内容まで任されちゃうなんてー!?」
隊員Aが振り返ると 隊員Bや隊員C隊員Fが微笑している 隊員Aが苦笑して言う
「いや、違うって 少佐は 俺だけじゃなくて バイちゃんや他の隊員たちと話し合ってって… つまり 俺たち全員を認めてくれてるんだよ」
隊員たちが顔を見合わせる 隊員Aが言う
「だから皆 軍曹も少佐も居ないけど!気合入れていくぜ!?」
隊員たちが顔を見合わせ微笑して言う
「了解!アッちゃん 仮隊長!」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「なっ!?だ、だから そういう時は アッちゃんじゃなくてさ!?」
隊員たちが笑う 隊員Xが笑んで言う
「よーし それでは これから自分は腕立て650回を行うのだ!自分に遅れた者は 腕立て追加で100回!」
隊員たちが衝撃を受ける 隊員Aが言う
「お!よし!そいつは早速取り入れよう!」
隊員Xが腕立てを早めて言う
「うおーっ!まだまだぁーっ!」
隊員たちが衝撃を受け慌てて速めながら言う
「ま、まだまだぁー!」
隊員Aが苦笑する 隊員Bが腕立てをしながら言う
「アッちゃん 早くしないと アッちゃんが遅れちゃうよー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「ゲッ!そうだった!」
隊員Aが急いで腕立てを開始する

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

ハイケルがドアを開け入室すると マイクが気付き顔を上げて言う
「あ、お疲れ様です ハイケル少佐!」
ハイケルが言う
「お疲れ マイク少佐 …それで?情報は集まったのか?グレイゼス」
ハイケルが顔を別の方へ向けると マスターが苦笑して言う
「そうだな?集まりはしたが」
ハイケルが言う
「では 分かりやすく 伝達しろ」
マスターが言う
「それより お前 部隊はどうしたんだ?今は アーヴィン君だって居ないのに 隊長のお前が 部隊を放ってこっちに来てる場合じゃ…」
ハイケルが言う
「心配ない あいつらは 監視の目が無いからと言って 訓練の手を抜くような連中ではないんだ レギストの機動部隊だからな?」
マスターが呆気に取られた後苦笑して言う
「へぇ…?俺が居ない間に 随分と 変わったみたいじゃないか?」
ハイケルが言う
「レギストの機動部隊と情報部に関してのみで言えば 今では レーベット大佐が居らした時と 同等であると俺は思っている」
情報部員たちが反応して顔を見合わせてからハイケルを見る マスターが微笑して言う
「俺から見れば お前こそが変わったと思うけどな?それこそ レーベット大佐が居らしていた時の それ以上に?」
ハイケルが言う
「ああ 何しろ… 一度蘇ったからな?」
マスターが転びそうになってから言う
「だからっ そうじゃないだろう!?」
ハイケルが疑問して言う
「…違うのか?」
マスターが苦笑して言う
「はぁ… やっぱり 変わらないねぇ そう言う変な所で抜けてるのは 相変わらずだ …まぁ お前らしいっちゃ お前らしいけど」
ハイケルが言う
「どういう意味だ?」
マスターが言う
「可愛いって事だよ」
ハイケルがムッとする マスターが苦笑した後言う
「可愛くないって言われるより良いだろ?それより ここはもう 憩いの喫茶店じゃないんだ まぁまぁ 美味いコーヒーがあるからって 世間話をしていて良い場所でもない 就業中でもある訳だしな?」
ハイケルが言う
「昨日の任務に関する 報告を聞きたい」
マスターが微笑して言う
「了解!」

マスターがPCを操作するとモニターにTVニュースが映る マスターが言う
「昨日の作戦… 表向きには 政府と国防軍の代表による ”帝国への和平交渉” は 無事締結 アールスローン国と ”帝国” は 和平を取り戻した …と言う事になっている」
TVニュースからキャスターが言う
『…と、今朝早く 政府長アロル・メイシュ・ミックワイヤー長官による公式記者会見によって 発表されました 共に これまでに確認されていた マシーナリーによる襲撃は アールスローン国へ向けての宣戦布告等ではなく 機械技術的な事故であったと言う事が判明 帝国内においても 同等の被害が起きており そちらの収拾へ向け 現在 アールスローン国 国防軍が 帝国への協力を…』
ハイケルが呆気に取られて言う
「国防軍が帝国へ協力を…?」
マスターが言う
「極秘訪問だったとは言え 政府の要人を含む 国防軍の総司令官と1部隊が 帝国へ向かった事は 一部のメディアに気付かれていたんだ 帝国で国防軍がひと暴れしたって事まで 公に知られてしまっていた… それに 今まで国防軍の駐屯地で起きていた マシーナリーの襲撃も 公表はしていなかったが あの大きな鉄の塊である マシーナリーの姿はやっぱり確認されていたからな?だから ここは少し強引だが 帝国に置いての事故だったって事で その収拾に アールスローンの国防軍が協力する …と言う話にしたらしい」
ハイケルが言う
「そうか… それに ハブロス総司令官が 帝国の皇帝へ それらしき事を言った事も事実だ 従って 国防軍は帝国へ… 皇帝へ協力すると言う事で 間違いはない」
マスターが微笑して言う
「仲間になれって事は 互いに協力するって事だもんな?」
ハイケルが言う
「…とは言え 皇帝は 何と答えたんだ?そもそも 本当に ハブロス総司令官は 帝国の皇帝と会話をしていたのか?」
マスターが言う
「ん?何を今更?…何だよ?あの時の無線は お前たちも聞いていたんじゃなかったのか?」
ハイケルが疑問して言う
「無線通信は聞いていたが 皇帝の言葉は聞こえなかった」
マスターが反応して言う
「え?俺も同じ無線を聞いていたが 陛下の言葉はしっかりと?」
ハイケルが言う
「…聞こえていたのか?」
マスターが考えて言う
「…ああ そう言えば?あの時は会話に集中していたから うっかりしていたが あの感じは 確かに… マスターたちの声を聞く時と同じだったな?」
ハイケルが疑問して言う
「マスターたちの声を?…つまり ナノマシーンを身に持つ お前たち”マスター”にしか 聞こえない声だったと言う事か?」
マスターがPCを操作して言う
「ああ… マスターたちの通信には 通常の無線に使う超微電流ではなくて 超微原子を使ってるんだ だから 無線の受信機じゃ音声変換は出来ない …と言うか そもそも超微原子を 音に変換出来る機材は無いからな?」
マスターが通信を再生する 

スピーカーからアースの声が聞こえる
『…お前が 皇帝か?』
ハイケルがスピーカーを見る スピーカーからアースの声が聞こえる
『…そうか 私は アース・メイヴン・ハブロス 国防軍総司令官だ 貴方と話をしたくて ここへ来た』

ハイケルが言う
「やはり ハブロス総司令官の声しか聞こえないが?」
マスターが言う
「ああ、そうだな?録音したものを再生したんじゃ 今は俺も同じだ」

スピーカーからハイケルの声が聞こえる
『皇帝と会っているのか!?』

マスターがPCを操作して音声を止めて言う
「では 俺の記憶から割愛して伝えると… この時 皇帝は『外界から押し寄せる マシーナリーを抑えて欲しい』 と ハブロス総司令官へ頼んでいたんだ」
ハイケルが言う
「皇帝が総司令官へ?」
マスターが言う
「ああ、そして ハブロス総司令官は こう答えた」
マスターがPCを操作すると

スピーカーから アースが言う
『…そうか …いや それでは 結局 何も変わりはしない 皇帝 我々は 貴方を助ける その為の力を用意しているんだ!』

ハイケルが表情を強める マスターが言う
「けど それは 以前も同じだった 以前の… あのエルム少佐の時と だから 俺たちは 結局 同じ事を繰り返すだけだと思ったんだ 皇帝に一時の休みを与え 再び 防衛に立たせる その歴史の繰り返しだってな?…だが 違った」
ハイケルがマスターを見る 

