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14章

アールスローン戦記Ⅱ テイクオフ

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【 病院 】

隊員Fがゆっくりと目を開いて言う
「…ん?…ここは?」
隊員Fがふと気付いて視線を横へ向けると 隊員Iが感涙しながら言う
「フ… フ… フゥ~ッ!」
隊員Fが疑問して言う
「イリアス… 隊員…?」
隊員Iが泣きながら叫ぶ
「フレッド隊員ーーっ!!」
隊員Iが号泣する 隊員Fが呆気に取られる

【 帝国 】

ハイケルが視線を強め 念力を送っている様子で言う
「く、くぅ~っ!」
ハイケルの視線の先 敵マシーナリーがレッドシグナルを光らせ ハイケルの前にあるシールドを攻撃している ハイケルがシールドに守られている状態のまま 思う
(”奴らを操る”…っ 奴らはっ ”私と同じ”…っ 元はアールスローンの王女の… ペジテの姫の敵だった… それは初世代の悪魔の兵士と同じ…っ ならば…っ ”私ならば”…っ 奴らを…っ!)
ハイケルが表情をしかめて更に力むと 突然エレキギターの音が響くハイケルが衝撃を受けて言う
「な…っ!?」
敵マシーナリーが反応して音源へ顔を向ける ハイケルが呆気に取られて顔を向けると 敵マシーナリーが一度停止し レッドシグナルが消える アースの声が聞こえる
「その様子では いくら時間を掛けようとも 彼を仲間にする事は出来ないだろうな?ハイケル少佐?」
アースがシールドの先に現れる ハイケルがアースを見て言う
「ハブロス司令官 …なっ!?そちらに入ってはっ!」
アースが言う
「否」
ハイケルが疑問する アースが敵マシーナリーへ手を触れて言う
「彼は既に 我が仲間となりて 案ずる必要はあらず」
敵マシーナリーにグリーンシグナルが灯り アースへ向くとコックピットが開かれる ハイケルが呆気に取られていると アースが微笑してマシーナリーへ言う
「ほう?私を連れて行ってくれると言うのか?お前は優しい奴だな?…では共に行くか?先に我々の仲間となった お前の仲間たちが ART本部で待っているぞ?」
ハイケルがハッとして言う
「ま、待てっ!ならば もう一体!マシーナリーを用意してくれっ!それを使い 今度こそ 私がっ!」
アースがマシーナリーのコックピットへ向かいながら言う
「うん… やはり 私に皇帝の真似は似合わないな… こちらは封印しよう」
ハイケルが言う
「ハブロス司令官っ!」
アースがシートに座って言う
「気持ちは分かるが 残念ながらタイムアップだ ハイケル少佐 私もARTの司令官として忙しい… お前に付き合ってばかりも居られないんだ それに ART1の隊員たちも お前の戻りを待っているだろう?既に始業時間を 3時間オーバーしている 減給対称だな?」
コックピットのハッチが閉まる ハイケルが慌てて言う
「待て!戦いが始まると言うからには 初世代の悪魔の兵士である 私の力を早急に解明しなければならない筈だっ 皇帝の力を受ける以前の 敵対するマシーナリーを 操る事が出来ると言う 私の力をっ!」
アースの乗り込んだマシーナリーがハイケルへ向いて言う
「ああ、まったくその通りなのだが お前は 初世代の悪魔の兵士であると同時に ART1の隊長でもある そうとある以上 そちらの業務もおろそかにする事は許されない 従って 早々にART本部へ帰還しろ ハイケル少佐 命令だ」
ハイケルが言う
「しかしっ!」
アースの乗り込んだマシーナリーが他方を向いて言う
「エルム少佐 しばらくこちらを頼む なるべく急いで戻るが 何かあれば連絡を」
マシーナリーの視線の先 エルムαが居て言う
『了解 司令官』
ハイケルが反応してエルムαを見ると 通路が開き アースの乗り込んだマシーナリーが滑走して出て行く マシーナリーが去った先を見ていたハイケルへ エルムαが言う
『ART本部へ帰還しろ 司令官命令 …だ』
ハイケルが苦笑してから言う
「…貴方は何時から それほどまでに ハブロス司令官へ従順になったんだ?それに… 貴方はもう 蘇れないのではなかったのか?」
エルムαがハイケルを視線だけで見て言う
『私は… 蘇りはしない 私は… 悪魔の兵士 …ではない』
ハイケルが疑問して言う
「”悪魔の兵士ではない”だと?それ… はっ!?」
ハイケルが後方から首根っこを摘み上げられる ハイケルが衝撃を受けて振り返ると エルムα2がハイケルを持ち上げていて言う
『悪魔の兵士 …を 捕獲した』
ハイケルがもがきながら言う
「は、離せっ!エルム少佐っ!?」
エルムαが言う
『帝国外 アールスローンサイド …へ 廃棄しろ』
エルムα2が言う
『了解』
ハイケルが持って行かれながら叫ぶ
「どう言う事だっ!?説明をしろっ!エルム少佐っ!?それから…っ その小動物でも摘み上げるかの様な 搬送は止めろっ!私は 小動物ではなく 悪魔の兵士だっ!」
エルムαが言う
『…欠陥品の』
エルムα2が言う
『欠陥品の』
ハイケルが怒って言う
「悪かったなっ!」

【 マシーナリー内 】

ナックキラーの曲に合わせ エレキギターの音が響いている 携帯が鳴り アースが反応して演奏を止めると言う
「ん?何だ?折角の所を…」
アースが携帯を着信させて言う
「ハブロス司令官だ」
携帯からグレイゼスの声が聞こえる
『こちら ART司令塔主任マスターグレイゼス中佐 お疲れ様です ハブロス司令官』
アースが言う
「どうした?特に急を有している 様子はない様だが?」

【 ART本部 司令塔 】

グレイゼスが言う
「はい …とは言いましても こちらで未登録のマシーナリーが一機 街中を走行しているようなのですが… もしや?」
グレイゼスが視線を向けた先 モニターに表示されている地図に緑の印が移動している

【 街中 】

路面電車の遮断機が下り 表示にマシーナリーの絵が点灯する 人々が遮断機の前で待っていると マシーナリーが過ぎ去る

【 マシーナリー内 】

携帯が置かれている アースがエレキギターの調整をしながら言う
「識別信号は 確認出来ているだろう?ならば 表示がなされていようとも 問題は無い」
置かれている携帯から グレイゼスが苦笑して言う
『システム的にはそうですが… 一応 ご一報を頂ければと?』
アースがエレキギターの調整を終え構え直して言う
「そもそも 帝国の城壁を超え こちらへ入り込むマシーナリーが居るとすれば それこそ緊急を有する事態だが …その時には 帝国のセンサーはもちろん ARTの防衛レーダーも そちらの進行を見逃す事は無い様にと 作らせただろう?他に用が無いのなら 切るぞ?…今 良い所なんだ」
グレイゼスが慌てて言う
『あぁっ でしたら その前にひとつ!』
アースが携帯へ伸ばしていた手を止める

【 ART本部 司令塔 】

グレイゼスが言う
「ハイケルの… ハイケル少佐の”実験”の方は 如何でしたでしょうか?成功 …しましたか?それに もし 出来ましたら そちらの精密なデータなども頂けますと ARTにとっても 今後の良い研究材料になりますかと…?」
グレイゼスのイヤホンに沈黙が流れる グレイゼスが疑問して イヤホンを押さえて言う
「あの… ハブロス司令官?」
イヤホンに大音量のエレキギター音が響く グレイゼスが驚いて叫ぶ
「ぎゃあぁっ!?」
オペ子たちが一瞬驚いて グレイゼスを振り返って言う
「ちゅ 中佐…っ?」

【 マシーナリー内 】

アースが激しいエレキギター曲を掻き鳴らしている

マシーナリーが線路を滑走し ART本部へ向かって行く

【 病院 】

隊員Fが苦笑して言う
「そっか… それで…」
隊員Fが視線を向けると 隊員Iが涙に暮れている 隊員Aが隊員Iの肩に手を置いて苦笑して言う
「良かったな?イリアス隊員?」
隊員Iが頷きながら言う
「うん…っ うん…っ!」
隊員Nが苦笑して言う
「医者にも もう大丈夫だって 言われてたのにさぁ?それでも 意識が戻るまで 傍に居るって聞かなくてよぉ~?それとも~?本当は 部隊訓練 サボる口実だったのかぁ~?」
隊員Cが言う
「そんな訳無いだろ?ナクス隊員じゃねぇんだから?」
隊員Nが衝撃を受けて言う
「そりゃ どういう意味だよっ サッちゃんっ!」
隊員Cが言う
「サッちゃん 言うなっ!」
隊員Iが涙を拭って言う
「けど 本当に良かった… あのまま フレッド隊員が… 本当に居なくなっちまってたら…っ 俺…っ 俺 とても ART1の皆の前には居られなかった…っ 今だって 本当に…っ」
隊員Iが息を詰まらせる 隊員Fが一瞬呆気に取られてから言う
「え…?そんな…」
隊員Nが言う
「何だよ?それじゃ 助けた意味がねぇじゃん!?なぁ?フッちゃん隊員?」
隊員Fが苦笑して言う
「そうだよ イリアス隊員… それなら 俺の分まで 頑張ってくれなきゃ…」
隊員Iが言う
「無茶言うなよ…っ 俺なんかがいくら頑張っても とても フレッド隊員の分なんて 賄えやしないっ むしろ…っ 俺が…っ!」
隊員Iが息を飲んでから気を取り直して言う
「本当に …ごめん フレッド隊員 それに 皆にも…っ」
隊員Iが頭を下げる 皆が呆気に取られてから 隊員Aが言う
「そんな事言うなよ イリアス隊員?俺たちは皆 同じ仲間だろ?時には助けたり 助けられたりして 協力して戦うチームじゃないか?」
隊員Iが言う
「それは そうかもしれないけど…っ 俺とフレッド隊員じゃ 比べ物に…っ」
隊員Cが怒って言う
「それ以上言うなっ!イリアス隊員っ!」
隊員Iが言う
「けど…っ サッちゃんっ」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「サッちゃんも言うなっ」
隊員Fが苦笑して言う
「俺…さ?」
皆が隊員Fを見る 隊員Fが言う
「嬉しかったんだ …俺は 今まで ずっと1人で… 戦闘機マニアの暗い奴… で」
隊員Fが苦笑して言う
「小さい頃から… 警機の基地に 1人で行って… 金網越しに ずっと見ていたんだ… ただ 憧れて見ているだけだった… それが… レギストやARTに入って 皆と 一緒に… 大好きな 特別な戦闘機に乗って… それで皆に 期待してもらって 凄く… 嬉しかった… …だから」
皆が呆気に取られる 隊員Fが隊員Iを見て言う
「守りたかったんだ… ART1の皆を… 皆は… 俺の大切な 家族みたいなものだから…」
隊員Iが驚きに目を見開く 隊員Fが苦笑して言う
「ちょっと 無理 しちゃったけどさ…?イリアス隊員を 助けられて… 良かったって 思ったよ?」
隊員Iが涙を流して言う
「フレッド… 隊員…っ!」
隊員Fが苦笑する 隊員Iが号泣して叫ぶ
「兄貴って 呼ばせてくれぇえーっ!!」
隊員たちが転ぶ 隊員Fが呆気に取られている

【 ART本部 格納庫 】

マシーナリーのハッチが開き アースが降りると 作業員が言う
「お帰りなさいませ 司令官!」
アースが言う
「新たに調達したマシーナリーだ 特に問題は無いと思うが センサー類 及び 認識システムのチェックと 仕様の確認を」
作業員が言う
「了解!」
別の作業員が マシーナリー内からエレキギターを取り出し疑問する

【 ART本部 司令塔 】

魔法瓶のコップにコーヒーが注がれ グレイゼスがサンドイッチを食べながら 資料を見ていて言う
「ふーん…?やっぱり こっちのシステムの方が効率は良いかぁ… けど 燃料消費率3%は厳しいなぁ… こうなったら エネルギー流用チャージの開発を 本気で急がせるべきか…」
オペ子Aが通り掛かり気付いて言う
「わぁ… 良い香りっ」
グレイゼスが反応する オペ子Aがグレイゼスへ言う
「コーヒーなのに 何だか お花の香りが香っているみたい?」
グレイゼスが言う
「お?分かる~?ほんの少しなんだけど 香りを付けてみようかってね?いくらコーヒー好きでも たまには こんな感じで 添加された香りを楽しむのも 有りかと思ってさ?」
オペ子Aが微笑して言う
「良いですね!コーヒーの香りの邪魔にならない感じで とても良い感じです!どちらの銘柄なんですか?私も買ってみようかな?」
グレイゼスが得意げに言う
「ふっふ~ん これは 既存のモノでは無いんだ?うちの喫茶店だけの オリジナルでね?まだ 試作段階なんだが」
オペ子Aが言う
「え?”うちの喫茶店”?中佐のご実家は 喫茶店を経営されているんですか?」
グレイゼスが言う
「いや?実家じゃなくて 俺の店なんだ?」
オペ子Aが呆気に取られて言う
「え?中佐の…?」
グレイゼスの携帯が鳴る グレイゼスが携帯を取り出しながら言う
「おっと 失礼?は~い?こちら 喫茶店マリーシアーで~す!…じゃなかった ART本部 司令塔で~す?」

