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外伝9話

アールスローン戦記外伝 アールスローン真書 『マスターたちの反乱』

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【 マスターの店 】

ハイケルが立ち上がって言う
「もう良いっ …ともかく 今は 警機の持つ超高温プラズマ製造システムが必要なんだ 技術を盗めないとなれば 買い取るか 提供を願い出るかだが どちらにしろ 必要なのは金だろう 軍曹に… いや、額を考えれば ここは直接 ハブロス家当主である 総司令官へ願い出るしかない」
ハイケルが歩き出す マスターが笑んで言う
「ちゃんと可愛く おねだりするんだぞー?ハイケルー?」
ハイケルが振り向かずに言う
「出来るかっ」
ハイケルが店を出て行く マスターが軽く笑って言う
「っはは 相変わらず素直で面白なぁ あいつは… まるで…」
マスターがテレビを付けミュートにすると マスターの脳裏に声が聞こえる
『マイルズ地区 Q21TT2で見掛けたぞ 古いアパートへ入って行った』 『ありがとう 警察へ伝えて 懸賞金を頂く』 『逮捕されなくとも 有力情報は1割ゲット 家賃は助かるな?』 『良かった 仲間の家賃が助かる』 『我らマスターの仲間が助かる』
マスターが苦笑して言う
「まったく 平和なマスターたちも居るもんだ こうしている間にも 帝国では…」
マスターの脳裏に声が聞こえる
『いつかは この仲間たちで 陛下を助けに行こう』 『助けに行こう』 『陛下を…』 『マスターの仲間たちは 陛下をお助けするべし』 『強い力を持つ 国防軍は まだか?』 『国防軍へは… まだ戻れないか?』 『まだ 分からない』 『誰か情報を 国防軍の情報を』
マスターが目を細めて言う
「…そうだよな その皆だって 本当は…」
マスターが軽く息を吐いて言う
「いつかこの皆に 国防軍へ戻ろう って… 言わせてやるからな?グレイゼス?」
マスターが苦笑してテレビから視線を離す 店のドアが開き来客鈴が鳴る マスターが顔を向け気付いて言う
「いらっしゃいま …ん?どうしたー?ハイケルー?」
ハイケルが店内へ向かって言う
「あの公園で… お前に聞き忘れていた事を思い出した」

【 イリンゼスの部屋 外 】

パトカーが数台集まっていて拡声器で言われる
『指名手配犯 シェイム・トルゥース 周囲は完全に包囲されている 大人しく投降しなさい!繰り返す 指名手配犯 シェイム・トルゥース』

【 イリンゼスの部屋 】

シェイムが窓の外を伺って言う
「まさか 本当に警察から逃れる為に …しかも この様な形で ナノマシーンを使う日が来るなんて事は 考えもしませんでしたっ …それもこれもっ!」
シェイムが胸を掴んで苛立ちを抑える メルフェスが苦笑して言う
「シェイム殿 どうか… シュレイゼスと仲良くして下さいね?その… 私も何と言いますか…?」
イリンゼスが言う
「おいおい こんな所で喧嘩なんかしてると 本当に力を貸してもらえないぜ?」

【 マスターの店 】

マリがコーヒーを置いて言う
「美味しい」
マスターが微笑して言う
「それは良かった …釈放されたって聞いて その後どうしてるか心配していたんだけど あんまり 深入りするのも悪いかと思ってね?それで…」
マリが言う
「私 攻長閣下にお力添えを頂いて メルフェス・ラドム・カルメスとの結婚は無効にしてもらえたの お陰で警察からも釈放してもらえて …そうしたら グレイ君から連絡を受けたって エレンさんが迎えに来てくれて びっくりしちゃった」
マスターが苦笑して言う
「あぁ~ その事なんだが… ごめんね?俺、変な事言っちゃって… エレンさんは無事だったのに」
マリが微笑して言う
「ううんっ エレンさんは 本当に 後一歩の所で命を失う所だったって… でも 愛する人に呼んでもらえたから 意識を取り戻せたって言ってた」
マスターが一瞬疑問した後苦笑して言う
「愛する人に…?そ、そうなんだ?そうだね… きっとそれは 凄い力になるかもね?俺もその… きっと そうだと思うよ?」
マリがハッとする マスターが苦笑して言う
「マスターの仲間から聞いたんだけど マリちゃん…  エレンさんと一緒に 国防軍のハブロス総司令官に マスターシュレイゼスやマスターブレイゼスの話しを しに行ったって?」
マリが苦笑して言う
「あ、うん… でも 私はその… ただ一緒に居ただけで エレンさんが全部 説明を…」
マスターが苦笑して言う
「そっか…  けど そのマリちゃんが一緒に行ってくれるって事だけでも エレンさんは心強かったと思うよ?何しろ 相手は国防軍の総司令官様だからね そこへ政府の話しを持って行くんだから… 1人で行くよりも 2人の方が間違いなく力になると思うよ」
マリが言う
「1人よりも2人… うん 私もそう思う!だから… 最初は心配だったのメルフェス様の事が…」
マスターが一瞬驚く マリがハッとして言う
「あっ そのっ このメルフェス様は!マスターシュレイゼス様の事でっ!偽者の あの酷い人とは違ってっ!」
マスターが苦笑して言う
「ああ、大丈夫 以前マリちゃんから聞いた 今、収容所に居るメルフェス・ラドム・カルメスは マスターブレイゼスの洗脳を受けてしまった 被害者だって事は理解してる それに… その事は もうマスターの仲間たちも知ってるんだ」
マリが言う
「そ、そうなんだ?そうよね…?良かった…」
マスターが言う
「良かった?」
マリが微笑して言う
「うん… だって メルフェス様はマスターなんだから 最初から1人なんかじゃ なかったんだよね?それに… メルフェス様にはシェイム様が居らっしゃるのだから とっくに1人なんかじゃ…」
マスターが言う
「シェイム様… シェイム・トルゥース…」
マスターが視線を向ける 視線の先テレビがミュートで付けられている

【 イリンゼスの部屋 】

警官1が言う
「うん どうやらこの部屋は大丈夫な様だ」
警官2が言う
「だが この部屋に入って行ったと言う 目撃情報があるのだが …貴方はご存じないか?指名手配犯シェイム・トルゥースを」
イリンゼスが言う
「あぁ その… そいつとは友達だったんだ で… 俺も まさかあいつが指名手配犯になっているなんて知らなかったもんだからさ?昨日は飯を食わせてやったんだけど …今朝ニュース見てびっくりしてよ?問い詰めたら 逃げ出しちまって…」
警官2が言う
「では、奴の行き先に心当たりは?」
イリンゼスが言う
「分かんないなぁ~ 悪い」
警官1が言う
「そうか では もしまた現れた時には 警察へ連絡を」
イリンゼスが言う
「ああ、分かったよ」
警官たちが言う
「では もう このアパートには居ないな?」 「付近の警備を強化させよう」
警官たちが立ち去ろうとする メルフェスがイリンゼスの下へ来て言う
「イリンゼス シェ… いや、シュレイゼスの下へ向かってもらえないか?どうやら 検問を抜けるのに 少々問題が…」
イリンゼスがメルフェスへ向いて言う
「うん?検問を?」
警官たちが振り向き メルフェスを見て衝撃を受けて言う
「なぁあ!?メ、メルフェス・ラドム・カルメス!?」
メルフェスがハッと衝撃を受ける 警官2が言う
「ば、馬鹿なっ!?奴は収容してあるはず!?」
メルフェスが慌てて言う
「あ、いえっ!わ、私はフレイゼスと申しましてっ!よ、よくその… メルフェス・ラドム・カルメスに …似ていると言われますっ は、はは…っ」
警官1が言う
「しょ、署に確認をっ!」
メルフェスが苦笑して言う
「どうぞ… 確認をなさって下さい?きっと ”本物のメルフェス・ラドム・カルメス”が しっかりと 収容されておられるかと…?」
イリンゼスが苦笑して言う
「”本物の” …ねぇ?」
メルフェスが怒って言う
「イリンゼスっ!」

【 マスターの店 】

マスターが言う
「とは言え 残念ながら メルフェス・ラドム・カルメス… マスターシュレイゼスの釈放は有り得ないよ …例え 操られて行った事だとしても 彼が行った事で失われた命があるんだ それは… 残念だけど 今、指名手配にされているシェイム・トルゥースも同じで…」
マリが言う
「あの…っ ね?グレイ君… 私、あの拘留所の面会室では… 言えなかった事があるのだけど」
マスターが言う
「うん?何だい?」
マリが言う
「その… 国防軍の味方であるグレイ君に こんな事言うのは失礼かもしれない… でも…っ 私っ どうしても…!知っていてもらいたいのっ メルフェス様やシェイム様の事 …彼らは 今 戦っているから!…マスターブレイゼスとっ」
マスターが呆気に取られて言う
「マリちゃん…?」
マリが言う
「グレイ君 今、収容所に居るのは メルフェス様の偽者… それは マスターブレイゼスに洗脳されていると言う意味だけではなくて …あの人は 本当に違う人なの!あの人の本当の名前は ユラ・ロイム・ライデリア …以前 政府長をやっていた ユラ・ロイム・攻長 …その人なのっ」
マスターが驚いて言う
「え?…それじゃっ 今、収容されている彼は マスターシュレイゼスではない?」
マリが頷いて言う
「マスターシュレイゼス様は 今もシェイム様と一緒に居ると思う きっと… それで 2人で マスターブレイゼスを退治しようとしているのっ だから… 助けてあげて?グレイ君?グレイ君もマスターでしょ?マスターシュレイゼスを助けてあげて?例え政府と国防軍… 味方する組織が違っても マスターは皆 仲間なんだよねっ!?」
マスターが言う
「…詳しい話を 聞かせてもらえるかな?」

【 検問所 手前 】

シェイムが身を隠しつつ周囲を伺っている イリンゼスが現れて言う
「よっと…?どうしたー 後輩?この程度の検問が抜けられないなんて 身体補佐能力のマスターの後輩としても 失格だぜぇ?」
シェイムがイリンゼスへ向いて言う
「そうは言いましても先輩っ 私の持つシュレイゼスは どうやら まったく私を助けて下さるお気持ちが無い様で」
イリンゼスが疑問して言う
「えぇ?」
シェイムが不満げに言う
「あのアパートから ここまで逃げて来るのに 一体どれだけ苦労をしたか…っ 私の持つ警察長としての知識が無ければ とてもここまでは来られませんでしたよっ!?」
イリンゼスが疑問して言う
「あらぁ~?可笑しいなぁ?そんな事は無い筈なんだが?」
2人の付けているイヤホンから メルフェスの声がする
『シェイム殿 イリンゼス 聞こえますか?』
シェイムが言う
「はい、聞こえます フレイゼス殿」
イリンゼスが言う
「ああ 聞こえてるぜ?」
メルフェスが言う
『カルンゼスの屋敷に付けられていた 国防軍の警備と言う名の監視の目が解除されたとの事ですので 2人ともカルンゼスの屋敷へ向かって下さい』
シェイムが言う
「はい 有難う御座います では そちらへ向かいます!」
イリンゼスが言う
「とは言ってもな?カルンゼスの屋敷だって この検問を抜けねーと?」
シェイムが検問を見て言う
「何か良い方法は?先輩?」
イリンゼスが言う
「良い方法も何も ナノマシーンの力を使って ひょいひょいっと…?」
シェイムが衝撃を受けて慌てて言う
「その ”ひょいひょい”が出来ないので 困っているのですよっ 先輩っ!」
イリンゼスが困って言う
「そう言われてもなぁ~?ひょいひょいが出来るのが 身体補佐能力のマスターなんだから 今更 その方法を聞かれても 困るぜぇ…?」
メルフェスの声がする
『…あ、それから 今 カルンゼスから マスターたちが再び 助け合いをしようと話し合っているようなので 彼らの声に耳を傾けるようにと』
シェイムが衝撃を受けて言う
「た、助け合いとは まさかっ!?」
カルンゼスが言う
『シェイム殿 今の貴方の居場所が 彼らの声に乗せられている 早く その場所を離れる事だ さもないと 再び懸賞金にされかねん』
シェイムが衝撃を受けて言う
「またですかっ!?シュレイゼスっ こんな時に 貴方は何処で 何をしているのですっ!?さぁ 今度こそ釈明をっ!」
イリンゼスがイヤホンに意識を向けると脳裏に声が聞こえて来る
『もう1人 家賃が危険なマスターが居るらしい』 『では 助けなければ 仲間だから』 『マスターは 仲間のマスターを 助けるべし』
シェイムが慌てて言う
「その前に 私を助けて下さいよっ 皆さんマスターでしょう!?私も仲間なのでしょう!?」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『現在のシェイム・トルゥースの居場所は マイルズ地区東22の検問手前… 喫茶店マリーシア前の角だ 検問が抜けられなくて困っているらしい』
シェイムが衝撃を受け 顔を上げると視線の先に喫茶店マリーシアの看板がある シェイムが衝撃を受けて言う
「どっ!?何処かで 私を見ているマスターが!?…って?」
シェイムが振り返り イリンゼスを見る イリンゼスが苦笑して言う
「あ~ 悪い?俺のイリンゼスが…」
シェイムが怒って言う
「貴方ですかぁっ!」
パトカーのサイレンが聞こえる シェイムが衝撃を受け逃げ出す イリンゼスが苦笑して言う
「おっかしいなぁ?俺のイリンゼスは シェイムがマスターの仲間だって 分かってる筈なんだが…?」
イリンゼスが消える パトカーが走り去る 喫茶店の中にマリが居て マスターへ話している