スピーカーからアースの声が聞こえる
『従って 皇帝 貴方は… 我々の仲間になれ!』

ハイケルが言う
「仲間に…?」

スピーカーからアースが言う
『いくら 貴方の支えとなる 后が居ようとも… 国や民が在ろうとも ただ 守り続けるだけで 進まなければ いずれは負ける それだけだっ …だからこそ このアールスローン帝国へ押し寄せるマシーナリーの その元を叩き!襲い来るマシーナリーを全て止め 貴方をそこから完全に解放する!それが 私の国防軍の作戦だ!皇帝!貴方も 我々と共に戦え!』

ハイケルが言う
「共に戦う… 皇帝や自分たちが 防衛を行うのではなく?」
マスターが言う
「ああ、皇帝と共に戦う と ハブロス総司令官は 共に戦って 陛下を助け出す事を約束したんだ」
ハイケルがマスターを見て言う
「それで 皇帝は何と?」
マスターが言う
「陛下は 500年以上変わらなかった アールスローンの歴史を 変えられるのか?と ハブロス総司令官へ問い掛けた その答えが」

スピーカーからアースの声がする
『変えて見せる 私の言葉を!我々を 信じろ!皇帝!』

ハイケルがマスターを見る マスターがハイケルを見て言う
「俺たちはもちろんだが 陛下も驚かれていた それでも 陛下の答えは ”信じよう”と ハブロス総司令官の… ”お前たちの仲間として” ってな?」
ハイケルが微笑して言う
「…そうか」

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員Xが重しを担いだ状態で走りながら叫ぶ
「うおぉーっ!まだまだぁーっ!」
隊員Nが全力で走りながら叫ぶ
「まだまだぁーっ!」
隊員Xが自分の横を抜けた隊員Nに衝撃を受け言う
「ぬおっ!ナクス隊員っ!?自分も軍曹の代役として 負けてはいられないのであります!まだまだぁーっ!」
隊員Xが隊員Nを追って速度を上げる 隊員Aが走りながら苦笑して言う
「あっははっ 今度は今までのゼクス隊員の立場に ナクス隊員が就いたみたいだ」
隊員Bが言う
「ナッちゃんは もっと活躍したいって張り切ってたもんねー?もしかしたら ポジション移動狙ってるのかもー?」
隊員Aが言う
「ポジション移動って?」
隊員Bが言う
「だからー」
隊員Cが追いついて来て言う
「ポジション移動って言えば アラン隊員は変わらずだけど バイスン隊員は一歩下げられたみたいだな?」
隊員Bが疑問して言う
「えー?」
隊員Aが隊員Cへ向いて言う
「バイちゃんが 一歩下げられたって?」
隊員Cが笑んで言う
「だってよ?アラン隊員は部隊の指示役… つまり 少佐のポジションを任されたって言うのに 副長の軍曹のポジションはゼクス隊員じゃないか?以前までなら 隊長代理のサポート役は バイスン隊員だっただろ?」
隊員Aが苦笑して言う
「いや、別にそれは 下げられたって言うか…」
隊員Aたちの前方で 隊員Xと隊員Nが抜きつ抜かれずの追い上げ合いをしている 隊員Aが苦笑して言う
「こういう時の軍曹役に ゼクス隊員が向いてるってだけだろ?つまり 適材適所って言うか…」
隊員Bが言う
「あー!分かったー!つまり メインアームならぬ メインポジションー!って事ー?」
隊員Aがあっけにとられた後苦笑して言う
「まぁ そう言う事かな?」
隊員Xが叫びながら隊員Nを抜き去る
「ぬおぉおお!まだまだぁああー!」
隊員Nが衝撃を受けて失速する 隊員Aが苦笑して言う
「やっぱ 軍曹の代役は しばらくゼクス隊員で固定だな?」
隊員Bが軽く笑って言う
「ナッちゃんじゃ まだまだ~ だからね~?」
隊員Nが近くまで失速して来て言う
「う~ ゼクス隊員がここまでとは… 軍曹が居ない時こそ 密かに狙ってたのに…」
隊員Bが笑んで言う
「にひっ …って そう言えば 少佐は情報部だけど~ 軍曹は~?」
隊員Nが言う
「そう言えば 昨日の任務の途中から 見てないな?」
隊員Aが言う
「ああ、軍曹なら…」
隊員たちが隊員Aを見る

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

ハイケルが言う
「それで ハブロス総司令官の容態は どうなんだ?」
マスターが微笑して言う
「ああ、心配ない ラミリツ攻長やマスターシュレイゼスに救出されて 緊急搬送した国防軍の医療施設において 緊急オペも成功 命はもちろん 体も無事だったって話だ」
ハイケルが言う
「そうか では…?」
マスターが言う
「付き添った アーヴィン君も 今はもう 国防軍総司令本部に居るから これらの情報に間違いはないだろう?」
ハイケルがあっけに取られて言う
「軍曹が 総司令本部に?」
マスターが言う
「ん?何だ 知らなかったのか?」
ハイケルが言う
「てっきり医療施設で 付き添っているものかと… 昨夜屋敷に戻らなかった事もあり 気にはしていたんだが」
マスターが苦笑して言う
「だったら 連絡くらい入れれば良かっただろう?それに…」
ハイケルが顔をそらして言う
「容態が良くないのなら そっとして置いた方が良いかと思ったんだ」
マスターが苦笑して言う
「容態が良くないのなら尚更 …お前だって ハブロス家の家族の一員なんだろ?」
ハイケルが反応し 言い辛そうに言う
「それは… そうだが…」
マスターがPCを操作して言う
「一晩経って 面会謝絶も解かれたみたいだし お見舞いにでも行って来たらどうなんだ?家族として… あの総司令官なら きっと喜ぶだろう?」
ハイケルが疑問して言う
「”あの総司令官なら”とは?」
マスターがPCを操作すると

スピーカーからシェイムが苦笑して言う
『国防軍の 仲間 ですものね?ハブロス総司令官?…それに エルム少佐は 我々 マスターたちにとっても 仲間ですよ?』
アースが微笑して言う
『ふんっ 甘いな?』
シェイムが言う
『え?』
アースが言う
『彼らは 私の 家族だ』