【 ART本部 駐車場 】

ハイケルが車を降り 携帯で電話をしている状態で 表情をしかめて言う
「…随分と 気が抜けている様だな ART司令塔主任 兼 マシーナリー研究開発部長 マスターグレイゼス中佐」
携帯からグレイゼスの声が聞こえる
『硬い事言うなよ~?ハイケル~?相変わらずだなぁ?こっちは 今 昼休み中なの~っ』
ハイケルが言う
「アールスローンの防衛に 昼休みも何も無いと思うが?」
グレイゼスが言う
『そんな事言ったってなぁ そう何時も何時も 堅苦しくなんか居られるかよー?俺たちは マシーナリーじゃ 無いんだぜー?』
ハイケルが言う
「それは…」
ハイケルがART本部に入って行く

【 ART本部 司令塔 】

グレイゼスが紙コップに魔法瓶のコーヒーを注いで オペ子Aへ渡す オペ子Aが身振り手振りで喜びと礼を示すと グレイゼスが微笑して頷く 携帯からハイケルの声が聞こえる
『マシーナリーが機械であると言う事の例えか?それとも マシーナリーの装甲が硬いと言う事を用いての比喩か?』
グレイゼスが言う
「その2つを超える お前の頭の固さだよ?ハイケル」
ハイケルが一瞬沈黙してから言う
『…私の頭蓋骨は マシーナリーの装甲程 硬くは無い筈だが?』
グレイゼスが衝撃を受け言う
「いや、そうじゃなくて…」

【 ART本部 入り口 】

ハイケルが電話をしつつIDを通すとメンバーボードの色が変わる ハイケルが隊員たちの出隊状況を確認して疑問して言う
「…うん?そんな事よりも グレイゼス?隊員たちの出隊状況表示が異常だぞ?システムの故障か?」
グレイゼスが言う
『失礼だなぁ~ ハイケル?そのシステムは この俺が組んだんだぞぉ?』
ハイケルが言う
「だからこそ確認をしている アラン隊員やサキシュ隊員 それに ナクス隊員の3名に 休暇申請は出されていない そして、彼らは無断でそのような事をする様な者でもない そうとなれば」
グレイゼスが言う
『その3名は今 フレッド隊員の見舞いに行っている 1時間ほど前に 意識が戻ったって連絡があったんだ』
ハイケルが一瞬反応した後微笑し言う
「…そうか」
ハイケルが歩く グレイゼスが言う
『ああ、それで おそらく昼休憩の間にって事だろう 12時頃にその3人が 揃って本部を出て行ったんだ フレッド隊員の入院先は 国防軍の指定病院ではあるが だからと言って 大人数で行っても迷惑だからな?それで その3名に絞ったんだろう?元々1名は付き添っていた訳だし』
ハイケルが微笑して言う
「…そうだな これで そのイリアス隊員も 部隊訓練に復帰出来るだろう …そして 怪我が治れば フレッド隊員も」
グレイゼスが言う
『休憩時間には まだ余裕があるから お前も行くって言うなら…』
ハイケルが言う
「いや 私は…」
グレイゼスが言う
『うん?何だよ ハイケル?こう言う時にはなぁ?負傷した隊員へ 隊長がねぎらいの言葉を掛けてやるべきなんだぞ?そうしてやる事で 隊員の早期復帰への意欲に 繋がるってもんで』
ハイケルが言う
「そのような事をしなくとも フレッド隊員は 怪我さえ治れば 最速で ART1へ戻って来る」
グレイゼスが言う
『うん?まぁ 確かに あのフレッド隊員なら そうだろうが…』
ハイケルが言う
「それよりも 私が行く事で フレッド隊員を気遣っていた イリアス隊員へ 負担を与えると言う可能性の方が高い …後に フレッド隊員が戻ろうとも イリアス隊員を欠く事も 私のART1には 許されない」
ハイケルがART1格納庫へ顔を向ける 格納庫内では ART1マシーナリーが複数動き 周囲で隊員たちが昼食を頬張っている ハイケルが微笑する

【 ART本部 司令塔 】

グレイゼスが呆気に取られた状態から苦笑して言う
「…へぇ?…っはははっ」
携帯からハイケルの不機嫌な声が聞こえる
『…なんだっ?』
グレイゼスが言う
「いんやぁ?確かに!それで 正しい …いや、良いんじゃないか?」
ハイケルが言う
『…どういう意味だっ?』
グレイゼスが気を取り直して言う
「なぁ~に!俺が思っていたより!…悪魔の兵士は 部隊長向きだったって事だよっ?」

【 ART本部 格納庫前 】

ハイケルが表情をしかめて言う
「…うっ 悪魔の …兵士 か…」
携帯からグレイゼスの声が聞こえる
『うん?どうしたぁ?ハイケル?』
ハイケルが視線を逸らして言う
「いや…」
グレイゼスが言う
『あー そうそう それで?結局どうだったんだ?…実験の方は?』
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ!?」
グレイゼスが言う
『ハブロス司令官には はぐらかされちまったんだが… 改めて考えてみたら もしかして~?アレは 情報の提示に対して 何か… 司令官の方で都合が良くない事でもあったのか?…とも思ってな?何しろ ハブロス司令官は ARTで唯一 …いや、このアールスローンで 唯一 陛下とお話が出来る お方だから…』
ハイケルが言う
「その… ハブロス司令官なのだが …確認をしたい マスターグレイゼス」
グレイゼスが言う
『うん?ハブロス司令官がどうかしたのか?ハイケル?』
ハイケルが言う
「今更聞く様だが… ハブロス司令官は …お前たちの仲間 マスターの名を持つ者ではない …のだな?」
グレイゼスが言う
『はぁ?』

【 ART本部 入り口 】

高級車が止まり ドアが開かれる

【 ART本部 格納庫 】

M隊員Bが止まり気付いて言う
「あ!少佐ぁーっ!」
隊員たちが気付き言う
「お早う御座います!少佐!」 「お疲れ様です!」
ハイケルが言う
「ああ… お早う …と言うには もう 昼休みだ …遅くなってすまない 午前中の訓練内容を 伝達してくれ」
隊員が言う
「はっ!少佐!午前中の訓練内容は… その… 正直 皆 自主トレって感じでした …最初はアラン隊員の指示の下で 皆でマシーナリーを使った訓練をしようって話だったんですけど どんな訓練にするかって言うのが まとまらなくて…」
別の隊員が言う
「結果的に 各々でって事に」
隊員Bが走って来て言う
「少佐ぁーっ!お早う御座いますでありますーっ!でもって 少佐ぁ 少佐ぁーっ!フッちゃんの意識がっ!」
ハイケルが言う
「ああ、フレッド隊員の意識が 戻ったそうだな?」
隊員Bが言う
「あれー?なんだー 知ってたんだー?イッちゃんから連絡受けたの 俺だったからー?少佐は 知らないかと思ったでありますーっ 少佐ぁーっ?」
隊員が隊員Bへ言う
「少佐はART1の隊長なんだから イリアス隊員だって 最初に少佐へ連絡しただろう?」
隊員Bが言う
「えー?でも イッっちゃん すげー喜んでてー?正直 言ってる事 滅茶苦茶だったからー?あれで 俺より前に少佐に連絡出来たのかなー?ってー?」
ハイケルが言う
「イリアス隊員からの連絡は 私は受けてはいないが 先ほど マスターグレイゼス中佐から そちらの話を確認した …もっとも 恐らくは 奴の趣味である…」
グレイゼスが咳払いをして入って来て言う
「う、うんっ!止めてくれよ ハイケル?こっちだって 会話の内容を全て監視しているって訳じゃないんだ 予め設定して置いた指定単語に引っかかった 内容だけを …ARTの業務としてだなぁ?」
ハイケルが言う
「そうなのか?」
グレイゼスが言う
「当たり前だろ?じゃ無ければ まるっきり 盗聴じゃないか?」
ハイケルが言う
「盗聴だろう?」
グレイゼスが言う
「違うと言わせてくれ」
隊員Bが言う
「えー?それじゃー…?つまり 俺とイッちゃんの あの時の会話を 中佐も聞いてたって事でありますかー?中佐ぁー?」
グレイゼスが言う
「ああ、少しだけな?フレッド隊員って単語に続いて 意識が戻ったって単語が確認されていたものだから 最初のヒットから 5秒ほどさかのぼった所から 聞かせてもらったよ …って訳だから、一応 ごめんな?」
隊員Bが言う
「はーっ 了解でありますー 中佐ぁー!…けど なんかやっぱ 恥ずかしいでありますー 中佐ぁー?だって 俺ー… 折角意識が戻ったって言うのに その フッちゃんのお見舞いに 行けないほど…」
ハイケルが言う
「そう言えば アラン隊員は兎も角として 誰よりも1番に向かうと予測していた バイスン隊員が行かなかったと言う事は …私にとっては 予想外な結果であったのだが?」
グレイゼスが言う
「ああ それは…」
ハイケルが言う
「それは?」
グレイゼスが言う
「いや、盗聴内容は 口外しない事で 許されるものだと 俺は 信じているからな?」
ハイケルが言う
「既に口外していると思うが?」
グレイゼスが苦笑して言う
「うっ… だからそれは 必要業務としてだってっ …言わせるなよ?」
隊員Bが苦笑して言う
「その~… 俺ー あの時…」
ハイケルとグレイゼスが隊員Bを見る 隊員Bが言う
「皆 冷静だったのにー?俺1人で騒いじゃってー… チョーカッコ悪かったから… だから 今回もまた 1番乗りで行ったら チョーカッコ悪いかなぁ… って思ってー?それで…」
グレイゼスが苦笑して言う
「俺は カッコ悪くなんか 無いと思うけどな?」
隊員Bが言う
「えー…?中佐ぁ… けどー…」
グレイゼスが言う
「仲間の為に必死になれるって言うのは 俺はむしろ カッコいいと思うぜ?フレッド隊員もそうだが 他人の為に 力を尽くせるって言うのは 本当に 力のある奴にしか 出来ない事だ …俺はそう思う」
ハイケルが言う
「そうだ 私も同感だ それに何より あの時 バイスン隊員が声を上げなければ 結果として フレッド隊員は 助からなかったと言う可能性も 示唆されている」
グレイゼスが言う
「うん?それは どう言う事だ?…そう言えば フレッド隊員のマシーナリーは 回収の必要さえ無いとされる 破損ランクEランクとの事だったが?…正直 それで良く助かったと俺は思っていたんだ 何しろ コックピットが大破する攻撃を受けた って報告だったよな?」
ハイケルが言う
「ああ、それは…」

【 ART本部 応接室 】

アースが入って来て言う
「わざわざ こちらへ呼び立ててしまい申し訳ない 私は アールスローン帝国軍 レギスト特殊部隊 通称 ARTの司令官 アース・メイヴン・ハブロスだ …貴方の来国を歓迎する」
アイザックがソファから立ち上がって言う
「奉者協会会長であり ウィザードの アイザック・シュテーゲルだ」
アースが反応して言う
「うん?ウィザード… 確か?」
アイザックが言う
「聞き覚えが?こちらへ伺う以前に話をした 政府長長官殿や国防軍総司令官殿には 初耳であると言われたのだが?」
アースが言う
「ああ、私も耳にしたのは…」
アースがアイザックの前の席に立ち 着席を促してから自身もソファへ腰を下ろして続けて言う
「昨日の事だが それでも 確か 彼は… ”マリアのウィザードさま”であると?」
アイザックが一瞬反応してから苦笑して言う
「そうか… 奴も来ていたのか」
アースが言う
「奴?では やはり貴方に関係する方であると言う事か?何しろ 同じ ウィザードであると 名乗っていたのだからな?」
アイザックが言う
「ああ… 確かに 同じ ウィザードであるが… そうだな 同じであると して置こう」
アースが言う
「ほう…?」