【 マスターの店 】

マスターが言う
「それじゃ ユラ・ロイム・ライデリアは ハブロス総司令官と結託して…っ!?」
マリが言う
「でも ユラ・ロイム・ライデリアは 弟のルイル・エリーム・ライデリアと一緒に ハブロス総司令官を騙していたの… だから 私は 誰が本当に悪い人なのか 分からなくなっちゃって… でも ユラ・ロイム・ライデリアは 最初から怖い人ではあったけど… 途中から もっと恐ろしい人に変わってしまった… それが エレンさんがハブロス総司令官にお伝えした 政府の力であるネックセンサーって言う機械のせいだって… それで…っ」
マスターが言う
「ネックセンサー… 確かマスターたちの話の中にも出て来た ネックセンサーには気を付けろと… あれに触れると マスターの名を持つ者は操られる可能性があると…」
マリが言う
「エレンさんが調べた所 ネックセンサーはマスターでは無い人にも 力を与えるんだって… 帝国のマシーナリーって機械を動かすことが出来るって… そのせいで 今 国防軍の駐屯地は襲われてしまっているんだって…」
マスターが考えて言う
「うん… なるほど… …何となくだけど 大方分かって来た」
マリが困ってから言う
「ご、ごめんなさい 私が言うとちゃんと説明が出来なくて…っ どれも聞いた事も無い様な事ばかりだから 私 全て理解する事が出来なくて…っ」
マスターが苦笑して言う
「ああ、いや それはしょうがないよ?組織の内情は複雑で 元々簡単なものでは…」
マリが言う
「だけどね?そんな私にも分かる事があるのっ」
マスターがマリを見る マリがマスターを見て言う
「マスターシュレイゼス様とシェイム様は 絶対に悪い人なんかじゃないっ だから今の状態は… 間違ってるっ」
マリがミュートにされているテレビへ視線を向ける テレビではシェイムの話題が出ている様子

【 マイルズ地区 某所 】

シェイムが息を切らせつつ立ち止まり周囲を見渡して言う
「シュレイゼス… これで 私に どうしろと…っ?」
シェイムの周囲を警官たちが包囲している 警官が銃を向けて言う
「シェイム・トルゥース!観念しろ!周囲は包囲されている!」
シェイムが言う
「ご親切に仰って下さらなくても しっかりと見えていますよ…っ」
警官たちがシェイムへの距離を縮めて行く シェイムの脳裏に声が聞こえる
『マスターの仲間たち 教えてくれ シェイム・トルゥースは…』
シェイムが悔しそうに言う
「私ならっ お陰さまで 警察に捕まりそうですよっ どうしてくれるのです!?」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『我らマスターの仲間か?』
シェイムが驚き呆気に取られる シェイムの脳裏に声が聞こえる
『彼は仲間だ 俺は知っている』 『俺も知っている 彼は仲間だ』
シェイムが無意識にイヤホンを押さえる シェイムの指先から声が聞こえる
『シェイム・トルゥースは 我らの仲間だ 彼はマスターだ』
シェイムがハッとして言う
「シュレイゼス…」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『指名手配犯シェイム・トルゥースは マスターか?』 『では助けなければ マスターは仲間だ』 『助けよう 仲間だから』
警官が言う
「今だ!捕らえろー!」
警官たちがシェイムに襲い掛かる シェイムが視線を強めると その場から忽然と消える 警官たちがぶつかり合って悲鳴を上げる
「ぎゃーっ!」 「ど、どうなっている!?」 「消えたぞ!?シェイム・トルゥースが消えた!?」 「何っ!?どうなっている!?指名手配犯シェイム・トルゥースは 何処へ行った!?」
警官たちが周囲を見渡す

【 マスターの店 】

マスターがテレビに触れていた手を離して言う
「なるほど… 彼はマスターだったのか…」
マリが疑問して言う
「え…?」
マスターがマリへ振り返って言う
「大丈夫!指名手配犯シェイム・トルゥースは マスターの皆が助けてくれるよ?それから、メルフェス・ラドム・カルメスの名を使い 悪事を行っていたユラ・ロイム・ライデリアは収容されているから 本物の彼… あ~ マスターシュレイゼスも これなら 大丈夫だ」
マリが微笑して言う
「そうなんだ?良かった…」
マスターが微笑して言う
「うん、良かった… マスターブレイゼスのようなマスターが もう1人現れてしまったのかって 俺もマスターの皆も心配して居たんだ… それに… マリちゃんの事を助けてくれた マスターシュレイゼスが あんな悪い奴じゃ無かったって事が分かって 俺も安心したからね?」
マリがマスターを見て微笑して言う
「うん!マスターシュレイゼスは 私の大切な…」
マスターが呆気に取られて言う
「た… 大切な…?」
マスターが表情を落とす マリが言おうとすると 電話が鳴る マリとマスターが一瞬驚いてから マスターが苦笑して言う
「…あぁ、ごめん?」
マリが微笑して顔を左右に振って言う
「ううんっ」
マスターが気を取り直して電話に出て言う
「はいっ こちら 喫茶店マリーシアで…」
マスターがハッと目を見開いた後 表情を苦しませ言いながら座り込む
「う…っ あぁ…っ」
マリが一瞬呆気に取られてから言う
「…グレイ君?」
マスターが受話器を手放し両手で頭を抱えて腰を落とす マリが慌ててカウンター内へ向かいながら呼ぶ
「グレイ君っ!?どうしたのっ!?グレイ君っ!?」
マスターが自分の下へ向かって来た マリへ言う
「来るなっ」
マリが驚いて立ち止まって言う
「…えっ?」
マスターが苦しそうに言う
「逃げて… マリちゃん… 早く…っ あ…っ あぁあーっ」
マスターが頭を押さえて苦しがる マリが困って言う
「で、でもっ…?」
マリがマスターの下へ駆け寄る マスターが苦しみから解放され マリへ顔を上げて言う
「…久しぶりだな マリーニ?」
マリがハッとして言う
「っ!?ま、まさか…っ?」
マスターが悪微笑して言う
「私が分かるか?」
マリが驚いたまま言う
「マスター… ブレイゼス…っ!?」
マスターが苦笑して言う
「そうだ 分かってくれたのなら好都合 ならば私の恐ろしさも分かっているだろう?さあ…  私に従え  アールスローンの民 …マスターシュレイゼスは何処に居る?奴の居場所を教えろ」
マリが身を引こうとすると マスターがマリの手を掴む マリがハッとしてマスターを見ると 気を取り直し意を決して言う
「わ…  私は知りませんっ もし知っていたとしてもっ 貴方には教えませんっ!」
マスターが苦笑して言う
「ほぅ…?」
マリが言う
「それにっ 私の大切な人返して下さいっ!」
マリがマスターへ向いて言う
「グレイ君っ!?グレイ君っ!?」
マスターが笑んで言う
「クックックック… 無駄だ この身体にあるナノマシーンは 私が支配した この身は私の身体も同然」
マスターがカウンター内にあったナイフを  マリへ突きつけて言う
「さぁ 教えろ… 居場所を知らぬのなら 連絡をしろ ここへ来て欲しいと言うのだ さもなければ…」
マスターがマリへ突きつけたナイフを更に近付ける マスターの手が震えている マスターが疑問して言う
「うん…?」
マリがその手を見てハッとして思い出す

【 回想 】

カルメス邸の庭にマリが居る 屋敷からシェイムが出て行きメルフェスが見送っている マリが微笑すると メルフェスがマリへ向く マリがメルフェスへ向おうとすると石を踏み転びそうになる マリが悲鳴を上げ掛ける
『きゃっ!?』
メルフェスが言う
『おっと…っ』
マリが顔を上げると メルフェスがマリの身体を抱き抑えていて言う
『大丈夫ですか?マリーニ先生?』
マリが苦笑して言う
『ご、ごめんなさい 私、また メルフェス様にお手間を…っ』
メルフェスがマリの体勢を立て直させると軽く笑って言う
『私の手間などは構いませんが 私の目の届かない所では お気を付け下さいね?お怪我をされては大変だ』
マリが苦笑して言う
『はい、有難う御座います もっと 気を付けます 私… 本当に いつも メルフェス様にお助け頂いてばかりで』
メルフェスが微笑して言う
『っはは… そう言って頂けるのは光栄なのですが… 実は私自身は ただ身体を貸しているだけで 実際にマリーニ先生をお助けして居るのは シュレイゼスです』
マリが言う
『え?』
メルフェスが言う
『私の身体にあるナノマシーンが マリーニ先生を助けようと 私の身体を動かしているのですよ 私自身では とても?この距離をお助けに向かうには 間に合いませんからね?』
マリが自分たちの居る場所と玄関を見て納得し 微笑して言う
『では… 私は メルフェス様と シュレイゼスの お二方に お礼を言います!』
メルフェスが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
『そうですか それは有難う御座います』
マリが一瞬呆気に取られてから慌てて言う
『え?え~と…?お礼を言わなければいけないのは 私ですし?その私にメルフェス様が…?』
メルフェスが軽く笑って言う
『はい ナノマシーンにお礼を言って下さった方は マリーニ先生で2人目です …ちなみに1人目はシェイム殿でした』
マリが一瞬玄関を見てから微笑してメルフェスを見る メルフェスが言う
『あ、そうです マリーニ先生?私も そのシェイム殿に 教えて頂いた事なのですが… マリーニ先生にも念の為 お知らせをしておきますね?』
マリが疑問して言う
『はい?何でしょうか?』
メルフェスがマリへ向いて言う
『もし いつか… マリーニ先生の王子様の …マスターグレイゼスのナノマシーンが 何者かに操られるような事があった時には 彼のナノマシーンへ呼び掛けてあげて下さい』
マリが呆気に取られて言う
『え…?ナノマシーンへ?』
メルフェスが言う
『ナノマシーンは自身への呼び掛けにより 洗脳を解かれるそうです 私も 昔 大切な友人に そのようにして助けて頂きました』
マリが呆気に取られてから視線を落として言う
『分かりました… でも 私は… 王子様とは… もう…』
メルフェスが一度視線を逸らしてから気を取り直して言う
『…失礼しました そうでしたね?…では マリーニ先生?気分を変えるためにも 今夜 一緒にお酒を飲みに行きませんか?』
マリが驚いて言う
『え?わ、私と…っ!?』

【 回想終了 】

マリが言う
「ナノマシーンへ呼び掛け…っ!」
マスターが言う
「さぁ 何をして居る?マスターシュレイゼスへ連絡をしろ さもなくばっ」
マリがマスターへ向いて言う
「グレイゼス!」
マスターが驚く マリが必死に呼び掛ける
「グレイゼス!お願い 彼を助けてっ!グレイゼス!」
マスターのナイフを持つ手が強く震える マスターが驚いて言う
「ば、馬鹿なっ!?」
マリが言う
「グレイゼス!そうよっ 彼を助けて 私の王子様をっ マスターグレイゼスを 助けてあげてっ!グレイゼス!」
マスターがナイフを落とし頭を押さえて言う
「う…っ うぅ… 何故だっ!?同じマスターである…っ 私の仲間ではないのかっ!?」
マリが言う
「グレイゼス!」
マスターが苦しんで言う
「うあぁあーっ!」
マリがマスターの腕を掴んで言う
「グレイゼス!グレイ君っ 戻って来てっ お願いっ」
マスターが言う
「マリ… ちゃん…っ」
マスターが苦しそうに言う
「くぅ… おのれぇ…っ」
マリが言う
「グレイゼス!もう少しよっ!グレイ君を助けてっ!」
マスターが手を伸ばし ぶら下がって居る受話器を掴む マスターが言う
「やめろ…っ」
マスターが受話器のコードを引き千切る マスターが言う
「うっ…」
マスターが脱力して 線の切れた受話器を落とす マリがハッとして言う
「グレイ君っ!?グレイ君っ!?」
マリがマスターを抱きしめて言う
「お願い戻って来て…っ 私の… 王子様…っ」
マスターが言う
「マリ… ちゃん…」
マリがマスターを見て言う
「グレイ君っ!?」
マスターが表情を落として言う
「ごめん… マリちゃん… 俺…」
マリがホッと微笑して言う
「良かった…っ」
マリがマスターを見る マスターが困惑して言う
「ナノマシーンを 操られた… これが… マスターの脅威…っ」
マリが気付いて視線を向けると マスターの手が震えて居る マリがハッとしてマスターを見る マスターが悔やんで言う
「自分の意思では何も出来なかった…っ 大切な人を 傷付ける所だったと言うのに…っ」
マリが言う
「グレイ君?」
マスターが悲しそうに言う
「ごめん マリちゃん… 俺は… マリちゃんを守れない  それ所か…っ だから もう 俺の近くには来ない方が…っ」
マリが言う
「そんな事無いっ!」
マスターが驚いてマリを見る マリが言う
「私が守るからっ グレイ君の事は私がっ …だって グレイ君は 私の大切な人だからっ」
マスターが呆気に取られて言う
「え?でも… それは マスターシュレイゼスでは…?」
マリが微笑して言う
「マスターシュレイゼスは 私の大切な人… いつも私を心配してくれる 私の… お父さんみたいな人 …そして、マスターグレイゼスも 私の大切な人…  いつも私に優しくしてくれる 私の… 大好きな人 …だから お願い…っ」
マリがマスターを抱きしめる マスターが驚く マリが言う
「大丈夫 グレイゼスは 貴方を守ってくれる… 怖くなんか無い …怖い時は 私が呼んであげるから そうすれば 大丈夫だから…っ」
マスターが呆気に取られて言う
「マリちゃん…」
マリが言う
「…側に居たいの ずっと… 貴方の側に… …居させて?」