ハイケルが反応する マスターが微笑する

スピーカーからラミリツの声がする
『うんっ そうだよね!』
アースが言う
『ハブロス家の者だ お前たちには 渡さない!』

ハイケルが衝撃を受ける マスターが軽く笑って言う
「あっはははっ もしかして相当可愛がられてるんじゃないか~ ハイケル?お前を家族の様に思って来た俺も なんだか 嬉しいねぇ?」
ハイケルが顔をそらして言う
「可愛がられていると言うか… 遊ばれていると言うか…」
ハイケルが気を取り直して言う
「では… とりあえず 就業後にでも 今後の作戦確認も兼ねて 一度見舞いに行って来る」
マスターが言う
「ああ そうしたら良い ちなみに 医療施設はマルック地区の~…」
マスターがPCを操作していると ハイケルが言う
「それより 先ほど言っていたと思うが」
マスターが言う
「うん?」
ハイケルが言う
「軍曹は 総司令官の付き添いではなく 国防軍総司令本部に居ると言う事だったな?」
マスターが言う
「ああ、アーヴィン君は レギストの軍曹でもあるが 国防軍長 防長閣下だからな?同じく国防軍長である 総司令官不在時には その業務を代行する事になる」
ハイケルが言う
「総司令官の代行を…?… それは… 大丈夫なのか?」
マスターが衝撃を受けて言う
「うっ…」
ハイケルが言い辛そうに言う
「養子とは言え 一応 息子と言う事になっている 俺が 言ってしまうのも難だが… 軍曹は…」
マスターが慌てて言う
「いやっ!ストップだっ!ハイケル君!…だ、大丈夫だとも!?きっと…?」
ハイケルが言う
「”きっと”?」
マスターが言う
「いやっ その…っ ほ、ほら 良く思い出せ~?ハイケル?アーヴィン君だって あの 女帝陛下のパレードの時とかっ 皇居で防長閣下をしていた時とか… …やっぱり 彼は やる時はやれる男なんだよっ!」
ハイケルが言う
「やる時はやれる…」
マスターが言う
「ああ!なんてったって アーヴィン君は あの歴代国防軍長 ハブロス家の御曹司なんだ!そりゃ普段はちょっと… あーだけど…」
ハイケルが言う
「”あーだけど”?」
マスターが言う
「う、うん…」
ハイケルとマスターが黙る マイクが横目に見ていて沈黙している 電話が鳴り マイクがハッとして 慌てて受話器を取って言う
「は、はいっ!こちら 国防軍レギスト駐屯地情報部 マイク少佐 …はい!はい 居ります 代わりますか?…え?ええ、ハイケル少佐も居ますよ?」
ハイケルとマスターが反応してマイクを見る マイクが電話をしながら言う
「え?…はい 分かりました 昨日の任務の報告を 直接ですね?伝えます」
マイクが受話器を置いてハイケルとマスターへ向いて言う
「マスターグレイゼス中佐 ハイケル少佐 国防軍総司令本部から連絡で 昨日の任務に関する報告を 直接 行うようにと!…防長閣下より ご命令だそうです」
ハイケルとマスターが顔を見合わせる

【 国防軍総司令本部 会議室 】

ドアがノックされ秘書の声がする
「国防軍レギスト駐屯地情報部主任 マスターグレイゼス中佐と 同じく機動部隊隊長 ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐が到着しました」
ドアが開かれ マスターとハイケルが入室してドアの前で敬礼する ハイケルが正面を見て僅かに表情を驚かせる ハイケルの視線の先 上層軍員たちが臨席する先 トップの席に軍曹が防長らしく座っている ハイケルが沈黙すると マスターが言う
「国防軍レギスト駐屯地情報部主任 マスターグレイゼス中佐であります」
ハイケルがハッとして言う
「…っ …お、同じく 機動部隊隊長 ハイケル… ヴォール・アーヴァイン少佐であります」
2人がもう一度敬礼をする 軍曹が言う
「突然の呼び出しを すまないが 諸君を呼んだのは 他でもない 昨日の任務に関しての事だ」
ハイケルが呆気に取られ沈黙する横で マスターが言う
「はっ 昨日 我々は 万が一の事態へ備え アース・メイヴン・ハブロス総司令官を支援すべく 待機しておりました」
上層軍員Aが言う
「では そちらは ハブロス総司令官の指令であったと言う事か?」
ハイケルが反応する横でマスターが言う
「いえ 自分らが待機して居りました事は 自分らの総意であります しかし、総司令官には 我々の総意を受け入れると共に 帝国への配慮として 自分らには 可能な限り下がっている様にと 命じられました」
上層軍員Bが言う
「下がれとは命じられても 解散しろとは命じられなかった やはり不測の事態へ備えて 待機するように命じたと言う事か」
上層軍員Cが言う
「支援に待機していたのは レギストだった つまり 総司令官は 今回の事態を想定して レギストを控えさせていたと言う事になる」
ハイケルが沈黙する 上層軍員Aが言う
「我々が言わんとしている事が分かるかな?レギストの… 機動部隊隊長 ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐?」
ハイケルが上層軍員Aを見る マスターが言う
「我々 レギストが立てた作戦は2つ 1つは昨日の帝国との和平条約が 万が一決裂した際に置かれる アールスローン国の防衛 そして もう1つが その帝国国内から 総司令官を救出する為の作戦であります」
上層軍員Dが言う
「それは 諸君が独断にて行った作戦構築であろう 現に ハブロス総司令官は 事前に 君の作戦で言う所の1つ目の作戦 アールスローン国の防衛に対しては 国防軍マルック駐屯地及びリング駐屯地を 防衛体制へ移行させていた」
マスターが言う
「はっ しかしながら 我々は レギストでありますので それらの最前線において 防衛に就いておりました」
上層軍員Dが返す言葉を失って言う
「う… うむ…」
上層軍員Aが言う
「では 1つ目の作戦に関しては そうとして 今 重要なのは 2つ目の作戦の方だ」
ハイケルが視線を強めて思う
(2つ目の…?アールスローンの防衛に関する1つ目を軽視して 2つ目の方が重要とは…?)
マスターが言う
「はっ 2つ目の作戦 総司令官の救出に関しましては 我々の作戦には不備があったと 把握しております」
ハイケルが反応してマスターを見る 上層軍員たちが密かに口角を上げる 軍曹が僅かに反応する 上層軍員Aが言う
「不備があったと?」
マスターが言う
「はっ 従いまして アース・メイヴン・ハブロス総司令官が負傷された事は 今作戦内容を構築した 自分に非があると 自覚しております」
ハイケルが驚く 上層軍員たちが安堵の苦笑を漏らし 上層軍員Bが言う
「では この度の ハブロス総司令官の負傷は レギストの失態と言う事で やはり 変わりないという事になる」
ハイケルが表情をしかめて思う
(つまりは 国防軍トップ 総司令官の負傷を 誰の責任にするかの 責任の擦り付け合いか…?)
ハイケルがため息を吐いて言い掛ける
「…下ら」
上層軍員Aが言う
「では 防長閣下 この度の レギストの任務達成ランクはDランク 共に 最重要保護対象の負傷と言う事で 国防軍総司令官の負傷を公表する事になりますが 宜しいですか?」
軍曹が沈黙する ハイケルに近い席に居る上層軍員Fが溜息を吐いて言う
「…帝国と戦うと公表していたレギストが 国防軍トップの総司令官を守り切れなかったとは… 国防軍への信頼が失墜すると言うものを…」
上層軍員Fがハイケルを睨む ハイケルがその視線を受けてから僅かに視線を落として思う
(…そうか そう言う事か)
マスターが言う
「はっ この度の 国防軍総司令官の負傷は レギストの総指揮を預かった 自分の失態であり 断じて 機動部隊の戦力や 情報部員らの不足ではありません」
ハイケルが驚きマスターを見ようとすると 上層軍員Aが言う
「では どうだろうか?マスターの名を持つ者が指揮を取り その上においても負傷を負った… これであるのなら 少なくとも 国防軍レギストの名は救われるのではないだろうか?」
上層軍員Bが言う
「いや、他の相手なら兎も角 今回は帝国が相手となった事件だ 安易に マスターの名を出すと そのマスターたちを戻した 国防軍への信頼が損なわれる可能性もある」
上層軍員Cが表情を困らせて言う
「ふむ… 困ったものだ ハブロス総司令官が 政府の者たちと帝国へ向かうと仰った時から 万が一の事は考えていたが… まさか 政府の長官が無傷で ハブロス総司令官が重症を負われるとは このような事態は考えていなかった」
軍曹がハッと気付く ハイケルが視線をそらしていると 軍曹が防長らしく言う
「国防軍レギスト駐屯地情報部 並びに 機動部隊の この度の任務達成ランクはSランクと認定する」
皆が驚き軍曹を見る 軍曹が言う
「そして 国防軍総司令官アース・メイヴン・ハブロスの負傷は 包み隠さず公表せよ」
上層軍員Aが慌てて言う
「し、しかしっ 防長閣下!それでは 国防軍の威厳がっ!」
上層軍員Bが言う
「そうですっ 一国の防衛を司る国防軍が 政府の長が無事に戻った所へ 自分たちの総司令官を守る事も出来なかったとはっ!」
軍曹が言う
「いや、それで良いのだ 防長は攻長を守る者 その為に 国防軍総司令官は 政府長長官へ同行したのだ」
皆が驚く 軍曹が言う
「これが逆であってはならないのだ それは国防軍の… アールスローン戦記の信仰に背くと言うもの 我々は国防軍として その定めに従う」
上層軍員たちが呆気に取られて言う
「な… なるほど」 「確かに…」 「流石は 防長閣下」
軍曹が言う
「では その様に 急ぎ処理をしてくれ 既に1日の時間が経過している 公表は迅速に行ってこそ信頼を得るものなのだ」
上層軍員たちが立ち上がり敬礼して言う
「はっ!防長閣下!」
上層軍員たちが部屋を出て行く 部屋にハイケルとマスターと軍曹だけが残る ハイケルが立ち去った上層軍員たちへ顔を向けていると マスターが苦笑して言う
「いやぁ~ 流石は防長閣下~ 良い事言うじゃないか?アーヴィン君?」
ハイケルが驚いてマスターを見ると 軍曹がほっと苦笑して言う
「はっ!有難うございます マスター」
ハイケルが驚き軍曹を見ると 軍曹が苦笑して言う
「それに 申し訳ありませんでした 自分ではどうしたら良いものかと… まったく持って手に負えずに 困り果て… そこで ご迷惑とは分かっておりましたが お二方に お助けを頂けないものかと お呼び立てを致しまして…」
ハイケルが呆気に取られて言う
「軍曹…?」
軍曹が立ち上がり敬礼して言う
「はーっ!少佐ぁーっ!この度は お忙しい所を ご足労頂きまして 真に申し訳ありませんでしたぁ!少佐ぁー!」
ハイケルがホッとして言う
「いや 俺は構わないが…」
マスターが言う
「な~に!事は 国防軍トップ 総司令官の負傷への対処だ 任務に当たっていた部隊の隊長を呼びつけるのは当然だね!もちろん 総指揮を取っていた 俺も?」
ハイケルが言う
「だが、いくら総指揮を取っていたからとは言え 全ての責任を お前1人で負うなどとは 言わなくとも良かっただろう?奴らは 軍曹が意見するまでは その責任の擦り付け先を探していた 下手をすれば お前の名が公表され 処分を受ける言う可能性だってあった筈だ」
マスターが言う
「いんや?それはないね?少なくとも俺は信じていたんだ あのハブロス総司令官の弟であり 俺たちの仲間でもある アーヴィン君なら 俺を守ってくれるってね?」
ハイケルが驚いて言う
「なっ!?それでは…っ?」
軍曹が苦笑して言う
「は、はい… それまで自分は 何の知恵も浮かばなかったのでありますが マスターを守らねばと 必死に考えた所… 何とか無い知恵を搾り出す事に成功した様で… 本当に良かったであります …とは言え 発言していた自分は 本当に上手く行くものかと 内心は冷や冷やしていたのでありますが…」
軍曹が苦笑して照れる マスターが笑んで言う
「いやぁ 立派だったぜ?流石は 歴代国防軍長 ハブロス家の御曹司殿だ」
軍曹が言う
「はい お恥ずかしながら 自分は 今は亡き 祖父上や 総司令官としての発言を行う際の 兄貴の真似をしてみました!…であります!」
マスターが軽く笑って言う
「ああ、それで良い!”結構結構”!」
軍曹が気付いて言う
「あ、それは良く 祖父上が… 祖父上の口癖でありました」
マスターが言う
「そうだろ?なにせ そのラゼル元総司令官を ハブロス総司令官と呼ばれるお方が 良く仰るんだよ?」
軍曹が言う
「おお!なるほど!」
ハイケルが言う
「…口癖 か…」