【 ART本部 格納庫 】

グレイゼスが呆気に取られて言う
「”魔法の様な力”に… 助けられたぁ…?」
ハイケルが不満そうに言う
「嘘だと思うだろう?または 夢でも見ていたのでは?と だが しかし、その光景は 私だけではない ここに居るART1の隊員たちが皆の目で見て 確認していた事だ」
グレイゼスが考えて言う
「う~ん… とは言えなぁ?致死量に至る出血を押さえ 尚且つ 傷を回復させただなんて… そんな まるで 魔法か何かの様な?」
ハイケルが言う
「だから ”魔法の様な力に” と 言っているだろう?俺は嘘は言わないっ」
グレイゼスが苦笑して言う
「ああ、そりゃ 分かってるが 俺が考えているのは その魔法のような力の正体の方だ 現実的に考えたって お前だって 魔法なんて力が あるとは思わないだろう?」
ハイケルが言う
「そうでもない 俺から見れば お前たちマスターの力は 魔法と例えるのに十分 不可思議な力だ」
グレイゼスが言う
「知らない者が見れば そうかもしれないが 俺たちの力は 血中にあるナノマシーンと言う機械の力を持って 得ている力だ それは魔法とは言わないだろう?」
ハイケルが言う
「それは… そうかもしれないが …では やはり アレこそが魔法と言う物だったのか」
グレイゼスが言う
「いや、俺は信じないな?」
ハイケルがグレイゼスを見て言う
「だが」
グレイゼスが言う
「きっと そこにも何か カラクリがある筈だ …まぁ 分からない内は 魔法で良いのかも知れないが きっと 解明出来る筈さ」
ハイケルが言う
「そうか…」
グレイゼスが言う
「…それはそうと その”魔法使いさん”なんだが 今、このART本部に来てるって 知ってるか?ハイケル?」
ハイケルが反応して言う
「っ!…そうなのか?」
グレイゼスが言う
「ああ、…それに こいつは ちょいと残念なお知らせなんだが その魔法使いさんが こっちに来る以前に対話を行った ミックワイヤー長官やアーヴィン君との話し合いは… どうやら 破断しちまったらしい」
ハイケルが驚いて言う
「何っ?破談とはっ!?そもそも 彼を招いたのは…っ」
グレイゼスが言う
「元々政府の連中と俺たちは アールスローン国外… 出来れば アールスローン戦記の原本に記されていた 我々と同等に強い力を持つ 対の国とされる そちらの魔法使いさんたちの力を得ての… つまり 共同戦線を目指していたんだ …だが」
ハイケルが言う
「それが破断したと言うのかっ!?」
グレイゼスが言う
「ああ… 詳しい経緯は分からないが 世界を守るためであっても 彼らの力を貸してもらうと言う事は 難しいのかもしれない」
ハイケルが言う
「何故だっ?事はこの世界の…っ!彼らの国をも巻き込む事態である筈だ!そうであるのなら!…それに 彼の力は 我々と共に戦う力として 有力であると思われる」
グレイゼスが言う
「うん… 流石に あっちでの会話の内容までは 聞けなかったが …それでも 結果だけは その様に聞いているよ」
ハイケルが言う
「…そうか 何にせよ 破断した …つまり 断られたのか …では 今 このART本部に来ていると言うのは?」
グレイゼスが言う
「外交を担う政府と あのアーヴィン君の誘いに乗らなかった彼へ 最後の望みとして ハブロス司令官が対話を試みる様だが… どうだろうな?正直 どうなるかは 俺には分からない」
ハイケルが少し考えた後 時計を見てから 出入り口へ向く

【 ART本部 応接室 】

アースが言う
「なるほど… では 貴方方の国では …失礼 ”世界”では」
アイザックが苦笑して言う
「国で結構だ 我々には 自分たちの住む その土地以外に 人の住む土地が存在すると言う概念が無かった しかし それは存在し その人々が住む各々の土地の事を ”国”と呼ぶ… 貴方方に教えられた事だ」
アースが微笑し頷いてから言う
「では 改めて 貴方方の国では 各町や村へ ”灯魔台”と呼ばれる施設をつくり そこへ ”灯魔”と呼ばれる力を与える事により アウターからの脅威に耐えうる シールドの様な物を発生させる事が可能であると?」
アイザックが言う
「そうだ、そして その灯魔と呼ばれる力を 灯魔台へ与える事が 我々ウィザードの務めであり …公務の様なものだ」
アースが言う
「ふむ… では その貴方方の力があれば 我々もアウターへ進軍する事が 可能であると言う事だな」
アイザックが表情を硬くする アースが言う
「現状の我々では このアールスローンを守る城壁の外へ向かうには アウターの脅威から搭乗者を守る シールドが必要であり 活動時間は マシーナリーで発生させるそちらのエネルギーの量に依存してしまう その時間は シールドのみであっても 最長で8時間 実際には 戦闘行為や移動などの作動にもエネルギーが必要である事から 実働は6時間から5時間となってしまう …貴方方の力を得て シールドを張らずに 戦いにのみ専念出来るとあれば その時間は大幅に広がるだろう」
アイザックが言う
「しかし、我々は…」
ドアがノックされ ハイケルの声が聞こえる
「ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐であります」
アースが一瞬疑問した後気を取り直して言う
「…入れ」
ハイケルが言って入室する
「はっ 入ります!」
ハイケルがドアの前で敬礼してから アイザックを見て僅かに微笑する アイザックがハイケルのその様子に気付き微笑する アースがハイケルを横目に見て言う
「どうした ハイケル少佐?特に呼び出した覚えは無いが?」
ハイケルが言う
「はっ マスターグレイゼス中佐より こちらへ ウィザードのアイザック・シュテーゲル殿が お越しであると聞き 一言 御礼を伝えたく 参りました」
アースが言う
「礼を?」
ハイケルがアイザックへ向いて言う
「貴方の力により 治療を受けた隊員が 先ほど 意識を取り戻した 改めて礼を言う …あの時 貴方が力を貸してくれなければ 彼は確実に 命を落としていた」
アースが沈黙すると アイザックが微笑して言う
「意識が戻ったとあれば もう安心だろう 後は 怪我の完治まで安静にさえしていれば 体の方も」
アースが軽く咳払いをして言う
「うんっ …ハイケル少佐?報告書が出ていなかった様だが?」
ハイケルが衝撃を受け言う
「う…っ すまん」
アースが気を取り直して言う
「詳細は聞いていないのだが 私の部下が貴方のお力をお借りしたと?」
アイザックが言う
「フレイゼス殿と共に こちらのアールスローン国へ参った折 嘆きの声が聞こえた …その声の元へと向かった所」
ハイケルが言う
「私の部隊の隊員が 負傷ランクDランクにて 手の施しようが無い状態にあったのだが アイザック・シュテーゲル殿の魔法… い、いやっ …強力な力により 致死量の出血を止めると共に 傷の治癒を」
アースが言う
「そうだったのか …では 改めて このARTを統括する司令官として 貴方へ礼を言おう アイザック・シュテーゲル殿 我らARTの隊員の尊い命を 救ってくれた そちらへ …心から」
アースの言葉にハイケルが頷く アイザックが呆気に取られた状態から微笑して言う
「礼には及ばない 私は 己に出来る事として 当然の事を行ったまでだ 救える命があるのなら 救いたいと願う …そして」
アースとハイケルがアイザックを見る アイザックが言う
「貴方方は 自分たちの下の者であろうとも その一人一人の命を 大切に考えている様子だ その想いは 私にとっても とても心地よい …我々の世界では」
アイザックが一度言葉を切り 言い辛そうに言う
「一部の者ではあるが 己の地位や名誉の為に 下位の者を利用する有力者が居た …そして そこまでとは行かなくとも 上に立つ者は 少なからず 下位の者を蔑む考えがあった」
アイザックがアースとハイケルを見てから微笑する ハイケルが微笑すると アースが言う
「確かに 我々の世界に置いても 同様の考えはあった しかし 上に立つ者の中に置いても その様な考えは間違っているのだと 気付く者が現れ そして 今は…」
アイザックとハイケルがアースを見る アースが微笑して言う
「地位や名誉に関わらず 皆が 同じ目的の下に戦い 共に有り続ける事を願っている …このARTは そう言った者達の 集まった組織だ」
アイザックが言う
「なるほど… だからこそ 1人の隊員の命をも 尊ぶと」
アースが言う
「この組織の1人1人が 私にとっては 掛け替えの無い仲間だ」
アイザックが言う
「しかし それは… やはり 貴方方が 同じ目的を持って 戦う事を前提としての考えであり そして その貴方方は アウターの脅威と戦うと言う事が 目的であると その為に…」
アースが言う
「その為に …是非とも 我々に」
アイザックが視線を強める アースが強い意志を持って言う
「貴方方の国を 守らせて頂きたい」
アイザックが驚き呆気に取られる ハイケルが一瞬驚きアースを見る

【 ART本部 司令塔 】

ハイケルが言う
「俺は… ハブロス司令官は このアールスローンより 我々の敵とされる者が居るであろう根城へ 進軍するものであると 思っていたのだが…?」
グレイゼスが言う
「ああ、それは 最終的にはそうなるだろうな?」
ハイケルが言う
「最終的には?」
グレイゼスが言う
「そう 最終的には」
グレイゼスがノートPCのエンターを押す ハイケルが持っていたコーヒーを一口飲んでから言う
「…どう言う意味だ?」
グレイゼスがコーヒーを一口飲んでから言う
「そいつはつまり…」

【 ART本部 ART2格納庫 】

ラミリツが呆気に取られ驚いて言う
「…え?僕らが?」
アースが言う
「そうだ お前たちART2を 彼らの国へ… ウィザードたちの国へと 向かわせる」
ラミリツが言う
「それは… 何でART2の僕らが?」
アースが言う
「今回の援軍は 彼らの国の者へ 我々アールスローンの力である ART機動部隊の力を見せる事と共に これは他国との交渉でもある」
ラミリツが言う
「交渉…」
アースが言う
「そうだ、他国との交渉となれば」
ラミリツが言う
「そ …なるほど?分かった …他国との交渉 つまり外交は 政府の勤め 政府長攻長の勤めでもあるからね?」
アースが言う
「そう言う事だ ただ力を見せるだけであるのなら ART1であっても問題は無いが 交渉となれば ハイケル少佐では… 少々 心許ない …それに 隊員たちの統括にしても 他国の者への見栄えとしては 隊長を基とする ART2の方が良いだろう」
ラミリツが苦笑して言う
「う~ん… それってさ?一応 僕らART2を 褒めてるよね?司令官?」
アースが微笑して言う
「さぁ?どうだろうな?私はあくまで 他国の者へ対する見栄えとして 言っている」
ラミリツが疑って言う
「じゃぁ つまり?」
アースが言う
「そして お前たちが ウィザードたちの国へ向かっている その間に ART1にも 行わせる事がある こちらは 恐らく彼らを向かわせるのに 適しているだろう」
ラミリツが言う
「え?行わせる?向かわせるって事は やっぱ…?」

【 ART本部 司令塔 】

ハイケルが呆気に取られて言う
「な、何だと?私は 聞いていないのだがっ?」
グレイゼスが言う
「ああ、それはそうだろう なにせ当初はARTゼロを向かわせる予定だったんだが… やっぱり マスターラキンゼスの結果が出るまでは ARTゼロも もう少しだけ 凍結して置こうって事になってな?そこに来て 今回ART2を 他国への援軍として送る事が決まったとなれば その間に ART1の諸君へは… と?」
ハイケルが言う
「…そうか では 具体的な作戦の方は?そもそも… 私は アウターにてマシーナリーを実働させる事が 出来ないと言う可能性が 未だにあるのだが?」
グレイゼスが言う
「ああ、そこは ”真に不甲斐無く申し訳ない”所ではあるんだが」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「わ、悪かったな…っ いや… …すまない」
グレイゼスが苦笑して言う
「え?あぁ… まぁ… そこは 今の所 その理由を解明出来ていない 俺の責任でもある訳だから …そう 素直に謝るなよ?お前らしくないぞ?ハイケル!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「それは どういう意味だっ!」
グレイゼスが軽く笑って言う
「っははは…っ そうそう そう来ないとな?それに、そんなART1であっても ハブロス司令官は ART1を指名し 向かわせる事にしたんだ その1番の理由って奴が… お前に分かるか?ハイケル?」
ハイケルが一瞬疑問して言う
「隊長である私が その様な状態であっても ART1を向かわせる事にした理由…?」
グレイゼスが言う
「ああ、それはな?隊員たち 各個人の応用力って奴だ」
ハイケルが言う
「応用力?」
グレイゼスが言う
「そう!既に接触が図られている ウィザード殿の国へ向かわせるとなれば そこに必要なのは 交渉力と統一性 それには 強い意志を持った隊長を軸として その隊長の指示に全てを委ねる ART2の姿が 良く見える筈だ 対する 今回お前たちが向かう事となった こちらの国は 我々にとっては未知なる未開の地 そこへ向かうには いざと言う時に 各々の応用が利く お前たちの方が 合っている」
ハイケルが言う
「では… …いや、そもそも その国へは 政府のフレイゼス外交長を 向かわせないのか?ウィザードの国もそうであった様に 外交は政府の役目だろう?だからこそ 政府には外交長と呼ばれる ポストがある」
グレイゼスが言う
「もちろん 最初は 向かわせようとしていたんだが」
ハイケルが言う
「最初は?では… 向かったは良いが 既に断られたとでも?もしくは?」
グレイゼスが言う
「いや、結果としてフレイゼス殿は 向かっていない 何しろ それ以前の あちらの防衛が物凄くて 偵察機も入り込めない状態なんだ …つまり ”近付けない” …と、そこでっ!」
ハイケルが呆気に取られて言う
「まさか… そこへっ!?」
グレイゼスが言う
「そう そこへっ!」