【 カルンゼスの屋敷 】

シェイムが苦笑して言う
「とても 不思議な感覚でした 私自身が逃がれようと思うのでもなく まるで… そう マスターの仲間たちが 私を助けてくれたような…?」
メルフェスが微笑して言う
「そうですね?ナノマシーンを使う時は 実にその様な感覚ですね?」
シェイムが言う
「何と言いますか… ハッキリ言ってしまうと …意外と使い辛い物ですね?私はてっきり… 何かを行おうと意識を向けると それを ナノマシーンが補佐してくれるものと 思っていたのですが?」
イリンゼスが言う
「そんな感覚で 使える力だったら マスターの名を持つ連中は きっと 悪い連中ばっかりになっちまうぜ?」
シェイムが疑問して言う
「え?そうですか?何かを成し遂げようと必死になる人の補佐すると言う事で 良いと思うのですが?」
カルンゼスが言う
「その”何か”が 悪事であったらどうする?」
シェイムがハッとする メルフェスが微笑して言う
「人は弱い者ですから… 他者より優れた力を持つと 欲望に飲まれてしまうものです …政府には よくあった話ではありませんか?シェイム殿?」
シェイムが言う
「え、ええ… なるほど…?」
カルンゼスが軽く笑って言う
「はっはっは 強い力を持つ以前から 正義に突き進む事しか考えて来なかった 親兵攻長には 分からんのではないか?」
メルフェスが言う
「それもそうでしたね?」
シェイムが言う
「いえ 私はラミリツへ嘘を吐いてばかり居ましたので… そういた意味でも正義と言うには 少々 後ろめたくあります」
イリンゼスが言う
「それじゃ 嘘を吐かない事が 正義なのかい?」
シェイムが一瞬呆気に取られた後困って言う
「え…?え~と… そう…ですかねぇ?改めてそう聞かれると分からなくなって来ました…」
メルフェスが軽く笑って言う
「っはは… そうですね 中々難しい所ですが …だからこそ 貴方は捜し求めている …今まで使って来た嘘は そのための手段です あまり ご自分を責めないで下さいね?シェイム殿」
シェイムが微笑して言う
「…はい 有難う御座います フレイゼス殿」
メルフェスが微笑する イリンゼスが言う
「まぁ シェイムもこれで晴れて ナノマシーンやそれを使うマスターたちに受け入れられた訳だから 少なくとも俺は これでシェイムのやる事は正義だって信じられるぜ?」
シェイムが呆気に取られて言う
「では… 今までは?」
イリンゼスが言う
「今までは… まぁ俺のイリンゼスが シェイムを助けたいって言うからさぁ?だから…」
カルンゼスが言う
「では マスターイリンゼスは イリンゼスに操られていたと言う事か?」
イリンゼスが衝撃を受けて言う
「なっ!?そんな言い方止めてくれよ?俺は操られてたんじゃ無くて… そのぉ… 身体を貸してただけって言うかぁ… もちろん!?俺自身の考えで動いてたんだから 操られてって言う訳じゃ… ほら?よく 言うだろ?何かに手を貸すってさぁ!?」
シェイムが苦笑して言う
「では 私に手を貸すと言う感覚で 身体ごと貸して下さったと?」
イリンゼスが言う
「そうそう!そう言う事だ!流石後輩!」
メルフェスが微笑して言う
「マスターの仲間は連帯感の塊と言われますから良くある話です」
カルンゼスが軽く笑って言う
「とは言え そう言った事に ひょいひょいと身体ごと貸し出すマスターは 身体補佐能力のマスター特有と言った所だな?知能補佐能力のマスターでは 中々居らんよ」
イリンゼスが言う
「まぁ その辺はやっぱな?身体補佐能力のマスター特有の ひょいひょいって身軽さかな?」
シェイムが軽く笑って言う
「なるほど ”ひょいひょい”とは そう言う事でしたか」
イリンゼスが衝撃を受け言う
「いや そうじゃねぇけどっ!?」
シェイムが軽く笑って言う
「冗談ですよ先輩?それに… 本当に有難う御座います」
イリンゼスが呆気に取られる シェイムがカルンゼスへ向いて言う
「もちろん マスターカルンゼスも大切な病院のお仕事をお休みさせてしまってまで ご尽力を頂いて 本当に」
カルンゼスが微笑して言う
「なぁに?事は このアールスローン帝国に関わる大事だ それに協力出来るのであれば こちらこそ本望 何も気に留めてくれなくて良い」
イリンゼスが言う
「そう言うこった!俺たちマスターは皆仲間だろ!シェイム!」
メルフェスが言う
「イリンゼス… そう言う時にはマスターシュレイゼスと呼ばなければ?」
イリンゼスが気付いて言う
「あ、そうだったな?はははっ 折角決めてやろうと思ったのに 失敗失敗!」
シェイムが微笑してから言う
「とは言え 私はまだまだマスターと呼ばれるほどシュレイゼスを使いこなせてはいませんが」
イリンゼスが言う
「じゃぁ まだまだ”後輩”だな?俺なんて~ イリンゼスの事は俺自身以上に使えてるって感じだぜ!?これこそ正にマスター!」
メルフェスが疑問して言う
「うん?自分自身以上に使えてる …とは?」
イリンゼスが微笑していると無意識に手がテレビに置かれる シェイムの脳裏に声が聞こえる
『おーい マスターの仲間たち 俺の今月の家賃が危険なんだ なんかー 良い情報無いか?』
シェイムが衝撃を受けて言う
「なっ!?今の声は …タイミングと言い まさか…?」
メルフェスが疑問する イリンゼスが疑問した後 考えて言う
「うん?あ、そう言やぁ?俺、今月のバイト シェイムに付き合ってたせいで全部休んじまったから 給料入らないか?それじゃ~ 今月の家賃払う金も無いな?忘れてたぜ!」
シェイムが衝撃を受けて言う
「そ、それは 忘れていて良いものではっ!?」
シェイムの脳裏に声が聞こえて来る
『また1人 家賃が危険なマスターが居るらしい』 『では 助けなければ 仲間だから』 『今月は多いな』 『マスターだから』 『マスターは 仲間のマスターを 助けるべし』
シェイムが苦笑して言う
「なるほど… そう言う事ですか」
メルフェスが言う
「身体補佐能力のマスターは ひょいひょいと手や身体を貸し出して下さるので その分は皆で助け合うと言う事で?…ちなみにシェイム殿も身体補佐能力のマスターである上に 今は家無しですので いずれは…」
シェイムが衝撃を受ける 

【 ハブロス家 アースの部屋 】

アースが電話をしていて言う
「ああ 今は少し時間が取られなくてな… ファーストの怪我の具合はどうだ?…そうか … …すまなかった…」
アースが表情を落とす 受話器からエレナの声がする
『アース様のせいでは無いと エルム少佐も仰っていました …アース様は最後まで ファーストを守ろうとしていたと』
アースが言う
「だが、結果はこうなってしまった 今更 言える事は何も無いが… 私に出来る事は何であろうとするつもりだ それがハブロス家の為 そして… 何よりも 国防軍の為だ」
エレナが言う
『何よりも 国防軍の?…アース様は いつも ハブロス家を 第一に考えると仰っていたのでは?』
アースが言う
「確かに 私自身はそうしたいと思ってはいる だが… やはりそれは許されない事だ ハブロス家は歴代国防軍長の家 国防軍を守る為のハブロス家だ だから私は…」

【 病院 】

ファーストがベビーベッドで寝て居る エレナがファーストに握られている自分の指を眺めつつ言う
「…アース様は?」
受話器からアースが言う
『…すまない エレナ』
エレナが言う
「え?」
アースが言う
『いや… …君は昔 可愛い女の子が欲しいと言っていたな?その君に 私はハブロス家には立派な男子が必要だと言ってしまったが… もし君が良ければ 今度は… 私も女の子を授かれると良いと思う …もちろん 男子であっても良いのだが?』
エレナが呆気に取られた後苦笑して言う
「そうですね?私も… この子の為にも 次は女の子で… その次に また男の子で… その子は…」
アースが言う
『…その子は?』
エレナが困ってから気を取り直して言う

【 ハブロス家 アースの部屋 】

受話器からエレナの声がする
『…2番目の男の子ですから 名前は セカンド でしょうか?』
アースが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「いや?2番は駄目だ 1番で無ければっ」
エレナが微笑して言う
『まぁ…?アース様らしいですね?うふふっ』
アースが苦笑して言う
「そうだろう…?それにハブロス家の次男であるなら ハブロス家歴代のファーストネームである ヴォールの名を使わなければならない 従って… そうだな?今度は ミドルネームを考えてくれる 祖父上も居ないから そちらを君が考えると良いだろう?」
エレナが言う
『分かりました… では そちらも考えながら …女の子の名前も?』
アースが苦笑して言う
「ああ… そうだな?」
執事が部屋に入って来て礼をする アースが言う
「では また 連絡をする」
アースが通話を切ると 執事が言う
「お寛ぎの所 申し訳御座いません」
アースが言う
「構わない どうした?」
執事が言う
「はい 先ほど アーヴァイン様よりご連絡を頂き 本日よりハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐を こちらのお屋敷へお招きしたいとの事で」
アースが言う
「…ああ、そうか?彼は既にアーヴァインの養子とされて居る そうとあれば当然 好きにさせて良い それに、彼も あのエルム少佐と同じ 悪魔の兵士だ …そうとなれば ハブロス家や国防軍へ悪い影響を与える事は無いだろう」
執事が言う
「畏まりました それと 只今 ご本人様がハブロス家ご当主様のアース様と お話をなさりたいと お見えなのですが 如何致しましょう?」
アースが言う
「うん?そうか 随分と… 悪魔の兵士にしては律儀だな?いや しかし ”お話”か?挨拶に来た訳では無いという事は やはり彼と同じか?…まぁ良い 通せ」
執事が言う
「はい それでは…」
執事がドアを開け促すと ハイケルが入って来てアースを見てから 一度視線を泳がせ 気を取り直し敬礼して言う
「ハイケル… ヴォール・アーヴァイン少佐です 本日より こちらにお世話になります… よ… 宜しく お願いします…」
ハイケルが視線を逸らす アースが呆気に取られてからプッと噴き出し笑い出す ハイケルが呆気に取られる アースが言う
「っははははっ 面白い これが初世代の悪魔の兵士か?」
ハイケルが衝撃を受け言う
「わ… 悪かったな …どうせ 私は ”真に不甲斐なく申し訳ない” 初世代の悪魔の兵士だが…っ それでもっ!」
アースが言う
「ふむ?私の確認した範囲によれば 君は様々な点において エルム少佐に劣るそうだが?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「グッ…」
アースが言う
「だが性格は悪くはない様だ」
ハイケルが疑問して言う
「性格?」
アースが言う
「ああ、悪魔の兵士は2世代居り 両者の性格は異なるとの事だった エルム少佐は… 本当に 言う事を聞かない我侭な悪魔の兵士で 扱うには難があったが…  どうやら君は 君の守るべきアーヴァインだけではなく その他の者に対する礼節や上下関係なども分かって居るようだ」
ハイケルが言う
「あ、ああ… 俺は奴とは違い 少なくとも… このハブロス家の当主や 国防軍総司令官の命令に背くような事は無い …予定だ」
アースが言う
「つまり その両者である 私の命令に殉じると言う事だな?」
ハイケルが言う
「その …予定だ」
アースが言う
「予定か… では ここぞと言う所で 変更をされる可能性もあると?」
ハイケルが衝撃を受けてから言う
「…何度でも蘇るなら 決定しても良いが… 今の所は そちらも含め 予定の為 未定だ… …だ、だがっ 可能な限りは… 尽くす …予定だ」
アースが考えてから言う
「ふむ… では少々試してみるか?」
ハイケルが疑問して言う
「試す?」
アースが言う
「私の命令にどれだけ従うのかとな?何しろ君は我々の世代の悪魔の兵士だ そのスペックは国防軍総司令官として しっかりと確認をしておかなければならない」
ハイケルが言う
「な… なるほど それは… 確かに そうかもしれないが…?」
アースが考えて言う
「…とは言え いざ何かをさせようと思うと 意外と考え付かないものだな?う~ん…」
ハイケルが言う
「俺は悪魔の兵士ではあるが 初世代の俺に出来る事は 常人と変わらない …強いて言うのであれば 一度聞いた言葉は全て覚えるレコーダー機能と 同じく 一度見たモノを再現する能力はある」
アースが言う
「それはエルム少佐も同じだった」
ハイケルが顔を背けて言う
「ぐっ… だが… 生憎 そのエルム少佐とは違い 俺は筋力は常人と変わらない為 その点は劣る …そしてデコイを操る力も無いが …他は」
アースが思い付いて言う
「ああ、では こう言うのはどうだ?」
ハイケルが言う
「何だ?」
アースが言う
「君が今言った事の他 国防軍の兵士として行える事を試しても意味が無い そして 私にとって エルム少佐と異なる君に対し 重要な事は どれだけ君が従順であるか と言う事だ」
ハイケルが言う
「従順であるか…?そうなのか?…では?」
アースが言う
「ああ、では 命令だ ハイケル少佐 これから我らハブロス家の家族と話をする場合においては 通常とは異なる言葉を用いて話す事だ」
ハイケルが疑問して言う
「通常とは異なる言葉…  とは?…それは?」
アースが独り言を言う
「例えば… そうだな…?ナックキラー風に メタル言葉で話すか?…いや それはちょっと詰まらない …それに この屋敷内では 相応しくない…  さらには、また昔のようにアーヴィンに悪い影響を与えると言う事もあるし…」
ハイケルが疑問して言う
「そ、総司令官?」
アースがハイケルを見ながら言う
「う~ん…第一 この風体で あの様な言葉で話しかけられたら 私は国防軍総司令官として 思わず殴ってしまいそうだ」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「そ、それは どう言う意味だ?」
アースが言う
「…とは言え 可笑しな格好を強要して 客人に見られでもしたら ハブロス家の汚点となる… では…?」
ハイケルが言う
「それらは総合して 一体 どう言う意味だ?先ほどの言葉と含めて 説明を…っ」
アースが気付いて言う
「…よしっ 決めたぞ!」
ハイケルが言う
「いや、その前に…」
アースが言う
「ハイケル少佐っ!命令だ!」
ハイケルがハッとして敬礼して言う
「はっ 総司令官!」
アースが言う
「これから私が教える言葉を ハブロス家の家族として話す場合に限り 私やアーヴィンへ使用する事だ 良いか?言うぞ?」
ハイケルが一瞬疑問した後言う
「あ、ああ… その位の事であるなら?…問題ない …了解だ」