【 病院 】

TVニュースが映っていてキャスターが言う
『…して 昨日帝国へ向かい その際の事故でお怪我を負われた 国防軍長 アース・メイヴン・ハブロス総司令官は 現在 国防軍の医療施設にて静養中との事ですが 近々 国防軍総司令官の任務へ復帰されるとの事が 本日 ヴォール・アーヴァイン・防長閣下より 公表がなされました 尚 この公表へ対し 政府長アロル・メイシュ・ミックワイヤー長官は 国防軍の迅速なる対処によって救出された事への感謝と共に 政府長長官の救出を優先し命令を下した 国防軍総司令官へ敬意を表したとの事です』
TV映像に 軍曹へ対してミックワイヤーが礼をしている姿が映っている アースが苦笑して言う
「なるほど マスターグレイゼス中佐の作戦か」
軍曹が衝撃を受けて言う
「い、いやっ!兄貴!?作戦と言うか… マスターは…」
マスターがTVへ向けていた顔を軍曹へ向けて言う
「それが悪いと言っている訳ではない 流石だと …私は褒めているつもりだ」
軍曹が言う
「う、うむ?褒めている?…うむ~ それなら 良いのやも知れぬが…」
ハイケルがアースを見てから言う
「…それで 容態は良いと聞いているが」
アースが言う
「ああ、骨折はしているが 内蔵までは損傷していない 急いで退院しようと思えば 出来なくも無いと言った所だ」
アースが右手で左のわき腹あたりを触れて言う
「痛みがあるお陰で 少し会話もし辛いが… 幸い 利き腕も無事だったからな」
ハイケルがアースの首に吊られている左腕のギブスを見てから アースの顔を見て言う
「その目は…?大丈夫なのか?」
アースが気付いて右手で左目を気にして言う
「うん?ああ… 網膜や眼球などに負傷は無いのだが 何故か視力が戻らない 医師の診断では 極度の失血によって 脳内で視力に関する異常が起きたのではないかとの見解だが …何にせよ あの時は 命を失うかと思って居たんだ 片目で済んだのなら 幸いと言える」
軍曹が表情を落とす ハイケルが言う
「最初から その覚悟でお前は帝国へ向かっていた」
アースが気付いてから苦笑して言う
「…ああ、そうだな?」
ハイケルが言う
「何故だ?」
アースが疑問する ハイケルが言う
「そこまでの危険を承知の上であったのなら もっと策を講じる事も出来た筈だ …お前なら」
アースが呆気に取られた後苦笑して言う
「それは…」
ハイケルが言う
「それは?」
アースが微笑して言う
「秘密だ」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「なっ!?」
アースが言う
「とは言え 結果として ”その必要”も無くなった …全ては作戦だったのだからな?」
ハイケルが疑問して言う
「さ… 作戦?」
アースが言う
「ああ、作戦だ… 私が危険を承知で 命を懸けた その事も 全ては作戦だった」
ハイケルが言う
「作戦とは 無事に帰還する事を目的として立てるものだ 命を懸ける作戦など… その様な作戦で 本当に勝利出来る戦いなどは無い」
アースが言う
「そうか… そうかもな?では これからは 本当に勝利が出来る作戦を立てるさ?」
アースが視線を向ける 視線の先に国防軍のブローチが置かれている ハイケルがその様子を見ている