【 ART本部 格納庫 】

アースが言う
「逝って来い ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「1人で逝かせてくれ」
アースが言う
「それは無理だな?」
グレイゼスが言う
「その前に ハイケルを逝かせようとしないで下さい ハブロス司令官っ!でもって ハイケルっ お前も すぐに逝こうとするんじゃないのっ!」
隊員たちが呆気に取られて顔を見合わせる

グレイゼスが言う
「では 早速だが、ART1の目標地点は…」
ハイケルが聞き入る 隊員たちが顔を見合わせてから真剣に聞き入る マスターが言う
「このアールスローン帝国の南東 距離にして凡そ5000キロ アウターの… この位置にある …この国だ」
グレイゼスが地図を指差して言う
「場所がアウターである以上 まずはマシーナリーを用いて 接近する」
ハイケルが言う
「私も …か?」
グレイゼスが言う
「いや、お前は いざと言う時に動けないとなれば それこそアウターでは大変だから今回は… 歩いて行くか?ハイケル?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「なっ!?」
グレイゼスが言う
「って言うのは 流石に冗談だが」
ハイケルが不満そうに言う
「私は 嘘や冗談は…っ」
グレイゼスが苦笑して言う
「分かった分かった …けど お前だって分かれよ?目標地点は5000キロ先だぞ?そこへ… 誰も歩いて向かえだ なんて言う筈が無いだろう?」
ハイケルが言う
「そうとは言い切れん …あの司令官なら それこそ 蘇りながら行けとでも?」
グレイゼスが言う
「それに 今は そんなにゆっくりもして居られないんだ 今回の事も作戦の一部ではあるが 俺たちの作戦は 既に始まっている」
ハイケルが言う
「…そうだったな では?」
グレイゼスが言う
「ああ、それじゃ 話を戻すが 目標地点までは… 厳密に言えば その10キロ手前までだが まずは お前たちをマシーナリーと共に 警空の輸送機にて搬送する」
ハイケルが言う
「輸送機で?…そうか では マシーナリーを30機近くも運ぶ事が出来る輸送機が 警空に?」
グレイゼスが言う
「ああ~ いや?そうだな?輸送機と言っても お前が想像している様な そんな大型な物ではないんだが… まぁ 百聞は何とやらだ 今ここで説明するより 明日直接見ちまった方が一目瞭然 だから それは作戦当日までのお楽しみと言う事にしておいてくれ」
ハイケルが疑問する 隊員たちが顔を見合わせて言う
「輸送機でって事は…」 「大体あのマシーナリーを持ち上げられるのか?」
グレイゼスが言う
「心配は要らない この方法は 以前から使われているもので 一見は兎も角として その他に問題は無いからな?」
ハイケルが言う
「了解… では …そちらの方法にて 我々ART1は 目標地点の10キロ手前に… うん?グレイゼス?これは何だ?目標地点より… 2000キロ北にある この強調された場所は?」
グレイゼスが言う
「ああ、そこは …そうだな?なら こっちから説明しちまうか?まず この地図は政府航空局より提供してもらった アウターを含めた 我々の住む この”大陸の地図”だ」
グレイゼスが地図を広げる ハイケルが僅かに反応する 隊員たちが驚き口々に言う
「えっ!?大陸の…?」 「なぁっ!?こ、これがっ?」 「アールスローンなんて 大陸の ごく一部じゃないかっ?」
グレイゼスが微笑して言う
「っはは …そうだろ?俺も 初めて見た時には驚いたねぇ?あの帝国の東は こんなにデカかったのか~!…ってな?それにアールスローン帝国は帝国と言っても 大陸から見れば この程度の大きさだ すぐ南には 言わずと知れたメルシ国が有り …で、地図には無いが こっちの西海を越えた この辺りに 大和国がある」
隊員が言う
「海の先が他国だって言うのは分かるし 運河のあるメルシ国との国境も分かる気がするけど …まさか地続きの東側が こんなに広かったなんてな?」 「遠いと思ってた 大和国が むしろ近い国に思えちまうよ」
グレイゼスが言う
「そうだな アウターの広さは アールスローンと大和国を隔てる海より ずっと広い …実際 これからART2が向かう ウィザードたちの国は… ここだ 距離で言うと 直線距離で9900キロ  しかし 実際は この中心の場所を迂回する必要がある事から 移動飛距離は凡そ 13390キロ その距離は ざっとアールスローンから大和国へ 3往復出来る程の距離だ」
隊員たちが感心する 隊員Nが言う
「そんなんじゃ 俺が一生行く事は無いと思ってた じいちゃんが大昔に行ったって言う大和国が 目と鼻の先に見えて来たぜ」
隊員Bが微笑して言う
「良かったねー ナッちゃん!本物の大和菓子を 食べに行けるじゃん!」
隊員Nが衝撃を受けて言う
「いや!?だからって そんな事の為に 行けるかよっ!?」
隊員Bが言う
「えー?」
ハイケルが言う
「…では むしろ それほどの迂回をする必要がある… この場所とは?」
グレイゼスが言う
「ああ 今回の目標地点より2000キロ北 アールスローン帝国からで言うなら 南西約3000キロの位置にある この場所こそが…っ!」

【 帝国 皇帝の部屋 】

アースが言う
「ネロ?」
皇帝がベットで身を起していて言う
「そう… ネロと申す」
アースが手を握り締めて言う
「それが 我々の敵… この世界の敵である あの 黒い天使の名かっ」
皇帝が言う
「黒き天使 …か そうよな ネロの姿は その方らの目には その様にと映りしか…」
アースが澄まして言う
「違うとでも?あの姿こそ 正に 奴の内面を 映し出すかの様な 醜い姿であると 私は思うが?」
皇帝が表情を悲しませる アースが言う
「…それと 内面を映し出すと言えば …皇帝?」
皇帝がアースへ向いて言う
「何ぞ?」
アースが言う
「今の貴方の姿も まさに 普段の意地の悪さを 表へ現すかの様な姿であるが そちらは…?」
皇帝が衝撃を受けて言う
「むっ!?アース?我は この アールスローン帝国の神にして 征服者であるぞ?」
アースが呆れて言う
「…”征服者”と言うな 響きが悪いだろう?」
皇帝が言う
「それが 真」
アースが言う
「…いや、つまり 私が言っているのは 例え そうであろうとも…っ」
皇帝が言う
「我が 愚かであった… ネロは… 黒き天使とあれど その方らにとっては 真の天使であった…」
アースが一瞬呆気に取られてから言う
「奴が 我々の天使だとっ?それは…!?」
皇帝が憂いの表情を見せる アースが束の間沈黙してから 改めて言う
「それは つまり …今の貴方が とても天使には見えない むしろ 奴の方が まだ天使に見えてしまうと言う事へ対する比喩か?」
皇帝が衝撃を受けてから不満そうに言う
「否っ アース その方は 我が姿がそれほどに 酷しと申すかっ?我は この姿こそ 闇に咲く薔薇を彷彿とさせし 美しき姿にあろうと…っ」
アースが気付いて言う
「うん?闇に咲く薔薇…?」

【 ART本部 格納庫 】

ハイケルが目を細めて言う
「この場所にっ 我々の敵がっ?この世界の敵が居るのかっ!?」
グレイゼスが言う
「その通り この場所こそが いずれは決戦の地となるであろう その場所だ …しかし 今の俺たちには それ以前に行う事がある 同じ世界に住む 他国の者たちと接触し 彼らを仲間にする事で 俺たちの戦力を増す …ART2と同じく 今回ART1の諸君が受け持つ作戦は つまりは そう言う事になる」
ハイケルが言う
「共に戦う 仲間を増やす事… それにより 我々の戦力を増す…」
グレイゼスが頷いて言う
「そう そして いざ決戦ともなれば もちろん 俺たちもサポートの側として共に戦う それに、ART2が交渉するウィザードさんたちも… どちらかと言えば サポート側となるだろう そして 実際に戦場で戦うのは ART機動部隊のお前たち …と、今回ART1の諸君が得るであろう 彼らとなる筈だ」
ハイケルが言う
「では 我々が向かう この国には 戦場で戦う者が…?この国は 戦士たちの国であると言う事か?」
グレイゼスが言う
「戦士たちの国 …か そうだな?実際に どう言った者たちが住んでいるのかは 分からないんだが 少なくとも 前線で力を発揮出来る者が居るのでは無いか?…とまでは 推測されているんだ」
ハイケルが言う
「そちらの根拠は?」
グレイゼスが言う
「根拠と言える程のモノでは無いんだが 今まで送った偵察機が 全て 迎撃を受けて失敗に終わっている …まず、その事から あちらは ”攻撃を行う意志がある” と言う事 更には 迎撃を感知し 退避しようとした偵察機を追撃する力もあった… それらの事から 相手は防衛にて自らを守るのではなく 自ら戦いへ出る事で生き残る」
ハイケルが言う
「戦士では無いか と言う事か」
グレイゼスが言う
「そう言う事… 最も?これは先にも言った通り 実際に接触した訳では無い以上 推測や憶測の域を脱する事も無い訳だが… 少なくとも ウィザードの国とは違う 彼らは こっちが戦意を見せなければ あちらは 攻撃をしては来なかった」
ハイケルが言う
「なるほど… では 現状で確かな事は その国へ向かう我々ART1は 間違いなく 奴らの迎撃 及び 追撃を受ける」
グレイゼスが言う
「そうだな、だからこそ 隊員たち個人の対応力と 主要武器が相手方と同じ 遠距離攻撃と言う事で 比較的安全マージンを稼がれる ART1が向いていると言う 結論がなされた」
ハイケルが言う
「そうか …では もうひとつ確かな事は 相手方の武器も 銃火器であると?」
グレイゼスが言う
「国防の武器に関してはな?その他 国内の事や そこに住む者たちの事は 何一つ分かっちゃ居ない …それでも 言える事としては その国の彼らは 最低限それだけの知識を有している …警空の最新にして最速の偵察機を 迎撃し更には追撃が出来る程のな?」
ハイケルが言う
「楽な戦いにはならないか…」
グレイゼスが言う
「おいおい そうは言っても 忘れるなよ ハイケル?お前たちは 仲間を得る為に向かうのであって 決して…」
ハイケルが言う
「ああ そうだったな 忘れていた …チッ」
ハイケルが残念そうに舌打ちする グレイゼスが衝撃を受け 苦笑して言う
「だ、大丈夫かな…?」

【 病院 】

隊員Fが苦笑して言う
「そっか… ART1とART2がアウターに… ついに本格的な作戦が 展開されるんだな…」
隊員Bが言う
「そうそうー!だから今日は明日から始まる その作戦の為にー?昼休みの後のミーティングまででー 解散だったんだー!」
隊員Fが微笑して言う
「それで 報告に来てくれたのか ありがとう バイスン隊員」
隊員Bが一瞬呆気に取られた後 照れ笑いして言う
「え?…えへへ~?そうかもー?アッちゃんやサッちゃんは 昼休みに来たんだからー また 報告ーって 来るのもね~?だから 俺がー?」
隊員Fが言う
「うん …それに 丁度良いって言っちゃうのも難だけどさ?バイスン隊員には 俺 ちゃんと お礼を言いたかったんだ …本当に有難う バイスン隊員は 俺の命の恩人だよ」
隊員Bが呆気に取られて言う
「えー…?」
隊員Fが苦笑して言う
「あの瞬間 俺は自分でも分かったんだ …これは助からない もう俺は 皆と一緒に任務をする事は 出来なくなるんだって」
隊員Bが表情を落とす 隊員Fが微笑して言う
「けどさ?バイスン隊員が 必死に”助けよう”って 言ってくれただろう?…聞こえたんだ」
隊員Bが反応し頬を染めつつ言う
「あー… あれは…」
隊員Fが苦笑して
「そうしたら なんか… もしかしたら 俺 助かるかな…?ってさ?」
隊員Bが呆気に取られて言う
「え…?」
隊員Fが言う
「そう思ったら ”生きたい”って 思った… いや?思えたんだ …それで 意識の中で 俺を引っ張り込もうとする闇の中に 引かれない様に …って必死に耐えていたら その内に 光が広がって… 生きてる… って言う実感を… 怪我の痛みを 感じる様になった… それに、少佐やバイスン隊員や 皆の声が ハッキリ聞こえて… ホッとしたら… そのまま眠っちゃったな?」
隊員Fが苦笑する 隊員Bが微笑して言う
「うん!あの時はー!少佐も俺も皆もー!フッちゃんが蘇ったーってー!!」
隊員Fが軽く笑って言う
「え…?ははっ 俺は 少佐じゃないから… 蘇ったって言うか きっと ギリギリ助かった って言うんだろうけど …けど俺が 助かったのは 救出してくれた少佐や皆はもちろん …バイスン隊員のお陰だよ バイスン隊員の声が聞こえなかったら …俺 素直に諦めていたと思う それで あの闇の中に…」
隊員Fが表情を落とす 隊員Bが気付くと微笑して言う
「大丈夫ー!それなら 俺!何度でも 呼ぶからー!?」
隊員Fが一瞬呆気に取られてから隊員Bを見る 隊員Bが言う
「だって そんなの”当然だー”だしー?ART1の皆は 俺の仲間なんだからー!俺は 何があっても絶対助けようとするよー?諦めたりなんか 絶対しないからねー!」
隊員Fが微笑して頷いて言う
「…うん そうだな?俺も そうす…」
隊員Bが隊員Fの言葉を遮って言う
「だってだってー!少佐なんかー!死んだって蘇るんだからー?諦める必要なんて それこそ無いんだしー?」
隊員Fが呆気に取られてから言う
「あ… いや、でも 少佐と俺らでは…」
隊員Bが言う
「だから フッちゃんも アッちゃんも サッちゃんもー?皆 同じだよー!?何度でも きっと蘇るからー ちゃんと助けないとねー!?にひひっ!」
隊員Fが呆気に取られた状態から軽く笑い 微笑して言う
「…っはは そうだな?それに …バイスン隊員に騒がれたら ”安らかに”なんて?眠れなそうだしな?」
隊員Bが衝撃を受け言う
「えー!?それって どういう意味ーっ!?フッちゃんー!?」
隊員Fが軽く笑っている 隊員Bが言う
「でも 良いんだー!俺 中佐や少佐に 騒いでも良いんだって 言われたもんねー!だから もう 気にしないのー!」
隊員Fが呆気に取られて言う
「え?騒いでも良いって…?」
カーテンが勢い良く開かれ 看護士が言う
「ちょっと そちらの方っ!病院では騒がないで下さいっ!他の入院患者に迷惑ですっ!」
隊員Fが慌てて言う
「ああっ す、すみません…っ」
隊員Bが言う
「えー?俺ー?今は 騒いでないけどー?」
隊員Fが苦笑する 隊員Bが疑問する