【 車中 】

軍曹が運転しつつ独り言を言う
「駐屯地に戻られないと思っておったら マスターの喫茶店から 直接ハブロス家へ向かわれていたとは… 少佐はやはり あの銃の元となる力を 早急に手に入れようとお考えなのだろう …そうとも知らず 自分は のんきに駐屯地で隊員たちと共に訓練をしながら お待ちしてたとは… 少佐に対しても 防長としての心構えとしても申し開きが立たぬのだ …こうなれば 自分も遅馳せながらも 兄貴へ しっかりと お頼みをせねば!…うむ!」
軍曹の運転する車がハブロス家へ入って行く

【 ハブロス家 アースの部屋 】

アースが言う
「それから 頼み事をする時の抑揚は 特に大切だ 先ほどのでは まだまだ駄目だな 君は レコーダー機能へ追加して 発声の強弱を付けられると言う エルム少佐より優れた点がある  そうとなれば そちらは より一層強調するべきだろう?」
ハイケルが頬を染めつつ言う
「エルム少佐より優れて…?そ、そうか…?では… いや?しかし総司令官?」
アースが言う
「”総司令官”では無いだろう?ここは 屋敷の中 家族として話をする場所だ… そう言う時には 何と呼ぶのか先ほど教えたばかりだろう?忘れた訳ではあるまい?」
ハイケルが言う
「う…っ で、では…」
アースが笑んで言う
「ああ」
執事が現れて礼をして言う
「お寛ぎの所 失礼致します アース様」
アースが言う
「うん どうした?」
執事が言う
「只今 アーヴァイン様が お戻りになられました アース様へ お話があるとの事で こちらへいらっしゃるとの事ですが」
アースが言う
「ああ、構わないが?」
執事が言う
「丁度 お夕食の方も支度が整ったとの事ですが 如何致しましょう?」
アースが言う
「うん そうだな?では 3人で食事にするか」
執事が言う
「畏まりました」
ハイケルが言う
「いや、その前にっ!?…さっさと終らせる予定だった挨拶への あまりの異常事態に重要な話を忘れていたのだが… 総司令官?」
アースが言う
「総司令官?」
ハイケルが衝撃を受け慌てて言う
「こ、この話は ”総司令官”へ話したい事だっ だから…っ」
アースが言う
「ふん… では 聞こうか?ハイケル少佐?」
ハイケルが言う
「ああ… 今朝 軍曹から 過去、帝国へ向かった その時の記録と言う戦闘記録レコーダーを聞かせてもらった そこで話題に出ていた銃 PM70と言う銃なのだが そちらに…」

【 ハブロス家 通路 】

軍曹が歩いていて 執事が連れ従っている 軍曹が言う
「そうか 分かったのだ では3人で食事を… あ~ しかし自分はその前に一度 少佐に会って様子を伺いたいのだ 屋敷へ来てみたは良いが もしや少佐のご希望に沿わなかったら… と言う事もあるであろう?」
執事が言う
「畏まりました では 少々お時間を置く可能性もあると言う事で用意をさせて置きますので どうぞ ごゆっくり お越し下さい」
軍曹が言う
「うむ 気を使わせてすまん」
執事が微笑して言う
「いえ 新しいご家族様がお屋敷にいらしたと言う事で 私どもも嬉しく思っております 本日はその最初の日と言う事ですので どうぞハイケル様のご気分の宜しい様にと」
軍曹が言う
「うむ!そうして貰えると助かるのだ いつもいつも心遣いを感謝するのだ!レミック!」
執事が微笑して言う
「勿体無いお言葉に御座います アーヴァイン様」
執事がドアをノックする 軍曹が言う
「兄貴 話があるのだが」
アースの声が聞こえる
「ああ、入れ」

【 ハブロス家 アースの部屋 】

軍曹がドアを開ける アースが言う
「お帰り アーヴィン 丁度良かった」
軍曹が疑問する アースが言う
「お前の息子が 私を尋ねて来ていた所だ」
ハイケルが衝撃を受け小声で言う
「む、息子…?つまり…っ」
ハイケルがアースを見る アースが悪微笑する 軍曹が疑問してふと横を見て驚いて言う
「のぉおっ!?少佐ぁーっ!?」
ハイケルが顔を背けて言う
「お… お帰りなさいませ… お父様…っ」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが羞恥に堪えている アースが笑って言う
「っはははっ エルム少佐と違って 初世代の悪魔の兵士は素直で可愛いな アーヴィン?」
軍曹が衝撃を受け慌ててアースへ言う
「あ、兄貴っ!少佐に 女子の挨拶を教えるのは止めて欲しいのであるっ!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?」

【 カルンゼスの家 】

シェイムがイヤホンへ手を当てて集中している メルフェスが言う
「シェイム殿…?」
シェイムがハッとしてメルフェスへ向く メルフェスが苦笑して言う
「あまり 根を詰められない方が」
シェイムが苦笑して言う
「あ、はい… しかし…」
イリンゼスが風呂上りな様子でやって来て言う
「聞こえる様になると面白いだろ?俺も初めて 仲間たちの声が聞こえる様になった時は 面白くて 一晩中聞いてたぜ?」
シェイムが苦笑して言う
「そう… ですね?確かに… 面白いと思える話題の時もありますが …先ほど マスターブレイゼスが マスターの仲間を操ったと言う話題が出たもので…」
メルフェスが驚いて言う
「マスターブレイゼスが マスターの仲間を…っ?」
シェイムが言う
「はい、それで その話を元に マスターたちの間で今まで意見が分かれていた マスターブレイゼスを仲間とするか しないかの意見が大きく動き始めたのです …ともすれば このままではマスターブレイゼスを倒す事を目的として マスターたちが国防軍へ戻ると言う可能性もありますかと…」
メルフェスが考えて言う
「そうですか… それはマスターの仲間たちも 自分たちの仲間であった マスターブレイゼスへのケジメとして 必要とされてしまう事なのかもしれませんが …出来れば その理由でマスターたちを国防軍へ戻す形にはしたくは無いですね?」
イリンゼスが言う
「うん?そうなのか?」
メルフェスが言う
「ああ、それでは マスターたちが自分たちの利害の為に 国防軍を利用する形となる それでは… マスターたちが国防軍へ力を貸す理由が 以前と同じになってしまうんだ」
イリンゼスが言う
「その、マスターたちが国防軍へ力を貸す以前の理由ってのは?」
シェイムが言う
「私も知らなかった事なのですが 先ほど その事をシュレイゼスが伝えていました マスターたちが 現在のハブロス総司令官のそれ以前の国防軍総司令官 …アーム・レビット・シュレイガー総司令官のへ力を貸していた理由が 過去 マスターブレイゼスを取り押さえる為に 国防軍の力を借りた事が由来であったと」
イリンゼスが言う
「え?そうだったのか?」
メルフェスが言う
「はい、そうです …ですから経過はどうあれ その過去の理由から逃れ 現在国防軍から離れたマスターたちが再び国防軍へ戻るとしたら… 出来れば その過去とは違う形で もっと以前の ヴォール・アーケスト・ハブロス総司令官の頃の様に 本当にマスターたちが国防軍を自分たちの仲間として力を貸していた その形で戻られる事が一番だと思うのですが…」
イリンゼスがテレビを付ける シェイムが言う
「そうですね 私も… 貸し借りの上に成り立つ協力体制と言うものは …あまり強い力とはならないと思います」
メルフェスが言う
「はい…」
イリンゼスが言う
「…うん?けどなぁ… これがもう一度でも続く様なら俺やイリンゼスだって 黙ってはいられないぜ?」
メルフェスが言う
「これが とは?」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『マスターシュレイゼスへ警告をしておいてくれ マスターブレイゼスは彼の居場所を探ろうとしていた 彼を呼び出そうとしていた』
シェイムが驚いて目を見開く 脳裏に声が聞こえる
『それは危険だ』 『マスターの仲間が危険だ』 『マスターシュレイゼスが危険だ』 『マスターブレイゼスは マスターの仲間を操った』
シェイムが言う
「マスターブレイゼスが マスターシュレイゼスを!?…私を探していると?」
メルフェスが言う
「シェイム殿をですか?それとも マスターシュレイゼスを?」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『マスターシュレイゼスを守ろう 彼は 我々マスターの仲間だ』 『守ろう 仲間だから』
シェイムが言う
「…どうなのでしょう?私が マスター"シュレイゼス"であると言う事は マスターの仲間たちには 知られていない筈ですが」
メルフェスが言う
「マスターの仲間たちは何と?」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『では マスターブレイゼスは?』 『奴は マスターの我々の敵になったのか?』 『再び敵になったのなら… 我々で処理をしないと…』
シェイムが言う
「彼らは… マスターブレイゼスが 敵になったと マスターたちで処理をしようと…」
メルフェスが表情を強めて言う
「まずいですね… このままでは それが再び国防軍への復帰の理由にされてしまう」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『マスターは 皆 我々の仲間だから』 『処理は我々マスターが…』 『では どうやって?やはり…?』
シェイムが言う
「シュレイゼス!もう一度 マスターの仲間たちへ呼び掛けて下さいっ マスターブレイゼスへの処置は 我々が行うので待って欲しいと!」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『マスターシュレイゼス 聞いているなら 俺の下に来てくれ 直接 話をしたい』
シェイムが呆気に取られて言う
「話を…?私と…?」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『マスターの皆 もう少しだけ待ってくれ 俺は国防軍に詳しいマスターだ 俺がマスターシュレイゼスと話をする それまで待ってくれ』
シェイムが無意識にイヤホンを押さえると シェイムがハッとする 脳裏に声が聞こえる
『マスターグレイゼス 俺に力を貸して欲しい 俺は政府に詳しいマスターだ マスターブレイゼスを… 奴を追っている』
シェイムが驚く メルフェスがシェイムを見上げて言う
「シェイム殿?」
シェイムがメルフェスへ向き 微笑して言う
「マスターシュレイゼスに 力を貸して下さると言う マスターに お会いして来ます」
メルフェスが一瞬呆気に取られてから微笑して言う
「はい」

【 マスターの店 】

来客鈴が鳴る マスターが顔を向けて言う
「いらっしゃいませ」
シェイムがサングラスを外して言う
「初めまして マスターグレイゼス… この度のご協力を感謝します」
マスターが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「…なるほど?貴方が継承していらしたとは… 初めまして!親兵攻長シェイム・トルゥース… 容疑者殿?」
シェイムが衝撃を受けて言う
「うっ… 痛い所を突いてきますね?」
マスターが笑って言う
「プククッ… 何しろ こっちは知能補佐能力のマスターなもので?」
シェイムが苦笑して言う
「なるほど… 性質は知っている気がします」

【 王立中央メイス病院 】

カルンゼスがくしゃみをして言う
「ハックシュンッ!…ん?誰か 私の噂でもしてるのかの?」
患者が疑問する

【 マスターの店 】

店の外に準備中の札が掛かっている

シェイムの前にコーヒーが置かれる マスターが言う
「一応 喫茶店だからな?」
シェイムが微笑して言う
「有難う御座います …そう言えば いつかこちらのコーヒーを一緒に頂きに行こうと 話していた事を思い出しました」
マスターが一瞬疑問して言う
「うん?それは… もしかしてだが 以前マスターシュレイゼス殿とって事か?」
マスターが自分のコーヒーを注ぐ シェイムが言う
「ええ …現在収容中のメルフェス・ラドム・カルメス …の …本物であったお方です」
マスターが言う
「ああ、話を聞いて驚いたね?まさか うちの国防軍総司令官様が そんな事に手を染められていたとは」
マスターがコーヒーを飲む シェイムが苦笑して言う
「しかし、そちらは もう過ぎた話ですから …頂きますね?」
シェイムがコーヒーを飲む マスターが言う
「そいつは… つまりアンタの指名手配容疑を晴らすつもりは無いって事かい?」
シェイムが言う
「はい 親兵防長は親兵攻長が お守りをしなくてはいけませんから… アールスローン戦記において 守りの兵士と攻撃の兵士は 互いに守り合う者でしょう?」
マスターが言う
「ああ… 確かに?」
シェイムが言う
「アールスローン信書では 親兵防長は親兵攻長が戦いに向かっている間 アールスローンの王女とアールスローンの地を守る事が勤めです 親兵攻長の身は反逆の兵士が守ってくれますから… 今で言うのなら それは貴方の事でしょうか?」
マスターが苦笑して言う
「俺は 国防軍に反逆する気は無いけどな?」
シェイムが言う
「以前には一度 反逆をなさった事がお有りかと?」
マスターが言う
「あら?バレてたの?」
シェイムが言う
「国防軍にマスターたちが居た当時 最も実力があったのが 国防軍レギスト駐屯地の情報部… そして そちらの主任が貴方でした …そうとなれば 以前のあの時 国防軍総司令官様へ力を貸される可能性としては十分であったかと?」
マスターが言う
「まぁ 厳密に言うなら あの時俺が力を貸したのは… 総司令官様じゃぁなくて 防長閣下の方だった訳だけどな?」
シェイムが言う
「なるほど… では今回は?」
マスターが言う
「今はもう 政府も国防軍も無いだろ?」
シェイムが言う
「そうですね では… やはり マスターの仲間として …マスターブレイゼスを 捕らえる為に?」
マスターが言う
「いんや?」
シェイムが疑問して言う
「え?」
マスターが言う
「今回は… 俺たちのお姫様の為だ」
シェイムが疑問して言う
「お姫様… ですか?皇帝や女帝陛下ならまだしも?」
マスターが店の奥へ顔を向ける シェイムが疑問して視線の先へ向くと マリが出て来て微笑して言う
「良かった… シェイム様 ご無事だったのですね?」
シェイムが呆気に取られて言う
「貴女はっ フレイゼス殿のっ!…っ!」
マスターが疑問して言う
「フレイゼス殿?」
マスターがマリへ向く マリが呆気に取られた状態で顔を左右に振る シェイムが苦笑して言う
「あぁ、失礼しました フレイゼス殿は私にシュレイゼスを与えて下さったお方です …今の私にとっては 2人目の父上と言った所でしょうか?…いや 3人目かな?」
マスターが言う
「…て事は」
シェイムが微笑して言う
「マスターシュレイゼスの名は 私がナノマシーンと共に継承しました ですので 以前のマスターシュレイゼスは 現在はフレイゼスと名乗られて居ます 私がナノマシーンを継承させて頂いた その お返しにと お贈りした名前です」
マスターが微笑して言う
「へぇ?なるほど」
マリが微笑する