【 車内 】

軍曹とハイケルが高級車の後部座席に座っている ハイケルが軍曹の様子を見た後に言う
「…良かったのか?」
軍曹が反応し疑問して言う
「は?…と 申されますと?」
ハイケルが言う
「折角見舞いに行ったというのに 大した話もせずに… 総司令官の任務を代行するに当たって 聞いておきたい事など もっと あったのではないのか?他にも… …私が居たからか?」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「え!?い、いえっ!そんなっ!少佐がいらしたからと言って 自分が何か言えないと言う様な事は 決して無いのであります!」
ハイケルが言う
「そうか… なら良いのだが… では?」
軍曹が言う
「はっ?え~ その~ 総司令官の任務に関しましては 正直 自分に代行は勤まらないと …それは 兄も分かっている事でありますので 本日のあの会議に関しては別でありますが 恐らく通常の業務に関しては 既に策を講じられているものと思われ… 従って 総司令官の任務に対して 自分が聞く必要はありませんでしたかと?」
ハイケルが言う
「そうなのか…?まぁ… …そうかもな」
軍曹が疑問して言う
「は?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「あっ!いや、何でもない…っ では そちらはそうとして …何か 家族として …兄弟としての話などは?」
軍曹が疑問して言う
「はっ?家族として… 兄弟としての… でありますか?そうですね… 特に これと言って…?」
ハイケルが疑問する 軍曹が首をかしげながら言う
「とりあえず 兄の命や体が無事であると言う事は 自分は昨日の内に知っておりましたので それ以上に これと言っては…?」
ハイケルが呆気に取られて言う
「…そうなのか?」
軍曹が一瞬疑問した後 ハッとして言う
「…?ハッ!あ!はいっ!それらの事はー 昨日の内に!失礼致しましたぁ 少佐ぁ!もしや 少佐への連絡は 行ってはおらなかったでありましょうかっ!?自分はてっきり 家の者がお伝えしているものかと!」
ハイケルが言う
「いや… それは 構わないが… …そんなものなのか?」
軍曹が疑問して言う
「は?」
ハイケルが顔をそらして言う
「家族… とは…?」
軍曹が疑問して言う
「はぇっ?…家族とは…?」
ハイケルが反応して言う
「いや… 何でもない」
軍曹が疑問した後に言う
「は… はぁ…?…そうでありますか?では~ 何か御座いましたら 何なりと!」
軍曹が微笑してからシートに身を静める ハイケルが沈黙する

【 国防軍レギスト駐屯地 休憩所 】

隊員たちがTVを見ている TVではニュースがやっていてキャスターが言う
『…して 昨日帝国へ向かい その際の事故でお怪我を負われた 国防軍長アース・メイヴン・ハブロス総司令官は 現在 国防軍の医療施設にて静養中との事ですが 近々 国防軍総司令官の任務へ復帰されるとの事が 本日 ヴォール・アーヴァイン・防長閣下より公表されました 尚 この公表へ対し…』
隊員Bが言う
「わー すっげー!政府の長官が 軍曹に お礼してるー!」
隊員Aが軽く笑って言う
「バイちゃん こう言う時は ”軍曹に” じゃなくて ”防長閣下に”ー」
隊員Bが言う
「えー?」
隊員Cが言う
「当たり前だろ?何で政府の長官が 国防軍の一兵士にお礼なんか言うんだよ?」
隊員Bが言う
「えー?けどさー?実際に戦って この人を助けたのって 少佐や俺たちじゃないー?」
隊員Cが言う
「政府のマスターにも 助けられたけどな?」
隊員Bが言う
「あー?そう言えばー?」
隊員Aが言う
「俺も驚いたよ まさか 政府に 本物のマスターが居るなんて …しかも 身体補佐能力のマスターだろ?」
隊員Bが疑問して言う
「身体補佐能力ー?」
隊員Aが言う
「ああ、マスターの名を持つ人は 皆 ナノマシーンって言う 超小型の機械を血中に持っていて そのお陰で 人の持つ能力を 何倍にもする事が出来るんだって」
隊員Bが呆気にとられて言う
「えー?それじゃー もしかして 中佐もー?」
隊員Aが言う
「マーガレット中佐 こと マスターグレイゼス中佐も ナノマシーンの保有者だ だから あんな凄いシステムを組んだり開発したり出来るんだよ」
隊員Bが感心して言う
「えー なんだー それじゃー 凄いのは中佐じゃなくて その 何とかマシーンって奴の方?」
隊員Aが反応して言う
「あー… まぁ… 言ってしまえば そういう事だろうな…?」
隊員Cが言う
「いや、ナノマシーンは ただ保有してれば 能力を引き出せるってモンじゃないんだ …むしろ そのナノマシーンを どれだけ使いこなす事が出来るかって事で 彼らは”マスター”って呼ばれるんだぜ?」
隊員Aが反応して隊員Cを見る 隊員Bが言う
「それじゃー… マスターはー ナノマシーンを マスターしてますー!って事ー?」
隊員Cが苦笑して言う
「ま、そう言う事だな?」
隊員Aが言う
「へぇ 詳しいんだな?サッちゃん?」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「サッちゃん言うなっ」
隊員Aが言う
「俺はてっきり ナノマシーンを持つ人は 皆 ”マスター”なんだと思ってたよ それに ナノマシーンさえあれば 凄い力を出せるんだってさ?」
隊員Cが言う
「確かに ナノマシーンを保有していると言う証明の為に マスターの名を名乗る事になるけど 使いこなせるかどうかは また 別なんだよ …って 事だから やっぱり 我らが国防軍レギスト駐屯地情報部の マスターグレイゼス中佐は 凄いって事さ!」
隊員Bが言う
「へぇ~!じゃー やっぱ スッゲー!」
隊員Cがうれしそうに笑う 隊員Aが苦笑して言う
「何だよ 今日はやけに 中佐の肩持つじゃないか?サキ?」
隊員Cが言う
「そりゃぁ そうさ 中佐のお陰で 俺の兄貴も国防軍に復帰したんだからな!」
隊員AとBが驚いて 隊員Bが言う
「え?サッちゃんのお兄さん 情報部に復帰したの?」
隊員Cが言う
「ああ!だから 前に言っただろ?俺の兄貴は マーガレット中佐が戻るなら 飛んで帰るって!」
隊員Bが疑問して言う
「言ったっけー?」
隊員Cが怒って言う
「おいっ!」
隊員Bが笑って言う
「なんて うそうそー!それで?それで?ってー そう言えばー 中佐はその何とかマシーン持ってるって事はさ?中佐も あの政府のマスターみたいに チョー足が速いのかな?まるで目の前から消えちゃうみたいにー?」
隊員Aが言う
「いや、そこが違う所なんだ」
隊員Bが言う
「えー?」
隊員Cが言う
「マスターは2種類居て 知識なんかに秀でるマスターを 知能補佐能力のマスターって言って 逆に すばやく動けたりする肉体的に秀でたマスターの事は 身体補佐能力のマスターって言うんだ だから 中佐は前者の 知能補佐能力のマスターだな」
隊員Bが言う
「へー?それじゃ 中佐は 足は速くないって事ー?」
隊員Cが言う
「そう言う事だ」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターが言う
「その様子なら 総司令官は割りと早くに復帰しそうだな?」
ハイケルが言う
「ああ 本人は 骨折だけで大した事ではないと言っていたが 総司令官の立場で 話しをするのに苦しい様では まだ先かもな…?」
マスターが言う
「いやぁ そうでもないさ?総司令官であって 隊長じゃないんだ 声を張って隊員へ指示を出す必要は無いんだから それこそ 最悪筆談でも良い訳だし」
ハイケルが言う
「そうか それもそうだな…」
マスターが言う
「総司令本部への根回しからして 相当重症かとも思ってたんだよ それこそ 総司令官の入れ替えでもしたって 業務が滞らないような根回しなんだから …ともすれば、もしかしたら 本人は…?」
ハイケルが言う
「自滅覚悟の作戦だったらしい」
マスターが苦笑して言う
「…なるほど」
ハイケルが言う
「その理由は 秘密だと言われたが」
マスターが軽く笑う ハイケルが沈黙してから言う
「…何か知っているな?マスターグレイゼス?」
マスターが衝撃を受け苦笑して言う
「総司令官が秘密だって言うんじゃ 口外は出来ないねぇ なんてったって俺たちは 国防軍に戻って来たマスターだからな?」
ハイケルが間を置いた後 顔をそらして言う
「…ふんっ …家族同等であっても秘密か」
マスターが疑問して言う
「うん?」
ハイケルが息を吐いて言う
「…まぁ 本物の家族であっても あーなんだ そんなものか」
マスターが疑問して言う
「あーなんだって?」
ハイケルが不満そうに言う
「…”秘密”だ」
マスターが苦笑して言う
「あっそ?」
ハイケルが沈黙する 部室のドアがノックされ マイクが言う
「はい?どうぞ?」
ラキンゼスが現れて言う
「失礼致します!」
マスターが顔を向けて言う
「お?」
国防軍の制服を着た隊員がマスターを見て微笑し敬礼して言う
「遅くなりまして申し訳ありません!マーガレット中佐!」
情報部員が喜んで言う
「ライム大尉!」
マイクが疑問して言う
「ライム大尉?」
マスターが微笑して言う
「なーに いつも通り 相手方の情報を集めて来てくれたんだろ?ライム大尉?」
ライム大尉が微笑して言う
「はっ!RTD420マシーナリーの装甲サンプルを手入し 更に RTD560マシーナリーの装甲サンプルも 微量ではありますが 入手に成功いたしました!」
マスターが微笑して言う
「相変わらず やってくれるね?その機敏さは 身体補佐能力のマスターも 顔負けなんじゃないのか?」
ライム大尉が微笑して言う
「いえ、彼らほどの素早さがあれば それこそ RTD560マシーナリーの装甲も 直接 入手が可能かとも思われますが… 生憎自分は」
マイクが資料をめくりながら言う
「え~と ライム大尉 ライム大尉…?そんな方居たかなぁ?」
ライム大尉がマスターの前に来ると マイクを見て言う
「あ、もしや マイク少佐では?」
マイクが疑問して言う
「え?あ、はい そうですが?」
ライム大尉が微笑して言う
「お噂は 伺っております マックス大尉の後 この情報部を立て直した 有能な主任であると」
マイクが衝撃を受け慌てて言う
「えっ!?私がっ!?」
マスターが言う
「へぇ~?」
マイクが衝撃を受け慌てて言う
「い、いえ…っ とんでもない!私はっ」
マスターが微笑して言う
「なーに この 無鉄砲な 悪魔の兵士 ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐を補佐しているんだ 胸を張りたまえ マイク君!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「…悪かったな」
マイクが呆気に取られた後微笑して言う
「はい!そうですね!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「ぐっ… どういう意味だっ?」
マスターがライム大尉へ向いて言う
「それはそうと ライム大尉 俺は復帰したとは言え ここの主任は 今まで通り マイク少佐だ だから 挨拶なら マイク少佐に」
マイクが呆気に取られる ライム大尉がマイクへ向き直って言う
「はっ そうでありましたか 失礼致しました では 改めまして…」
ライム大尉が敬礼して言う
「本日付で 再び 国防軍レギスト駐屯地情報部 部員となりました マスターラキンゼス大尉であります!マイク少佐!」
マイクが呆気に取られて言う
「マスター?では… さっきのは…?」
ハイケルが言う
「ライム大尉と言うのは ラキンゼスの… 偽名だ」
マスターが苦笑して言う
「せめて ニックネームって言ってくれよな?それに ライム大尉のニックネームは」
ラキンゼスが言う
「はい、自分のニックネームは 祖父のものを 引き継がせて頂いています」
ハイケルが驚いて言う
「…そうだったのか?うん?では… まさか!?」