【 ハブロス家 食堂 】

軍曹が言う
「おぉおおっ!?つ、ついにっ!?少佐の率いる ART1がぁっ!アウターの作戦へ 向かうのでありますねーっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが視線を逸らして言う
「あ、ああ…」
軍曹が感涙しながら言う
「自分は自分はーっ!少佐やあいつらと共にぃっ そちらの任務へ出動出来ない事は 真に持って 心苦しいのでありますがぁっ しかし 自分は!国防軍レギスト機動部隊に残った あいつらと共にっ 少佐の率いるART1の作戦の成功を 草葉の陰から見守っているでありますぅっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが言う
「う、うん… いや?それなら?むしろ アウターの草葉の陰まで来られると言うのであれば 共に戦ってもらいたいのだが…?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はっ!?はえっ!?」
アースが苦笑して言う
「ハイケル少佐… つまり アーヴァインは 気持ちの上に置いて それほどまでに お前たちへ同行したいのだと 言っているんだ」
ハイケルが言う
「ああ… そう言う事か …了解」
軍曹が一瞬呆気に取られた後 表情を悔しがらせて言う
「しかし 自分は…っ 例え 万が一にも あのマシーナリーを動かす事が可能であろうとも…っ 恐らく 自分は…っ やはり 銃火器の類が扱えないものと思われ…っ 真に不甲斐無く申し訳ありませんっ 少佐ぁーっ!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「う…っ!」
軍曹が悔しそうに言う
「この様な無様な自分ではっ やはり アウターへ向かう エリート中のエリートである 少佐の率いる ART1には不要の存在っ!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「ぐ…っ!」
軍曹が涙を流しながら言う
「しかしっ 自分は!自分は やはりっ 少佐や…っ 少佐が率いたあいつらと共にっ!ただの盾としての役割であってもっ 共に戦いたかったでありますぅっ 少佐ぁーっ!」
軍曹が号泣する アースが言う
「唯の盾であっても マシーナリーを用いての盾であるなら 現状のマシーナリーを動かせない どこかの隊長よりは 役に立ちそうだな?ハイケル少佐?」
ハイケルが衝撃を受け 表情を困らせて言う
「ま… 真に不甲斐無く申し訳ありません」
軍曹が疑問して言う
「む?…その様な者が?…マシーナリーを動かせぬ 隊長などが ARTに居ると言うのか?兄貴?」
ハイケルが石化する 軍曹が疑問する アースが言う
「うん… 居るような気がするのだが… …私の気のせいか?ハイケル少佐?」
アースが食べ物を口へ運ぶ 軍曹が不思議そうに言う
「なんと?その様な 役立たずが 兄貴の率いるアールスローン帝国軍レギスト特殊部隊に居るとは 実に 心外 な?」
ハイケルの石像が粉々に崩れる 軍曹が驚いて言う
「しょ、少佐ぁっ!?」
ユラが言う
「その様な 実戦で役に立たぬ隊長などは切り捨て 俺を ART1の隊長として 作戦を行った方が良いのでは無いのか?司令官?」
ハイケルを心配していた軍曹がユラへ向いて言う
「な、何を言うのだっ!?ART1の隊長は 少佐であるっ!従って そのART1が重要な任務へ向かうとならばっ 当然 少佐がっ!」
ユラが言う
「盾しか扱えん 防長殿や マシーナリーと言う武器が動かせぬ隊長よりも 俺の方がよほど 貴方の率いるARTのNo1機動部隊に 相応しいと思うが?」
軍曹が怒って言う
「先ほどから 一体何を言っているのだっ!自分は兎も角としてっ 少佐は!剣術と共に 誰よりも優秀な銃火器の命中率を誇る レギストの隊長である!貴殿も過去にはその身を持って 少佐の剣術の素晴らしさを 思い知った筈なのであるっ!」
ユラが笑んで言う
「ふん?確かに しかし マシーナリーを用いての実戦訓練では この私が勝利したがな?」
軍曹が驚いて言う
「な、なにっ!?」
ユラが言う
「これで 現状は1対1 イーブンと言うものだ …難なら これから もう一戦を行い 今度こそ 決着を付けても良いのだぞ?もちろん マシーナリーを用いて 場所は戦場そのもの アウターに置いてな?っはははは!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「ぐ…っ そ、それは… そもそも その貴方はまた RTD560マシーナリーでも使うと言うのだろう?…最も …その様な大掛かりなものを動かさずとも 結果は分かっているのだが…っ」
軍曹が言う
「そうであるっ!少佐の圧勝であるっ!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「ぐ、軍曹…」
軍曹が疑問する ユラが笑んで言う
「ほう…?」
アースが言う
「勇ましいのは結構だが ユラ?お前を 遠いアウターの作戦に用いる事は出来ない 現状では 帝国の力を用いても アウターへの支援は300キロ程度が限界だ 今作戦に置かれるART1の目標地点は その距離を遥かに越えている」
ユラが言う
「しかし そのアウターの作戦を 行う機動部隊の隊長が コレではっ!」
ハイケルが衝撃を受け視線を逸らす ユラが言う
「ART1の そちらの作戦の失敗は 目に見えているだろう?」
ハイケルが手を握り締める ユラが言う
「だが この俺であるなら?少なくとも 先日の様に隊員の奴らを 助けてやる事も出来るっ」
ハイケルがハッとしてユラを見る ユラがアースを見たまま続ける
「だったら その俺を!ART1の奴らと共に 向かわせるべきではないのか?司令官!?」
ハイケルがアースを見る 皆の視線の先アースが食事をしながら言う
「ART1の隊長の変更は 行わない」
ユラとハイケルが驚き ユラが言う
「何故だっ?司令官っ!?」
ハイケルが言う
「ハブロス司令官っ …私が言うのも情けないが ユラ殿の言う事は …正しい」
軍曹が呆気に取られて言う
「しょ、少佐…っ!?」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「軍曹 私は…」
アースが言う
「ハイケル少佐 お前はART1の彼らの ”隊長”だ 何があろうと お前の下へと募った 彼らの意思と その想いを 不意にする事は 司令官としても 家族としても 人としても 私はお前を許さない」
ハイケルが驚く アースがユラへ向いて言う
「そして ユラ」
ユラが反応する アースが微笑して言う
「お前が必要と言うのなら 現状のART1ではなく お前専用の部隊を作れば良い 欲しければ いつでも用意してやる …しかし 仮に そちらの お前の新たな部隊が結成されようとも そのお前を 私の力の及ばない場所へは 向かわせられない …どういう意味かは 隠すまでも無い それが贔屓と言うものだ 分かれよ?」
ユラが呆気に取られる アリアが軽く笑って言う
「うふふ…っ お父様は ユラお兄様の事が とってもお好きなのですわね!」
ユラが衝撃を受け 頬を染めて言う
「なっ!?お、お好き…っ?」
アースが苦笑して言う
「もちろんだとも?私はこのハブロス家の使用人を含む家族の事は 全て大切に思っている 増して自分の子供ともなれば 1番にな?」
アースがユラを見る ユラが衝撃を受け恥ずかしさに顔を逸らす アースが軽く笑う イリーナが言う
「でしたら?アース様?子供は 特に末子が可愛いと 言われますが?」
エレナがハッとイリーナを見てからアースを見る ハイケルが衝撃を受けアースを見る アースが食事をしながら言う
「ほう?そうか… では末子として 私の子供となったのは …ユラだな?年齢的には長男だが 授かったと言う順番では やはり末子か?」
アリアが言う
「あー ずるいですわー?ユラお兄様ぁ!?本当の末子は アリアでしたのに!?」
ユラが衝撃を受け慌てて言う
「そ、それはっ …大体 案ずる事は無いだろうっ?何を どう見ようとも お前の方が…っ」
アースが言う
「アリアは私のたった一人の娘だ 可愛くて仕方が無い 出来る事なら四六時中にでも 傍へと置いておきたい程だ」
アリアが一瞬驚いた後喜んで言う
「まぁっ お父様っ アリアはとっても 嬉しいですわ!うふふっ!」
アリアが喜び イリーナが微笑する アースがファーストを見て言う
「そして やはり 長男でありこのハブロス家の次期当主となる ファーストの事は 可愛がりたい気持ちはもちろんだが それ以上に 私は …”頼りにしている”」
ファーストが驚いて言う
「”頼りに”…?父上が僕を…っ!?」
エレナが一瞬驚いた後ホッとして微笑む アースがユラへ向いて言う
「そして ユラは…」
ユラが一瞬驚き バツの悪そうに一度視線を逸らしてからアースを見る アースが軽く笑って言う
「一番やんちゃで 面白いな?」
ユラが衝撃を受けて言う
「うっ!ど、どう言う意味だっ!?それはっ!?」
アースが言う
「だから目を離せない 一番 私に心配を掛ける 困った息子だ…」
アースが微笑する ユラが呆気に取られ視線を逸らす アリアが言う
「うふふっ やっぱり お父様は ユラお兄様の事が 大好きですわ?」
ユラが衝撃を受ける アースが軽く笑って言う
「っはははっ そうかもな?」
ユラが驚きアースを見る アリアが言う
「もぅっ ずるいですわっ!?ユラお兄様ぁ!?」
ユラが頬を染め 慌ててアースへ言う
「お、おいっ!?からかうのも好い加減に…っ!」
アースが笑う ファーストが苦笑すると イリーナが苦笑し エレナが軽く笑っている

翌早朝

【 警空 屋外 】

隊員Nが欠伸をして言う
「ふあぁ~あ… 流石に 朝4時集合はキツイって…」
隊員Aが苦笑して言う
「集合場所がART本部だったら もっとキツかったぜ?本部からここへの移動を考えれば 多分3時集合とか?」
隊員Nが言う
「ぜってぇ 無理…」
隊員Bが他方で隊員Iへ言っている
「でねー!俺 本当は フッちゃんに 行って来るねー!言うつもりだったんだけどー!?」
隊員Nが言う
「バイちゃん隊員は この時間からも 相変わらずだなぁ?流石に 俺は こんな早い時間に あのテンションまでは上がらねぇよ… ふあ…っ」
隊員Bが言う
「朝の3時じゃ お見舞いしちゃダメーってー 入れてもらえなかったのー!だから ちょー残念ー!」
隊員Iが言う
「ああ… 3時じゃ 流石にな?朝と言うより 夜中に近いんじゃないか?俺は取りあえず 昨日の夕方に もう一度見舞いに行って 皆と一緒に 行って来るって伝えて来たよ …出来るかどうか分からないけど フレッド隊員の分も 頑張って来るからってさ?一応な?」
隊員Bが言う
「それなら フッちゃん 喜んでたでしょ!?イッちゃんは フッちゃんが目を覚ますまで ずーっと 病院で付き添ってたもんねー?フッちゃん言ってたよー?目を覚ました時 イッちゃんが傍に居てくれて すげー嬉しかったってー!…あれー?俺 これ内緒の話しだけどって 言われたっけー?」
隊員Iが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「え?そっか… そうだったのなら 良かったよ …正直 迷惑かとも思っていたんだけど 俺はどうしても …って言うか あの時の俺は とても 部隊訓練なんて出来る心境じゃなかったから 少しでも早くフレッド隊員の無事を 確かめたかったんだけど そう言ってもらえたのなら…」
隊員Eが言う
「フレッド隊員は 今回の作戦は無理なのか …あの魔法みたいな力で 見た目は治っていたみたいだけど?」
隊員Aが言う
「あの傷はもちろん 他にも全身打撲なんかもあったし 何しろ左腕の骨にはひびが入っていたらしい その状態じゃ 流石に機動部隊の任務への参加は出来ないだろう?」
隊員Cが言う
「今回の作戦じゃ マシーナリーを降りた後も 戦闘があるかもしれないからな?」
隊員Nが言う
「マシーナリーを降りた後… か… その国の奴らって 一体どんな奴らだろうな?やっぱりまた… あの魔法使いみたいな奴とか… いるのかな?」
隊員Aが言う
「うん まぁ… 想像も出来ないけど 少なくとも 銃火器を作れるような奴らが居るんだろ?と言う事は つまり どんな奴であっても 人なんだろうからさ?大丈夫じゃないか?何しろ こっちには…」
隊員たちが顔を向ける その先にハイケルが居て警空隊長と話している