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

秘書が言う
「…と その他 各駐屯地情報部からも この異常とも取られるハッキング攻撃に 何らかの対策を取られないかとの依頼が入っております… このままでは現在のデータベース防衛も 近い内に限界に達するとの報告です」
アースが言う
「そうか… だが、元々国防軍の情報部は質が高い事で有名だった そこへ今更 外注でセキュリティ対策などを 頼むと言うのは難しいだろう?」
秘書が言う
「レムル駐屯地情報部主任 マックス大尉より マスターの名を持つプログラマーへ依頼を持ちかけてはどうかとの提案が入っております 国防軍へ復帰を促す事とは別の話として 依頼を行えば 金銭による解決が可能ではないかと」
アースが言う
「ふむ… マスターの名を持つプログラマーか その者の当ても あるとの事か?」
秘書が言う
「必要とあれば 連絡を付けられるとの事です 但し そちらの協力が確実であるとは 残念ながら言いきられないと」
アースが言う
「つまりそれは元国防軍在籍のマスターであると言う事なのだろう」
秘書が言う
「恐らく…」
アースが言う
「マスターたちへの復帰を促す連絡は今も続けてある筈だ それに答えない彼らへ今度は金銭を用いて協力を要請しろと?国防軍従軍の仲間たちからの呼び掛けへ対する返答さえ 今も変わりは無いのだろう?」
秘書が言う
「はい… ”現状の国防軍には戻れない”との返答です」
アースが言う
「…それは つまり」

【 マスターの店 】

シェイムが言う
「大本は確かに 14数年前の帝国との和平交渉へ向かった その時の事故が切っ掛けでした しかし、我々とアース・メイヴン・ハブロス総司令官との争いは その双方の どちらにも否があったと思います ハブロス総司令官は ご自分のお父様を助ける為に行った事で… 我々は… 自分たちが作り上げた政府を守る為に ハブロス総司令官の国防軍へ取り入ろうとしました」
マスターが言う
「そして 結果的にハブロス総司令官を含め あんたら全員の作戦が成功したって訳か」
シェイムが疑問して言う
「え?…あ、はい 確かに… 我々の作り上げた政府を守る為に ラミリツを国防軍に認めて頂くと言う作戦は …当初の目論見とは若干ズレましたが成功しました ハブロス総司令官は… そうですね?確かに お父様を助けるナノマシーンを手に入れた… そう言う意味では成功でしょうか?」
マスターが言う
「ああ、それに今の国防軍の状態は 正に 以前の強い力を持っていた国防軍… あのヴォール・ラゼル・ハブロス元総司令官の作られた 国防軍の状態と同じだ 国防軍のマスタートップシークレット 現代の悪魔の兵士も居るし あんたたちが行った作戦のお陰で ハブロス総司令官はラミリツ攻長を通してではあるが 政府の力も使える… ただ そこに俺たちマスターの力だけは無いが」
シェイムが言う
「以前 国防軍へ属していたマスターの仲間たちは今の国防軍へ戻りたいと話をしていますよね?それを止めていたのは…」
マスターが言う
「ああ、俺のグレイゼスだ」
シェイムが言う
「それは何故?」
マスターが言う
「俺は自他共に認める国防軍の味方だ だが やっぱりマスターだからな?政府のマスターを助けた時から ハブロス総司令官の憎悪を… マスターシュレイゼスへ向けられていた そいつが気になっていた… そして後に続いた事件… 何かがおかしいと思って 色々調べて居たんだ その結果 確かな事までは分からなかったが ハブロス総司令官の国防軍や裏組織の使い方から何か悪どい事をやっている …と言う事は分かっていた」
シェイムが言う
「…では これで 全てお分かり頂けたでしょう?マスターグレイゼス どうか 国防軍在籍であった マスターの仲間たちへ呼び掛けて下さい ”国防軍へ戻ろう”と… そしてハブロス総司令官の お力となって下さい」
マスターが言う
「うん… だが、あんたはそれで良いのか?」
シェイムが言う
「はい?私が?」
マスターが言う
「理由はともあれ あんたの冤罪はハブロス総司令官が着せたものだ そいつを公へでもしない限り あんたはこれからも指名手配犯シェイム・トルゥースのままだ …メイリス家へ戻る事は勿論 このままじゃ 攻長閣下への誤解だって解けないんだろう?」
シェイムが言う
「しかし、それを公へすれば ハブロス総司令官の国防軍の力が弱まるのは勿論 折角のラミリツとの協力体制へも亀裂が入るでしょう… 現在の状態は様々な犠牲の上に成功させた作戦です ですから私は このまま… ラミリツの命により動かされている 警察から逃れ続ける事が勤めであると思っています」
マスターが言う
「本当に良いのか?それで?」
シェイムがマスターを真っ直ぐに見据えて言う
「はい」
マスターが間を置いて苦笑して言う
「…はぁ 負けたよ 親兵攻長シェイム・トルゥース?」
シェイムが苦笑して言う
「容疑者殿 …ですが?」
マスターが軽く笑う シェイムが釣られて笑う マスターがテレビへ顔を向けてから言う
「それじゃ… マスターの仲間たちへ呼び掛けちまうぞ?良いか?こいつは最後の警告だ …後悔はしないな?」
シェイムが言う
「お願いします」
マスターがテレビに触れる シェイムの脳裏に声が聞こえる
『元国防軍在籍のマスターたちっ 聞いてくれ!現国防軍のハブロス総司令官は 我々マスターの… …敵だ!』
マスターとシェイムが衝撃を受け2人が言う
「「えっ!?」」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『彼は マスターの仲間に 罪を着せた!』 『我々 マスターの仲間に 罪を?』 『マスターの仲間に 罪を着せた 国防軍は 危険』
シェイムが慌てて言う
「マスターグレイゼスっ!?」
マスターが慌てて言う
「ああぁっ!いやっ!?俺はっ!皆にっ 国防軍へ戻ろうって言おうと!?」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『俺は知った ハブロス総司令官は 自分の利害の為に マスターの仲間を…っ!』
マスターが慌てて言う
「こらっ 止めろっ!グレイゼス!それ以上言うなっ!」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『国防軍は危険 マスターの仲間は 近寄るな』 『マスターの仲間は マスターを守るべし』 『マスターは 国防軍に 力を貸してはいけない』
シェイムが慌てて言う
「事態は 悪化してしまいましたよ!?どうするのですか!?知能補佐能力の先輩っ!?」
マスターが言う
「いやっ そんな事言われたってぇっ!?」
シェイムの耳に声が聞こえる
『マスターの皆 マスターの仲間の 冤罪を晴らそう!』 『仲間を守ろう!』 『晴らそう 仲間だから』 『仲間は大切だ 晴らさないと…』
シェイムが慌てて言う
「ですからそれは作戦でしてっ!シュレイゼス!貴方も黙っていないで 何とか言って下さいっ!シュレイゼスー!!」

マスターがPCを操作していて言う
「あっちゃぁ~… 今まで国防軍に仕掛けられていたハッキングが増加してる… こりゃ間違いなくグレイゼスの呼びかけを聞いた マスターたちが動き出しちまったなぁ…?」
シェイムが頭を抱えて言う
「国防軍へ力を貸す所かっ まさか悪化をさせてしまうとは…っ」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースが電話をしている 受話器から軍曹の声がする
『…と言う事なのだが 何とかその容器を作り… 尚且つ そのプラズマの制御や銃開発などを手伝える情報部員を1名 用意してもらえぬだろうか?兄貴?』
アースが言う
「うん… 話は分かったが… …難しいな?」
軍曹が言う
『うむぅ… そこを何とかならぬだろうか?これはマシーナリーと戦う上において どうしても外せぬ物なのだ それに、折角 政府警察のラミリツ攻長局長から プラズマを分けて頂けるとの許可を得たと言うのに こちらが人員を用意できぬとあっては ラミリツ攻長のご好意にも申し訳が立たぬのだ…』
アースが言う
「…では 人員は兎も角としてプラズマの方は お前の伝のお陰で手に入る事には なったのだな?」
軍曹が言う
『うむ?あ、ああ… そちらは大丈夫なのだ… と言うより 兄貴?ラミリツ攻長の話では わざわざ俺の伝… と言うか俺からラミリツ攻長に頼まずとも 兄貴が国防軍総司令官として 政府のミックワイヤー長官や 直接 政府警察のコートハルド警察長へ頼めば 話は通ったと言う事であったのだ …今は政府と国防軍は 共同協力協定を結んでいるので そう言う事になっていると言う事であった』
アースが言う
「ああ、そうだな?しかし 私が話を持ち掛ければ こちらも同じく ロストテクノロジーの提供を行わなければならなかっただろう… 話を持ち掛けたのが お前であったからこそ それらの代価も無くプラズマを頂ける事となった …良くやったな アーヴィン?」
軍曹が言う
『兄貴…』
アースが言う
「では 人員の用意は難しいと思うが 私の方でも確認をする …しかし 今は何処の情報部も苦しいと言っているからな?あまり期待はするなよ?」
軍曹が言う
『うむ…』
アースが言う
「では、また何かあれば 連絡を…」
軍曹が言う
『兄貴は何故 そこまで…?』
アースが置こうとしていた受話器を近付けて言う
「うん?何か言ったか?」
軍曹が言う
『兄貴から話せば、プラズマを分けてもらう話は通ったと言うのに 俺の伝を頼ったと言うのは… やはり兄貴は… ラミリツ攻長の言う通り 政府への貸しを作りたくないと言う事なのか?』
アースが言う
「…まぁ そんな所だ 貸しは有るよりも 無い方が良いに決まっている」
軍曹が言う
『俺は… 国防軍が政府からロストテクノロジーの提供を受けるのなら こちらからも政府へ同等のものをお返しすると言うのは 当然の事だと思うのだが?』
アースが言う
「まぁ  そうかもな?」
軍曹が言う
『兄貴… 俺は兄貴の様に頭は良く無いから今まで言わなかったが… そういうのは もう止めて欲しいのである』
アースが言う
「うん?何の話だ?」
軍曹が言う
『兄貴はいつもハブロス家や国防軍に被害の無い様にと物事を進めるが だからと言って その他の者を傷付けるのは止めて欲しいのだ …何かを犠牲にして自分が助かると言うのは 俺は… それは卑怯であると思う』
アースが言う
「卑怯?」
軍曹が言う
『…で、であるからしてっ!?是非とも…っ 兄貴の方からもっ 何か… 政府へお返しをして欲しいのだっ!ラミリツ攻長は今回は エルム少佐や祖父上から受けた恩へのお返しだと言っていたが… やはり、それとこれとは別であると俺は思うのであるからにして…っ』
アースが黙る
「…」
軍曹が言う
『…兄貴?』
アースが溜息を吐いて言う
「…はぁ 分かった お前がそこまで言うのなら そちらも含め探しておく」
軍曹が言う
『う、うむ!流石 兄貴なのだっ 宜しく頼むのだ!』
アースが受話器を置く アースが一息置いてから内線電話を操作して言う
「私だ 各駐屯地の情報部やその他において 超高温プラズマの制御に関われそうな人材を1名 用意出来そうなら探してくれ 現状では難しいという事は分かっているが宜しく頼む」
電話から秘書が言う
『畏まりました』

【 マスターの店 】

マスターがPCを操作していて言う
「ん…?こいつは…」
シェイムが言う
「どうかしましたか?」
マスターが言う
「このプログラムの規則性と言い… 間違いないっ こいつはマスターブレイゼスの痕跡だ!国防軍のトリプルトップシークレットに介入しているっ」
シェイムが慌てて言う
「なんですってっ!?ではっ!」
マスターがPCを操作して言う
「大丈夫だ!この位なら国防軍の情報部の皆が!…って ありゃ…」
PCのモニターにある 国防軍の各駐屯地でエラーが発生している シェイムが慌てて言う
「な、何やら エラーらしき表示が沢山出ていますが?」
マスターが困って言う
「参ったな… この忙しい時にマスターの仲間たちまで 国防軍のデータベースを攻撃しちまって…」
シェイムが慌てて言う
「我々のせいですねっ!?」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