【 ロンドスの工房 】

ザキルが呆気に取られて言う
「す… すっげ~…」
マスターが言う
「へぇ… そう来たか~ 流石だなぁ?まさか その定義をそっちへ持って来るとは 俺の完敗だ」
ラキンゼスが微笑して言う
「いえ 自分でも驚いてます 定義に関しては確かに知っていますが この組み方を思い付くなんて… やっぱり 俺の中にあるラキンゼスの力って感じで」
マスターが言う
「そんなに謙遜する事無いだろ?ナノマシーンは放っておいて動くってモンじゃない これほどの技術は 上手く使いこなせている証拠さ」
ラキンゼスが言う
「そうでしょうか しかし、確かに… いつもと違って 何と言うか …上手く使えている気がします!」
マスターが微笑して言う
「ああ、なら やっぱり 思っていた通り この工房の担当は マスターラキンゼスこと ライム大尉にバトンタッチだな?」
ザキルがハッとして言う
「ライム?…それじゃ もしかして!?」
ラキンゼスがザキルへ向いて言う
「俺も 爺さんから聞いてたよ アールスローン1の銃職人ロンドス殿と一緒に エルム少佐の求める銃を製造開発したって」
ザキルが呆気に取られる マスターが言う
「どうだ ラキンゼス?…引き継いでみるか?」
ラキンゼスが言う
「はい 是非ともっ!」
ザキルがマスターを見る マスターが微笑して頷く ザキルが頷くと ラキンゼスへ握手の手を差し出して言う
「どうか よろしくお願いします!マスターラキンゼス!…いえっ ライム大尉!」
ラキンゼスがザキルと握手して言う
「こちらこそ よろしく!アールスローン1の銃職人 ザキル殿!」
ザキルが一瞬驚いた後苦笑して言う
「え?あ… いえ、そんな…」
マスターがザキルを見て微笑する ザキルが気を取り直して言う
「でも… はい!アールスローン1の銃職人ロンドスの孫として その名に恥じないように 頑張ります!」
ラキンゼスが微笑して頷く ハイケルが言う
「…では 再入隊の挨拶をして早々に 国防軍レギスト駐屯地情報部からは 脱退か?」
マスターが言う
「うーん そうだなぁ…?」
ラキンゼスが表情を落とす ザキルが疑問する ラキンゼスが苦笑して言う
「中佐の居る情報部に戻れると 張り切っていたのですが… やっぱり 祖父から引き継いでいる血と ナノマシーン・ラキンゼスの意思には敵いません …弟には 謝っておきます」
ハイケルが言う
「弟?」

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員Bが言う
「えー!?サッちゃんのお兄さんが マスタぁー!?」
隊員Cが慌てて言う
「しーっ!声がでかいんだよ!バイスン隊員はっ!」
隊員Bが言う
「えー?だって~?それって チョーびっくりする所だしー?ねー?アッちゃん?」
隊員Aが言う
「あ、ああ… そこは バイちゃん並に 驚いて良い所だと 俺も思うけど…」
隊員Bが言う
「ほらほらー?」
隊員Aが言う
「にしても 本当に驚いたぜ… 思わず バイちゃん並に驚くのも忘れる位だ」
隊員Bが言う
「えー?それって 驚いてるのか驚いてないのか どっちー?アッちゃんー?」
隊員Aが言う
「それに そうならそうって もっと前に 教えてくれてたって良かっただろ?サキ?」
隊員Bが言う
「そうそう!だから 俺が今皆にー!」
隊員Cが慌てて言う
「だからっ そう 言いふらして良いモンじゃないんだって!」
隊員Bが言う
「えー?」