ハイケルが言う
「そうか マシーナリーの輸送は マシーナリー1体に付き 戦闘機1機を付けるのか…」
警空隊長が言う
「ああ、そうだ 詳しい事は諸君の前に出立する ART2の様子を見せながら説明するが …うん?だが 確かART1は隊長のみ…?」
警空隊長が資料を見る ハイケルが衝撃を受けて言う
「う…っ」

隊員Aが言う
「”不死身の悪魔の兵士”である 少佐が居るんだ …と言っても マシーナリーが相手の時は ちょっと厳しいが…」

ハイケルがくしゃみをして言う
「はっくしゅっ …すまん」
警空隊長が疑問する

隊員Aが呆気に取られて言う
「え?聞こえた…?」
隊員Cが言う
「まさか?この距離だぜ?偶然だろ?」
隊員Aが気を取り直して言う
「ああ… …ま、それでも 俺らと同じ人間が相手なら 少佐に勝る奴は居ないってな?」
隊員Cが言う
「そうだな?」
隊員Nが言う
「違いねぇ!」

警空隊長が資料へ書き込みながら言う
「うん、では 貴方だけは 通常のアウター仕様の戦闘機へ予め乗り込むと言う事で ART1の輸送マシーナリーの数は28体 プラス 通常戦闘機を1機…」
ハイケルが表情を困らせ視線を逸らして言う
「あ、ああ… よろしく頼む」
警空隊長が資料を閉じて言う
「よし、では 間も無くART2の輸送が開始される時間だ 案内しよう こちらだ」
警空隊長が道を行く ハイケルが隊員たちへ向く 隊員たちが反応する

【 帝国 皇帝の間 】

アースが玉座に座っていて周囲にホログラムが現れている エルムαがやって来る アースが微笑し言う
「遅かったな?エルム少佐 いつもなら 私がこの城へ入る以前の門前まで 出迎えに来てくれるのでは?」
エルムαが言う
『眠っていた』
アースが苦笑する エルムαが言う
『装置に問題は無い 現時刻は マシーナリーの奇襲確立が 最も低いとされている時刻 …だ』
アースが言う
「ああ、だからこそ この時間を選択した 彼らを作戦へ向かわせるのなら 可能な限り 安全な時間に向かわせたい」
エルムαが言う
『作戦開始 …か?』
アースが言う
「ああ」
エルムαが言う
『…了解』
アースが微笑する

【 警空 第1ゲート 】

滑走路に戦闘機とマシーナリーが並んでいる 警空隊長を先頭にハイケルと隊員らがやって来る 隊員Bが反応して言う
「あれー?あのマシーナリーはー?」
警空隊長が言う
「マシーナリーを輸送出来るゲートは 今の所この第1ゲートの一箇所である為 ART2のマシーナリーの離陸を終え次第 諸君ART1の離陸準備へと移行する」
隊員Aが呆気に取られて言う
「え?それじゃ もしかして あれが ART2のマシーナリー?」
隊員Bが言う
「えー?昨日までと色が違うよー?」
警空隊長が言う
「ああ、我々も今朝初めて目にした 見慣れたGPT1のカラーではなくなってしまった事は 少々残念でも有るが あちらのボディーカラーが ART2の正式カラーと決定されたそうだな?」
隊員Aが驚いて言う
「えっ!?」
ハイケルが言う
「…そうなのか?」
警空隊長が驚いて言う
「うん?…知らんのか?貴方方のマシーナリーだって 以前とは違う色になっていたが?」
隊員Bが驚いて言う
「えーっ!?俺たちのもーっ!?」
ハイケルが言う
「…そうなのか?」
警空隊長が呆気に取られて言う
「っ!?まさか 隊長までが知らないとは…?…貴方は本当にART1の隊長なのか?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ… すまん…」
Mラミリツが言う
「アッカーマン隊長 こちらの準備は整っている …そろそろ時間だよね?ゲートへ入っても良いかな?」
警空隊長がハッとして振り返って言う
「はっ!攻長閣下!ART2輸送機の準備も整っております!1号機からゲートの方へ お願いします!」
Mラミリツが言う
「了解!…それじゃ 僕から行くから シュナイゼルは最後にテイクオフして 周囲の安定を確認の後 1号機へ連絡を」
Mシュナイゼルが言う
「了解!隊長っ!」
Mラミリツが言う
「他の皆も 各自 安定を確認して 1号機へ連絡を!」
ART2マシーナリーたちが言う
「「了解!隊長っ!」」
ART2マシーナリーたちが動き出す ハイケルが警空隊長へ言う
「”安定”…とは?」
警空隊長が言う
「ああ、そうだったな テイクオフの事ばかりではなく そちらを説明しておかなければ …では こちらの模型を用いて説明をする」
警空隊長が模型の下へ向かう ハイケルと隊員たちが集まる 警空隊長が戦闘機の模型とマシーナリーの模型を使って説明する
「我々の輸送型戦闘機 DD6は この様な形で 諸君のマシーナリーを引き上げ 離陸を行う」
警空隊長が戦闘機の模型の下に付いて居るフックに マシーナリーの模型の両肩を引っ掛けて見せる 隊員Cが疑問して言う
「え?立った状態で 引き上げられるのか?」
ハイケルと隊員たちが一度隊員Cを見てから 警空隊長を見る 警空隊長が言う
「その通りだ しかし、この状態では風の抵抗を大きく受ける為 諸君のマシーナリーは離陸後まもなく…」
警空隊長が戦闘機の模型のフックを上げ マシーナリーの模型を戦闘機と平行にしてから言う
「この様にDD6から下げられた ワイヤーに引き上げられ DD6の機体へと固定される …この状態を 安定と言う 安定の際はマシーナリーの両足を DD6と平行の状態へ維持してくれ」
ハイケルが隊員たちへ視線を向ける 隊員たちがハッとして言う
「「りょ、了解っ!」」
警空隊長が言う
「うむ、では次に マシーナリーとDD6の安定が確認されると…」
警空隊長が模型を置き 壁に表示されているモニターを示して言う
「DD6側のパイロットの操作によりDD6が開口処理を行う 諸君のマシーナリーのモニターには この様な表示がされる この表示を確認し 諸君の方も問題が無い様であれば 諸君はこちらのスイッチをオンにしてくれ」
警空隊長がモニターのスイッチをクリックすると 映像が流れ マシーナリーのコックピットから戦闘機内へシートが移動する ハイケルと隊員たちが驚き 隊員Cが言う
「え!?マシーナリーから 戦闘機へ移動出来るのかっ!?」
隊員Nが言う
「まじかよ…?」
警空隊長が微笑して言う
「その通り この状態になれば 後は… 諸君は各自 ”隊長へ安定を報告” …か?その後は目標地点まで 各自のDD6のパイロットへ全てを任せてくれ アウターの危険箇所を回避し 的確に 諸君を目標地点へと お届けする」
隊員Iが言う
「その間 俺たちは…?」
警空隊長が苦笑して言う
「その間は 我々が諸君へ望むものは特に無い …強いて言うのであれば 周囲の機器には出来るだけ触れないで貰いたい」
隊員たちが衝撃を受ける 警空隊長が言う
「DD6はもちろんだが 戦闘機と言うものは 超が付くほどの精密機械だ ひとつでも勝手に何かを変えられたら 下手をすれば 墜落する事もある」
隊員たちが驚き心配して言う
「まじか…っ」
警空隊長が苦笑して言う
「…と、まぁ実際は それほど重要なスイッチの類は 諸君のシートの傍に設置されてはいない 従って 安心して… 目標地点までは 仮眠でもしていてくれて構わない 諸君の目標地点までは おおよそ3時間15分から30分ほどであると 予測している」
隊員Cが言う
「なんだ 良かった…」
隊員Nが言う
「それなら 3時間はたっぷり 爆睡させてもらうぜ …このままじゃ 寝不足でよぉ?」
隊員Iが苦笑して言う
「ナクス隊員は 空の上で爆睡出来るのか?俺は正直一睡も出来無そうもないよ あのふわふわした感覚が おっかなくてさ…?」
隊員Cが隊員Bへこっそり言う
「なぁ…?空の上でってどんな感じだ?ふわふわって…?」
隊員Bが言う
「あー そっかー?サッちゃんは この前 遅刻部隊だったモンねー?だから知らないんだー?」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「遅刻部隊って言うなっ 後 サッちゃんもっ」
警空隊長が言う
「では その様な形で 目標地点へ到着した際は 各パイロッドから声が掛けられるだろう その際は このスイッチをひとつ押せば 後は全てオートで行われ 諸君はマシーナリーのコックピットへと戻される 後は パイロットとの通信を用いて タイミングを計り ドッキングを解除 DD6と離されたマシーナリーは 地上へ着地となる」
外で轟音が響く 警空隊長が言う
「おっと、1号機が起動した さぁ こちらへ」
警空隊長が歩みを向ける ハイケルが続くと 隊員たちが続き隊員Cが横目に模型を見て言う
「…ん?そういや どうやって最初の つり上げを行うんだ?聞いたっけ?」
隊員Cが隊員Iへ向く 隊員Iが反応して言う
「え?あ… そう言えば?聞いてないよな?」
隊員Cが言う
「ああ… それに これって 一番重要な所じゃないか?」
隊員Iが言う
「うん… 確かに?」
隊員Bが遠くから言う
「サッちゃーん?イッちゃーん?早くしないと 置いて行っちゃうよー?」
隊員Cと隊員Iが反応し 隊員Iが言う
「ああ!とにかく 今は行こう?サッちゃん?」
隊員Iが皆の下へ向かう 隊員Cが衝撃を受けて言う
「だから サッちゃんって 言うなって…っ!」
隊員Cが走って向かった先 滑走路をMラミリツが滑走して 隊員たちの目前で DD6が後方から猛スピードで飛び上がり Mラミリツを引き上げて上昇する 隊員Cが目を丸くする 皆が驚いている中 警空隊長が言う
「見ての通り マシーナリーの引き上げは 両者が滑走しDD6が離陸を行う その瞬間だ この方法は とても危険かつ難易度の高い作業になるが 失敗は許されない 確実に 成功させて欲しい」
隊員Cが呆気に取られて言う
「…なぁ?サッちゃんで良いから この作業は 辞退して良いか?…俺 また 遅刻部隊で 良い…」
隊員Iが苦笑して言う
「お、俺も… 自信無くなって来た…」
隊員Bが喜んで叫ぶ
「すっげーっ!チョーカッコイイー!…きっと フッちゃんもやりたかっただろうなー?だって どっちも フッちゃんの大好きな 超特別な戦闘機だもんー!ねー?少佐ぁー?」
隊員Iがハッとする ハイケルが苦笑して言う
「そうだな フレッド隊員ならば 恐らく その様にして喜んだ事だろう …フレッド隊員は警空のパイロッドを目指していた その戦闘機のコックピットへも入られると言うのなら 尚更だ」
隊員Iが手を握り締めて言う
「…少佐っ!俺たちの!…ART1の1号機には 俺を行かせて下さいっ!」
隊員Cが驚いて言う
「イ、イリアス隊員っ!?」
皆が一瞬呆気に取られてからハイケルを見る ハイケルが言う
「…了解 では 我々ART1の1号機へは イリアス隊員を …そして、28号機となるだろう 最後の出立は アラン隊員」
隊員Aが言う
「はっ!少佐っ!」
ハイケルが言う
「お前に任せる 私も もちろんだが お前たちも 初めての輸送作戦だ 従って ART2の様に全体の確認を… と言った所で 難しいだろうが お前の感覚で良い 問題が無いかの確認を行い 私へ報告をしてくれ」
隊員Aが言う
「了解!少佐っ!」
ハイケルが警空隊長へ向いて言う
「それで …私は?」
警空隊長が言う
「ああ、では …アラン隊員と言ったか?」
警空隊長が隊員Aを見る 隊員Aが敬礼して言う
「はっ!アラン隊員であります!」
警空隊長が頷いて言う
「うむ では アラン隊員を含め その他の隊員らも 隊長の搭乗する機体への無線設定などは 各自のパイロットへ確認してくれ 彼らは 全戦闘機の無線を把握している」
隊員たちが言う
「「了解!」」
警空隊長が言う
「ART1のテイクオフは ART2のそちらが全て終わった後に 間も無く行われる その間に ドッキングのタイミングやその他は ART2の彼らを見て 備えてくれ 準備が出来次第 我々警空第2部隊のシュピトール隊長が 既に運び込まれている 諸君のマシーナリーの保管場所へ案内をする …では ハイケル少佐は 先に私が案内をする こちらだ」
ハイケルが言う
「了解 …そちらは頼んだぞ アラン隊員」
隊員Aが言う
「了解!少佐!」
ハイケルが隊員Iへ向いて言う
「イリアス隊員」
隊員Iがハッとして慌てて敬礼して言う
「はっ!少佐っ!」
ハイケルが隊員Iを見る 隊員Iが硬い表情で居る ハイケルが言う
「お前は ART1の一番手となる …フレッド隊員の分も」
隊員Iが表情を強める ハイケルが微笑して言う
「楽しめ」
隊員Iが驚き呆気に取られて言う
「は…っ …は?」
警空隊長が微笑して言う
「そう、それほど硬くならずとも 諸君を支援する彼ら警空のエリートパイロッドたちは とても優秀だ 諸君がまっすぐに滑走し 彼らを信じ上体を固定してくれてさえ居れば 後は彼らが無事に引き上げてくれる」
皆の横で ART2マシーナリーがDD6とドッキングして離陸して行く 隊員Cがホッとして言う
「な、なんだ… ただまっすぐ滑走すれば良いのか…」
隊員Nが言う
「お、脅かしやがって…っ」
警空隊長がハイケルへ向いて言う
「では」
ハイケルが言う
「ああ」
警空隊長とハイケルが立ち去る ART2のテイクオフが行われている 隊員たちが顔を見合わせてからテイクオフを見る 隊員Iが手を握り締めて思う
(…俺が 1番手か…)
テイクオフが激しく行われている 隊員たちが皆 真剣に見詰めている 隊員Iが表情を困らせて思う
(…ヤバイっ 何で俺 ”1番手に”だなんてっ 言っちゃったんだっ!?フレッド隊員の名を聞いたら 思わず言っちまって…っ やっぱり 俺には…っ)
隊員Iが手を震わせる