部屋の明かりが点滅してから点灯する スピーカーからアナウンスが言う
『お待たせしました 総司令本部のシステムが復旧されました 現在セキュリティチェックを行っていますので データベースへのアクセスは もうしばらくお待ち下さい 繰り返します お待たせしました 総司令本部の…』
アースが言う
「ついに この総司令本部まで最終電源を落としての …それこそ最後の手段を使う様になったか」
執事が言う
「国防軍の要で御座います総司令本部まで セキュリティが及ばなくなっては… アース様」
アースが言う
「もはや 手段を選んでなどは居られないと言う事だ」
執事が言う
「はい… しかしながら 外注にてプログラマーを雇われるとされますと その御費用は…」
アースが言う
「分かっている 国防軍の資金は そろそろ限界だろう?」
執事が言う
「この所の度重なった国防軍への襲撃と共に 予てからの国防軍隊員への待遇の改善から 少々 資金面では苦しくなって参りました」
アースが言う
「少し事を急ぎ過ぎたな… 帝国との戦いとの名目で政府との合同協力協定を組んだ事で 主権の無効と共に 両組織への資金配分も五分五分とされてしまった… それに加えてのこのタイミングは 流石に痛手だった」
執事が微笑して言う
「しかし、アース様が国防軍総司令官となられてから行われましたそれらの改善により 国防軍の状態は たったの1年余りで ヴォール・ラゼル・ハブロス元総司令官と同等か 隊員らへの処遇に関しまして言えば それ以上の状態になっているとも思われます 確かに少々の御無理はありましたが この改善は劇的であられましたかと」
アースが言う
「ああ… 祖父上の国防軍に倣えと… いや?それ以上をと目指しここまでやって来たが… それでも奴らは この国防軍へは戻らない… それは何故だか分かるか?レミック」
執事が言う
「私には分かりかねます」
アースが苦笑して言う
「嘘は言うなよ?分かっている筈だ」
執事が言う
「アース様…」
アースが言う
「ああ、そうだ …この私が居るからだ」

【 マスターの店 】

マスターが言う
「…なるほど マスターブレイゼスの次の狙いが分かったぞっ」
シェイムが言う
「何処ですか!?教えて下さいっ マスターグレイゼスっ」
マスターが言う
「え?ああ… それは構わないが?教えたらどうするつもりだ?奴の行き先は 国防軍の駐屯地だって事ぐらいは 言わなくても分かってるんだろう?」
シェイムが言う
「マスターブレイゼスが狙って居るのは 国防軍の力 国防軍のマスタートップシークレットである筈ですから その域先が国防軍の駐屯地である事は分かっています」
マスターが言う
「だったら それを聞いて どうするつもりだ?」
シェイムが言う
「もちろんっ マスターブレイゼスを止めるのです!私とフレイゼス殿や… その他2人のマスターの仲間はっ 今はその為に!」
マスターが言う
「へぇ?知らなかったなぁ?マスターシュレイゼス以外にも マスターブレイゼスと戦っていた マスターの仲間が居たのか?」
シェイムが衝撃を受けて言う
「あっ!…ひ、酷いですねっ!?何か私を言い包める おつもりですか!?」
マスターが苦笑して言う
「おいおい?それこそ酷い言い様だな?何か~ 知能補佐能力のマスターに 恨みでもあるのか?」
シェイムが言う
「い、いえ… 恨みと言う程では有りませんが… 以前 少々…っ」

【 王立中央メイス病院 】

カルンゼスがくしゃみをして言う
「ハックシュンッ!…やはり 風邪かのぉ?」
患者が疑問する

【 マスターの店 】

マスターが言う
「奴が調べた情報は 国防軍プロイム駐屯地だ そこの地下に 国防軍のマスタートップシークレットがあるらしい 奴はこの情報を調べていた」
シェイムが疑問して言う
「では… そちらにも 悪魔の兵士が眠っていると言う事でしょうか?」
マスターが言う
「ハイケルのマスタートップシークレットは 国防軍レファム駐屯地にあるって事が分かっている… って事は?こっちは2世代目の悪魔の兵士… あのエルム少佐のそれだって事か…?」
シェイムが言う
「いいえ?」
マスターが衝撃を受けて言う
「は?」
シェイムが言う
「エルム少佐のマスタートップシークレット… いえ、彼はファームと言っていましたが そちらの場所であるなら 私は知って居ます そして、その場所はプロイム駐屯地ではありません」
マスターが疑問して言う
「え?そうなのか?」
シェイムが言う
「はい …と言う事は?3人目の悪魔の兵士が居るという事でしょうか?」
マスターが言う
「いや… そんな筈は無い 悪魔の兵士は2世代… つまり 2人しか 居ない筈だ」
シェイムが言う
「では?」
マスターが考えた後言う
「…いや、分からないが 何にしても マスターブレイゼスがこの情報を見たという事は」
シェイムが言う
「そうですね?少なくとも 奴は 国防軍プロイム駐屯地に エルム少佐のファームがあると思い 襲いに現れるという可能性が高いかと」
マスターが言う
「言われて考えてみれば あの駐屯地は帝国に近い側とは言え 隠された装備やその他の構えが半端無い …それはそのファームを守っているからって事なのかもな?」
シェイムが言う
「では どちらにしろ 私も向かいます」
マスターが言う
「だが 奴は …マスターシュレイゼス あんたを狙っていた」
シェイムが言う
「だからと言って ここで引き下がる訳には行きませんっ ラミリツの為にも… 私は今の国防軍を守らなければいけないのですっ!」
マスターが言う
「なるほど… 弟の為か… ならっ!」
マスターの携帯が鳴る マスターが携帯を取り出すとディスプレイを見て微笑して言う
「こいつは好都合」
シェイムが言う
「どうしました?」
マスターが言う
「国防軍からの復帰勧誘メールだ 元国防軍在籍のマスターの仲間たちの所へ 毎月送られて来て居たんだが… 今まではずっと こいつに答えてやる事が出来なかった …だが今なら!」
シェイムが言う
「しかし、貴方のグレイゼスは…」
マスターが言う
「あんたと同じで 俺にも守りたい奴が居るんだよ?だから俺は… ハイケルの為にもっ 今の国防軍を守ってやるさ!」
シェイムが微笑して言う
「マスターグレイゼス…」
マスターが微笑して携帯を操作しようとすると 衝撃を受ける シェイムが疑問して言う
「…今度は どうなさいました?」
マスターが言う
「か、身体が動かねぇ…っ」
シェイムが苦笑して言う
「つまり それは…」
マスターが表情をしかめて言う
「こ~のぉ~っ」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『マスターは マスターの仲間を守るべし』
マスターが言う
「分からず屋のグレイゼスー!!」
シェイムが苦笑して言う
「お気持ちは よく分かります…」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースがノートPCを見ながら言う
「返信は1通も無しか …フッ ここまで ハッキリしてくれるのなら 後腐れも無くて良いと言うものだ …レミック」
執事が言う
「はい アース様」
アースが執事へ向いて言う
「国防軍総司令官の任命書類を用意しろ 名前はヴォール・アーヴァイン・防長だ 主権が無効となった現状であれば 国防軍であっても防長と総司令官の兼務が認められる」
執事が言う
「アース様… 大変失礼とは存じますが アーヴァイン様では国防軍の総括は お難しいかと…っ」
アースが言う
「大丈夫だ 国防軍の基礎は築いた お前もさっき言ってくれただろう?祖父上の国防軍と同等だと …それなら その国防軍に足りないのは祖父上の様な総司令官 …つまりは アーヴァインだ」
執事が言う
「しかし それでは…っ」
アースが息を吐いて携帯を見て言う
「あいつが私へ 国防軍の組織に関する事で意見をするなど… 初めてかもしれない …つまりそれだけ自覚が出て来たのだろう そして 私のやり方は間違っていると 仲間との信頼を第一に考える 国防軍の総司令官が 私では相応しくないと …マスターの連中と同じだ そうとなれば あいつの国防軍へなら 彼らも戻って来てくれるだろう?」
執事が言う
「アース様 どうかお考え直しを 国防軍をここまで復興させられたのは 間違いなくアース様です 経過はあるにしろ ここまでに御尽力された アース様以外に 国防軍の総司令官は居られないと 私は その様に思います」
アースが言う
「そう言ってくれるのは嬉しいが 事は急ぎだ その折角復興させた国防軍が 潰されてからでは遅いだろう?…書類を用意しろ レミック …命令だ」
執事が悔やみつつ言う
「…畏まりました」
執事が立ち去る アースが息を吐く

【 マスターの店 】

マスターが気分良さそうにコーヒーを用意している
「フフン フンフン フ~ン…」
マスターが作業を一段落させると 一瞬目を光らせ 携帯へ手を伸ばして言う
「今だーっ!」
マスターの身体が衝撃を受け固まって言う
「うぐっ… ぐ… くぅ~ 駄目かぁ~…」
マスターが溜息を吐く マリが苦笑して言う
「うふふっ マスター?いくらタイミングを見たって… 相手は自分と一心同体のグレイゼスなんだから?」
マスターが言う
「ああ… 分かっては居るんだけどさぁ~ それにしたって ここまで反逆されるの初めてだよ… 一体どうしちまったんだぁ?グレイゼス?」
マリが反応して言う
「反逆?反逆の兵士は… マスターシュレイゼス!うふふっ」
マリが微笑する マスターが言う
「あぁ… 彼なら 本当にマスターの仲間たちに反逆して ハブロス総司令官の お力になりたいって 向かったよ?」
マリが言う
「え?反逆の兵士様が国防軍の総司令官様を?それじゃ… ハブロス総司令官様は親兵攻長様?…あら?えっと~?」
マスターが疑問して言う
「うん?えーと… そういやぁ… 国防軍の悪魔の兵士は ハイケルで… 主権は無くなったとは言え 攻長閣下は ラミリツ攻長なんだから 彼が攻撃の兵士… アーヴィン君が守りの兵士 で シェイム・トルゥースが親兵攻長なら …ハブロス総司令官は 親兵防長かぁ?…まさかなぁ?それじゃ その2つの書物は別物って事に… …そうなのか?う~ん…」
マスターが考える 来客鈴が鳴り マリが顔を上げると微笑して言う
「いらっしゃいませ!喫茶店マリーシアへ ようこそ!」
軍曹がハッと気付いて言う
「…あ!貴女は確か!あのカルメス邸で!」

【 国防軍プロイム駐屯地 外 】

シェイムが身を隠しイヤホンを押さえて言う
「…と言う事ですので 私は一足先に 国防軍プロイム駐屯地周辺にて 様子を伺おうと思います!」
イヤホンにイリンゼスの声がする
『よし、分かった!それじゃぁ 俺も!…もう少ししたら そっちに向かうからな?』
シェイムが言う
「はい よろしくお願いします 先輩」
イリンゼスが言う
『あ~ でも もうちょっと掛かるかもしれないが…』
シェイムが疑問して言う
「もうちょっと ですか?…何か?」
イリンゼスが言う
『あぁ 実は今バイト中でさぁ?』
シェイムが衝撃を受けて言う
「バ、バイトっ!?」
シェイムがハッとして周囲を確認する イリンゼスが言う
『なるべく急いで行くから 何かあったら すぐ呼べよ?助けに行ってやるからな?』
シェイムが言う
「いえっ 実に 何かありそうですので 呼ぶよりも先に 来て置いて頂けると!」
イリンゼスが言う
『あ、もう一件入った!悪ぃ!また後で!』
シェイムが慌てて言う
「せ、先輩っ!?マスターイリンゼスっ!?」
シェイムが不満そうに言う
「何て 役に立たない マスターの仲間なのでしょう!?こんな時に…っ」
シェイムが顔を向けると マシーナリーの影が見える イヤホンにメルフェスの声がする
『何だか申し訳ありませんが… くれぐれも お気を付け下さい シェイム殿…』
シェイムが言う
「有難う御座いますっ フレイゼス殿!やはり親兵攻長の味方は 反逆の兵士である貴方だけですっ!」
メルフェスが言う
『あぁ… 今の私には もったいないお言葉で …真に恐縮です』
シェイムが姿を消す マシーナリーの集団が現れる

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースがノートPCを前に軽く息を吐いて言う
「…何を今更?迷う必要がある?私は歴代国防軍長ハブロス家の長男として… 歴代No1の国防軍を作り上げた… 後は 私の… 国防軍総司令官の任をアーヴィンに託せば それで全て決まる… それでこそ歴代一番の国防軍が出来るんだ なのに…」
アースが息を吐き頭を押さえる 緊急を知らせるランプが光り ブザーが鳴る アースが驚き顔を向け スイッチを押して言う
「ハブロス総司令官だ 何事だっ!?」
スピーカーから 声がする
『こちらプロイム駐屯地情報部!駐屯地に奇襲です!帝国のマシーナリーが!』
アースが一瞬驚いてから ボタンを押して言う
「国防軍レギスト機動部隊を 緊急招集だっ!急げっ!」

【 国防軍レギスト駐屯地 施設内 】

サイレンが鳴っている スピーカーからアナウンスが流れる
『緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 武装装備を行い 車両収納所へ集合せよ 繰り返す 緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 武装装備を行い 車両収納所へ集合せよ』
施設各所に居る隊員たちが スピーカーを見上げてから顔を見合わせ 頷き合って走り向かう バックスが携帯で話しながら歩いて言う
「はっ!隊長は不在ですが 直ちに国防軍レギスト機動部隊を 国防軍プロイム駐屯地へ 向かわせます」
携帯にアースの声がする
『隊長が戻るまで その間の国防軍レギスト機動部隊への部隊指揮権を君へ預ける 必要とあれば 国防軍 及びその他 全ての力を使い 隊員たちの生存を第一に 最善を尽くせ 以上だ』
バックスが言う
「了解しました!ハブロス総司令官!」
バックスが情報部のドアを開ける