【 ロンドスの工房 】

ラキンゼスが言う
「弟は 元々俺がレギストの情報部に居るって事で そのナビを受けられる レギストの隊員になろうと 頑張っていたんです… けど それが叶ったと思った時に…」
ハイケルが言う
「国防軍 前総司令官アーム・レビット・シュレイガー総司令官による 国防軍からのマスターの排除…」
ラキンゼスが言う
「はい… 一時は俺も ナノマシーンの除去を行って 国防軍への残留を考えました しかし、その弟に止められたんです 俺の持つナノマシーン・ラキンゼスは 俺たちの家族も同然だろうって」
ハイケルが驚く マスターが微笑する ラキンゼスが苦笑して言う
「それに 中佐はもちろん 国防軍在籍だったマスターたちの殆どが 国防軍を脱退する事を選びました それで 俺も 目が覚めたって感じで」
マスターが頷く ラキンゼスが言う
「だから 俺が情報部に戻ったら 弟のナビを… 中佐がハイケル少佐のナビをするのと 同じくらい 徹底的にやってやろうって 兄弟で ハイケル少佐や中佐に負けない コンビになろうと話していたんです …ですが」
ハイケルが言う
「それなら 脱退はせずに 在籍していれば良い」
ラキンゼスが驚いて言う
「え…?」
ハイケルが言う
「こちらをメインにするとなれば 常時情報部の部室に控えている事は出来なくなるだろうが レギストの出動時には部室へ戻り そこで レギストの作戦に参加すれば良い 銃火器の製造を受け持った お前が居てくれると言うのであれば その武器を実戦で使用する我々も 心強い」
ラキンゼスが呆気に取られる マスターが言う
「うん 確かにそうだな?超高温プラズマを制御している銃火器は 超精密機械だ オマケにプログラムが変われば 俺だって 全てを把握する事は出来ない」
ハイケルが言う
「そもそも その銃火器は 国防軍が… 我々レギストが使う事を前提に製造開発している 従って お前が国防軍へ在籍していても 問題は無い筈だ」
ラキンゼスが呆気に取られた後 微笑して言う
「ハイケル少佐…」
マスターが微笑する ラキンゼスがマスターへ向くと マスターが頷いて言う
「ああ、国防軍長 防長閣下のご子息である ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐が言うんだ」
ハイケルが衝撃を受ける マスターが笑顔で言う
「きっと大丈夫だろう?」
ハイケルが言い辛そうに言う
「い… 一応 総司令官へは 私から 一言断っておく …恐らく …お前の方は 大丈夫だろう」
ラキンゼスが疑問して言う
「は?俺の方はって…?」
ハイケルが顔をそらして言う
「また… 俺が何をさせられるのかは 想像も出来ないが…」

【 ハブロス家 アースの部屋 寝室 】

アースが鏡を見ていて言う
「ただの骨折と強がるにしても この眼帯までしていては大怪我に見えないか?」
執事が苦笑して言う
「左様に御座いますね… それでは… こちらでは如何でしょう?」
執事がアースに黒い眼帯を付けると アースが苦笑して言う
「うん… 痛々しさは無いが …まるで 賊か… 何か他の …様にも 見えると思うのだが?」
執事が軽く笑って言う
「アース様には お似合いになると思うのですが」
アースが咳払いをして言う
「う、うん…っ それは どういう意味だ レミック?」
執事が微笑して言う
「エレキギターを ご用意致しましょうか?」
アースが言う
「国防軍総司令官として とても似合っていないと言う事は 良く分かった」
執事が言う
「では お色を変えてみると言うのでは 如何でしょう?」
アースが言う
「いや それでは 余計に目立つと言うものだろう?国防軍の制服もこの色だ だったら これで良い」
アースが眼帯を軽く前髪で隠す 執事が言う
「畏まりました では 制服のご用意を致しますので」
アースが言う
「ああ」
執事が席を外すと アースが軽く眼帯越しに左目を意識する 脳裏に 帝国で見た皇帝の姿が思い出される アースが視線を強めて言う
「…あれは やはり 夢では無かったのか…?」
ドアがノックされる アースが顔を向けると ドアの外からハイケルの声が聞こえる
「ハイケル… ヴォール・アーヴァイン少佐であります」
アースが左目に触れていた手を離して言う
「入れ」
ハイケルがドアを開けて言う
「はっ 入ります」
ハイケルが部屋へ入りドアの前で敬礼すると アースの顔を見て一瞬反応する アースが微笑して言う
「どうした 屋敷の中で 敬礼か?ハイケル?」
ハイケルが一瞬反応してから 気を取り直して言う
「…はっ 国防軍レギスト機動部隊隊長として ハブロス総司令官へ… お願いがあって 参りました」
アースが言う
「そうか 今は 総司令官の任務を アーヴァインへ委託している 私へ頼むより 今の内に そちらへ頼んだ方が優位だと思うが?」
ハイケルが一瞬間を置いてから 気を取り直して言う
「…はっ しかし 自分にとって 国防軍の総司令官は アース・メイヴン・ハブロス総司令官でありますので」
アースが一瞬驚いた後 苦笑して言う
「…そうか …それで?」
ハイケルが言う
「実は…」

アースが言う
「ああ もちろん構わない そちらの工房は予てより 国防軍の警備を就けている 更に 使用する銃火器は 全て 国防軍レギスト機動部隊にて使用している そうとなれば 今更 そこで働く者を 国防軍従軍の者と認めないと言う方が 可笑しな話だろう?」
ハイケルが言う
「そう… かも知れないが ロンドス殿の頃から あの工房で作られる銃火器の買取は 個人的に行っていると… 従って それは難しい事なのだろうと 俺は思っていたのだが…?」
アースが言う
「そちらは 名目上の話だ 現時点に置いても それらの銃火器の買取は お前の名の下に行われているが しかし それだけだ 一時とは言え マスターグレイゼス中佐も 国防軍の情報部とそちらの工房とを 行き来していたのだろう?」
ハイケルが言う
「あ、ああ…」
アースが言う
「そう言う事だ 今は 政府とも協力体制を強いている 本来であれば もう個人契約になど しなくとも良いのだが …そちらはそれで名残の様なものだ もし 銃職人のザキル殿が望むのであれば 彼でさえ 国防軍の従軍者としても構わない …だが そうとなれば 工房の名は変わるだろうがな?ハイケル・ヴォール・アーヴァイン?」
ハイケルが反応してから言う
「…そう言う事か」
アースが微笑する 執事が制服を持って来て言う
「アース様 そろそろ お時間となりますが」
アースが言う
「ああ、用件は済んだ」
執事が軽く礼をしてから部屋に入って来て アースの着替えを手伝う ハイケルが反応して言う
「国防軍の制服… これから 何処かへ向かうのか?」
アースが言う
「まずは政府本部へ向かい ミックワイヤー長官へ挨拶を済ませた後 公式会見に出席する」
執事がアースの服を脱がせると アースの体には重度な治療が施されている ハイケルが驚いた後言う
「やはりあの時の 俺の外傷見立てに間違いは無かった …損傷ランクはDランク 公式会見所か 挨拶なら あちらから見舞いに来てもらう程の重傷だ」
アースが苦笑して言う
「重傷な時ほど 隠すのは当然の事だろう?ハイケル少佐 …そもそも 私は 総司令官の任を アーヴァインへ譲るつもりで準備を進めていた お陰で 今ではそれが仇となり 私が再起不能なほどの重傷であると 噂がされているんだ 防長閣下の公表とミックワイヤー長官の誠意に答える為にも 今は可能な限り急ぎ 余計な噂を払拭する必要がある」
アースがベッドから立ち上がると 一瞬の後倒れそうになる 執事が支える ハイケルが驚いて言う
「おい…っ」
アースが執事に手を借りて 改めて立つと 苦笑して言う
「流石に 少し眩暈がするが …何とかなるだろう」
ハイケルが言う
「無茶だっ 途中で倒れるに決まっているっ 払拭する所か メディアの前で肯定する事になるぞ!?」
アースが言う
「心配は不要だ ハイケル少佐」
ハイケルがアースを見る アースが強く微笑して言う
「私は お前が認めた 国防軍総司令官だ そのお前たちの居る国防軍を守る事が 私の使命 マスターたちも戻った 今の国防軍を 私は守り抜いて見せる」
アースが歩いて部屋を出て行く 執事が続く ハイケルが呆気に取られて見送る