【 警空 第2ゲート 】

警空隊長とハイケルがやって来て 警空隊長が言う
「こちらは 通常の滑走路を使用する為 今直ぐにでも出立出来るのだが… やはり 貴方もART1の隊員らと 同じ頃が良いだろう?」
ハイケルが言う
「ああ、部隊作戦である以上は 当然だ」
警空隊長が言う
「ふむ …とは言え 先ほども言ったが 上空で諸君に出来る事は何も無い そうとなれば 一足先にテイクオフしようとも 目標地点への到着時刻に大した差は現れないが…」
ハイケルが沈黙すると 他方から 警機隊員とパイロッドに続き アイザックとフレイゼスが現れる ハイケルが気付き言う
「うん?あれは…?」
アイザックが気付き立ち止まるとハイケルを見る フレイゼスがアイザックに疑問してから彼の視線の先を見て疑問して言う
「あれは ハイケル少佐?」
アイザックがフレイゼスへ向いて言う
「確か… 我々の国へ来られるのは 彼の部隊ではなく…?」
フレイゼスが言う
「ええ そうですね 彼らではなく ART2 彼らARTのもうひとつの機動部隊です」
アイザックが言う
「そうか…」
フレイゼスが苦笑して言う
「ご心配には及びません 彼らART2も 2番目の機動部隊と呼ばれてはいますが 実力の方は…」
アイザックが言う
「ああ、そちらの者たちであろうとも あの ハブロス司令官の部下の者なのだろう?そうであるのなら…」
フレイゼスが呆気に取られてから苦笑して言う
「おや…?シュテーゲル殿も 彼の肩を持たれるのですね?そうとなれば …やはり お見送りは 私が来て正解でした」
アイザックが疑問して言う
「うん?…と言うと?」
フレイゼスが言う
「いえ、何でもございません どうか お気になさらずに?」
ハイケルがアイザックの前へ来る アイザックがハイケルへ向く

【 ART本部 司令塔 】

シェイムがくしゃみをして言う
「はっくしゅんっ!」
グレイゼスが疑問して言う
「あれ?寒いですか?空調システムに異常は無いが…?」
シェイムが言う
「あぁ いえっ 大丈夫です 失礼しました…」
グレイゼスが苦笑して言う
「弟殿の事が心配だと言うのなら… 何も こっちではなくて 直接 警空の基地へ向かったら良かったでしょうに?」
シェイムが顔を逸らして言う
「い、いえっ 私は 何も エーメレスを…っ いえ、ラミリツ隊長を心配した訳ではありませんっ 私は元政府長として!現 政府外交長補佐官として!こちらのアールスローン国へお迎えした アイザック・シュテーゲル殿を 無事 お国の方へ お届けするそちらを 見届けようとっ!」
グレイゼスが苦笑して言う
「だったら 尚更?元政府長として 現 政府外攻長補佐官として?それこそ 堂々と 政府警察航空局へ 向かわれたら宜しかったのでは?」
シェイムが衝撃を受けてから顔を逸らして言う
「い、良いのですっ!航空局の情報はこちらでも共有しているのですから ここにいても分かる事ですっ 大体 その様な事をしてはっ また”お前は何時まで経っても 弟離れが出来ない兄貴だ”と ハブロス司令官にっ!…はっ!?」
グレイゼスが苦笑して言う
「なるほど… ハブロス司令官にそうと言われて ムキになっている訳だ?プクク…ッ」
シェイムが怒って言う
「マスターグレイゼスっ!貴方と言う方はっ 何故 同じマスターの仲間である 私の味方をして下さらないのですかっ!私には そちらの方が分かりませんっ!」
グレイゼスが笑って言う
「そりゃまぁ~?マスターシュレイゼス殿はぁ~?同じマスターの仲間であっても 反逆の兵士ですからぁ~?」
シェイムが衝撃を受けて言う
「そちらはどう言う意味ですかっ!?」
グレイゼスが言う
「おっと?俺のナノマシーンが何か言ったかな?どう言う意味かは 俺には分からないなぁ~?何なら ナノマシーン グレイゼスに聞いてくれ?」
シェイムが怒って言う
「グレイゼスーっ!」
グレイゼスが笑う
「あっははははっ」

【 警空 第2ゲート 】

アイザックが言う
「では貴殿らは 別の国へ…?」
ハイケルが言う
「ああ、別の国へ… 未開の国へ向かい そちらの者たちと接触をし 我々の仲間として 共に戦う事を 依頼する予定だ」
アイザックが言う
「共に戦う …か アウターの脅威は とても我々の力では 抑え切る事は出来ない 私の国では ウィザードの数が減り 質も落ちている 戦いを行うには… 遅過ぎた」
ハイケルが言う
「では このまま 滅びを受け入れると?」
アイザックが視線を逸らす ハイケルが言う
「私には 家族と言うものが居なかった しかし 今は…」
アイザックが反応して ハイケルを見る ハイケルが言う
「私には 守りたい家族が居る 仲間が居る そして その仲間たちにも 家族が居る 私は…」
アイザックがハイケルを見詰める ハイケルがアイザックへ向いて言う
「彼らの居る この国を… この国がある この世界を 守りたい …その為に 戦いたい」
アイザックが沈黙する パイロットがやって来て言う
「アイザック・シュテーゲル様!」
アイザックがパイロットへ向く パイロットが言う
「準備が整いました!」
アイザックが頷いて言う
「ああ… よろしく頼む」
パイロットが敬礼して言う
「はっ!」
パイロットが戦闘機へ向かう フレイゼスが言う
「シュテーゲル殿 アールスローン国への来国を 感謝致します」
アイザックが立ち止まる ハイケルが言う
「もう一度 会える事を願っている」
アイザックが沈黙してから言う
「…私もだ ハイケル少佐」
ハイケルが呆気に取られる アイザックがハイケルへ向き 微笑して言う
「私にも …守りたい家族が居る」
ハイケルがハッとする アイザックが言う
「可能性があるのなら 今のまま結界を張り 守り通すだけではなく 貴殿らと共に 戦い …その結果として アウターの脅威を無くす事が 出来るのであれば…」
ハイケルが言う
「…我々が 必ず 力を集める 戦う為の …いや、”勝つ為の力”をっ!」
アイザックが微笑し頷いてから戦闘機へ向かう ハイケルが見詰める フレイゼスが微笑し頷く

【 ART本部 司令塔 】

スピーカーから声が聞こえる
『こちら警空第一部隊 ラストス隊長 ART2のテイクオフは全て完了 DD6及びART2マシーナリーに異常なし!』
シェイムが表情を明るめて言う
「ART2は無事 出発した …後は 彼らの作戦が成功する事を…っ」
シェイムがグレイゼスへ背を向け 十字を切って願って言う
「…父上、叔父上 どうか エーメレスを… ART2の彼らを お守り下さい…っ」
グレイゼスがシェイムを見て苦笑する スピーカーから声が聞こえる
『こちら管制塔 警空第二部隊 そちらの状況を』
グレイゼスが視線を戻して言う
「お?お次は…!」
スピーカーから声が聞こえる
『こちら警空第二部隊 シュピトール隊長 警空第二部隊DD6 及び ART1マシーナリーの起動完了』
グレイゼスが表情を強める

【 警空 第1ゲート 】

隊員Aが羞恥しながら言う
「そ… それじゃ…っ ART1…っ 行くぞー!」
ART1マシーナリーが円陣を組んでいて言う
「「おー!」」
シュピトールが呆気に取られて言う
「…なんだ?これは…?」
M隊員Nが言う
「…うーん やっぱこれは”無し”だろ?バイちゃん隊員?”行くぞ”の号令に ”おー”じゃ 俺ら らしくねーって?」
M隊員Bが言う
「えー?そうかなー?でも 良いと思うんだけどー?だって 今回はいつもと違ってー?」
ART1マシーナリーたちが顔を向けると 滑走路にM隊員Iが居て 隊員Iが泣きそうな表情で言う
「だ、ダメだ…っ やっぱ…っ …怖いっ!?…少佐には ”楽しめ” とか言われたけどっ 俺は やっぱり…っ フレッド隊員とは違って…っ 元々 戦闘機だって…っ!」
DD6のジェットエンジンが始動しタービン音が高鳴る 隊員Iがハッとして言う
「う、動き出したっ ヤバイ もう 辞退出来ないっ!?」

M隊員Bが言う
「なんかー?イッちゃんにはー?こんな感の 気合ー!みたいなー?必要かなー?とか 思ってー?」
隊員Cが言う
「だったら そのイリアス隊員を入れてやらなけりゃ 尚更 意味が無いじゃないか?」
M隊員Bが言う
「あー?そうかもー?」
M隊員Cが言う
「おいっ!?」

隊員Iが慌てて言う
「や、やっぱりっ 今からでも交代してもらおうっ!?せめて、一番手はっ 俺じゃなくて…っ!…っ!?」
隊員Iが慌てて取り出した携帯を見てハッとする

【 病院 】

隊員Fがベッドに身を起し 窓の外を見ながら言う
「そろそろ 出発する頃だよな…?ART2と違って 南西へ向かうART1なら… ここからでも見えるかもしれない… マシーナリーを運ぶ輸送機って… 何だろな?大型貨物輸送機YG6かな…?」
携帯が振動する 隊員Fが震動音に顔を向けると サイドテーブルに置かれた携帯が着信している 隊員Fが手を向けて身をずらし 痛みに表情をしかめながら言う
「イテテ… ん?イリアス隊員?」
隊員Fが携帯を着信させると 携帯からDD6のジェット音が響く 隊員Fが驚くと 携帯から隊員Iの声が聞こえる
『フレッド隊員!』
隊員Fが慌てて言う
「イ、イリアス隊員っ!?そのっ!?その後ろに聞こえる ジェット音はっ!?」

【 警空 第1ゲート 】

隊員Iが携帯を持ったまま呆気に取られている 携帯から隊員Fの高揚した声が聞こえる
『もしかして 超速戦闘機DD5じゃないかっ!?なんでっ!?確か皆 マルック基地からの出発だよなっ!?DD5はレファム基地じゃないと 必要滑走距離が稼げないっ!いくらなんでもマルック基地じゃ タラップが短過ぎるしっ!?』
隊員Iが呆気に取られた後 苦笑して笑い出す
「あ… はは… はははは…っ」
携帯から隊員Fの声が聞こえる
『イ、イリアス隊員っ!?…イテッ イテテ…ッ』
隊員Iが苦笑して言う
「ほら 興奮し過ぎだって?…それから DD5じゃなくて DD6って言ってたぜ?」
携帯から隊員Fの声が聞こえる
『DD6だってっ!?もう次世代機が出てたのかっ!?開発情報には 何もっ …けど そのジェット音はDD5と同じだっ そ、そうか!ジェットエンジンは据え置きで フレーム変更の新型機って事だなっ!?どんな形だ!?どんな色!?滑走距離を縮めたって事は 機体抵抗の大幅改善がされた筈だから ショートフレームの…っ』
隊員Iが言う
「悪い… フレッド隊員 俺は 戦闘機の形の説明は出来ないし 色って言うのも… 俺の目から見たら 普通の銀色だよ?…何ていうか 作ったばっかりの 缶詰みたいな…?」
隊員IがDD6を見ている 携帯から隊員Fの声が聞こえる
『未塗装のフレームなのかっ!?そいつはレアだっ!もしかして…っ!…え?けど ちょっと待ってくれ?何で マシーナリーの輸送を行う その場所に DD5… いやっ DD6が!?護衛をしようにも 超速戦闘機と輸送機とじゃ まったく速度が合わないんじゃ?』
隊員Iが笑んで言う
「っはは それはだなぁ…?なら聞いて驚け~?フレッド隊員?」