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

情報部員たちが慌しく作業を行っている マイクの横にアルバートが居る バックスがやって来て言う
「17部隊隊員及び隊長の所在はどうなっている!?」

【 国防軍プロイム駐屯地 外 】

シェイムがイヤホンを押さえて言う
「先輩っ!イリンゼス先輩っ!奴らが来ました!」
イヤホンからイリンゼスの声がする
『あぁー 悪いっ!こっちも 今 急ぎだ!』
シェイムが怒って言う
「何を急いでおられるのかは知りませんがっ こちらはそれ以上に急いでいますよ!…っと言いますか もう良いです!こうなれば私は例え1人でもっ!」
イリンゼスが言う
『待てっ!?シェイムっ!?早まるなぁっ!?』
シェイムが周囲を見渡すと ハッとして言う
「あ!あれはっ!」
首にネックセンサーを付けたガルイッドが過ぎ去る シェイムが言う
「マスターブレイゼスを はぁっけぇええーんっ!」
シェイムが消える イリンゼスの声が残る
『あっ!?おいっ シェイム!?』
メルフェスの声がする
『シェイム殿っ!早まってはいけませんっ 相手は知能補佐能力のマ…っ』
無線が途絶える

【 国防軍プロイム駐屯地 旧地下倉庫 ゲート3 】

ガルイッドが笑んで言う
「良く来てくれた マスターシュレイゼス?飛んで火に入る 何とやら …と言うのだったか?メイリス元長官… ふっはっはっはっは…」
シェイムの周囲をマシーナリーが囲っている シェイムのイヤホンから雑音が聞こえている シェイムが目を細めて言う
「うかつでした…」

【 国防軍指令本部 総司令官室 】

アースが言う
「…それから 国防軍プロイム駐屯地の周囲20キロの住民へ 避難勧告を行え」
秘書が言う
「政府へ依頼し避難指示まで格上げしますか?」
アースが言う
「いや、プロイム駐屯地ならば大丈夫だ あちらには万が一の際の周辺保護機能が備えられている …レギストはどうなっている?国防軍レギスト駐屯地情報部の状況を 第1モニターへ映せ」
デスクのモニターに 国防軍レギスト駐屯地情報部の映像と音声が流れる 情報部員が言う
『レギスト機動部隊 国防軍プロイム駐屯地到着まで およそ18分!』
バッカスが言う
『掛かるな… マイク少佐 プロイム駐屯地の状況を モニター出来るか?』
マイクがキー操作をしながら言う
『被害状況を メインモニターへ切り替えます!』
アルバートが言う
『18分も掛かっていては とても間に合わない 警察へ応援を要請して 移動ルートの確保をさせよう 5分は早まる』
アースがデスクの設備を操作すると 2つ目のモニターに 簡易地図が表示されに赤い表示が多く表示される アースが言う
「5分早まっても 13分… 状況は厳しいか…っ」
アースの携帯が鳴る アースが携帯を見て着信させる 携帯からラミリツの声がする
『ハブロス総司令官 国防軍レギスト駐屯地のアルバート中佐から 政府警察へ応援要請が来たから 政府警察交通局で対応させたからね?』
アースが言う
「有難う御座います 攻長閣下 このお礼は後日」
ラミリツが言う
『あ~ 酷いの?そう言う言い方するんだ?』
アースが言う
「その言葉を聞きたくて連絡をして来たのではないのか?」
ラミリツが言う
『そんな訳無いでしょ?その連絡はついでだよ!』
アースが言う
「ついで?では 本題は何だ?」
ラミリツが言う
『あ…?でも そう言うならさ?ハブロス総司令官?政府警察交通局を出動させた そのお礼は今頂戴よ?』
アースが言う
「今だと?」
ラミリツが言う
『部隊編成も訓練も終った所で 丁度 実戦訓練をさせたかったんだよね?ねぇ?良いでしょ?』
アースが言う
「政府で編成しているとの噂だった 政府特殊警察機動部隊の事か?」
ラミリツが言う
『なんだ 知ってたんだ?折角 驚かせようと思ったのに…』
アースが言う
「国防軍の情報網を甘く見るなよ?…で、使えそうなのか?その部隊は?」
ラミリツが言う
『もちろん』
アースが言う
「なら 出動させろ …だが言って置くが 場所は国防軍の管轄 そして 今回は応援とは言え そちらの依頼を受け入れる形だ」
ラミリツが言う
『はいはい 僕は そんなのどうでも良いんだ… 政府も国防軍も 皆 仲間でしょ?』
アースが一瞬反応してから鼻で笑って言う
「ふん…っ 子供だな?」
ラミリツが言う
『子供で上等!』
アースが苦笑する

【 国防軍プロイム駐屯地 旧地下倉庫 ゲート3 】

ガルイッドが笑んで言う
「まさか貴方が あのカルメス元皇居宗主から マスターの力を受け継いでいたとは驚いたな?一体どういった仕組みなのか是非 その経過を教えて頂きたい …もちろん その身を捕らえ しっかりと研究を…」
周囲のマシーナリーがシェイムに近付く シェイムが言う
「生憎 貴方の研究材料になるつもりは有りませんよ ガルイッド元政府研究局局長 貴方の腕では 私まで精神をおかしくされそうですから」
ガルイッドが言う
「その心配は要らない 今の私には この力がある」
ガルイッドがネックセンサーに触れる シェイムが目を細めて言う
「マスターブレイゼスのナノマシーンの加護があるとでも?」
ガルイッドが言う
「そうだとも 例え 体に取り入れる事をしなくとも この政府のマスタートップシークレットがあれば 私は ルイル・エリーム・ライデリア所では無い 世紀の天才科学者と言われた あの マスターブレイゼスと同等になられるのだ!」
シェイムが言う
「ほう… そうですか?しかし 生憎 その様には見えませんよ?貴方はきっと勘違いをなされている」
ガルイッドが言う
「何?」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

情報部員が言う
「マイク少佐!プロイム駐屯地情報部より通信です!」
スピーカーに声が聞こえる
『こちらプロイム駐屯地情報部!第7部隊との通信が途絶えたっ 第8部隊がマシーナリーを引き付けていられる間に基地を爆破させたい 許可を!』
マイクが言う
「こちらレギスト駐屯地情報部!既にレギストが到着しています!もう少しだけ頑張って下さいっ!助けに行きますから!」
スピーカーにハイケルの声がする
『こちらはハイケル少佐だ プロイム駐屯地に到着した』
マイクが表情を明るめる

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースが言う
「やっと到着か… とは言え」
アースがモニターを見て言う
「第8部隊は既に爆心地へマシーナリーを誘導済み …逆に言えば これ以上の時間は稼がれない …レギストは間に合わないか?」
アースが視線を向ける 視線の先にエルムの人形が置かれている スピーカーからハイケルの声が聞こえる
『マイク少佐 プロイム駐屯地情報部からの要求を 総司令官へ伝えろ』
マイクが驚いて言う
『え…っ!?それは…っ』
スピーカーからハイケルの声が聞こえる
『第3マシーナリー… RTD420マシーナリーの集団接近を上空から確認した これから来るであろう そいつらの対処をしていては 第8部隊の救出には 間に合わない』
アースが目を細める デスクのランプが付きブザーが鳴る アースが顔を向けボタンを押すと ラミリツの声が聞こえる
『大丈夫!こっちも到着したよ!ハブロス総司令官!』
アースが僅かに驚いた後言う
「盗み聞きか性質が悪いな?」
ラミリツが言う
『だって僕は悪魔の兵士ではないけど 半分はエルムと同じで攻撃の兵士だからね!』
アースが言う
「理由になっていないだろう …まぁ良い それならさっさと任務に当たれ 命令だ」
ラミリツが言う
『そっちも理由になってないと思うけど!けど 了ー解!総司令官!』
アースが苦笑し ボタンを押して言う
「こちらはハブロス総司令官だ レギスト機動部隊隊長ハイケル少佐 応答を… 状況は把握している これより 政府特殊警察機動部隊 GPTの支援を受託する 駐屯地外部のマシーナリーは彼らへ任せ お前たちは駐屯地内 国防軍第8部隊の救出へ向かえ」

【 国防軍プロイム駐屯地 】

ラミリツがプラズマセイバーを振りかざして言う
「政府特殊警察機動部隊 始動!」
特警隊員たちが言う
「了解っ!」

【 国防軍プロイム駐屯地 旧地下倉庫 ゲート3 】

国防軍第7部隊がやって来て 銃を構え隊長が言う
「そこの2人!何者だっ!?ここで何をしている!?」
シェイムが隊長を見てから ガルイッドを見て言う
「貴方の御様子からして 恐らくそのネックセンサーには マスターブレイゼスのナノマシーンは ほんの僅かにしか込められていません 残りは全て 補填用のナノマシーン …貴方も ナノマシーンを研究なされていたのなら 御存知でしょう?補填用のナノマシーンは 本物とは似ても似付かない その程度のものです」
ガルイッドが困惑してから気を強めて言う
「ば、馬鹿なっ …その様な事を言っても誤魔化されんぞっ 何故なら補填用のナノマシーンでは この マシーナリーたちを起動させる事は出来ようとも 制御する事は出来ないと言う事が過去の資料に載せられているっ だが 私は この様にっ!」
マシーナリーがガルイッドの意思に反応する様に腕を動かし 電話をしていた第7部隊隊員のすぐ上の壁を殴り破壊する 第7部隊隊員が驚いて言う
「それをっ 指名手配の元長官がっ!シェイム・トルゥース・メイリス!…いやっ シェイム・トルゥース容疑者が!マシーナリーを…っ ぐあっ!」
第7部隊隊員が驚いて腰を抜かす ガルイッドが言う
「通信類が遮断されている このマスタートップシークレット ファームから 外部へ通信する手段があったとは… 残念だが メイリス元長官 貴方を捕らえ研究するより 今の私には大切な事がある」
第7部隊隊員がガルイッドを見てからシェイムを見る シェイムが第7部隊隊員の首に隠して付けられているネックセンサーに気付いて目を細める ガルイッドが言う
「国防軍の者ども!このマシーナリーの餌食になりたくなければ…!」
マシーナリーの一部が第7部隊隊員たちの前に立ちはだかる 第7部隊隊員たちが武器を手にしたまま後ずさる 足跡が聞こえ ハイケルと隊員たちが到着すると 第7部隊隊員たちが振り返る中 ハイケルが言う
「国防軍第7部隊隊員48名を確認 同時に…」
ハイケルが顔を向けると 視線の先シェイムがハイケルへ向く 隊員Aが言う
「シェイム・トルゥース容疑者を発見!」
隊員Bが言う
「でー?もう1人はー?」
隊員Bと皆の視線の先 シェイムの向かいに居る ガルイッドが隊員たちを見て言う
「ク…ッ また邪魔が増えたかっ」
シェイムが目を細める シェイムが思う
(ネックセンサーを付けた者が2人…?ガルイッド元局長の言動はどう見ても 操られている様子は無い …と言う事は あちらが本物か?)
シェイムが第7部隊隊員を伺い見る ハイケルが言う
「指名手配犯シェイム・トルゥース 共に 元政府研究局局長 ガルイッド・ベーク・ハーベス 国防軍私有地への不法侵入罪で お前たちを…」
シェイムが思う
(この状況で 奴を捕らえるには…?奴の目的は ここに眠る悪魔の兵士を…?いや、しかし 悪魔の兵士は 2人しか居ないと…)
ガルイッドが言う
「全員動くな 動けば これを…」
懐から爆弾を取り出す レギストの隊員たちが驚く ハイケルが目を細めて言う
「N2爆弾」
ガルイッドが言う
「そうだ これ1つで 少なくともこの地下施設を破壊する事が出来る もちろん お前たちも道連れに」
皆が息を飲む ガルイッドが微笑して言う
「こいつを今すぐ使用されたくなければ 私の邪魔をしない事だ」
シェイムが思う
(やはり マスターブレイゼスの狙いは ガルイッド元局長を使っての破壊作戦か …では どうする?ここで爆弾などを使えば マスターブレイゼス本人も 無事では…)
ガルイッドの近くで装置の起動音がする 隊員たちが反応する ガルイッドが微笑してドアへ向く ドアのロックが解除される 隊員たちが注目する ガルイッドがドアへ向かい ドアを押し開くと 皆の視線を逃れマシーナリーたちが 第7部隊隊員の前に盾になる シェイムがマシーナリーを見て思う
(そうかっ!その為に…っ これだけのマシーナリーを用意していたと言う事かっ 爆弾の爆風から自分の身を守る 盾としてっ!)
ドアが開かれ何も無い空間が露になる ガルイッドが驚く 隊員たちが呆気に取られ 隊員Aが言う
「な…っ!?」
隊員Cが続けて言う
「…にも ない?」
隊員Bが言う
「えー!?少佐ぁー!?少佐の別荘の中は 空っぽでありますー!少佐ぁー!?」
ガルイッドが何も無い空間へ駆け込み 周囲を見渡しながら言う
「な…っ!?な…っ!?」
ガルイッドが悔しそうに言う
「こ… ここではなかったっ もう1人の悪魔の兵士はっ 何処に眠っている!?」
第7部隊隊員が表情を強めている シェイムが思う
(やはり 奴がっ!…押さえるかっ!?)
シェイムが一歩踏み出す ガルイッドが隊員たちへ銃を向ける 隊員たちがハッとする ガルイッドが照準の先を選びながら言う
「答えろっ!国防軍なら知っているだろう!?もう1人のファームは何処だっ!?」
シェイムが目を細めて思う
(だが こちらも今は危険を冒せない…っ ここで私が国防軍の彼らを守れば こちらの作戦に支障が生じてしまう …仕方が無い 不本意では有るが ここは奴の味方を…っ)
シェイムが言う
「無駄ですよ 彼らは知らない」
皆がシェイムを見る ガルイッドがシェイムへ銃を向ける シェイムが言う
「国防軍のマスタートップシークレットの場所は… アールスローン戦記の原本に記されている」
隊員たちが驚く ガルイッドが悔しそうにした後 軍曹へ銃を向けて言う
「ならば お前がっ!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「のぉっ!?い、いやっ 自分の持つ原本には少佐のファームの場所しか!?」
シェイムが言う
「アールスローン戦記の原本は2つ …どういう意味か お分かりですね?ガルイッド元局長」
ガルイッドが言う
「ではっ もうひとつの原本は何処にある!?答えろっ!さもなくば…っ」
ガルイッドが軍曹への銃へ力を込める 軍曹が慌てて言う
「のわっ!?」
軍曹が思わず盾を構える ガルイッドが呆気に取られた後 言う
「な、ならばっ これをっ!」
ガルイッドがN2爆弾を見せる シェイムが一瞬目を細めてから白々しく言う
「良いのですか?貴方の使える駒は 数が限られている こんな所で その駒を使い捨てても?マスターブレイゼス?」
ガルイッドが悔しそうにする シェイムが言う
「その爆弾を抱えて 大人しく引き下がると言うのなら 国防軍の彼らも手出しはしないでしょう?駒の無駄遣いはしない事です」
ガルイッドが悔しそうにN2爆弾を持った手を下げようとする シェイムが思う
(良し… これで この場は何とか…)
途端に ガルイッドが顔を上げ 微笑して言う
「いや そんな事は無い」
シェイムが驚いて言う
「なっ!?」
ガルイッドがハイケルを見て言う
「ここでお前たちを皆殺しにすれば 少なくとも1人の悪魔の兵士を再起不能に出来る」
ハイケルが驚く シェイムがハイケルを見る ガルイッドが微笑して言う
「どうやら お前たちは知らないようだな?悪魔の兵士の その使い方を… 原本を持つ者ヴォール・アーヴァイン・防長 お前が死ねば 悪魔の兵士は蘇らない」
軍曹がハッとして言う
「なぁあっ!?」
ガルイッドが微笑して言う
「これで1人…」
ガルイッドがN2爆弾を手放す シェイムが思う
(こうとなってはっ!)
皆が目を見開く シェイムが強い意思を持って思う
(シュレイゼス!マシーナリーを!…彼らの盾にっ!!)
マシーナリーたちが動く シェイムが背を向けつつそれを見て思う
(本当に これで持ち堪えるか!?しかし 私に出来る事は もはや ここまで…っ!)
シェイムが出口へ逃げようとする ハイケルとすれ違い シェイムがハイケルを見る ハイケルがガルイッドへ向かって行く シェイムがハイケルを見たまま頷き シェイムが逃げ去る 強い光が辺りに広がる 国防軍プロイム駐屯地の一角で爆発が起きる