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

軍曹が叫ぶ
「通常訓練の1ー!開始ぃーっ!」
隊員たちが言う
「はっ!了解!軍曹!」
隊員たちが腕立てを始めながら話す
「おおー やっぱ 軍曹の号令は 気合が入るなっ!?」 「ああ!…けど、まぁ ゼクス隊員も悪くなかったけどな?」
軍曹が隊員Xへ向いて言う
「ゼクス隊員 話は聞いたのだ 自分が居ない間の号令役!実に ご苦労であった!」
隊員Xが敬礼して言う
「はっ!軍曹っ!及ばずながら 自分は精一杯 軍曹の代役を勤めさせて頂きましたっ!」
軍曹が言う
「良くやったのだっ!ゼクス隊員!しかし、これからは 自分が再び レギスト機動部隊の号令を受け持つのだ!」
隊員Xが言う
「はっ!宜しくお願い致しますっ!軍曹っ!」
軍曹が言う
「うむっ!安心して 任せよっ!」
隊員Xが言う
「はっ!軍曹!」
隊員Xが腕立てを開始する 軍曹がハイケルへ向き直って言う
「と、言う事でありまして 少佐ぁー!昨日は失礼を致しましたがっ 本日からは 再び自分がっ!」
ハイケルが沈黙してから言う
「…軍曹」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが間を置いて言う
「…いや、では ここは少し任せる 何かあれば 情報部へ」
軍曹が言う
「はっ!お任せ下さいっ!少佐ぁー!少佐が離れられている間の部隊の事は どうか自分へ御一任を!いってらっしゃいませーっ!少佐ぁー!」
ハイケルが立ち去る 軍曹が隊員たちへ向き直って言う
「よーし お前たち!自分はこれから腕立て700回を行うのだ!自分が終わるまでに 終了していない者は 更に…!」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マスターがTV映像をモニターを映しつつ別の作業を行っている ハイケルがやって来て TV映像に見入る マスターが気付き疑問してハイケルを見る TV映像からキャスターの声が聞こえる
『…へ向かい、既に ミックワイヤー長官への ご挨拶をされたとの事です それでは、これより 国防軍長アース・メイヴン・ハブロス総司令官による 先日の帝国への和平交渉報告 公式会見を お伝え致します』
ハイケルが集中する マスターが疑問しつつ TV映像へ向く

ハイケルがほっと息を吐く マスターが苦笑して言う
「なるほど…?それで お前さんが そんなに緊張して 映像に見入っていた訳か?」
ハイケルが一瞬呆気に取られた後 マスターへ向きながら言う
「俺は 緊張など…」
マスターがコーヒーカップを向けて言う
「ほら」
ハイケルが疑問する マスターが苦笑して言う
「喉が渇いてるんじゃないか?声が掠れてるぞ?」
ハイケルがコーヒーを受け取りつつ言う
「そんな事は…」
ハイケルがコーヒーを一口飲んで息を吐く マスターが苦笑してコーヒーを一口飲んでから言う
「元喫茶店のマスターを 舐めなさるなって?出来る事なら もう少し薄いコーヒーを淹れてやりたい所だったが コーヒーメイカーじゃ調整に限界があるからな?今は そいつで我慢してくれ」
ハイケルが呆気に取られた後 苦笑して言う
「確かに… 少し苦い」
マスターが軽く笑った後 映像を見て言う
「ふ~ん これが 損傷ランクDランクの 非戦闘員の姿ねぇ?」
マスターがPCを操作して 映像を確認する ハイケルが言う
「映像から見破られると思うか?」
マスターが言う
「いや… 恐らく 大丈夫だろう?上手いもんだ むやみやたらに強がる訳でも無く たまに損傷を知られている左腕を庇うしぐさを見せる… お前の話が本当なら 痛むのは 言うまでも無く重度の損傷を負っている左のあばらだろう あれだけ話していれば 息を吸うだけでも痛む筈だが その様子はまったく見えない 知らない奴には まず分からないだろうな?」
ハイケルが言う
「俺も同意見だ それに立ち上がるだけでも眩暈を起こした者が 30メートル以上を平気で歩いて見せるとは」
マスターが言う
「ああ 大したもんだ… けどそこは…」
ハイケルが言う
「分かるか?」
マスターが言う
「いや、違和感はない だが そいつは隣で話をして見せている このラミリツ攻長のお陰かもしれない」
ハイケルが映像を見る 映像にはラミリツとアースが語らいながら歩いている様子が映っている マスターが言う
「これが まったく 会話も何もなく 本人が一人だけで 歩いていたとしたら… 誤魔化せなかったかもしれないが 会話をしているお陰で 上体が動いても 合図地を打っているだけに見えるし 表情の変化も 会話の内容が分からない事もあって違和感が無い… もしかしたら ラミリツ攻長は総司令官に協力したのかもな?」
ハイケルが言う
「ラミリツ攻長が…?」
マスターが苦笑して言う
「ハブロス総司令官に助けられたと言われている ミックワイヤー長官ならまだしも 攻長閣下がこの役をやるとは思わないだろう?…作戦は成功と言った所か?」
ハイケルが言う
「作戦… か…」
ハイケルが情報部の窓から外を見る 外ではレギスト機動部隊が通常訓練の3を行っている

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

軍曹が叫ぶ
「よーしそれでは!自分は少佐へ 通常訓練の完了をお知らせして…!」
隊員Bが気付いて言う
「あ!少佐ぁー!」
軍曹が隊員Bの言動に振り返り ハイケルがやって来る姿を確認すると 敬礼して言う
「少佐ぁー!通常訓練の1~3!完了いたしましたぁー!少佐ぁー!」
ハイケルが到着して言う
「了解 では…」
ハイケルが隊員たちを見渡す 隊員たちが仲間内で顔を見合わせてからハイケルを見る ハイケルが隊員Bを見て言う
「バイスン隊員」
隊員Bが反応して言う
「はーっ!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「現行の お前たちに足りないモノは 何だ?答えろ」
隊員たちが驚く 隊員Bが敬礼して言う
「はーっ!少佐ぁーっ!俺たちには 少佐について行く スピードが足りないと思うでありますー 少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「スピードか…」
ハイケルが考える 軍曹と隊員たちが呆気に取られて顔を見合わせてから 軍曹がハイケルへ言う
「しょ、少佐ぁ…?」
隊員Bが言う
「だって~ この前の帝国での戦いの時もー 少佐はぴゅーんって 行っちゃったけどー 俺たちは もしあれについて行けって言われたら 無理だと思うしー?ねー?アッちゃん?」
隊員Aが衝撃を受けてから慌てて言う
「そ、それはそうだけど 少佐について行ける奴なんて… それこそ 身体補佐能力のマスター位なんじゃないのか?」
隊員Bが言う
「え~?それじゃ ラミリツ攻長も その身体何とかのマスターって 事ー?」
ハイケルが反応する 隊員Aが困って言う
「え?いや… それは無いだろう?政府にはマスターを置かないって決まりがあるんだし… その政府の代表の攻長閣下が マスターなんて事は」
隊員Cが言う
「そもそも マスターだったら アールスローンの名前は名乗らない つまり 名前からして ラミリツ攻長は マスターじゃないって事だ」
隊員Bが言う
「じゃー やっぱ スピードだと思うでありまーす 少佐ぁー?」
皆がハイケルを見る ハイケルが言う
「…そうか だが私は スピードに関しては 上げようと思って訓練をした事は無いんだ… だとしたら その方法は…?」
ラミリツが言う
「やっぱ 柔軟じゃない?」
皆が驚く 軍曹が驚いて叫ぶ
「ラ、ラミリツ攻長ぉーっ!?」


続く
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