【 ART本部 司令塔 】

シェイムがグレイゼスの後方で祈りをささげている スピーカーから声が聞こえる
『DD6 全機 出力正常 各機関異常なし 予定通り 1号機は滑走開始地点へ 続いて2号機は準備地点へ 3号機以降も出力を維持』
グレイゼスがスイッチを押して言う
「こちらART本部 ART1は各自 自身のマシーナリーの状況を 無線周波数007にて 管制塔へ伝えろ」
スピーカーから隊員Aの声が聞こえる
『ART1 了解!』
スピーカーから隊員Iの声が聞こえる
『こちらART1 1号機 各機関異常なしっ …行けますっ!』

【 M隊員I コックピット 】

スピーカーから声が聞こえる
『ART1 1号機 了解だ カウントゼロと同時に 出力最大にて滑走を開始しろ』
隊員Iが言う
「了解っ!」
隊員Iが携帯へ言う
「それじゃ…」

【 病院 】

隊員Fが窓の外を見る 隊員Fの脳裏に隊員Iの声が聞こえる
『…行って来るよ フレッド隊員』
隊員Fが微笑して頷いて言う
「大丈夫だ」

【 M隊員I コックピット 】

スピーカーから声が聞こえる
『カウント5!4!3!2!…』
隊員Iの脳裏に隊員Fの声が聞こえる
『そんなスペシャルミッションに選ばれた パイロットたちだ!絶対に大丈夫!長年警空の基地を見続けて来た この俺が保障する!』
隊員Iが微笑して頷く スピーカーから声が聞こえる
『ゼロ!』
隊員Iが操縦桿を強く握る

【 警空 第1ゲート 】

ART1マシーナリーたちの前を M隊員Iが滑走して過ぎる ART1マシーナリーたちが M隊員Iを追って見てから 続いて逆方向へ向くと DD6が無音で滑走して来て 皆の前を過ぎ去ってから爆音が響く M隊員Cが驚いて言う
「のわっ!?お、音が後からっ!?」
M隊員Bが言う
「あー!これって これってー!音速を超えてるって 奴だよー!アッちゃんー!」
M隊員Aが言う
「え…?音速を超えているって …もうっ?」
M隊員Nが言う
「す、すげぇ…っ」

【 M隊員I コックピット 】

隊員Iがモニターに映る滑走路の終点に 一瞬目を見開くと同時に モニターに上昇する映像が流れる 隊員Iが呆気に取られて言う
「…え?」
スピーカーから声が聞こえる
『DD6 1号機 ART1マシーナリー1号機とのドッキングを確認っ …こちら DD6 1号機パイロット ART1マシーナリー1号機 パイロット 聞こえるか?』
隊員Iがハッとして慌てて言う
「は、はいっ!」
スピーカーから声が聞こえる
『これより安定作業を開始する 両腕はそのままに 両足を直立にして 状態固定を設定してくれ』
隊員Iが慌てて言う
「りょ、了解っ!」
隊員Iがコンソールを操作する

隊員Iがモニターに表示されたスイッチを見て 一度唾を飲み込んでから 意を決して押すと シートの固定が解除され動き出す 隊員Iが思わず言う
「わっ!?うわわっ!?」

【 DD6 1号機 コックピット 】

パイロットシートの後部座席に隊員Iがシートごと現れ固定される 隊員Iが呆気に取られていると 1号機パイロットが言う
「ようこそ 俺のDD6 マッカービーへ!」
隊員Iが呆気に取られて言う
「え?マッカービー?」
1号機パイロットが軽く笑って言う
「っはは 俺が このDD6へ勝手に付けた愛称だ 俺の愛機だからな?」
隊員Iが言う
「あ、ああ… なるほど?」
1号機パイロットが言う
「どんな奴が入ってくるかと思ったけど あんたみたいな 優秀なマシーナリーパイロットで 嬉しいよ」
隊員Iが呆気に取られて言う
「えっ!?俺が 優秀なっ!?」
1号機パイロットが言う
「ああ!何しろ 初めてのテイクオフで まったく 滑走スピードを落とさずに 最終地点まで突っ切れるんだ 流石はART1の1号機に選ばれるだけはある …大抵の奴は 滑走路の終点が見えると…」

【 警空 第1ゲート 】

M隊員Bが滑走していて 隊員Bがモニターに映る終点に驚いて言う
「うわっ わわわあーっ!」
M隊員Bが急ブレーキを掛ける 上空をDD6が飛び去る スピーカーから声が聞こえる
『こちらDD6 2号機 ドッキング失敗 リターンルートを経由し 出動準備の最後尾へ回る テイクオフを3号機へ移行する』
スピーカーから声が聞こえる
『こちらDD6 3号機 了解』
スピーカーから隊員Nの声が聞こえる
『こちらART1 3号機 了解!…こら~?バイちゃん隊員っ!?何やってるんだよっ!?』
隊員Bが苦笑して言う
「ごめーん だって 終点が見えて 怖かったんだもんー」

【 DD6 1号機 コックピット 】

スピーカーから声が聞こえる
『ドッキングのタイミングは このマルック基地のタラップに置かれる 終点地点となる ART1隊員諸君は どうか…』
隊員Iが呆気に取られている 1号機パイロットが言う
「な?一度失敗が起きれば こうやって 説明はするんだが 結局 説明されたからって 出来るものでもないみたいで 初めてのテイクオフの時は 誰だって1度はビビって失敗するんだ」
隊員Iが言う
「そうなのか… それじゃ…?…ん?えぇえっ!?じゃ、じゃぁっ!?俺たちはっ!?1機だけ 出発しちゃって どうするんだっ!?」
1号機パイロットが言う
「もちろん こうやって1度で成功するという可能性も考慮して 予め燃料は余計に積んであるから しばらく旋回して 時間を稼ぐ …もっとも 余りにもこの後の失敗が続くようだと 俺たちも一度下りることになるが」
隊員Iが苦笑してから窓の外を見て言う
「そっか… 俺も 今までなら… いや?ついさっきまでの状態だったら 絶対失敗してたよ?」
1号機パイロットが言う
「うん?そうなのか?」
隊員Iが苦笑して言う
「ああ、けど このスペシャルミッションのパイロットに選ばれた あんたたちなら 絶対に大丈夫だって …そう 教えてくれた 仲間がいたから 信じられたんだ」
1号機パイロットが一瞬驚いてから微笑して言う
「…そうか 元国防軍の貴方方に そう言って貰えるとは 嬉しいよ」
隊員Iが微笑して言う
「もう、政府も国防軍も 無いだろ?俺たちは皆 同じアールスローンの…」
1号機のパイロットが言う
「ああ、そうだな?どちらであっても 関係ない ART1へもART2と 同様に協力する」
隊員Iが頷くと 1号機のパイロットが言う
「…とは言っても?実は 警空の超エリートたちは 皆 攻長閣下のART2のミッションの方へ向かってて… ART1に付いた俺たちは 2軍みたいなモンなんだけどな?ははっ!」
隊員Iが衝撃を受けて言う
「何ーっ!?」

【 警空 第2ゲート 】

イヤホンから声が聞こえる
『…こちらDD6 2号機 これより2度目のテイクオフへ備える 各機関 共に 出力に異常なし!』
イヤホンから隊員Bの声が聞こえる
『こちらART1マシーナリー2号機ー!各機関共に 今度こそ気合に 異常なしー!』
イヤホンから隊員Cの声が聞こえる
『こらっ!バイスン隊員っ 共有無線でふざけるなぁっ!』
イヤホンから隊員Bの声が聞こえる
『えー?俺 ふざけてなんてないしー?今度こそ 気合十分だしー?さっきは 初めてだったしー?』
イヤホンから隊員Cの声が聞こえる
『イリアス隊員は その初めての1番手で 成功させたんだぞ?少しは見習って!?』
イヤホンから隊員Bの声が聞こえる
『サッちゃんだって 4番手だったのに 失敗したしー?』
イヤホンから隊員Cの声が聞こえる
『うっ… そ、それは…っ』
ハイケルが苦笑する 警空隊長が言う
「さて では そろそろ こちらもテイクオフしよう 彼らのこの様子ならば 次こそは成功させてくれるだろう?」
ハイケルが言う
「ああ …では よろしく頼む」
警空隊長がパイロットへ向く パイロットが敬礼して言う
「はっ!参りましょう!」
ハイケルが頷きパイロットと共に去って行く

【 警空 第1ゲート 】

隊員Aが言う
「それじゃ…っ ART1 今度こそ 行くぞー!」
ART1マシーナリーが円陣を組んでいて言う
「「おー!」」
シュピトールが呆気に取られて言う
「だから なんなんだ…?これは…?」
M隊員Nが言う
「…うーん やっぱ これがダメなんじゃないか?バイちゃん隊員?”行くぞ”の号令に ”おー”だから 俺ら らしくねーってさぁ?」
M隊員Bが言う
「えー?そうかなー?でも 絶対 良いと思うんだけどー?だって あの終点に向かって突っ込むのなんて ちょー気合が必要なんだものー しかも今度は2回目だしー?」
隊員Aが苦笑して言う
「俺は最後に出なきゃいけないから なんにしても1回で成功させなきゃいけないんだ… そうと思うと やっぱり この気合入れも …良いかもしれないな?」
M隊員Bが言う
「でしょでしょー!?さっすがアッちゃん!やっぱ 俺とは心も気合も通じ合ってるよねー!」
M隊員Aが衝撃を受け困って言う
「あっ いやっ …バイちゃん?そう言って貰えるのは 嬉しいけど やっぱり そう言う言い方は 誤解を招くから…」
M隊員Bが言う
「えー?」
隊員Cが表情をしかめて言う
「や、やっぱり お前らっ!?」
モニターの隊員Aが慌てて否定する
『ち、違う違うっ!誤解するな サキっ!』
モニターに隊員Bが映って言う
『えー?誤解ってー?』
スピーカーに声が聞こえる
『こちらDD6 2号機 準備は完了している カウントはまだか?』
モニターの隊員Bが言う
『あー?』
モニターの隊員Aが言う
『バイちゃん 2号機だから 準備急いで!』
モニターの隊員Bが言う
『了解 アッちゃん仮隊長ぉー!』
M隊員Bが振り向いて言う
「それじゃ 今日はいつもと違って 俺が先にいっちゃうからねー?アッちゃんも早くねー?俺我慢して待ってるからー!」
M隊員Bが走って行く 隊員Cが表情をしかめて言う
「ま、まさか… それって…っ」
モニターの隊員Aが頬を染めて焦って言う
『だからっ 違うってっ!バ、バイちゃんっ!!』
M隊員Bが笑って去って行く
「にっひひ~」

DD6 2号機とM隊員Bがドッキングして上空へ向かうと その横をハイケルの乗った戦闘機がすり抜ける 隊員Bが成功にホッとしている所に気付き喜んで言う
「あー!少佐ぁーっ!」

【 ART1 戦闘機内 】

ハイケルのイヤホンに隊員Bの声が聞こえる
『少佐ぁーっ!俺 成功させましたでありますー!少佐ぁーっ!?』
ハイケルが苦笑して言う
「良くやった バイスン隊員」
ハイケルのイヤホンに隊員Bの声が聞こえる
『えっへへ~ 本音言うと チョー怖かったであります~ 少佐ぁ~』
ハイケルが苦笑すると ハイケルのイヤホンにM隊員Bのスピーカー音が聞こえる
『DD6 2号機 及び マシーナリー2号機のドッキングを確認 …こちら DD6 2号機パイロット マシーナリー2号機 パイロット 聞こえるか?』
隊員Bの声が聞こえる
『あー?』
ハイケルが言う
「バイスン隊員 次は安定作業だ」
隊員Bの声が聞こえる
『はーっ!了解!少佐ぁーっ!こちらART1 2号機ー 通信 聞こえてるでありますー!』

【 病院 】

窓の外にいくつもの飛行機雲が連なっている 隊員Fが微笑して言う
「イリアス隊員… 少佐… 皆… 作戦の成功を 祈ってるよ …けど」
隊員Fが苦笑して言う
「やっぱ 俺も 行きたかったなぁ~?イテテテテ…ッ」
隊員Fが痛がっていると 看護士がやって来て言う
「お早う御座います 検温の時間です」
隊員Fが一度看護婦を見てから 再び窓の外を見て 消えて行く飛行機雲に目を細める


続く
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