【 国防軍プロイム駐屯地 外部 】

地面が揺れている 特警隊員たちが慌てつつ 副隊長が言う
「攻長閣下!?」
ラミリツが旧地下倉庫へ顔を向けて言う
「兄上っ」
シェイムが物陰からラミリツを見て微笑してから消える ラミリツが旧地下倉庫へ走って向かう 副隊長が言う
「攻長閣下!…総員 攻長閣下へ続け!」
GPT隊員たちが言う
「了解!」
GPT隊員たちがラミリツを追って走る

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

スピーカーからマイクが叫ぶ
『国防軍プロイム駐屯地でM8規模の爆発を確認 爆心は旧地下倉庫からと推定!爆発の規模から推測して 恐らくN2規模の爆薬が使われたものと!』
アースが慌ててスピーカーへ注目する バックスが言う
『国防軍プロイム駐屯地情報部へ 被害の状況と旧地下倉庫へ向かった隊員たちの安否を確認させろ!』
情報部員が言う
『駄目です 爆発の影響か通信が途絶えています!』
バックスが言葉を失う アルバートが言う
『ハイケル少佐っ』
アースが表情を焦らせて言う
「アーヴィン…っ!」
アースが書類を握り掛ける 書類にヴォール・アーヴァイン・防長の名前が記入されている

【 国防軍プロイム駐屯地 旧地下倉庫 ゲート2 】

ラミリツが走っていると前方に隊員たちが見える ラミリツがハッとして言う
「レギスト!」
隊員Bが言う
「あー?攻長閣下ー」
ラミリツが隊員たちの前に到着して言う
「兄…っ は、犯人はっ!?どうなったの!?シェイム…  ねえ!?あいつはっ!?隊長はっ!?ハイケル少佐っ!ちゃんと 約束…っ 約束したよね!?ちゃんと連れて来るってっ 今度こそ逃がすなってっ!?了解って言っただろ!?何処っ!?あいつは何処!?」
軍曹がやって来る ラミリツが気付き軍曹の前に行って言う
「アンタも無事だったって事はっ!?」
ラミリツが周囲を見渡し 困惑して言う
「ちょっ… どう言う事!?隊長は何処?アイツは本体1人しか居ないんだからっ …何処だよっ!?早く報告っ!」
軍曹が言う
「すまん… ラミリツ攻長 少佐は…」
ラミリツが言う
「少佐は?ハイケル少佐は何処!?」
軍曹がマイクロチップを見せて言う
「少佐は… 今はお話は出来ないのである 従って…」
ラミリツが言う
「…何それ?…そんな姿じゃ兄上を助けられないじゃないっ!?兄上は何処っ!?ねぇ 答えろよ!アンタだって 知ってるんじゃないのっ!?」
軍曹が言う
「自分は… 守りの兵士として …逃げるしかなかったのだ …メイリス殿は …自分たちより 前方に」
ラミリツが目を見開いて言う
「それで…っ 何処に…っ!?」
ラミリツが周囲を見渡す イヤホンにマイクの声がする
『…こえますか!?レギスト機動部隊!応答を!聞こえますかっ!?こちら 国防軍レギスト駐屯地情報部!』
隊員Aがイヤホンを押さえて言う
「こちら 国防軍レギスト機動部隊 通信 聞こえます マイク少佐」
マイクが言う
『あっ 繋がった!国防軍レギスト機動部隊 通信を確認!状況を伝えて下さい!えっと…っ 隊員たちの生存を 優先して!状況を!』
隊員Aが言う
「国防軍レギスト機動部隊は 隊長のハイケル少佐を除き 59名の生存 及び 国防軍第7部隊48名を確認 国防軍所有地へ不法侵入していた 元政府研究局局長 ガルイッド・ベーク・ハーベス は恐らく死亡 同じく 指名手配犯シェイム・トルゥースは …未確認です」
ラミリツが言う
「未確認って?」
隊員Bが言う
「分かんないのー ガルイッド何とかって人はー それっぽい跡が残っていたけど メイリス元長官の方はー それっぽいのも無かったしー?」
隊員Cが言う
「けど もしかしたら… 少佐みたいに 跡形もなくって 事も…」
ラミリツが息を飲んでからイヤホンを押さえて言う
「国防軍レギスト駐屯地情報部!ハブロス総司令官へ伝えて!現場の捜索委託を!政府警察へっ!」
イヤホンからアースの声がする
『国防軍レギスト機動部隊 状況は確認した 後の事は プロイム駐屯地の担当へ委託し 総員帰還せよ』
ラミリツが言う
「ハブロス総司令官!」
アースが言う
『共に 政府特殊警察機動部隊 諸君の支援を感謝する 諸君も国防軍レギスト機動部隊と同様に 速やかに帰還せよ』
ラミリツが言う
「何でっ!やらせてよっ!?」
アースが言う
『ラミリツ・エーメレス・攻長閣下 任務に私情は持ち込まないで頂きたい 現場は国防軍私有地であると共に 元とは言え国防軍のマスタートップシークレットであった場所だ 組織の機密保持の為にも そちらの現場からは早急に お引取りを願いたい』
ラミリツが怒る アースが言う
『加えて 現場検証が済み次第 その結果は包み隠さず お知らせする事を約束する』
ラミリツが表情を悲しませ悔し涙を堪えてから言う
「…絶対だよっ?」
アースが言う
『ああ…』
ラミリツが一度息を吐くと 気を取り直して言う
「政府特殊警察機動部隊… 撤収するっ」
特警隊員たちが言う
「了解っ 攻長閣下っ!」
ラミリツが軍曹を見てから言う
「…ちゃんと 蘇らせてやるんだよ?…そいつ」
軍曹が苦笑して言う
「う、うむ… と、当然だ!…であるっ」
ラミリツが苦笑して言う
「うん…」
ラミリツが立ち去る 特警隊員が続き 隊員たちが軍曹を見る 軍曹がマイクロチップをしっかりと握り歩き出す 隊員たちが続く 第7部隊隊員が軍曹を見た後舌打ちをして言う
「…今は無理か …ならば  それよりも」
第7部隊隊員たちと共に 第7部隊隊員が立ち去る

【 国防軍総司令官本部 総司令官室 】

ラミリツが言う
「話って 何?僕は… 兄上は見付かったのかって… それを聞きたいだけだよ 例え… その痕跡だけだったとしても」
アースが振り返って言う
「結論から言うと あちらの現場から 彼の痕跡は 骨の燃えカス1つすら 見付からなかった」
ラミリツがアースを上目遣いに見て言う
「それって…?」
ラミリツが視線を泳がせる アースが言う
「報告としては以上だ 彼に関する情報として 隠しているものは何一つ無いという事を誓う… 何なら、そうだな?こちらに誓って?」
アースがエルムの人形を置き直す ラミリツがそれを見てからアースを見て言う
「どういう事?別に 僕は その報告を疑うつもりは 無いけど?」
アースが言う
「では、この報告を踏まえ 貴方に1つ伝えておく 私は これから公へ偽りの公表を行う」
ラミリツが呆気に取られて言う
「え…?」
アースが言う
「そちらを貴方に御了承頂きたい」
ラミリツが言う
「それって…?何…?」

【 カルンゼスの屋敷 】

TVにニュースが流れていて キャスターが言う
『先日の国防軍プロイム駐屯地への襲撃は 元政府研究局局長 ガルイッド・ベーク・ハーベスが引き起こしたとであった事が 本日 国防軍より発表されました 尚 国防軍に追い詰められたガルイッド元政府局長は爆弾を使って自爆し 国防軍の一施設を爆破したとの事です 共に、事件には指名手配犯シェイム・トルゥースも関与していた疑いがあり 同氏はガルイッド元政府局長の自爆の際 その爆発に巻き込まれて死亡 本日 両2名の遺体が確認されたとの事です』
イリンゼスが言う
「あれ?両2名の遺体が確認って… シェイムも死んだ事になってるぜ?何でだ?」
イリンゼスが振り返った先 シェイムがTVを見て呆気に取られている メルフェスが微笑して言う
「シェイム殿」
シェイムが苦笑して言う
「これが… 彼流のお礼という事でしょうか?それとも…?」
メルフェスが言う
「ハブロス総司令官が マスターたちの能力を御存知であるかどうかは分かりませんが 国防軍の隊員たちを マシーナリーの盾を使ってお守りした シェイム殿へのお礼 …もしくは謝罪でしょうか?」
シェイムが苦笑して言う
「彼は高位富裕層の方らしくプライドは高そうですので 私の冤罪への謝罪などは  されないと思います …しかし、どちらにしても助かります」
メルフェスが言う
「はい、指名手配犯シェイム・トルゥースは 死亡した事になったのですから …これで 貴方も晴れて自由の身です」
イリンゼスが反応して言う
「あぁ そう言う事か なら …うん?今 何か言ったか?」
シェイムが言う
「はい?」
イリンゼスがTVをミュートにして言う
「今 聞こえたぞ?仲間たちの声… ハブロス総司令官がって…?」
シェイムがTVへ注目する シェイムの脳裏に声が聞こえる
『マスターの仲間たち 国防軍のハブロス総司令官は 我らマスターの仲間を 助けた』
シェイムがハッとする 脳裏に声が聞こえる
『ハブロス総司令官が マスターの仲間を?』 『マスターの仲間を助けた?それなら ハブロス総司令官は…』 『仲間だ』
シェイムが呆気に取られる 脳裏に声が聞こえる
『では 国防軍は?』 『マスターの仲間を助けてくれた者は マスターの仲間だ』 『なら 助けないと 彼を …彼の国防軍を』 『助けよう 仲間だから』
シェイムが言う
「ではっ!」
シェイムの脳裏に声が聞こえる
『彼はマスターシュレイゼスを助けた だから礼を用意した マスターシュレイゼス これをハブロス総司令官へ』
シェイムがTVへ手を向ける シェイムが呆気に取られて自分の手を見ると 脳裏に声が聞こえる
『分かった それを受け取りに行く そして、マスターグレイゼス その礼は 俺が渡しに行く』
シェイムが呆気に取られて言う
「え?では 私が… ハブロス総司令官の下へ?」
メルフェスが言う
「お礼を言いに 向かわれるのですか?シェイム殿」
シェイムが苦笑して言う
「どうやら その様です …私の死亡を確認して頂いた国防軍へ その私がお邪魔しては …驚かれてしまうかと思いますが?」
メルフェスが軽く笑って言う
「っはは… 確かに どちらにしろ驚く事は間違いないでしょうね?」
シェイムが微笑する


続く
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